最終話 第6話ネタバレ解説! ドラマ『ホークアイ』ラストはどうなった? 時計の意味は? あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

最終話 第6話ネタバレ解説! ドラマ『ホークアイ』ラストはどうなった? 時計の意味は? あらすじ&考察

© 2021 Marvel

ドラマ『ホークアイ』最終回はどうなった?

2021年のラストを飾るMCUドラマ『ホークアイ』は、家族とクリスマスを過ごしたいホークアイことクリント・バートンと、ホークアイに憧れるケイト・ビショップの物語を描き、ついに最終話に突入する。第5話ラストではまさかの展開も待ち受けており、このままあと1話で終われるのかというファンの期待と不安の入り混じった思いを乗せて、最終回第6話の配信が始まった。

MCU初登場から10年越しで主役作品が作られたクリント・バートンの物語もこれで一旦幕を閉じる事になる。最終回ではどのような展開が待っていたのか。各シーンを解説付きで見ていこう。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ホークアイ』最終話第6話の内容に関するネタバレを含みます。

最終回第6話「クリスマスがやってきた?」のネタバレあらすじ&解説

キングピンとエレノアの密会

ドラマ『ホークアイ』第5話では、ケイトは母エレノアに忠告して、事件の黒幕としてジャックを逮捕させることに成功する。一方で、クリントが念頭に置いていたのは最初からかつて自分に依頼をしてきた人間だった。それは自らの部下であるマヤの父を襲撃するよう依頼した人物であり、クリント暗殺のためにエレーナの派遣をエレノアに仲介したブローカーでもあった。その人物とは、キングピンことウィルソン・フィスクである。

このキングピンを演じている人物が、Netflixドラマ『MARVEL デアデビル』(2015-2018) で同じ役を演じたヴィンセント・ドノフリオであったことから、マーベルファンの間ではその話題で持ちきりに。映画作品と相互に影響を与え合うDisney+オリジナルのMCUドラマ以前のドラマ作品とMCU正史がつながるのかという点について大きな注目が集まっていた。

この件については、『ホークアイ』第3話から第5話まで監督を務めたバート&バーティが回答を出している。結論としては、Netflxのマーベルドラマからキャラクターは移行して来るが、世界観を移植するのではないという旨の説明が行われている。詳細はこちらの記事で。

そして『ホークアイ』最終話はいきなりキングピンの登場からスタートする。Netflix版では持っていなかったステッキを持って登場したヴィンセント・ドノフリオ演じるキングピンは、お馴染みの白いジャケットを羽織っている。歳を重ねて貫禄が更に増したようにも見える。エレノアとは「ビショップさん」「フィスクさん」と呼び合う距離感の仲かと思いきや、これはかしこまっていただけのようで、キングピンはすぐに「エレノア」と呼び直している。

なお、ドラマ『デアデビル』ではキングピンの声は乃村健次が担当していたが、『ホークアイ』版のキングピンの声優は玄田哲章が担当している。

一方のエレノアは「口答えもせず指示に従ってきた」と主従関係があることを示唆する。第1話で登場したエレノアの夫デレクはキングピンから相当な額を借りていたらしい。確かに『ホークアイ』の第1話は家を売るかどうかでエレノアとデレクが口論するシーンから始まっていた。

そして、エレノアはアーマンドを始末してジャックに罪を被せることがキングピンの指示だったと話す。娘のケイトが真実に迫っていることから、一線を引きたいというエレノア。ケイトが真相に迫ったのは、その探究心と有能さによってだ。エレノアはクリスマスにケイトを招いたが、ケイトの活躍を予想だにしていなかったのだろう。ケイトがこれ以上踏み込まないようにに「あなたはスーパーヒーローではない」と言い聞かせ続けていたのだ。

キングピンは「この業界に一線などない」と、キングピンらしい冷酷な返答をするが、エレノアは日本語字幕で「すべて保管してある」と、英語で「Copies of everything(あらゆる資料のコピー)」があると言い放ち、交渉を打ち切って立ち去る。キングピンはキングピンらしく癇癪を起こしかけている。エレノアとキングピンの協力関係が明らかになった途端の、まさかの決裂である。

エレーナが送ってきた写真はこの交渉の場面だったようだ。しかも音声付きの動画を送ってくる有能ぶりを発揮している。さすがはブラック・ウィドウである。ギャングの手先となって殺人にまで手を染めた母エレノアにショックを隠しきれないケイト。クリントはキングピンのことをよく理解しているようで、エレノアに危機が迫っていると予想する。

自分の家族の不祥事を前に、ケイトはクリントにクリスマスを過ごすために家に帰るよう告げるが、ここで初めてクリントがケイトに「君は私の相棒だ」と認める。この問題がクリアになるまで立ち去らないと告げ、二人は共に解決に当たることに。以前ジャックが言っていた通り、この夜にはまた富裕層が集まるクリスマスのパーティがあるのだ。

一度は解散したホークアイコンビだが、第5話では一人でローニン時代の罪にケリをつけようとしたクリントのことを、ケイトは最後まで諦めなかった。亡きナターシャを心の拠り所にして、孤独に戦おうとするクリントと共に戦おうとした唯一の人物がケイトだったのだ。であれば、ケイトの問題はクリントの問題だ。

キングピンの決断

キングピンの元に現れたマヤ・ロペス。キングピンも手話を少々身につけている。必要と考えて勉強したのだろう。やはりキングピンは有能なマネージャーなのかもしれない。ローニンとの戦いを経たマヤは、父の亡霊を追うことはやめるが、代わりにリフレッシュのために2-3日の休みを希望する。何かプランがあるのだろう。

出ていこうとするマヤを引き留めたキングピンは手話で「愛してる(I love you)」と語りかけ、マヤも同じように返す。『ホークアイ』第2話でもクリントが息子のナサニエルとの間で同じやりとりをしている。マヤにとって、父の死後、キングピンは父親代わりの存在だったのだろう。

マヤが去った後、キングピンはカジの前でイライラを爆発させる。ローニンとホークアイが同一人物だとは知らないため、ローニンとホークアイがうろついていると考えている。エレノアは仕事をやめると言い出し、マヤが裏切りに走っていることにも気付いている。

なお、キングピンは仕事をやめるというエレノアのことを、字幕では「キャリアウーマン」、吹き替えでは「銀行員みたいに」と揶揄しているが、英語では「as if she works for Goldman Sachs.(ゴールドマンサックスで働いているかのように)」と、具体的に世界的に有名な金融企業グループの名前を挙げている。

一方のカジは直立不動だが、よっぽどキングピンに信頼されていることがうかがえる。カジが裏切っていたらと考えると恐ろしくなるが、キングピンにとっては全くその心配はないのだろう。カジがキングピンに心の底からビビっていることが分かっているからだ。キングピンは人々にこの街(ニューヨーク)が自分の街であることを思い出させると言い出す。

確かにこれまで何度もニューヨークが舞台になってきたMCUで、キングピンの名前は全く挙がらなかったのだから、そうした方がいいだろう。『スパイダーマン:ホームカミング』(2017) でバルチャーことエイドリアン・トゥームスが裏稼業に手を出した時にも、キングピンの存在感はなかった(その時期は獄中にいたのかも)。

トリックアローにあの名前も

クリントとケイトは地下鉄でニューヨークを移動中。クリントは相当な武装が必要と考えているようで、ケイトのおばのモイラ宅で新たなトリックアロー制作に取り掛かる。ケイトは第3話のカーチェイスの時に文句を言っていたトリックアローの“タグ問題”を解決するべく、「特上の危険」「エアバッグ」「凍結」「フラッシュ」「氷壊」というシールを作っている。一人で仕事を担当し、後から後輩や部下が入ってきた経験がある人にはよく分かるシーンだろう。自分だけが頭の中で分かっていても、チームプレーや引き継ぎはできないのだ。

そしてクリントが取り出したのは、予告編でも登場していたスターク印のトリックアロー。この直前と第3話ではピム製のトリックアローも登場していることから、様々な人物がクリントに協力してくれていたことが分かる。スターク製のトリックアローがまだ生産できるのかどうかは分からないが、金銭的なバックアップもないだろうし、大事な品であることは確かだろう。クリントは今回の件のためにそれを使おうというのだ。

クリントはケイトに対し、仕事には不都合がつきもので、孤独だし、傷つくし、ヒーローは辛い決断も下さなければならないと話し、ケイトの覚悟を確認する。すると、ケイトは幼い頃に経験した「異星人の襲撃」のこと、つまり『アベンジャーズ』(2012) でロキとチタウリが侵略してきた時のことを回想する。

ケイトは、スーパーパワーのないホークアイが弓矢だけで戦う姿を見て、「ヒーローとはスーパーパワーを持つ人でははなく、正しいことを勇敢にやり通せる人のこと」だと学んだという。覚悟を決めたケイトとクリントは、ジャージ・マフィアが動員されたパーティ会場に向かう。

エレーナvsケイト

会場についたクリントとケイトは、“脅威と優位”を確認。第2話第4話第5話で登場したNYCラーパースの面々がウエイターとして集っている。トリックアローを取り戻してくれたウェンディ・コンラッドはシャンパンを運んでいる。クリントは彼女に大事なバッグを返したのだろうか。こちらの記事で紹介した通り、ウェンディは原作コミックでボムシェルという名のヴィランになるキャラクターだ。

そして、逮捕されたはずのジャックは早速釈放されている上に、腰に剣を差している。一体どのようなバックグラウンドを持つ人物なのだろうか。そして真緑のコートに身を包み、紫のルージュを引いたエレーナも登場。コートの膨らみが明らかに怪しいが、ラーパースのオービルは簡単にエレーナを通してしまう。

カジはエレノアをスナイパーライフルで狙うというなんとも大胆な手段に出ている。パーティで富裕層が暗殺されれば大ニュースになるだろうが、これがキングピンが人々に自分の存在を誇示する方法なのだろう。ケイトがエレノアに全てを知っていると話す一方で、クリントを見つけたカジは発砲を開始。エレーナもクリントの姿を認め、大立ち回りが始まる。

エレノアはケイトに、ケイトはエレノアにその場にとどまるように言い合い、結局居合わせていたジャックだけが取り残されることに。クリントはオービルから荷物を受け取ると、ケイトはエレベーターでクリントを追うエレーナと遭遇。クリントに危害を加えたくないケイトと、ケイトに危害を加えたくないエレーナのコミカルなやり取りが展開される。

ケイトは中に着込んでいたラーパーズ製の新コスチュームを披露すると、エレベーターのボタンを“全押し”して妨害するファインプレーを見せる。エレーナはケイトにイラつきながらも、どこか本気ではない。この任務が遂行できなくてもよいと思っているような雰囲気さえ感じられる。

ラーパースとジャージ・マフィアのチーム戦の様相を呈してきた戦いは、クリントがスモークのトリックアローでカジを撃退。ケイトとエレーナの戦いは部屋の断面から撮影されたカメラが横にスクロールする形で映し出されていく。互いの“蹴り”と“投げ”を褒め合う展開になり、ケイトはここで「褒めないで」(吹き替えは「いい人ぶらないで」)と言うが、英語では「Stop making me like you.(あなたを好きにさせないで)」と言っている。だが、二人の言葉は本気だった。不思議な関係である。

ケイトに礼を言って別れたエレーナは高層階からの“壁走り”でクリントに迫るが、間一髪でクリントは逃れる。エレーナも同じくスーパーパワーを持たない人物。ケイトも高層階から地上への着地に成功する。ケイトにお礼を言っているジャージ・マフィアメンバーは、第3話で、彼女にイマジン・ドラゴンズのチケットをプレゼントした後に喧嘩したら、ファンでもないの妹と観に行くと言い出したと怒っていた人物だ。ケイトは「正直な気持ちを話してお互いに謝って」と助言していたが、なぜかこのメンバーはマルーン5のライブに行くことになったらしい。

“ホークアイ”の姿が

そしてケイトの助太刀に現れたのはジャックだった。見事な剣技を見せてジャージ・マフィアを斬り倒していくが、傷が深そうかなり恐ろしい。だが、ジャックは味方だったのだ。ジャック・デュケインは、こちらのヴィラン候補の予想記事にも書いた通り、原作コミックでは元はクリントの剣の師匠だったがソードマン(ソーズマン)という名のヴィランになる。ヴィランになる理由の一つだった多額の借金を背負う設定はケイトの父に引き継がれたようだ。

なお、MCUで剣をメインに使うキャラクターは非常に稀だ。『エターナルズ』(2021) でセナが剣を操っていた他、同作で登場が示唆されたブラック・ナイト、そして何者かから能力をコピーしたと思われるタスクマスターくらいしか剣の使い手はおらず、MCUで人間相手に剣を振るうキャラの姿は新鮮ですらある。

クリントはカジとの直接対決に。年齢差はありそうだが、そこはアベンジャーズ。バックドロップでカジを撃破している。地上に降りようとしてクリスマスツリーにつっこんだクリントの目の前にはフクロウが現れるが、原作コミックにはフクロウの英語である“オウル”という名のキャラクターが登場する。この人物はドラマ『デアデビル』にもキングピンの金庫番のリランド・オウルズレイとしてとして登場するが、まぁ関係ないだろう(それでも、スパイダーマンとデアデビルの強敵として覚えておいて損はない)。

その頃、マヤは荷造りを始めていた。だが、父とカジとのスリーショットの写真を見て何かを思い立つ。“正装”に身を包んだラーパーズは、一変して人々を積極的に誘導し、ジャージ・マフィアを撃退。ケイトはニューヨーク名物の巨大ツリーをぶっ倒すという荒技でクリントを助け出す。これは第1話で大学の鐘と時計台を倒した場面を想起させるが、今度は信念を持って必要なことをやり通したのだ。

スケートリンクに降り立ったクリントはジャージ・マフィアに囲まれるが、クリントが膝で氷上を滑りながら弓を射るというクールすぎる技で援護。クリントは磁石装置を使ったトリックアローで敵の銃器を取り上げる。そして、シャツを脱いだクリントが着ていたのはラーパーズが作ったケイトとお揃いの新コスチュームだった。ようやくMCUのホークアイがヒーローらしいコスチュームを身につけた瞬間だ。10年かかった。

クリントはケイトに「特上の危険」アローを預けると、笑みを見せながら「やっつけよう」と“相棒”に呼びかける。ホークアイコンビ誕生の場面である。数々のトリックアローで敵を撃退していく二人。それにしてもジャージ・マフィアメンバーの数が尋常ではない。クリスマスホリデーの時期だが、アルバイトでも雇っているのだろうか。

そして、右利きのケイトと左利きのクリントが背中合わせで弓を構える姿も。地味な印象があったホークアイがド派手なトリックアローで敵を倒していく。最後には突っ込んできたトラックをピム粒子を使ったトリックアローで縮小して撃退。中の人ごと縮小化してしまったため、「戻せる?」と心配するケイトにクリントは「スコットに聞かないと」と、アントマンことスコット・ラングの名前を挙げている。そのトラックは先程のフクロウに持ち去られてしまったが……。

決着の時

ケイトはエレノアを助けに行き、クリントはエレーナに発見され、カジはバイクでやってきたマヤとの対決に。エレーナはようやくクリントと一対一で対面し、「姉に何があったか」を聞き出す。ナターシャの最後をその目で見たのはクリントだけなのだ。「お姉さんは命と引き換えに世界を救った」と涙ながらに語るクリントだったが、エレーナはそれを信じることができない。

マヤはカジに対し、全てを水に流して一緒に生きたいと語りかけるが、カジは「俺の人生だ」とマヤを突き放す。ずっとナンバー2として生きてきた人生にケリをつけたいのだろうか。一方、逃げようとするエレノアの前に登場したのは上下白のスーツに着替えてハットを被ったキングピン。スーパーソルジャーレベルの怪力で車のドアを引きちぎっている。『デアデビル』ではキングピンが車のドアで何度も相手の頭を挟んで殺す悪名高いシーンがあるが、ドアが引きちぎられたおかげで、エレノアにその心配はないことが示されている。

エレノアを助けようとしたケイトだが、キングピンには弓がきないという常人離れした強靭さを見せつけられる。そして袖のカフスを触り、カフスをコレクションしていた『デアデビル』での描写を想起させる仕草を見せてケイトににじみよるが、そこに突っ込んできたのはエレノアが運転する車だった。これでも死ななそうなのがキングピンの恐ろしいところである。

カジはマヤと話し合いを進めるが、カジはキングピンの存在を恐れて一歩を踏み出せないでいる。「俺は両方の世界を歩けない」とは、マヤの父が第3話でマヤに「二つの世界を行き来できる」と教えたことの裏返しの言葉だ。襲ってきたカジに矢を刺したマヤは、覚悟を決めてその場を立ち去る。

やはり死んでいなかったキングピンは怪力でケイトを追い詰める。矢を折られたケイトはデアデビルを思わせるファイティングスタイルも取るが歯が立たない。しかし、ケイトの窮地を救ったのは、第4話でクリントがケイトに教えたコイン飛ばしの技だった。トリックアローが次々に連鎖して「特上の危険」が爆発。ついにキングピンを倒すことに成功する。

エレノアはケイトに「あなたのためにやった」「あなたのことを理解している (I know you)」と親の象徴のようなことを言うが、ケイトの通報によってエレノアはデュケイン殺害の容疑で逮捕。ケイトは第2話でニューヨーク市警のカードル刑事から自宅の家事について電話を受けており、その番号にかけ直したのだろうか。この場面もカードル刑事が逮捕に出向いている。エレノアは「クリスマスイブに母を逮捕させるのがヒーロー?」と聞くが、辛い決断も下さなければならないとケイトに教えたのはクリントだ。

一方のエレーナは、クリントが口にしたナターシャの“選択”を信じられないでいた。それを信じないことが、ナターシャの思いを否定することだとエレーナもどこかで気付いているだろう。だが、自分が消えていた間にナターシャが死んだ責任を問える相手はクリントしかいないのだ。とどめを刺そうとしたエレーナが、映画『ブラック・ウィドウ』(2021) で描かれた口笛の合図の前半をならすと、クリントはその後半の音を返す。

ナターシャは、エレーナの話をする中で、“秘密の口笛”をクリントに教えていたのだ。クリントは『ブラック・ウィドウ』で描かれた二人の幼少期の話や、エレーナの無事だけを考えていたというナターシャの話を聞いたと話すと、エレーナ は「私なら止められた」と悔やむ。エレーナが責めていたのは、姉のピンチにこの世界に居られなかった自分自身でもあったのだ。

この場面はナターシャを知るエレーナ、クリント、そして視聴者の間でナターシャのことを思い返すことで、ある種のナターシャへの追悼が行われている。「ナターシャの意志は鋼だ」と、反論しようのない姉のことを知る人物の言葉に、エレーナもついにナターシャの選択を受け入れることを決意する。一切登場せずに、その人物について思うだけでこれだけの気持ちにさせられるキャラクターは、ナターシャしかいないだろう。

命辛々逃げ延びたキングピンだったが、その前に現れたのマヤだった。拳銃を取り出したマヤは父の仇であったキングピンに銃を向けると、カメラからはフレームアウトしていくが銃声が鳴り、キングピンの巨体が倒れたと思われる重厚な音が残る。せっかく登場したヴィンセント・ドノフリオのキングピンはここでお役御免となったのだろうか? それとも、情けを与えたマヤが急所は外したということもあり得るのだろうか。

キングピンの最後について演じたヴィンセント・ドノフリオが語った内容はこちらで紹介している。

全ては一件落着。ラーパースのウェンディはジャックの剣さばきを見てラーパースにスカウトしているが、この場面はコミックファンには笑えるシーンだ。原作コミックでソードマンとボムシェルというヴィランとして登場した二人が、『ホークアイ』ではなんのことはない味方だったというオチを見せられているシーンなのだ。これは、今後のMCUにおいても、原作コミックのキャラと名前が同じだからといってMCUでも同じ役割を演じるとは限らないという教訓でもある。

クリントは、「時々、自分のあらゆる点をよくする特別な人に出会う」とケイトのことを指して話し始めるが、最後には照れ隠しで、その人物をコスチュームを作ったミッシーのことにしてしまう。それでも、一人でキングピンと戦ったケイトを労い、「誇りに思う」と告げるのだった。もちろん、ピザドッグを散歩させることも忘れてはいない。

時計の意味

そしてクリスマス当日、やっぱりクリントは自宅に帰ってきていた。しかもケイトとピザドッグも一緒だ。ケイトはこの場面でピザドッグのことを原作コミックの名前と同じラッキーと呼ぶようになっている。いつ変えたのだろうか。

そして、クリントが妻のローラに渡す形でようやく登場したのが、第1話から謎に包まれていたロレックスの時計だ。その裏側にはS.H.I.E.L.D.のロゴがあり、「19」という数字が入っている。「ものは大事にしろ」と言っていることから、元々ローラのものだったことが分かる。

このシーンは一切説明がないのだが、答えは原作コミックの中にある。S.H.I.E.L.D.で付けられる番号といえば、エージェントのコードネームだ。例えば、MCUではシャロン・カーターはエージェント13で、『エージェント・オブ・シールド』(2013-2020) のシーズン2に登場したキャラ・パラマスはエージェント33だった。

そして、コミック版に登場するエージェント19は、バーバラ・モースというキャラクターのコードネームで、別名モッキンバードという単独シリーズも作られたヒーローキャラクターのものである。コミック版でもモッキンバードはホークアイと結婚している。つまり、ローラはクリントと同じくかつてS.H.I.E.L.D.のエージェントだったのだ。クリントが頼っていたのも納得である。

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時計はおそらくS.H.I.E.L.D.から提供されたものだったのだろう。ナンバー入りであることから元S.H.I.E.L.D.メンバーという身元が割れてしまうことを恐れ、クリントとローラは時計のことを心配していたのでる。ジャージ・マフィアが時計を最優先に追っていた理由は謎だが。

なお、バーバラ・モースというキャラクターは既に『エージェント・オブ・シールド』にも登場している。文字通りの“キャラ被り”が発生しているわけだが、この件については、こちらの記事で考察している。監督によるローラについてのコメントも紹介しているので、是非チェックしていただきたい。

クリントはケイトと共にローニンのスーツを燃やし、過去に決着をつける。しかし、ケイトが見ているのは未来だ。「レディ・ホーク」「ホーク・イブ」「ホットショットみたいな感じでホークショット」「レディ・アロー」と次々と自分のヒーロー名の案を出していく。すべてを却下したクリントが「一つ提案」するところで『ホークアイ』のタイトルロゴが登場。ケイトのヒーロー名はそのままクリントの“ホークアイ”を引き継ぐことを示して『ホークアイ』最終回第6話は幕を閉じる。

ミッドクレジットには…

そして、ポストクレジットシーンだ。『ホークアイ』では第1話から第5話まではミッドクレジットシーンもポストクレジットシーンもなかったが、やはり最終話には用意されていた。ミッドクレジットシーンに待っていたのは、なんと第1話で描かれた「ロジャース・ザ・ミュージカル」の楽曲「Save The City」のフルバージョンだ。

第1話の配信後に音源のみのフルバージョンが公開されていたが、映像込みでの公開はファンによって熱望されていた。「マーベル・スタジオからハッピー・ホリデー」としてミュージカルの演技とともに全編公開されいてる。なお、「マーベル・スタジオからメリー・クリスマス」としていないのは、キリスト教以外の宗教を持つ視聴者への配慮だ。

このミュージカルで、客席に時折映るのは人物は「Save The City」の作曲を手がけ、スコット・ウィットマンと共に作詞も手がけた大御所のマーク・シャイマン。ミュージカル『ヘアスプレー』(2002) や映画『天使にラブ・ソングを…』(1992)、『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018) などの楽曲を手がけた人物として知られる。こちらの記事では、シャイマンが『ホークアイ』に参加することになった経緯について取り上げている。

なお、このミュージカルは、スペイン語やポルトガル語など、一部の言語ではその言語で歌われているバージョンを聴くことができる。

そしてエンディング曲で流れているのは伝統的な「We Wish You A Merry Christmas」。

しかし、ポストクレジットシーンはなく、『ホークアイ』最終回は静かに幕を閉じる。ミッドクレジットシーンも物語に影響を与えるようなものではなかった。アメリカのクリスマスは静かに過ごすものであり、そうした雰囲気も大切にしたかったのだろうか。あるいは、『ホークアイ』は現時点のMCUで最も未来を描いており、2024年12月が舞台になっていることから、あまり先のことを確定させたくなかったのかもしれない。

いずれにせよ、アメリカでは2021年12月16日(木) 公開、日本では3週間遅れの2022年1月7日(金) 公開を予定している『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のネタバレがなくて何よりだ……。

なお、こちらの記事では『ホークアイ』最終話にポストクレジットシーンがなかった理由を考察している。

ドラマ『ホークアイ』最終話第6話考察

あっという間に5週間で全6話の配信を終えたドラマ『ホークアイ』。最終回はこれまでのエピソードの伏線が全乗せで瞬く間に事件は解決していったが、新たに生まれた謎も多い。マヤはどこへ向かったのか、カジは死んだのか、身寄りを失ったケイトはクリント家と合流したがそのまま一緒に住み続けるのか等々。ある意味で目標を失ったエレーナの今後も心配だ。

こちらの記事で解説したとおり、ドラマ『ホークアイ』はシーズン2が作られる可能性が低い。一方で、『ホークアイ』のスピンオフドラマとして位置付けられているマヤを主人公に据えたドラマ『エコー(原題)』は制作が進んでいる。『ホークアイ』のラストが単純に「つづく」という終わり方にならなかったことから、そちらにホークアイ達が登場するのか、マヤの新たな人生がどうなるのか等、逆に疑問が増えることになってしまった。

一方で、ドラマ『ホークアイ』は、クリントがこれまでの生き方にケジメをつけ、ケイトがこれからの生き方を選ぶ物語だった。クリントは自分一人(と心の中のナターシャ)でローニンとしての過去とナターシャを失った過去を引き受けようとしていた。誰でもヒーローになれるという可能性を信じて生きてきたケイトは、大人になって、憧れの相手や親からその可能性を閉ざされる/否定される。

一人で終わらせようとしたクリントは、ケイトに手を差し伸べられ、自分もケイトに手を差し伸べるようになる。最後にはクリントだけでなく、ケイトと二人でローニンのコスチュームに火をつけている。そして、一人で抱え続けてきたナターシャの最後についての話を、ナターシャの理解車であるエレーナと共有して、ようやくナターシャへの追悼を済ませた。男性的なマッチョさで罪を背負い続けようとするクリントを変えたのは、ケイトとエレーナだったのだ。

一方のケイトはエレノアに押さえつけられても、クリントに突き放されても、ヒーローになれると信じてトレーニングを積んできた自分の道を曲げなかった。親になんと言われようが、師になんと言われようが、ヒーローになるかどうかは自分で決めればいいのだ。

新たなヒーローの誕生を約束し、『ホークアイ』は幕を閉じた。MCUドラマとしては2022年夏に『ミズ・マーベル(原題)』の配信が予定されている。それより先に『エコー』や2022年公開予定の『ムーンナイト(原題)』 『シー・ハルク(原題)』 『シークレット・インベージョン(原題)』などが配信される可能性もあるだろう。2021年11月に発表されたDisney+のMCUラインナップについてはこちらの記事に詳しい。

いや、その前に『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の日本公開を楽しみに待とう。

原作コミック『ホークアイ』はKindleで日本語訳版が発売中。

ドラマ『ホークアイ』は全6話がDisney+で独占配信中。

ドラマ『ホークアイ』(Disney+) 

『ホークアイ』最終回で残された13の謎こちらにまとめている。

第5話のネタバレ解説はこちらから。

第4話のネタバレ解説はこちらから。

エレーナの登場シーンで判明した4つの事実については、こちらの記事にまとめている。

エレーナ登場の裏側について製作陣が語った内容はこちらの記事で。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第1話に登場した「サノスは正しかった」という落書きについては、こちらで詳しく考察している。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第2話で判明した、ケイトがウエストコースト・アベンジャーズのリーダーになる可能性についての考察はこちらの記事で。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

第3話に隠されていたカジの過去についてはこちらの記事で。

 

MCUの時系列における『ホークアイ』の位置と、フェーズ4のタイムラインについての解説はこちらの記事で。

 

ドラマ『ロキ』最終話のネタバレ解説はこちらから。

ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』最終話のネタバレ解説はこちらから。

ドラマ『ワンダヴィジョン』最終話のネタバレ解説はこちらから。

 

映画『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

映画『エターナルズ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告編解説と考察はこちらから。

『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

 

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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