ラスト&ポストクレジット ネタバレ解説『マーベルズ』最後のシーンの意味は? 〇〇に繋がる? 考察&感想 | VG+ (バゴプラ)

ラスト&ポストクレジット ネタバレ解説『マーベルズ』最後のシーンの意味は? 〇〇に繋がる? 考察&感想

© 2023 Marvel

初掲:2023年11月10日

映画『マーベルズ』徹底解説

2019年に公開され、11億ドル超という大ヒットを記録した『キャプテン・マーベル』の続編となる映画『マーベルズ』。2023年11月10日(金) より劇場で公開され、2024年2月7日(水) よりディズニープラスでの配信を開始した。『マーベルズ』では、キャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースを演じるブリー・ラーソンが4年ぶりに主演としてMCUにカムバック。テヨナ・パリス演じるモニカ・ランボー、イマン・ヴェラーニ演じるカマラ・カーンと3人で主演を務める。

『マーベルズ』は2023年公開のMCU映画では『アントマン&ワスプ:クアントマニア』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』に続く作品で、2023年を締めくくる映画になった。『マーベルズ』公開の前日には全米俳優組合 (SAG-AFTRA) が映画製作者協会 (AMPTT) と合意に達して118日間に及んだ歴史的なストライキが終結。ハリウッドが再び動き始めた。『マーベルズ』は奇しくも非常に重要な局面で公開される作品となった。

今回は、映画『マーベルズ』のラストとポストクレジットで描かれた展開について、解説および考察していこう。以下の内容は本編の結末に関する重大なネタバレを含むので、必ずディズニープラスで本作を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『マーベルズ』の結末に関する重大なネタバレを含みます。

『マーベルズ』ラストはどうなった?

もつれる3人とダー・ベンの目的

映画『マーベルズ』は、1時間45分というMCU映画史上最短の作品に仕上げられた。ねじれ (tangle) を起こして入れ替わる3人とヴィランのダー・ベンの壮大な計画がテンポよく交差していくシナリオだった。

ドラマ『ミズ・マーベル』(2022) で魔法のバングルを手にしたカマラ・カーンは、光を物質に変えられるスーパーパワーを手に入れていた。キャロル・ダンヴァースは映画『キャプテン・マーベル』でスペース・ストーンの光を浴びて光をエネルギーに変える力を、そして、ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) ではモニカ・ランボーがワンダの作り出した結界(ヘックス)に突入したことで電磁スペクトルを操る力を得ていた。

今回、ヴィランでクリー帝国の首都ハラ出身のダー・ベンはバングルの片割れを手に入れ、それを使って次々と不安定なジャンプポイントを作り出していた。ダー・ベンがジャンプポイントを作ることで、かつて植民地だった資源がある他の惑星とハラをジャンプポイントで繋ぎ、ハラに資源を流し込んでいたのだ。

“魔法のバングル”と言われていたバングルは正式には“量子バングル”という名前らしく、二つのバングルが起動したことで「アントマン」シリーズで見られた“量子もつれ”のような状態が発生したと思われる。同じ“光”に関係する力を持つキャロル、モニカ、カマラの3人が同時に能力を使うと場所が入れ替わってしまうという事態に陥ったのだ。

キャプテン・マーベルの真実

予期せぬチームアップに3人は戸惑いながらも、チーム技を練習してダー・ベンを追うことになる。水の資源が豊富な惑星アラドナでダー・ベンを迎え撃った3人だったが、連携は上手くいかず。ヤン王子を演じたパク・ソジュンが見事な演技を見せてハリウッドデビューを飾ったが、結局3人はアラドナから退避することになる。

アラドナではキャロルが流石の強さを見せ、カマラは「私のキャプテン! (my captain!)」と歓喜する。このシーンでは隣のモニカは微妙な表情を浮かべている。なぜならモニカも同じく位はキャプテンなのだが、カマラはキャロルのことしか“キャプテン”として認識していないからだ。

しかし、最終的にはキャロルが戦闘を強行してピンチに陥り、カマラがジャンプポイントを出現させて脱出した。キャロル・ダンヴァースは無敵のキャプテン・マーベルとして独りで戦い続けてきたゆえに、仲間と共に戦うための心の準備ができていなかったのだろう。不時着した先で3人はようやく本心で言葉を交わすことになる。

カマラはターナックスでキャロルに「救える命を救って」と言われたことを念頭に、「あなたがターナックスでやったことをした」と言うが、キャロルは「私のようにならないで」と反論する。キャロルは『キャプテン・マーベル』の後に、クリーを1000年間支配してきたAIのスプリーム・インテリジェンスを破壊した結果、ハラで内戦が起きて資源が枯渇してしまったこと、それがダー・ベンの凶行の原因であることを認める。

序盤ではターナックスでの介入も裏目に出たと指摘された(実際にはダー・ベンの罠だった)し、“無敵のヒーロー”だと思われていたキャプテン・マーベルは、自分一人で全てを解決できるわけではないことを理解していた。そして、『キャプテン・マーベル』のラストで「すぐに戻る」と言っていたのに帰ってこなかったキャロルに不信感を抱いていたモニカは、キャロルがモニカにとっての“憧れのヒーロー”でなければ地球に帰ってこれないと自分を責めていたことに気づくのだった。

これはドラマ『シークレット・インベージョン』(2023) でも垣間見えていたポイントで、スクラルの難民問題を解決できなかったキャプテン・マーベルを非難する声も聞かれた。これまでは、キャプテン・マーベルの不在は“忙しい”という説が主流だった(それは映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』でも示唆されていた)。今回、キャロルが長年地球に不在だった背景には、非常に人間的な“自責の念”という要素が絡んでいたことが明かされている。

しかし、モニカ・ランボーが求めていたのは、“無敵のキャプテン・マーベル”ではなく、一人の人間としての“キャロルおばさん”だった。モニカは、ただありのままのキャロルが帰ってきてくれるのを待っていたのだ。一方のカマラはキャプテン・マーベルへの憧れは捨てていない。キャロルにとっては、キャプテン・マーベルもキャロル・ダンヴァースもありのままの自分だ。二人の思いを受け入れて、キャロルはダー・ベンとの最終決戦に挑むことになる。

ダー・ベンとの戦い

ダー・ベンの最後のターゲットは、地球の近くにある太陽だった。ダー・ベンは一躍、地球滅亡レベルの危機をもたらす大ヴィランに。ニック・フューリーがグースの子ども達と共にS.A.B.E.R.の人々を脱出させる一方、キャロル・モニカ・カマラはダー・ベンと対峙。ここでの戦いでは3人は見事な連携プレーを見せる。

3人のチームプレーを完成させるためには練習だけでなく、お互いがお互いの立場を理解し、意思疎通ができるようになることが必要だったのだ。また、この戦いのポイントは最初にダー・ベンからコスミ・ロッドを奪って自分たちの武器として使用することで、①能力を使うと入れ替わる、②ダー・ベンのバングルに光の力を吸い取られる、という二つの問題をクリアしている。

3人はダー・ベンを倒すと、モニカはキャロルにパワーを使ってハラの太陽をジャンプスタートさせることができると助言。キャロルは自分では思いつかなった力の使い方に驚いている。序盤からカマラがモニカの“コードネーム”として「プロフェッサー・マーベル(マーベル教授)」「ドクター・マーベル(マーベル博士)」を挙げていたのは、物理学に強いモニカの頭脳を印象付けるためだったのだろう。

ダー・ベンはこのオファーを受け入れてバングルを渡す……かと思いきや、カマラのバングルを奪って宇宙に飛び出すと、キャプテン・マーベルのエネルギーを吸収し、二つのバングルを使って時空に穴を空ける。

量子バングルには時空を超える力があることは、ドラマ『ミズ・マーベル』でも描かれた通りだ。カマラの曾祖母のアイシャは「別の次元 (Dinension)」の“ヌール・ディメンション”から来たとされており、アイシャはバングルを二つ揃えて元の世界に帰ろうとしていた。また、『マーベルズ』の劇中でも触れられた通り、カマラはバングル一つで時空を超えて過去の分離独立時代のインド・パキスタンに飛んでいる。

今回、ダー・ベンは二つのバングルを揃えたことで別の世界につながる時空の穴を作り出してしまった。ダー・ベンはバングルの力で焼き尽くされると共に、キャプテン・マーベルが突入してバングルを取り戻すことは出来たが、時空の穴は大きくなっていくのだった。

モニカがもたらしたもの

この状況に立ち上がったのはモニカ・ランボーだった。モニカはこの別の次元が自分たちの世界に「流れ込んでいる (bleeding )」と指摘。これは映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) で紹介された「インカージョン(=次元同士が干渉し合って片方または両方が消滅すること)」が発生する危険性を感じさせる展開だ。

そこで電磁スペクトルを操れるモニカがバングルを使い、キャロルのエネルギーを受けて別世界の内側からそのエネルギーを放出することで穴を閉じるという。バングルが揃った影響か3人の入れ替わり現象は終了しており、邪魔するものはない。あとは世界の危機を救えるかどうかだ。

キャロルとモニカは作戦通りにことを運ぶが、こともあろうにモニカは最後まで内側に残って穴を閉じ、自分を向こう側の世界に閉じ込めてしまう。「(内側に)残るような気がしてた」と言うモニカは、『キャプテン・マーベル』でキャロルが空に去って行った時も、『ワンダヴィジョン』で指パッチンから復帰した時に母マリア・ランボーが死んでしまっていた時も、確かに“残る”側だった。キャロルは必死に手を伸ばすが、モニカは別世界に消えていったのだった。

地球に帰還したカマラは家族と再会を果たすが、ニック・フューリーにモニカを失ったこと、そしてキャロルがダー・ベンとの約束を果たしにハラへ行ったことを告げる。キャロルはハラの太陽を復活させ、戦いによらずにハラの人々に光を与えた。ヒーローとしてのキャロルの新しい生き方がモニカによってもたらされた瞬間だ。

『アイアンマン』のオマージュ

序盤で家をボロボロにされたカーン家は、ルイジアナ州に移り、キャロルの取り計らいで家主を失ったランボー家に引っ越していた。かつて幼いモニカと乗った小型飛行機にカマラと共に乗ったキャロルは、モニカが戻ってくることを信じていた。その言葉を聞き、カマラはある作戦を思いつく。

カマラが向かったのはニューヨーク。まず登場したのはピザドッグこと犬のラッキーだ。帰宅した人物はラッキーの好物のピザを買ってきたと話している。飼い主はもちろんケイト・ビショップ。ドラマ『ホークアイ』(2021) でホークアイことクリント・バートンに弟子入りし、ホークアイの名を継いだ人物だ。

カマラはまるでニック・フューリーのように暗闇の中でケイトを待っており、「自分だけがスーパーヒーローの子どもだとでも?」と語りかける。これはMCU映画第1作目の『アイアンマン』(2008) のポストクレジットシーンのオマージュだ。ニック・フューリーが帰宅したトニー・スタークに「自分だけがスーパーヒーローだとでも?」と問いかけたシーンは有名だが、この時フューリーがかつて出会ったキャロル・ダンヴァースの存在を念頭に置いていたと考えると感慨深い。

ケイトは「子ども (kids)」という言葉に引っかかって「23歳」と答える。『ホークアイ』の時点でケイトは22歳だったので、『マーベルズ』は『ホークアイ』(+『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』)の1年後が舞台ということになる。ちなみにカマラは『ミズ・マーベル』時点で16歳なので、ケイトとは7歳も離れている。

「君はより大きなユニバースの一員となった」というフューリーのセリフもコピーしたカマラだったが、ここからはカマラらしいライトな勧誘に。今のところはカマラとケイトだけだが、「アントマンの娘」にも関心があることを明かしている。映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』で活躍を見せたキャシー・ラングのことだ。ちなみにキャシーは『クアントマニア』の時点で18歳である。

ヤングアベンジャーズ結成?

カマラが求めていたのは、同世代のヒーローによるチームアップだったようだ。おそらくこれはヤング・アベンジャーズ結成の流れだろう。ヤング・アベンジャーズは原作コミックで若手ヒーローを中心に結成されたチームであり、MCUでは『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) に登場したイーライ・ブラッドレイや、ワンダの双子の子どもであるビリーとトミー、『ドクター・ストレンジ:マルチバース・オブ・マッドネス』に登場したアメリカ・チャベス、ドラマ『ロキ』(2021-) のキッドロキらが加わる。

ケイトとキャシーも原作のメンバーである他、最近のMCUではブラックパンサーやハルク周りの若年キャラも新登場している。ドラマ『ホークアイ』では、ケイトのおばが原作コミックでウエストコースト・アベンジャーズのスポンサーであるモイラ・ブランドンと同じ名前であったため、ウエストコースト・アベンジャーズ結成の線も考えられていた。

しかし、『マーベルズ』ではケイトはまだニューヨークにいる様子だったので、西海岸で結成されるウエストコースト・アベンジャーズにはならないように思われる。そもそも原作コミックで西海岸でウエストコーストアベンジャーズが結成された理由は、東海岸にヒーローが集中しているからだったが、MCUではニューヨークのヒーローたちが次々引退しているため、そうでもなくなっている。

ちなみにカーン家が引っ越したルイジアナ州と、ケイトのおばがいるフロリダは同じアメリカ南部に位置している。西海岸は西海岸でアントマンやシャン・チー、シー・ハルクらがいるので、手薄な南部を開拓しようという狙いもあるのかもしれない。

ミッドクレジットシーンの意味は?

ビースト登場

カマラが新世代ヒーローの扉を開こうとしている一方、衝撃のミッドクレジットシーンが待っていた。モニカは生きており、病室で眼を覚ます。そして、そこにいたのはモニカの死んだ母マリア・ランボーにそっくりな人物だった。サノスの指パッチン(デシメーション)によって消えていた間に癌で亡くなったマリアとの再会を喜ぶモニカだったが、ベッドの隣にいたのは青い姿をした医者、ビーストだった。

ビーストは「X-MEN」シリーズに登場したキャラクターで、本名はハンク・マッコイという。演じているのは旧20世紀フォックス版の『X-MEN:ファイナル ディシジョン』(2006) で同役を演じたケルシー・グラマーだ。そしてモニカが目覚めたこの病室も旧「X-MEN」シリーズに登場したX-MENの基地の内部にそっくりである。

ただし、旧「X-MEN」シリーズでは医者の役割はジーン・グレイが担っている。原作コミックでのX-MENの医者の役割はビーストが担当していたが、映画化にあたってはメイクの問題がありジーン・グレイにその立場を奪われていた。『マーベルズ』ではついにビーストが医者として登場しており、過去シリーズで実現できなかった要素をここで実現していると見られる。

ついにMCU「X-MEN」が本格始動

ビーストは、モニカが異なる現実からやってきたと説明しつつ、「混乱が進歩を生む」と冷静に受け止めている。そして、チャールズと情報を共有すると発言。チャールズとはもちろん、プロフェッサー・チャールズ・エグゼビア、つまりプロフェッサーXのことだ。

プロフェッサーXは映画『ドクター・ストレンジ:マルチバース・オブ・マッドネス』に登場。アース838でイルミナティを率いていたがワンダに殺されてしまった。その時は旧「X-MEN」シリーズのパトリック・スチュワートが演じていたが、『マーベルズ』のミッドクレジットシーンに登場したユニバースのプロフェッサーXは、ジェームズ・マカヴォイ演じるプロフェッサーXという可能性もあるだろう。

なお、クレジットによるとこのシーンでは映画『X-MEN2』(2000) と映画『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014) のメインテーマ曲が使用されている。少なくとも、お馴染みの「X-MEN」シリーズのテーマの一節がクレジットに戻る前に流れていることは確認できる。この一連のシーンによって、MCUの「X-MEN」が本格的に始動することが示されている。

これまでは『ワンダヴィジョン』にかつてクイックシルバーを演じたエヴァン・ピーターズ演じる“ニセトロ”が登場したり、『マルチバース・オブ・マッドネス』でプロフェッサーXの変異体があっさり死んでしまったりと、思わせぶりな演出が多かった。しかし、『ミズ・マーベル』では「ミューテーション」という言葉を使ってミュータントの存在を示唆し、『マーベルズ』ではX-MENたちを本格的に登場させた。次に映るバイナリーの背後には「X」のマークの扉がしっかり映ってもいる。

バイナリーとは

そして、モニカが母マリアだと思った人物は「バイナリー」を名乗った。バイナリーはマリアの変異体だと考えられる。『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』でも、マリアの変異体はアース838でキャプテン・マーベルになっていた。おそらくマリアはスーパーヒーローになりやすい人物なのだろう。

その証拠に、マリアはキャロルに対してマー・ベル博士の元に行くまでのレースで自分の方が早ければ自分が力を手に入れていたはずと話していた。キャロルが先に着いたのはショートカットをしたからだが、マリアがスーパーヒーローになるかどうかは紙一重だったことが明かされているのだ。

そして、このX-MENが存在する世界線では、マリアはバイナリーという名のX-MENになっていた。バイナリーとは原作コミックに登場するキャプテン・マーベル=キャロル・ダンヴァースの別の姿で、人体実験を受けてホワイトホールの力を手に入れている。バイナリーを名乗っていた時はプロフェッサーXへの恩返しもあり一時的にX-MENに加わったこともある。

また、近年の設定ではキャロル・ダンヴァースが自分のエネルギーを利用して作り出した自身の複製というバージョンも存在する。『マーベルズ』に登場したバイナリーは、マリアがキャプテン・マーベルになり、バイナリーになり、さらにX-MENに在籍していたバージョンの変異体だと考えられる。MCU版バイナリーのコスチュームは原作コミックに近いカラーリングになっている。

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最後にバイナリーはモニカ・ランボーに「あなたは誰?」と問いかけ、モニカのことを知らないということが明かされる。母と再会できたと思っていたモニカがショックを受けるシーンで『マーベルズ』のミッドクレジットシーンは幕を閉じる。

ポストクレジットシーンはあった?

『マーベルズ』のポストクレジットシーンは音のみ。グースの子ども達と思われる猫(フラーケン)が何かを吐き出す音だけが流される。これはおそらく、劇中でグースの子ども達がS.A.B.E.R.基地の職員達を飲み込む形で省スペースでの避難を可能にした流れを汲んでおり、地球に避難した後に職員達がしっかり吐き出されたことを示していると思われる。

生まれたての子猫(フラーケン)が器用に職員を吐き出せるのか心配になった人もいるかもしれないので、きちんと吐き出したということを強調したというところだろうか。ひとまずは安心である。フラーケンもすっかり人類の味方だ。

『マーベルズ』ネタバレ感想&考察

提示された二つの未来

MCUに久しぶりにワクワクするクリフハンガーが帰ってきたように思う。一つはヤングアベンジャーズという地球上の若き新チームの結成に関する動き、もう一つはX-MENという郷愁を刺激する別世界でのヒーローチーム復活の動きだ。

ヤングアベンジャーズの結成は、特にドラマシリーズも含めてMCUを追い続けている人にとってはご褒美のようなもの。あの映画のラストに出てきたあの子も、あのドラマで少し出てきたあの子もヤングアベンジャーズのメンバーになるのだとしたら、少し親心のような感情も芽生えるというものだ。ヤングアベンジャーズのメンバーに関する考察は追って別記事を公開したい。

MCU版X-MENの本格始動も同様だ。2000年代にソニーの「スパイダーマン」、ワーナーの「ダークナイト」、20世紀フォックスの「X-MEN」でアメコミヒーロー映画にどっぷり浸かった立場からすれば、“原点回帰”に近い展開には唸らされる。

“絡み合う”ストーリーとそれぞれの立場

もちろん、『マーベルズ』単体でも魅力的な作品に仕上がっており、1時間45分という長さで複数のストーリーラインをまとめて見せたニア・ダコスタ監督の手腕は見事だと言える。それぞれの道を歩んできた3人の女性ヒーローの能力がもつれ合い、他人の戦いに臨むことを余儀なくされるという序盤の展開は、自分の戦いを戦っている中で、望む望まざるに拘らず他の女性達の戦いにも加わらざるを得ないという現実の女性達が置かれている立場を表象していると言える。

一方で、若くて比較的力が弱いカマラを守るために、年上のキャロルとモニカが微妙な距離感を横に置いて全力を尽くす場面などは、“連帯”の力強い一面が強調されていたように思える。力があるが故に一人で背負い込んで戦っていたキャロルが、モニカから助言を受けて考え方を変える展開も、『マーベルズ』だから描けた展開だと言える。ドラマシリーズで肉付けされたバックグラウンドが映画のストーリーを強化した好例である。

更に、元米軍人でコスチュームに米空軍のカラーリングを選んだキャロル・ダンバースによる異星への“介入”が別の被害を生む展開は、白人アメリカ(ホワイト・アメリカ)を象徴していたと言える。これを改めさせるのが非白人のヒーロー達であり、力では解決しない問題にキャロルを向き合わせる展開が印象的だった。

前作『キャプテン・マーベル』では、“テロリスト”とされていた人々(スクラル)は故郷を奪われた難民だった。現実においてもパレスチナで虐殺と侵略を続けるイスラエルに米政府が弱腰な態度を見せている中で、若い人々を中心にイスラエルに停戦を訴えるデモが全米に広がりを見せている。このタイミングで公開された『マーベルズ』が、人々に更なる勇気を与えることを願いたい。

そして、楽しみにしていたパク・ソジュンの登場シーンも凝った作りになっており、その起用方法は抜群だった。非常に印象深いヤン王子を演じており、アジアのスターが踏み出した新たな一歩に拍手を送りたい。

なお、ヤン王子の原作での設定はこちらの記事に詳しい。

『デッドプール3』にどう繋がる?

2023年のMCU映画は『マーベルズ』で終わり。そして、2024年のMCU映画は『デッドプール3』のみとなっている。2024年7月26日(金) 米公開への延期が発表されたばかりの映画『デッドプール3』は、ナンバリングタイトルなのに本作からデッドプールがMCUに参戦するという異色の作品になる。

マーベル・スタジオの親会社であるディズニーは、「X-MEN」キャラクターの映画化権を保持していた旧20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)の親会社である21世紀フォックスを2019年に買収。X-MENキャラクターのMCU参戦が可能になった。そして旧20世紀フォックスで制作されていた「デッドプール」の最新作がMCU作品として公開されることになったのだ。

そして、『デッドプール3』には、ヒュー・ジャックマンが映画「X-MEN」シリーズの主人公であるウルヴァリン役で復帰することが発表されている。旧シリーズではウルヴァリンことローガンは、映画『LOGAN/ローガン』(2017) でその死まで描かれたが、同作とも矛盾のない内容が描かれるとされている。

今回、『マーベルズ』では映画『X-MEN:フューチャー&パスト』の音楽がクレジットされていたため、『フューチャー&パスト』ラストの平和な世界線のローガンが描かれる可能性もある。そもそもデッドプールがウルヴァリンと同じ世界線のデッドプールなのかどうかも気になるところだが、『マーベルズ』のミッドクレジットシーンによって、別の世界で「X-MEN」のストーリーラインを展開するという方針は見えたように思える。

思えば『ミズ・マーベル』でカマラ・カーンもミュータントとされていたが、カマラの曾祖母のアイシャは別の次元から来た人物だった。アイシャは二つのバングルを使って元の世界に戻ろうとし、今回ダー・ベンは二つのバングルを使って別の世界への扉を開いた。アイシャの故郷はヌール・ディメンション(光の次元)とされていたが、モニカが閉じ込められたのはヌール・ディメンションなのだろうか。

これらの答え合わせは『デッドプール3』でなされることになるのかどうか。ここから始まるヤングアベンジャーズとX-MENのストーリーライン。やっぱりMCUからはまだまだ目が離せない。

映画『マーベルズ』は2023年2月7日(水)よりディズニープラスで配信開始。

『マーベルズ』配信ページ

『マーベルズ』オリジナル・サウンドトラックは配信中。

『シークレット・インベージョン』から『マーベルズ』に繋がった部分についての解説はこちらの記事で。

『マーベルズ』ラストの展開と『ミズ・マーベル』シーズン2についてカマラ役のイマン・ヴェラーニが語った内容はこちらの記事で。

ヤング・アベンジャーズのメンバー予想&考察はこちらの記事で。

 

『デッドプール3』のMCU入りについて主演のライアン・レイノルズが語った内容はこちらから。

ヒュー・ジャックマンが語ったウルヴァリン役復帰の背景はこちらから。

『デッドプール3』までのウルヴァリン登場作品のおさらいはこちらの記事で。

ドラマ『エコー』のネタバレ解説はこちらの記事で。

ドラマ『ホークアイ』最終話のネタバレ解説はこちらから。

『ホークアイ』最終話で残された13の謎はこちらから。

映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』でスコットの娘キャシー・ラングが重要だった理由はこちらから。

パク・ソジュンが演じたヤン王子の原作での設定はこちらから。

 

ドラマ『ロキ』シーズン2最終話第6話のネタバレ解説はこちらから。

ドラマ『シークレット・インベージョン』最終話のネタバレ解説はこちらの記事で。

 

映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』のネタバレ解説はこちらから。

映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』ラストとポストクレジットの解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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