映画『シャン・チー』ヴィラン組織 “テン・リングス” とは何か。MCU過去作の歴史まとめ 原作コミックでは? | VG+ (バゴプラ)

映画『シャン・チー』ヴィラン組織 “テン・リングス” とは何か。MCU過去作の歴史まとめ 原作コミックでは?

© 2021 Marvel

『シャン・チー』公開

2021年9月3日(金)より公開のMCU第25作目となる映画『シャン・チー テン・リングスの伝説』は、MCUで初めてアジア系のヒーロー主人公に据えた作品。『黒い司法 0%からの奇跡』(2019) のデスティン・ダニエル・クレットン監督が指揮をとり、これまでほとんど無名だったと言っても過言ではないシム・リウが主演を務める。

デスティン・ダニエル・クレットン監督は日系アメリカ人で、主演のシム・リウは中国系カナダ人。MCUで初めて黒人監督・黒人主人公を起用した『ブラックパンサー』(2018)、初の女性単独主人公が実現した『キャプテン・マーベル』(2019)、初の女性単独監督となった『ブラック・ウィドウ』(2021) に続き、アジア系キャストと製作陣によって新たな扉が開かれる。

テン・リングスとは何か

映画『シャン・チー テン・リングスの伝説』の物語は、主人公のシャン・チーが跡継ぎとして悪の組織に引き込もうとする大物ヴィランの父マンダリンに立ち向かうというもの。タイトルに入っている「テン・リングス」とは、マンダリンが率いる悪の組織の名前だ。

テン・リングスは既に過去のMCU作品で登場している名前だが、実はコミック版ではなく、映画で初登場を果たした組織だ。MCU作品をベースにしたコミックには登場しているが、原作コミックシリーズには登場していない(「宇宙からきた10個の指輪」というアイテムとしては登場している)。映画作品では、元は中東のテロ組織のように描写されていたが、『シャン・チー』ではアジア、それも中国に拠点を置く世界的な組織であることが明らかになっている。

今回は『シャン・チー テン・リングスの伝説』で改めてスポットライトを浴びるテン・リングスについて、映画『シャン・チー』のネタバレなしで振り返っていこう。

『アイアンマン』(2008)

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MCUファンの間では広く知られている通り、テン・リングスの始まりはMCU第1作目の『アイアンマン』(2008) だ。つまり、MCUはテン・リングスと共に始まったということである。映画『アイアンマン』の冒頭では、アフガニスタンに駐留するアメリカ軍へのクラスターミサイルの営業に出かけていたトニー・スタークをテン・リングスのアフガニスタン支部が襲撃する。

重傷を負い捕虜になったトニーは、同じく捕虜になっていたホー・インセン博士と共にアーク・リアクターを作り出し、続いてアイアンマンの前身となる“マーク1”を製作。マーク1に乗り込んでテン・リングスの基地を脱出したのだった。

『アイアンマン』では、テン・リングスはスターク・インダストリーと内通しており、スターク社製の兵器を手に入れていた。また、テン・リングスは「無国籍軍」とされることが多かったが、アフガニスタンのメンバーはアラビア語やロシア語、モンゴル語など、旧ソ連圏〜アジア周辺の言語を使って会話している。『シャン・チー』でその拠点が中国にあったという設定が加えられるのも無理な流れではない。

映画『アイアンマン』では、その後もスターク社製の兵器を使ってテロ活動を続けていたテン・リングスのアフガニスタン支部を、トニー・スタークがアイアンマン“マーク3”で次々と撃破。この時、テン・リングスは戦車や対空兵器まで手に入れていた。復讐を狙うテン・リングスはスターク社の内通者であったオバディアにマーク1の残骸を提供するが、オバディアに裏切られてその場にいた全てのメンバーが殺されている。オバディアはマーク1の残骸からアイアンモンガーを完成させるがトニーに敗北。インフィニティ・サーガにおけるアイアンマンの歴史がそこから始まる。

なお、アフガニスタン支部のリーダーであるラザ・ハミドゥミ・アル=ワザールはチンギス・ハンを尊敬しており、マーク1の残骸を指して「1ダースあればアジアを支配できる」と発言するなど、アジアに対するこだわりを見せている。

『アイアンマン2』(2010)

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次にテン・リングスが登場したのは映画『アイアンマン2』(2010)。トニー・スタークに復讐を誓うロシア人物理学者のイワン・ヴァンコにある人物が偽造パスポートとモナコグランプリのチケットを渡す。この後、イワン・ヴァンコはモナコサーキットの会場でトニーを襲撃するのだが、この偽造パスポートとチケットを渡したアジア系の人物がテン・リングスの構成員という設定になっている。

なお、この時の偽造パスポートに記載されている名前は「ボリス・ツルゲノフ」となっているが、これは原作コミックで「ロシア版アイアンマン」として知られるクリムゾン・ダイナモに乗り込む人物の名前である。「クリムゾン・ダイナモ」の名前は「ロシア版キャプテン・アメリカ」として知られるレッド・ガーディアンが登場した映画『ブラック・ウィドウ』でもその名前が登場している。

『アイアンマン2』でテン・リングスが登場したのはこのシーンのみ。仕事としては偽装パスポートを作ってチケットを取っただけなので、それほど極悪なことをやっている印象はない。それでも、アイアンマンを死に至らせるためなら小さな仕事もやるほどに執念があるとも読み取れる。

ここまで、ヨーロッパとアメリカで暗躍するヒドラに対し、テン・リングスはロシアとアジアを中心に暗躍している。テン・リングスは、MCUでアジア系初の主人公になるシャン・チーにとって、ふさわしい敵だと言えるだろう。

なお、コミック『アイアンマン2:エージェント・オブ・シールド』(2010) では、トニー・スタークが世界中でテン・リングスの活動を阻止する姿が描かれる。これを機にテン・リングスはイワン・ヴァンコを支援することになる。

『アイアンマン3』(2013)

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『アイアンマン3』(2013) ではテロ活動を活発化させ、人質殺害の映像を流して大統領に脅しをかけるなど、アイアンマンにとっての脅威となるが、これらの活動は全て偽装されたものだったことが明らかになる。トニーを恨む経営者で科学者のアルドリッチ・キリアンが、悪名高いテン・リングスの名前と紋章を利用していたのだった。

テン・リングスのリーダーで、コミック版にも登場する大物ヴィランであるマンダリンが初登場したかに見えたが、これは俳優のトレヴァー・スラッタリーが演じる偽物だったことが明らかになる。マンダリンを演じていたスラッタリーはキリアンから薬物と優雅な生活を約束されたただの小物。会話も支離滅裂で、トニーに襲撃された際には「フォーチュンクッキーは中国のものじゃない。日本のレシピでアメリカで生まれた」と、中国に対して否定的な発言を残している。

『アイアンマン3』の前日譚にあたる『アイアンマン3:プレリュード』(2013) では、ウォーマシンことローディ・ローズが世界各国でテン・リングスと戦っている。

「王は俺だ」(2014)

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Blu-ray特典として製作されているMCUの短編シリーズ「マーベル・ワンショット」の『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(2013) に収録された「王は俺だ(英題:All Hail The King)」(2014) は『アイアンマン3』の後日譚だ。この作品では、偽物のマンダリンを演じたトレヴァー・スラッタリーが主役に抜擢されている。

アルドリッチ・キリアンに協力した罪でシーゲート刑務所に収監されているスラッタリーは、囚人たちの人気者になっており、刑務所でも悪くない暮らしを送っていた。「本物のトレヴァー・スラッタリーの姿を知りたい」とドキュメンタリー映画を撮ろうとするジャクソン・ノリスは取材を受ける。

スラッタリーはイギリス出身であること、1986年にはアメリカで俳優として大事な時期を迎えていたため母の死に目に会えなかったことなどを語っている。1985年にCBSで製作されたでスラッタリー主演のドラマのタイトルは『ケージド・ヒート』。ロサンゼルスを舞台にした刑事もののアクションドラマだが、猿が酒を飲むシーンがあったからか、パイロット版が放送されただけで終了してしまったとスラッタリーは主張する。

ジャクソン・ノリスは、ここでも起きたことの責任を取ろうとしないスラッタリーの生き方を指摘する。スラッタリーは、マンダリンを演じてキリアンを助けたことが人の死につながったということも受け入れようとしていなかった。

その後、ノリスはテン・リングスについてどれほど知っているかスラッタリーに探りを入れるが、スラッタリーはテン・リングスが実在していたことも知らない。ノリスはテン・リングスを「公式には休眠中だが、近年動きを活発化している」と説明し、リーダーのマンダリンを「戦う王」「中世、またはそれより前から数世代にわたって人々に影響を与えてきた」と解説している。

この肯定的な口ぶり通り、ノリスはテン・リングスが送り込んだ戦闘員であり、護衛を排除するとスラッタリーに「あなたを脱獄させに来た」と伝える。スラッタリーは一瞬喜ぶが、ノリスはマンダリンがスラッタリーから奪われた名前を取り戻すと告げて「王は俺だ」は幕を閉じる。

スラッタリーに対するテン・リングスの態度は決して好意的なものではない。「休眠状態」にあったというテン・リングスを再始動するにあたって、マンダリンを騙った者を見せしめにするのだろうか。なお、トレヴァー・スラッタリー役を務めたベン・キングズレーは映画『シャン・チー』のワールドプレミアに出席しており、本作への出演が明らかになっている。

『アントマン』(2015)

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そして、「アイアンマン」シリーズ以外にも長編映画作品にテン・リングスは登場している。それは映画『アントマン』(2015) でダレン・クロスがイエロージャケットを企業向けに発表したシーンだ。バイヤーの中に、首にテン・リングスのタトゥーが入っている人物が確認できる。そんなバレバレのタトゥーを見せびらかしていた大丈夫かとも思うが、スターク・インダストリーが兵器開発を止めた後も、テン・リングスは西洋から武器を仕入れようとしていたようだ。

『シャン・チー テン・リングスの伝説』(2021)

そして、『シャン・チー テン・リングスの伝説』で本物のマンダリンを演じるのは香港出身のスター俳優トニー・レオン。『HERO』(2002) や「レッドクリフ」シリーズで知られるベテラン俳優がMCU初のカンフー映画を牽引する。予告編では10個の腕輪=テン・リングスを操るマンダリンの姿が映し出されており、“本物”の格の違いを見せている。

シャン・チーとマンダリンの親子対決も見ものだが、悪の組織としてのテン・リングスが今後のMCUでどのような立場に立つのかにも注目したい。アジア最大のヴィラン組織の真の姿を見届けよう。

映画『シャン・チー テン・リングスの伝説』は2021年9月3日(金)より公開。

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』公式サイト

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劇伴を収録した『シャン・チー/テン・リングスの伝説 オリジナル・スコア』 も発売中。

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【ネタバレ注意】『シャン・チー』のポストクレジットシーンの解説&考察はこちらから。

ネタバレレビューはこちらから。

『シャン・チー』の続編についてはこちらの記事で。

【ネタバレ注意】『シャン・チー』にあったジブリオマージュはこちらから。

【ネタバレ注意】シャーリンについての考察はこちらから。

【若干ネタバレ】『ブラック・ウィドウ』から登場した意外なキャラのカメオ出演についてはこちらから。

『シャン・チー』のあらすじと主演シム・リウが語った思いはこちらの記事で。

ドラマ『ホークアイ』の予告編とその解説&考察はこちらから。

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