ネタバレ考察『シャン・チー』妹シャーリンのラストから考察するMCUフェーズ4の今後。女性キャラの描き方に注目 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『シャン・チー』妹シャーリンのラストから考察するMCUフェーズ4の今後。女性キャラの描き方に注目

© 2021 Marvel

『シャン・チー』のシャーリンに注目

2021年9月3日(金) から公開された映画『シャン・チー テン・リングスの伝説』は、MCU映画第25作目にして、初めてアジア系のキャラクターが主人公に据えられた作品。日系アメリカ人の母を持つデスティン・ダニエル・クレットン監督が指揮をとり、中国系カナダ人のシム・リウが主演を務めた。

『シャン・チー』では、悪の組織テン・リングスを率いる大物ヴィランのウェンウーを父に持つ主人公シャン・チーが自分の過去やルーツと向き合うストーリーが描かれる。一方で、圧倒的な存在感を放っていたのは、シャン・チーの妹で中国の俳優メンガー・チャン(張夢児)が演じたシャーリンというキャラクターだ。今回は、『シャン・チー』でシャーリンが迎えたラストを踏まえて、今後のMCUフェーズ4がどのような展開を見せるのか、考察してみよう。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『シャン・チー テン・リングスの伝説』の内容に関するネタバレを含みます。

シャーリンが迎えたラスト

幼少期に母の死や父からの厳しい訓練を経験したシャン・チーは、いわば父ウェンウーの“被害者”とも言えるポジションにある。一方で、自らの目的を達成するためにシャン・チーは妹シャーリンの存在を犠牲にした。自分だけが訓練を与えられることに疑問を持たなかったし、シャーリンに戻ってくると約束した上で、彼女をウェンウーのもとに置き去りにしたのだ。それはシャン・チーが抱えた「光と闇」の内の「闇」の部分である。そうした罪の贖罪として、最後の戦いではシャン・チーは世界を犠牲にしてでもシャーリンの手を離そうとしなかった。

一方のシャーリンは、シャン・チーが去った後もたくましく生きていた。父ウェンウーは亡き妻リーの姿を思い出すとシャーリンを避けるようになっており、兄が戻ってこないと察したシャーリンは16歳でテン・リングスを去る。シャーリンからすれば、父からも兄からも捨てられたという思いだったかもしれない。そこからシャーリンは自分の手で地下闘技場を併設するナイトクラブを築きあげ、実業家でありながらファイターとしても活躍するようになった。母から受け取ったペンダントはつけたままだったが、もはや父や兄のことは頭になく、自分の道を生きていた。

思い返せばシャーリンは、家父長制が敷かれ、女性には訓練が与えられない、女性が戦闘員にいないテン・リングスの中で一人独学で訓練を積んでいた。そうした機会が与えられない環境、性別によって排除された環境の中で、シャーリンは服従することなく自分の道を歩んできたのだ。

そして、シャーリンというキャラクターの真骨頂は、エンドロール後のポストクレジットシーンで炸裂する。兄との和解、父の死を経て、シャーリンは自分を苦しめてきたテン・リングスを大人しく解体するのではなく、兄をうまく出し抜いてテン・リングスを“乗っ取る”という道を選ぶ。

シャーリンが歩んだ道

その玉座は棚ぼたで得たものではない。戦場で見せたリーダーシップと正しい判断によって、テン・リングスで戦闘隊長的なポジションを担っていたレーザー・フィストがシャーリンに付き従うようになっている。これまでのシャーリンの事業を右腕として支えてきたジャン・ジャンも体制の大きな変化を受け入れている。巨大組織を乗っ取ろうと思っても、ついてくる者がいなければ成り立たない。すべてはシャーリンが歩んできた道の上に成り立っているエンディングなのだ。

それだけではない。こちらの記事で詳しく解説しているが、シャーリンはテン・リングスで排除されていた過去へのアンサーとして、母の故郷であるター・ローの村の掟をテン・リングスに取り入れる。これまで男社会だったテン・リングスで女性達が平等に訓練を受けられる仕組みを作り出したのだ。

映画『シャン・チー』でシャーリンが迎えたラストは、主人公の男性に赦しを与えるだけの都合の良い女性キャラクターではなく、最後には自らが力を増幅して主体的な存在として君臨する展開だった。そしてこの展開は、MCUフェーズ4においては初めてのことではない。

ここから先はMCUドラマシリーズのネタバレ及び映画『ブラック・ウィドウ』のネタバレが含まれるので、『ワンダヴィジョン』(2021) から始まったMCUフェーズ4作品を未見の方は注意して頂きたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ワンダヴィジョン』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』『ロキ』、映画『ブラック・ウィドウ』の内容に関するネタバレを含みます。

MCUフェーズ4の“流れ”

シャロンの存在

まず、『シャン・チー』のシャーリンとほとんど同じ構図で作品のラストを締め括ったのはドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』におけるシャロン・カーターだ。シーズン1最終話のポストクレジットシーンに登場したシャロンは、裏社会を牛耳るパワー・ブローカーであることが明らかになる。それも、新キャプテン・アメリカになったサムがシャロンに恩赦を取り付け、まんまとアメリカ政府内部に入り込むことに成功する。

この一連の流れは、単にシャロンを”悪女”として描いていたわけではない。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、スティーブ・ロジャースやバッキー、サムが赦されていく中で、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) 後の混乱で“割りを食った存在”としてシャロンは描かれており、シャロンは自らの手でその復讐を成し遂げようとしているのだ。

シャロンが『エンドゲーム』後に“赦されなかった理由”についての考察はこちらの記事に詳しい。

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のポストクレジットシーンはこちらで解説している。

エレーナのその後

そして、『シャン・チー』の前にMCUフェーズ4の映画第1弾として公開された『ブラック・ウィドウ』(2021) でも似た展開が描かれる。ナターシャ・ロマノフの妹分であるエレーナ・ベロワは、『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンに登場。しかし、エレーナもまた大人しく新たなブラック・ウィドウとしてアベンジャーズに加入するわけではない。

ポストクレジットシーンでは、ヴァルことヴァレンティーナ・アレグラ・デ・フォンテーヌがエージェントとして登場し、エレーナにホークアイコとクリント・バートンの暗殺を指示する。エレーナもまた自らの道を行き、アベンジャーズに立ちはだかる存在としてMCUに再登場することになる。やはり都合良く“ヒーロー”の道を歩むと思ったら大間違いだ。『シャン・チー』のエンディングと同じく、アベンジャーズにとっての新たな脅威を予感させて『ブラック・ウィドウ』は幕を閉じる。

『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンについての詳細はこちらの記事で解説している。

なお、『シャン・チー』には『ブラック・ウィドウ』からウィドウズの一人がカメオ出演しており、その意義についてはこちらの記事で解説している。

MCUフェーズ4の女性キャラクター達

それでも、シャーリン、シャロン、エレーナの物語を知っている私たちは、彼女らを単なるヴィランとして見ることはできない。優しい心も持ち合わせるが、男性中心の社会によって苦汁を飲まされ、サバイブした末に我が道を行くその姿は、ヒーローやヴィランといった安直な言葉で表現することはできない。

つまり、MCUフェーズ4では、女性キャラクター達が善人でも悪人でもない、複雑なキャラクターとして描かれるということだ。それは当然そうあるべきことなのだが、これまでのMCUにおける女性キャラクターの描かれ方は、お色気やケアの役割を担わされる安直な描かれ方をされていた歴史がある。この辺りの解説は『ブラック・ウィドウ』のレビュー記事にも詳しい。

どうなるフェーズ4

これでMCUフェーズ4では、シャーリンとシャロンが裏社会の権力者として君臨することになった。シャロンの組織とシャーリンの新生テン・リングスが共闘あるいは対立する展開も描かれるかもしれない。シャロンが『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で“クライアント”として連絡をとっていた相手の中には、既に旧テン・リングスの存在があった可能性もある。『アイアンマン』(2008) ではテン・リングスのアフガニスタン支部がスターク・インダストリーから武器を受け取っていたが、アメリカ政府と内通するシャロンと繋がりを持てれば、シャーリンの敏腕も手伝って更なる拡大を遂げるだろう。

また、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でジョン・ウォーカーをリクルートしたヴァルがエレーナと共闘関係にある点にも注目したい。ヴァルはアメリカ政府内で働いていると見られ、シャロンと繋がりを持つことは想像に難くない。ヴァルは「ダークなニック・フューリー」として独自のチームを率いる可能性が高く、その編成とテン・リングスとの関係にも注目したい。

また、ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) におけるワンダや、ドラマ『ロキ』(2021) におけるシルヴィも同様に哀しい過去と複雑な背景を持ってMCUで存在感を発揮している。一方で、キャプテン・マーベルやアニメシリーズ『ホワット・イフ…?』(2021-) で誕生したキャプテン・カーターなどの正統派ヒーローや、ヴィランとしてのアガサやラヴォーナの存在も重要になるだろう。『シャン・チー』のラストでシャン・チーと共に“サーカス”に招待されたケイティの活躍にも期待したい。

次々と魅力的なキャラクターが登場するMCUフェーズ4。『シャン・チー』の最後にテン・リングスの玉座に君臨したシャーリンの次の動きに注目しよう。

映画『シャン・チー テン・リングスの伝説』は2021年9月3日(金)より全国で公開中。

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』公式サイト

『シャン・チー テン・リングスの伝説』のオリジナルアルバム『シャン・チー/テン・リングスの伝説:ザ・アルバム』が発売中。

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劇伴を収録した『シャン・チー/テン・リングスの伝説 オリジナル・スコア』 も発売中。

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演じたメンガー・チャンが語るシャーリンの撮影秘話はこちらから。

MCUにおけるテン・リングスの歴史はこちらにまとめている。

『シャン・チー』の続編についてはこちらの記事で。

『シャン・チー』に登場したジブリオマージュについてはこちらの記事で。

ポストクレジットシーンの解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。 お問い合わせはコチラから
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