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『デッドプール&ウルヴァリン』7月24日公開
マーベルコミック原作の人気映画シリーズ「デッドプール」の第3作目『デッドプール&ウルヴァリン』が2024年7月24日(水) に日本で公開される。デッドプールとウルヴァリンがMCUで共演する作品とあって、大きな注目を集めている。今回は、ウルヴァリン参戦までの道のりを振り返り、過去作でのウルヴァリンの描かれ方について見ていこう。
本作の制作について正式な発表があったのは2022年9月のことで、本シリーズで主演を務めてきたライアン・レイノルズが自身のSNSアカウントで告知の動画を公開した。
ライアン・レイノルズは「彼(デッドプール)の初めてのMCUへの参加は言うまでもなく特別なものでなければいけない」と表明。しかし、その内容について「何も思い浮かばない」と話していたライアン・レイノルズが「でも、一つだけ思いついた」と言うと、その後ろを俳優のヒュー・ジャックマンが通る。ライアン・レイノルズは「ねぇヒュー、ウルヴァリンもう一回やりたい?」と質問すると、ヒュー・ジャックマンは「あぁ、もちろんだよ、ライアン」と軽く答え、意外な形でヒュー・ジャックマンのウルヴァリン役復帰が発表された。
ライアン・レイノルズの投稿の16時間後、ヒュー・ジャックマンも動画を投稿。「たくさん疑問があるでしょうね」「例えば、『ローガン』の後になんでウルヴァリンが生きているのか?」と、ファンが気になっている点に触れている。隣に座るライアン・レイノルズは「『ローガン』は2029年が舞台です。完全に切り分けられていて、ローガンは『ローガン』で死にました。それを変えることはしません。この映画で起きることは……」としたところで映像に音楽がかかり、会話の内容が分からないようになっている。ともかくファンも納得できる設定になっていることは期待してよいだろう。
Some answers-ish. pic.twitter.com/ZjQDeIRZTI
— Hugh Jackman (@RealHughJackman) September 28, 2022
ヒュー・ジャックマンの復帰とMCU参戦
ヒュー・ジャックマンは、現在ほどアメコミヒーロー映画が主流ではなかった2000年に映画『X-メン』で初めてウルヴァリンことローガン役を演じた。当初この役はブライアン・シンガー監督がラッセル・クロウにオファーしたものだったが、ラッセル・クロウが『グラディエーター』(2000) の撮影を終えたばかりで、同じオーストラリア育ちで自身より5歳若いヒュー・ジャックマンを推薦。アメリカではその名が知られていないことや、身長が188cmあり、ウルヴァリンの160cmという原作の設定にマッチしないという懸念もあったが、以降、ヒュー・ジャックマンの演じるウルヴァリンは誰もが知るキャラクターの一人になった。
ヒュー・ジャックマンはほとんどの「X-MEN」シリーズに出演し、ウルヴァリンの単独スピンオフ作品も3作公開された。2017年に公開された映画『LOGAN/ローガン』でプロフェッサーX役を演じてきたパトリック・スチュワートと共に、ヒュー・ジャックマンはウルヴァリン役を引退。しかし、2019年のディズニーによる旧20世紀FOX買収で風向きが変わる。
パトリック・スチュワートは映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) でプロフェッサーX役に復帰。映画『マーベルズ』(2023) では、ケルシー・グラマー演じるビーストがカメオ出演を果たした。『ワンダヴィジョン』(2021) で“偽者のクイックシルバー”をエヴァン・ピーターズが再演する例はあったが、過去の「X-MEN」シリーズの出演者が同じキャラクターを正式に再演するのは、ヒュー・ジャックマンが三例目になる。
ドラマ『ミズ・マーベル』(2022) ではMCUで初めてミュータントの存在が指摘され、『マーベルズ』では別のユニバースのX-MENの存在が示唆された。後者ではプロフェッサーXの本名であるチャールズの名前も登場している。MCUは「X-MEN」との合流の道を入念に用意しており、ここに来て遂に「X-MEN」の顔役であるヒュー・ジャックマンがウルヴァリン役で復帰することになった。同時にヒュー・ジャックマンのMCU参戦をも意味しており、期待が高まる。
では、ここからはヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンが登場した旧20世紀フォックスのマーベル作品を見ていこう。遡ること24年前、2000年公開の『X-MEN』から始まった歴史は、『デッドプール&ウルヴァリン』にどんな風につながっていくのだろうか。
これまでのウルヴァリン
以下の内容は、過去の「X-MEN」フランチャイズ作品の内容や結末に関する重大なネタバレを含みます。
「X-MEN」オリジナル三部作
ヒュー・ジャックマンのウルヴァリンは、2000年公開の映画『X-MEN』で主役として初登場を果たした。記憶喪失の状態で放浪していたウルヴァリンは、ローグとの出会いを経てプロフェッサーXが運営する「恵まれし子らの学園」に導かれる。そこでミュータントを守るX-MENに合流し、マグニートーが率いる過激派ミュータント組織のブラザーフッドとの戦いに巻き込まれていく。
『X-MEN2』(2003) ではアメリカ政府が敵に。ウルヴァリンはミュータントの根絶を企むストライカーと、人間の根絶を企むマグニートーの企てを阻止するために戦う。ウルヴァリンは自らの過去を知るストライカーと対峙しつつも、誘拐されたプロフェッサーXに代わってX-MENを率いる場面も。同作では、ウルヴァリンが思いを寄せていたジーンがX-MENを救うために犠牲になり、消息不明になっている。
「X-MEN」三部作の最終作『X-MEN:ファイナル ディシジョン』(2006) では、ジーンがフェニックスとして復活し、X-MEN、ブラザーフッド、政府、フェニックスの四つ巴の戦いに。ウルヴァリンは愛したジーンに自らの手でトドメを刺すことになり、これが後々までウルヴァリンの精神を蝕むことになる。
オリジンとデッドプール描いた『X-MEN ZERO』
そして「X-MEN」シリーズの4作目にして、ウルヴァリン初の単独作品として公開されたのが、映画『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009) だ。記憶喪失だったウルヴァリンのオリジンが遂に描かれることになった。後にローガン/ウルヴァリンと呼ばれるジェームズ・ハウレットは1845年のカナダでミュータントの能力が目覚め、兄のビクター・クリード(セイバートゥース)と共に生き延びた末、ウィリアム・ストライカー率いるミュータント部隊のチームXに加わる。
『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』でローガンは「ウェポンX」計画の実験体となり、強力な金属アダマンチウムを骨格に埋め込まれて“ウルヴァリン”と呼ばれるようになる。チームXのメンバーだったウェイド・ウィルソンは数々のミュータントの能力を融合させた「ウェポンXI(イレブン)」に改造される。このウェイド・ウィルソン/ウェポンXIはデッドプールのこと。ライアン・レイノルズが同役を演じ、本作がヒットしたことで映画『デッドプール』(2016) の企画が動き出した。
ウルヴァリンのオリジンを描いた『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』がデッドプールの映画デビュー作で、二人のコードネームが「ウェポンX」と「ウェポンXI」という“連番”だったことで、二人の歴史が始まった。なお、本作のポストクレジットシーンは、頭を切り落とされたデッドプールがカメラ目線で「シーッ」と観客に口止めする形で幕を閉じる。
一方で、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』のデッドプールと後の「デッドプール」シリーズは繋がりを持たない。1970年代後半を舞台にした本作の後半は、後述の理由で“なかったこと”になっており、『デッドプール&ウルヴァリン』でのデッドプールとウルヴァリンの再共演に障壁はないものと思われる。
カメオを経て再び主役に
「X-MEN」シリーズ5作目の『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011) ではプロフェッサーXとマグニートーのオリジンが描かれ、ヒュー・ジャックマンのウルヴァリンはカメオ出演で連続出演記録を伸ばしている。続く『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013) は日本を舞台にしたスピンオフ。第二次世界大戦で長崎にいたローガンが原爆から日本兵の矢志田を助けた過去が物語の引き金になる。
『X-MEN:ファイナル ディシジョン』以降のウルヴァリンが描かれたのは『ウルヴァリン:SAMURAI』が初めてで、ジーンの死に苦しむローガンの姿が映し出されている。ラストではローガンの前にプロフェッサーXとマグニートーが現れて幕を閉じる。このラストでは、後に対ミュータント用ロボットのセンチネルを開発するボリバー・トラスクが率いるトラスク・インダストリーズの名前が登場しており、『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014) の荒廃した未来へと繋がる。
『X-MEN:フューチャー&パスト』では、ローガンはその治癒能力によって精神への負荷に耐えうるという理由で過去に飛び、歴史を改変する役目を負う。結果、1973年のプロフェッサーXとマグニートーと協力し、過去を変えることに。本作で歴史が改変された為、1973年以降、つまり『X-MEN』以降の物語とデッドプールが誕生した『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』の後半はなかったことになる。ただし、改変された未来のプロフェッサーXとウルヴァリンは歴史が改変されたことを知っており、ウルヴァリンは改変前の歴史も含めて全ての歴史を知っている唯一の存在になった。
歴史改変後の世界で描かれた最後
『X-MEN:フューチャー&パスト』のポストクレジットから繋がる『X-MEN:アポカリプス』(2016) では、ウルヴァリンはウェポンXとしてカメオ出演。改変された1973年以降の過去のウルヴァリンは結局ストライカーに捕まり、改造手術を受けている。ウルヴァリンはジーンによって記憶の一部が復活し、森の中へと消えていった。
『X-MEN:アポカリプス』で描かれたのは、改変された過去のウルヴァリンのその後。続くウルヴァリン三部作の最終作になる『LOGAN/ローガン』(2017) では改変された別の未来のウルヴァリンが描かれる。2029年のメキシコ国境でプロフェッサーXと呼ばれたチャールズ・エグゼビアの介護をするローガンは、ローラという名の少女と出会いカナダへの逃避行を始める。
ローガンはローラが自身のクローンであるX-23であったことを知り、X-24という名のウルヴァリンのクローンと戦う。ヒュー・ジャックマンは本作の公開前にウルヴァリンが死ぬところまで演じたいと発言しており、その言葉通りに本作がウルヴァリンにとって一旦最後の作品となった。
なお、本作を手がけたジェームズ・マンゴール監督はローラに焦点を当てたスピンオフの製作に意欲を見せていた。しかし、ディズニーによる20世紀FOX買収後、同監督は同スピンオフは実現しないと思うと語っている。
デッドプールとの再会
2016年公開の『デッドプール』、2019年公開の『X-MEN:ダーク・フェニックス』、2020年公開の『ニュー・ミュータント』にはヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンは登場せず。いずれも『フューチャー&パスト』で歴史改変された1973年以降の未来を描いた作品と考えられている。
しかし、『デッドプール2』のミッドクレジットシーンには、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』の過去のカットを再利用する形で登場。ライアン・レイノルズ演じるウェポンXIと対峙する場面にタイムトラベルしてきたデッドプールが登場し、「過去を修正する」と言って自らウェポンXIを葬り去る。
後に公開されたエクステンデッド版では、デッドプールが「いつかウェイドが仕事に戻れって言うから、そしたらYESって言ってね」と言い、ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンが「あぁ……分かった」と言うシーンを合成する演出が追加されている。
つまり、『デッドプール3』の告知映像におけるライアン・レイノルズによるヒュー・ジャックマンへのカムバックのオファーは、『デッドプール2』の時点で示唆されていたものだったのだ。ウルヴァリンをカムバックさせるのはデッドプールの一言、という伏線を回収し、『デッドプール3』は2024年に公開されることになった。
また、「過去が変われば未来も変わる」という旧「X-MEN」シリーズの設定は、「過去が変わればその時間軸は分岐する」という設定に慣れているMCUファンには分かりづらいところもある。MCU合流にあたってその辺りの矛盾をどのように解消するのかも見どころの一つだ。様々なチャレンジの先で、デッドプールとウルヴァリンが躍動する姿を心待ちにしよう。
映画『デッドプール&ウルヴァリン』は2024年7月24日(水) より日本で世界最速公開。
7月26日(金) には、『デッドプール&ウルヴァリン』公開を記念してデッドプール30周年の歴史を振り返るムック本『デッドプール 30th Anniversary Book』が発売される。
『デッドプール』『デッドプール2』は2枚組のBlu-rayコレクションが発売中。
『デッドプール&ウルヴァリン』にも登場するローラ/X-23の情報まとめはこちらから。
ヒュー・ジャックマンが復帰を決めた経緯と理由について語った内容はこちらの記事で。
『デッドプール&ウルヴァリン』に登場する「X-MEN」過去作の5人のヴィランの紹介はこちらから。
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』にあった『X-MEN:フューチャー&パスト』のオマージュの解説はこちらの記事で。
同作でプロフェッサーX役に復帰したパトリック・スチュワートは、今後の再演について「彼が戻ってくる機会もあるかもしれません」と語っている。詳しくはこちらから。
X-MENが登場した『ザ・マーベルズ』のネタバレ解説はこちらから。