『スター・ウォーズ:アコライト』最終回はどうなった?
映画『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999) の100年前を舞台にしたドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』は、2024年6月から配信を開始。7月17日(木) には最終回となる第8話が配信された。「スター・ウォーズ」作品の中でもとりわけミステリー色の強い作品となった『アコライト』だが、一体どんな結末が待っていたのだろうか。
今回は、ドラマ『アコライト』最終話となる第8話をネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容は『アコライト』の結末に関するネタバレを含むので、必ずディズニープラスで本編を干渉してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』最終話第8話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』最終回第8話「アコライト」ネタバレ解説
マスクをつけたオーシャ
ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』最終回となる第8話の監督を務めるのは第6話と同じくハネル・カルペッパー。『THE FLASH/ザ・フラッシュ』(2014-2023) や『SUPERGIRL/スーパーガール』(2016-2021) など、多くのDCドラマでエピソード監督を務めてきた監督だ。
最終話の冒頭では、第7話の回想回を挟み、第6話のラストでマスクを被ったオーシャのその後が描かれる。オーシャはこのマスクを被れば自分とフォースだけが残ると言われていたが、身体が震え始める異常を見せる。ザ・ストレンジャーは慌ててマスクを取ろうとするも、その目は黒色に染まり、周囲も青いライトで照らされる。
これはオーシャの母マザー・アニセヤがトービンを精神を支配した時と同じ演出であり、オーシャにも同じ力が受け継がれていることが分かる。それでも、ザ・ストレンジャーはトービンと違ってこれに屈することなく、オーシャのマスクを取ることに成功している。
オーシャはマスクを被っている間、手を差し出すメイがソルを殺そうとしており、ライトセーバーを持っているがそれを使っていないという光景を見たという。これは“フォース・ヴィジョン”というフォースを通して未来を見る能力で、アナキン・スカイウォーカーは繰り返し自身がダークサイドに堕ちる未来を見ていた。
メイがライトセーバーを使っていなかったという話を聞き、ザ・ストレンジャーは「丸腰で殺せるのか」とこぼす。思えばザ・ストレンジャーがメイに与えた試練は16年前の事件に関わった4人のジェダイを武器を使わずに殺すことであり、ソルは最後の標的である。
船を持っているザ・ストレンジャーと行き先が分かるオーシャは「互い出し抜き合う」という奇妙な合意を結んでメイを追うことに。一方のソルは、メイを連れてブレンドクを目指していた。ソルはメイが生きていたことで、メイとオーシャの生命が人工的に創り出されたものだとジェダイ評議会に証明しようとしている。証明したとて、とも思うが。
この期に及んで「事故だった」「介入は正しかった」と強弁するソルは、自身の植民地主義的な思考に気づけていない。あの橋で二人を同時に救えなかったことが心残りだったと話すソルは、自分が“救済者”であるというポジショニングも変えようとしていない。
そして、ソルが二人は双子ではないと話し始めたところで、メイはピップを使って拘束をとき、脱出船に乗り込む。この時、メイは「地獄で会おう(See you in hell.)」と発言しているが、『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(1980) でもハン・ソロが同じように発言している。「スター・ウォーズ」の世界にも地獄はあるようだ。
メイは脱出船で、ルーク・スカイウォーカーがXウィングで被っていたものと似たデザインのヘルメットを被っている。そして追ってくるソルとドッグファイトを繰り広げるが、『アコライト』ではドッグファイトは初ではないだろうか。
メイのピンチを救ったのは、意外にもバジルだった。船のケーブルをちぎってソルの船を失速させたのだ。第6話ではメイを追い詰めていたバジルだったが、善悪の判断はその場その場で自分でできるということだろう。自分が信じた正義に固執したり、組織に盲従するよりずっと立派な生き方だ。
ジェダイはカルトか
墜落したメイとソルはブレンドクに到着した一方、コルサントではヴァーネストラ・ロウがレイエンコート議員の訪問を受けていた。レイエンコート議員は第6話で名前だけ登場しており、同議員がジェダイ・オーダーの外部審査実施を推進していると報告されていた。
レイエンコート議員は内々に殺人事件を操作していることを聞きつけ、ロウの「被害者はすべてジェダイ」という発言から複数の被害者が出ていることを察する。なかなかのやり手である。秘密主義を押し通そうとするロウに対し、レイエンコートは外部審査を推し進めるのは、ジェダイが制御できないものをコントロールしようとする強大な組織だからだと話す。
日本語字幕では省略されているが、「宗教を装った(posing as a religion)」「人を惑わすカルト(a delusional cult)」とまで言い切っている。「感情」をコントロールしようとするジェダイは清廉さなイメージを打ち出しているが、堕落する者は必ず現れる、それがいつ起きるか、もし起きたらという話ではなく、誰がそれを止められるかということが問題だとレイエンコートは語る。
ドラマ『アコライト』を指揮するレスリー・ヘッドランドは、大の「スター・ウォーズ」ファンとして知られている。この場面でのレイエンコートの発言は、現実の「スター・ウォーズ」ファンダムにも通じるところがある。ジェダイが宗教のように崇められるようになった一方で、現実で起きるファンダムからの人種差別や性差別は長年問題となっている。レイエンコートの「英雄を崇める者は目の前の本質を見ない」というセリフが端的にその状況を表しているように思える。
また、近年のスター・ウォーズ公式やオビ=ワン・ケノービ役のユアン・マクレガーら出演者は、有害なファンに対して積極的にメッセージを発するようになってきた。「いつ」や「もし」ではなく、「誰がそれを止めるか」が問題だとするレイエンコートの主張は、自分達が責任を持ってその役割を担わなくてはならないというメッセージとも受け取れる。
「スター・ウォーズ」内の話で言えば、確かにアナキン・スカイウォーカーがダークサイドに堕ちいていく過程で、ジェダイ・オーダーは組織的にそれを止めることができなかった。最悪の事態を止められる「誰か」を置かなければならないというレイエンコートの主張は正しかったと言える。
しかし、ロウは「元老院の総意ではない」と事務的にこの話を打ち切ってしまう。レイエンコートは元老院議長に組織の不透明さについて報告したといい、じきに法廷が開かれるという。同議員は、歴史上最も皮肉のこもった「フォースと共にあれ」を言い残して去っていくのだった。
あれは誰…?
メイとソルのもとを目指すザ・ストレンジャーとオーシャは取引を交わしたが、ザ・ストレンジャーの「訓練を受けるべき」という誘いをオーシャは拒否する。メイはこの誘いに飛びついたらしい。オーシャはザ・ストレンジャーのことをメイとの約束を守ったことから「フェア」だと評し、ザ・ストレンジャーは「俺の弟子になれ」と言うのではなく、「訓練を受けるべき」と具体的な理由を提示している。二人の奇妙な信頼関係は“行為”にもとづいているようだ。
二人がこの星を飛び立つと、洞窟の影から謎の人物が顔を覗かせる。明らかにシスっぽいこの人物はこのシーンにしか登場せず、名前も明かされていない。順当に考えれば、これはパルパティーン/ダース・シディアスの師であったダース・プレイガスだろう。
ダース・プレイガスは映画『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005) でパルパティーンがアナキンに話す中で触れられていた人物。この時は、ミディクロリアンに影響を与えて生命を創造することができる、大切な人を死から遠ざけることもできたと言われていた。『アコライト』の舞台はパルパティーン誕生の48年前だが、死を遠ざけられたプレイガスがこの長寿でこの時点でも生きていた可能性は大いにある。
あるいは、あれはダース・プレイガスの師匠であったダース・テネブラスの可能性もある。いずれにせよザ・ストレンジャーが暮らす場所にシス卿がいたということであれば、やはり『アコライト』の物語はパルパティーンとアナキン・スカイウォーカーへと続いていくことになりそうだ。
決戦再び
ブレンドクに着いたソルは、船の通信機をオンにしてジェダイ・オーダーに居場所を知らせている。ヴァーネストラ・ロウは通信で「彼がそうなのは分かっていますが、どうしても伝えなければ」と話している。相手方は「極めて異例だがやってみる」と、リーチしにくい相手にコンタクトを試みていることが分かる。
そして、ソルの居場所がわかったロウとモグはジェダイナイトを連れてブレンドクヘ。ザ・ストレンジャーとオーシャもブレンドクへ向かっているが、ザ・ストレンジャーの船のコクピットが二つに分かれているというのが象徴的だ。自由を重んじるザ・ストレンジャーは支配を望んでおらず、故に馴れ合いも求めないということだろうか。
ソルは、オーシャとメイの母を殺した魔女の砦の中庭や崩壊した橋を訪れ、当時のことを思い出していた。橋では当時見捨てられたメイが橋の下から現れる。まるで地獄から生還したかのようで、この場面のショットはソルがオーシャかメイかの二者択一を迫られたシーンと同じアングルになっている。しかし、メイがたどり着いたのは自分が燃やしてしまったオーシャの部屋だった。
エレベーターの前から謎の瞬間移動を見せたザ・ストレンジャーがソルの前に現れると、またまたシリーズ屈指のレベルのライトセーバー戦が繰り広げられる。今度は一対一の力強い戦いだ。渡り廊下から中庭へと飛び降りたソルがゆっくりと着地するシーンは、第4話のラストでザ・ストレンジャーが上空からゆっくりと降り立ったシーンを想起させる。ソルもフォースの使い方を敵から学んだのかもしれない。
ソルが「必要であればお前を殺す」と宣言したのに対し、ザ・ストレンジャーは「先にメイがお前を殺す」と言い返す。メイへの信頼も感じ取れるが、おそらくオーシャの未来視を信じての発言でもある。
中庭での戦いではザ・ストレンジャーは二刀流に切り替えるが、一方のソルもライトセーバーの刃を臨機応変にオンオフして戦っている。「スター・ウォーズ」公式は、ザ・ストレンジャーのスター・ウォーズの型を“トラカータ”としている。
トラカータは7つある型に当てはまらない第8の型と言われており、ライトセーバーの刃を出したり消したりして戦うダーティーな戦法だ。ソルもトラカータとまでは言わないが、ザ・ストレンジャーの柔軟で自由な戦い方を取り入れているように思える。
更にザ・ストレンジャーは二本のライトセーバーをブーメランのように使うが、ここでソルは全方位へのフォースの衝撃波を発動してそれを退ける。このシーンのソルは見事な戦いっぷりを見せている。ずっとこれくらいカッコよくあってくれ!
オーシャはかつての自室でメイと遭遇。オーシャは、ソルから愛する者に破滅させられ得ることを受け入れるよう言われたがそれができず、悲しみと憎しみを抱いたがゆえにジェダイ失格だったと明かす。メイは、母を殺したのはソルで、ジェダイ失格はソルの方だと話すが、オーシャはメイに戦いを挑む。このシーンの二人の動きは鏡のように一致しており、決着がつくことはない。
ヴァーネストラ・ロウたちジェダイの船が到着する中、ソルはついにトラカータ的なライトセーバーの“抜き”を披露してザ・ストレンジャーのライトセーバーを切り落として見せる。これで勝負ありかに思われたが、そこに現れたメイはソルのライトセーバーを奪って投げ捨てる。この時、ライトセーバーの中にある原料の青いカイバー・クリスタルが映し出されている。
メイが武器なしでソルを殺そうとしているというオーシャの未来視を知っているザ・ストレンジャーは、メイに復讐を果たすよう促すが、メイはこれを拒否。最高評議会で罪を告白させて罪を償わせるというのだ。だが、ソルは「私は正しいことをした」と言って譲らないのだった。
フォース・チョークとカイバー・クリスタルの重要描写
そしてソルは、メイとオーシャは同一の人間でマザー・アニセヤがフォースの集中があるこの星でフォースを使って命を創り出したと語る。この時、ザ・ストレンジャーの表情が変化していることが分かる。これはザ・ストレンジャーも知らなかった事実で、何らかの着想を得たのだとすれば、その知識が父親なしで生まれたアナキン・スカイウォーカー誕生の秘密に繋がっていくのかもしれない。
そうした強大な力を持つアニセヤを殺したのだとメイに詰められると、ソルはついにそれを認め、それを陰で聞いていたオーシャはついに真実を知る。ソルは「正しいことだった」と繰り返すも、「メイなしでは二人が創られたことを証明できない」「オーシャの追放を阻むためだった」と言い訳ばかり。これらの言葉は、保身とオーシャへの執着のためだったと読み替えることもできる。
ついにソルは「お前を愛して——(Becouse I l—-)」と言いかけたところでオーシャにフォースで喉を掴まれる。これは皆さんご存知フォース・チョークという技で、基本的にシスが使用する技だ。ダース・ベイダーが部下によくやる技としてお馴染みだが、ドゥークー伯爵やダース・シディアス、アサージ・ヴェントレスらも使用しており、アソーカ・タノも使ったことがある。『マンダロリアン』(2019-) でグローグーがディン・ジャリンを守るためにマッドホーンを吊り上げた技もフォース・チョークとされている。
つまり、フォース・チョークはジェダイの教義から外れた、愛着や憎しみといった感情に依拠する技だ。ザ・ストレンジャーがメイに課していた「武器を使わずにジェダイを殺す」という任務は、このように人を殺せるくらいにまで感情によってフォースを強化し操れるようになることを指していたのだろう。『アコライト』は、オーシャがシスのお家芸とも言えるフォース・チョークができるようになるまでの物語だったとも言える。
ソルが死にゆく中で、もう一つ「スター・ウォーズ」にとって重要な描写が登場する。オーシャが持っているライトセーバーのカイバー・クリスタルが赤く染まっていくのだ。ライトセーバーの色の違いについては長らく議論があるところだ。かつての設定では、ジェダイは自分でカイバー・クリスタルを採取して自分のライトセーバーを作るが、シスは原料のカイバー・クリスタルを見つけることができないため人工のカイバー・クリスタルを使い、よってそのライトセーバーは赤色になってしまうということだった。
2016年に発表された正史の小説『アソーカ』では、ダークサイダーは他人のライトセーバーを奪って使用するため、元の持ち主との関係が断たれたカイバー・クリスタルが血を流して赤色に変色するという新しい設定が紹介された。『アコライト』のこのシーンでは、その設定を踏襲しており、ソルの死とともにカイバー・クリスタルが赤く変色している。初めて実写で“シスのライトセーバー”が生み出された瞬間だ。
オーシャはソルを自らの手で殺し、ついに本当の意味でソルの支配から逃れることになった。そして、ライトセーバーを起動すると、その刃が赤く染まっていく。感情に身を委ねてダークサイドへと堕ちた主人公。アナキン・スカイウォーカーの物語の再来でもあり、ジェダイ・オーダーの機能不全によってシスが生まれた前例でもある。
オーシャの選択
ブレンドクに降り立ったヴァーネストラ・ロウが何かを感じると、フォースを遮断するコルトシス製のマスクを外していたザ・ストレンジャーも何を感じ取ってすぐにマスクを被る。ロウは「生きていたか」と動揺を見せ、ロウとザ・ストレンジャーのつながりを示唆するのだった。
ザ・ストレンジャーはまたも消え、オーシャはメイと共に逃げることに。メイは16年前に橋から落ちて生き延びたことで、逃げ道となるトンネルがあることを知っていた。中庭に着いたロウはサイコメトリー(フォースで過去の情報を読み取る力)を使い、16年前にソルがアニセヤを殺したことなど、過去の出来事を全て知る。そしてソルの耳元で何かを語りかけるロウの姿をザ・ストレンジャーは見つめている。二人はどんな関係なのだろうか。
トンネルを抜けたメイとオーシャはブントの木の下に辿り着くと、互い謝罪して涙の和解を果たす。そこで、「あなたは私と、私はあなたといる」というメイの言葉が誰に教わったわけでもなく、二人の中にあったものだと知る。そこに現れたザ・ストレンジャーは、メイと共にジェダイが強力な力を得たオーシャを標的にすると警告。悩むオーシャにメイは「どうしたい?」と尋ねるのだった。
メイは16年の時を経て、ようやくオーシャの選択を尊重できるようになったということだ。そして、オーシャはザ・ストレンジャーに訓練を受け、メイを解放すること、メイがオーシャ追跡の手がかりとしてジェダイに追われないようにするためにザ・ストレンジャーの力で記憶を消すことを決意する。ちなみに、消される記憶はオーシャとザ・ストレンジャーに関するものと限定されている。
最初は躊躇したオーシャだったが、メイは「もう私は止めない」と背中を押す。16年前にはメイに引き留められながらもジェダイに弟子入りしてブレンドクを離れたオーシャだったが、今度はメイに送り出される形でシスの弟子になろうとしている。
オーシャはザ・ストレンジャーとライトセーバー越しに握手を、メイとは涙のハグを交わして、いつか見つけると約束。ザ・ストレンジャーはメイの記憶を消し、その後バジルのおかげで明の元にたどり着いたジェダイたちによってメイは逮捕される。バジルは最後までよく頑張った。
隠された真実
ヴァーネストラ・ロウによる尋問を受けるメイは、16年前のことしか覚えていない。おそらく師であるザ・ストレンジャーと過ごした時間が長かったため、“ザ・ストレンジャーに関する記憶”としてほとんどが消去されてしまったのだろう。
ロウはこれを「8歳の時の記憶」としており、メイとオーシャが24歳であることが分かる。『エピソード3』のアナキンは22歳とされている。ちなみに『エピソード1』のオビ=ワンは25歳だったので、いかにオビ=ワンが若くして頑張っていたかということも分かる。オーシャは新たなマスターを得たが、オビ=ワンはその歳でマスターのクワイ=ガン・ジンを失ったのだ。
ロウは、メイの母を殺したのがジェダイであり、友人であるソロだったと語る。そして、ロウは評議会と思われる場所でソルの罪を告発。さらにソルが保身のためにジェダイの共犯者を殺したと報告するのだ。そして、フラッシュバックでは先ほどブレンドクの中庭でロウが死んだソルに耳打ちした言葉が明かされる。それは「友よ、ごめんなさい」という懺悔であり、この時からロウは全ての罪をソルに被せることを決めていたことが分かる。
つまり、ソルの罪は明かされたが、それに乗じてメイやザ・ストレンジャーの殺人はソルの仕業として隠蔽されることになったのだ。一人の人間の暴走として処理され、ジェダイはそれを正しく処理したという形に収めることで、根本的な解決は遠のいてしまったように思う。
レイエンコート議員が迅速な外部審査導入を求めるも、ロウはやはり「たった一人が起こしたこと」としてしまう。ソルの死は自殺として処理しており、フラッシュバックでは湖でソルの死体を焼くロウの姿も。ロウはジェダイでも数少ないサイコメトリーの使い手であるため、自分だけが真実を掌握することができる。これで、嘘で嘘を塗り固めることになってしまった。
加えてロウは、やはりソルのオーシャへの「愛」がこの悲劇を招いたと指摘している。やはり『アコライト』は師弟間の愛情というジェダイにおけるタブー、ジェダイが幼い子どもを預かることで起こりうるグルーミング(親しくなり子どもを支配すること)を扱った作品だったと言える。
ザ・ストレンジャーのマスターと弟子
ロウはメイの記憶がないことをショックによるものだと判断し、全てはジェダイの責任であり、過ちを正すと宣言する。言ってることがソルと似てるぞ……。そして、ロウはそのために人探しに協力してほしいとメイに依頼する。捜す人物は、「私の弟子」「悪に寝返った男」だという。そう、ザ・ストレンジャーはロウの元弟子だったのである。
ロウが最終話第8話でブレンドクに降り立った時、ザ・ストレンジャーがマスクを外していたことで、彼の生存が知られることになった。ザ・ストレンジャーは強力なフォースによる感知能力を持つロウへの対策として、コルトシス製のマスクを被っていたのだろう。
第6話ではザ・ストレンジャーの背中の傷が明らかになり、「俺を捨てた奴」につけられたと語っていた。その傷は直線ではなく、ライトセーバーとは異なる傷のようだったが、どうやらロウが操るライトウィップ(鞭型のライトセーバー)によってつけられたようだ。
それにしても弟子の背中にライトウィップで傷をつけるとは、一体どんな状況だったのだろうか。懲罰的な鞭打ちだったのか、それとも逃げるザ・ストレンジャーに負わせた逃げ傷だったのか……。いずれにしてもロウの闇が示唆されているが、メイはもしかしてロウの新たな弟子になるのだろうか。
ザ・ストレンジャーが住む島に戻ったオーシャ。ザ・ストレンジャーはメイに対する姿勢とは違ってマスクを被らずにオーシャの前に現れる。彼はオーシャの隣に立つと、オーシャが持つライトセーバー越しに手を重ね、新たなマスターと弟子が水平線を見つめてフィナーレを迎える。これは絶対にシーズン2に続いて欲しいやつ。今、ディン・ジャリンとグローグーに次いで最も熱い師弟の誕生である。
最後に登場したのは…
しかし、ドラマ『アコライト』はこれで終わりではなかった。ロウは「マスター」と呼ぶ人物の部屋を訪れる。ソル発見の直前の「彼がそうなのは分かっていますが、どうしても伝えなければ」「極めて異例だがやってみる」という会話は、このマスターへの訪問を取り付けるための連絡だったのだろう。
ロウが「ご相談が」と告げた相手は、ジェダイマスターのヨーダだった。後ろ姿のみの登場だが、ロウの声を聞いて耳を少し上に持ち上げている。この時代のヨーダは864歳くらいだが、この時期にはすでにグランド・マスター(ジェダイマスターの長老)の地位にあるようだ。ロウが気軽に面会できないというのは、当時の制度上の問題だったのか、ヨーダがライフワークにしていた瞑想の途中だったからだろうか。
制度上の問題だとすれば、ヨーダは今回の事件を受けて、他のマスターたちとこれまでより時間を過ごすことを選ぶようになったのかもしれない。ロウが最後にヨーダを頼ったということは、ヨーダはザ・ストレンジャーを知っているということだろうか。あるいは、ロウがここで「フォースの集中」に関して報告したのだとすれば、『エピソード1』でクワイ=ガンからフォースの集中を見つけたと報告されたヨーダの心情は、また違ったものになるだろう。
ちなみに『アコライト』を指揮したレスリー・ヘッドランドは、スタジオからヨーダを登場させてもよいと言われたが登場させないことにしたと語っていた。ファンはまんまと騙されたことになるが、嬉しいファンサービスではあった。
ヨーダ登場について、最終話配信後にレスリー・ヘッドランドが語った内容はこちらの記事で。
ドラマ『アコライト』最終回 第8話ネタバレ考察&感想
ハッピーエンド?
ドラマ『アコライト』は、いくつかの謎を残しながらも、オーシャとソルの物語には決着をつけて幕を下ろした。ソルはオーシャに愛情を抱き、オーシャを自分のもとに置いておくためにブレンドクで起きた事実を隠蔽した。ブレンドクで起きたことは、様々な不幸やそれぞれの思惑が重なった結果だったが、潔く起きたことに対する責任を取らなかったことが問題だった。
オーシャをそばに置いておきたいという自分の望みと、「こうあるべき」という客観的な判断を混同させてしまい、それを最後まで改めることができなかったのがソルの失敗だった。オーシャは自分の選択と自由を尊重してくれるマスター=ザ・ストレンジャーに出会い、新しい一歩を踏み出すことになる。
では、『アコライト』は「やっぱりシスが良くってジェダイはダメだよね」という話だったのだろうか。まぁオーダーは後に滅びるし再建にも失敗するので後者はなかなか覆せそうにない。そのテーマの解決は、レイがジェダイ・オーダーの再建を試みるという「スター・ウォーズ」の新作長編映画に委ねるしかないだろう。少なくとも、完璧な組織なんてないのだし、自戒しなければ内部から崩壊していくよねというメッセージは正しいものだと思われるし、それは新三部作から地続きの哲学でもある。
『アコライト』はシスの台頭を描くという触れ込みで宣伝されていたが、ジェダイが安定した基盤を構築し、保守/保身的になっていた時代にあって、自由を掲げて現れたシスに惹かれるというのも無理はない。シスの道を選ぶことで失うものもあるのかもしれないが、少なくとも『アコライト』第8話のラストのオーシャとザ・ストレンジャーの姿を見ると、ハッピーエンドな感じもした。
それは、このマスターと弟子の「二人がどう感じているか」ということに目を向けているからだろう。より大きな視点で銀河の平和や、日々の生活を脅かされる力なき存在、共和国が崩壊した時に真っ先に弾圧を受ける人々のことを考えると、そこには大人として背負うべきより大きな責任があることも確かだ。だからジェダイにはその責任をちゃんと背負ってほしいんだけど……!
今後はどうなる?
それにしても、『アコライト』は様々な謎を残して一旦幕を閉じることになった。アニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』(2021-2024) も様々な謎を残したままシリーズのフィナーレを迎えているが、「スター・ウォーズ」は別作品でも要素を回収できることが強みだ。それでも、『アコライト』はシーズン2を望まずにはいられない作品だった。
『アコライト』最終話第8話の配信時点では、シーズン2への更新は決定していない。だが、制作を指揮したレスリー・ヘッドランドは、シーズン1を「オーシャの物語」としており、仮にシーズン2が制作されるならザ・ストレンジャーとヴァーネストラ・ロウの関係を紐解いていくことになるだろう。
「アコライト」というタイトルは「侍者」という意味であり、「弟子」と言い換えることもできる。弟子の物語に焦点を当てさえすれば様々な展開が期待できる。最終回でチラ見せされた、ダース・プレイガスと思われる人物も謎に包まれている。あれがプレイガスだったとすれば、50年以上経った後にパルパティーンを弟子に取ることになる。
シス卿はマスターと弟子の二人しか存在できないという“二人の掟”は、1000年近く引き継がれているルールだ。もしプレイガスとザ・ストレンジャーが師弟関係ということであれば、ザ・ストレンジャーはプレイガスを殺さなければならない。だが、プレイガスはパルパティーンに殺されるはずなので、ザ・ストレンジャーとオーシャはプレイガスに殺されるか、シスにはならずに逃げるしかない。願わくば『アコライト』シーズン2では後者が描かれて、二人には幸せに暮らしてほしいところだ……。
シーズン2やスピンオフについては、今後、公式や製作陣からの発信もあるだろう。取り急ぎ配信直後の時点で『アコライト』に残された謎については、こちらの記事で考察しているのでじっくり読んでいただきたい。
「スター・ウォーズ」作品としては、ドラマ『スケルトン・クルー』が全8話で2024年の後半に配信される予定となっている。『スケルトン・クルー』は再び『マンダロリアン』と同時期の新共和国時代が舞台になるので、マンドーバースからのカメオも期待できる。
ディズニープラスのドラマでは、MCUドラマ『アガサ・オール・アロング』が9月19日(木) から11月7日(木) まで配信される。『スケルトン・クルー』は、同時期の秋に水曜配信となるか、アメリカのホリデー・シーズンに入る11月から年末にかけての配信になると予想できる。まずは『アコライト』の余韻に浸りつつ、次の冒険を楽しみに待とう。
ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』は全8話がディズニープラスで独占配信中。
『エピソード1』の200年前を舞台にした正史小説「ハイ・リパブリック」シリーズは講談社より発売中。
ヨーダ登場について、最終話配信後にレスリー・ヘッドランドが語った内容はこちらの記事で。
ダース・プレイガス登場についての公式による解説はこちらから。
シーズン2についての情報はこちらから。
『アコライト』第7話のネタバレ解説&考察はこちらから。
第6話のネタバレ解説&考察はこちらから。
第5話のネタバレ解説&考察はこちらから。
ザ・ストレンジャーのコルトシスとライトセーバー戦の型についての解説はこちらから。
『アコライト』で存在感を見せているバジルについての解説はこちらから。
第4話のネタバレ解説&考察はこちらから。
第3話のネタバレ解説&考察はこちらから。
第3話で示唆されたアナキン誕生の秘密について、これまでの経緯をまとめた記事はこちらから。
第2話のネタバレ解説&考察はこちらから。
第1話のネタバレ解説&考察はこちらから。
『アコライト』時系列の解説とパルパティーン登場の可能性についての考察はこちらの記事で。
マスター・ソルについての紹介はこちらの記事で。
アニメ『バッド・バッチ』シーズン3フィナーレのネタバレ解説はこちらから。
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