『スター・ウォーズ:アコライト』最終回第8話のサプライズ
ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』は2024年6月から7月にかけて配信された「スター・ウォーズ」ドラマで、映画『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999) の100年前を描く物語として注目を集めた。実写では初めて描かれるジェダイ全盛の時代を舞台に、さまざまなジェダイが登場する点も、『アコライト』の魅力の一つだった。
『アコライト』最終回となる第8話のラストでは、意外なキャラクターがカメオ出演を果たした。驚いた方も多いことと思うが、あのキャラクターの登場について、『アコライト』の制作を指揮したレスリー・ヘッドランドがその背景を語っている。今回は、あの人登場の意味を深掘りしてみよう。
なお、以下の内容は『アコライト』最終話第8話の結末に関するネタバレを含むので、必ず本編をディズニープラスで鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』第8話の内容に関するネタバレを含みます。
『スター・ウォーズ:アコライト』ヨーダ登場の衝撃
ロウが訪ねたヨーダ
『スター・ウォーズ:アコライト』最終回ラストに待ち受けていたサプライズは、ジェダイマスター・ヨーダの登場だった。ヨーダは900年以上生きる種族であり、『エピソード1』の100年前でも800歳代だ。だが、この時期は他のマスターがなかなか会えない立場にあるようで、面会を希望したヴァーネストラ・ロウは、相談相手から「異例のこと」と釘を刺されている。
ヨーダと面会したロウはヨーダに「相談があります」と告げ、『アコライト』シーズン1は幕を閉じる。この相談の内容は、ロウのかつての弟子であるザ・ストレンジャーが再来したことか、「フォースの集中」がブランドクで見つかり、それを通して生命の創造が行われたことについてだと予測できる。
いずれにせよロウの手では解決できない問題と考えてヨーダに相談を持ちかけたものと考えられる。『アコライト』シーズン2への更新と、シーズン2でのヨーダの活躍にも期待を持たせてくれる展開だったが、製作陣はどのような意図を持ってこのシーンを最後に持ってきたのだろうか。
監督が背景を明かす
『アコライト』の配信前には、シリーズ全体の指揮を務めたレスリー・ヘッドランドは『アコライト』ではヨーダは登場させないと語っていた。ヨーダの登場は文字通りのサプライズとなったわけだが、ヘッドランドは米Inverseで『アコライト』でのヨーダ登場について語っている。
まず、ヘッドランドはヨーダ登場の経緯について、『アコライト』にヨーダを登場させるために“奮闘した”と聞いたが、というインタビュアーからの質問に対しこう答えている。
そうですね。でも、「闘う」と言ってもメチャクチャな敵が相手というわけではありません。ただ、とても重要なキャラクターですから。アグレッシブに闘ったわけではありませんが、気持ちの入った会議だったことは確かです。
ヨーダと同じ種族のグローグーは今や「スター・ウォーズ」を代表する人気キャラとなったが、それでもヨーダの方は実写ドラマ作品に登場したことはなかった。『マンダロリアン』(2019-) で幕を開けたディズニープラスの「スター・ウォーズ」ドラマシリーズのスタートから5年が経過したタイミングでのドラマ初登場。スタジオとしては、それほどヨーダを大事な存在として扱ってきたということでもある。
ロウが訪ねた理由とは
その上で、ヨーダの『アコライト』への登場は、きちんと物語の要請上でのことだったようだ。ヘッドランドはこうも語っている。
細部についての問題もありました。けれど、ああいった象徴的なキャラクターを登場させることについては、ほとんど精神論と言えるような会話があったことも確かです。私は、ヴァーネストラは昂っていて、内面のケアが本当に必要な状況にあると感じました。
彼女はすでに「容疑者がいないなら、問題の本質は別のところにある」というプレッシャーを感じていました。レイエンコート議員はあの小会議でジェダイの監査を提案しましたが、ドレリック議長はその要請を肯定も否定もしませんでした。彼女は自分の上司(ヨーダ)に問題を報告して何が起きているのかを彼に知らせないといけないと感じたんです。おそらく、彼女と彼女のパダワンの間に起きたことを話したのでしょう。
ヴァーネストラ・ロウがヨーダに会いに行く直前のシーンでは、レイエンコート議員を含む面々による会議が開かれ、ロウはそこでソルに全ての罪を着せた。“特異な個人による凶行”とすることでジェダイに対する監査の決定を妨げたと言える。
ただ、かつて自分のパダワンであるザ・ストレンジャーが生きており、今回の事件の黒幕であったことについては、外部に隠蔽はできても解決はできてない。精神的に追い込まれている状況にあるロウは、ついにグランド・マスター(ジェダイマスターの長老)であるヨーダに相談をしたということのようだ。
そして、レスリー・ヘッドランドによるとその相談内容は、「彼女と彼女のパダワンの間に起きたこと」だったという。かつてロウの弟子であったザ・ストレンジャーは、その背中に流線形の傷跡があり、その傷をつけたのは「俺を捨てた奴」だとオーシャに明かしていた。ロウの武器は通常のライトセーバーではなく、鞭型のライトウィップと呼ばれるもので、ザ・ストレンジャーの傷跡の形とも矛盾しない。
問題は、ロウとザ・ストレンジャーの過去に何かがあったことをヨーダが知っているのかどうかという点だ。ヨーダが知る内容であればいいのだが、ヨーダが二人の過去を知らなければ、ロウはここでも都合の悪い真実を隠してしまうかもしれない。
ロウは自分と同じく長寿であるヨーダに知恵を借りて、この難題を解決することができるのだろうか。そして、そのためにはグランドマスターであるヨーダが現場に赴くということもあり得るのだろうか。
ヨーダの過去が明らかに?
レスリー・ヘッドランドは今後の展開についてはこう語っている。
『ファントム・メナス』で彼(ヨーダ)がすぐに「奴らは常に二人。マスターと弟子だ」と発言したことに興味を持っていたんです。彼が新シス戦争(2000 BBYから1000 BBYまで続いたジェダイとシスの戦争)の時代に生きていたわけではないので、世代を超えて語り継がれてきた情報の一つだった可能性はあると思います。
しかし、「スター・ウォーズ」で仕事をする機会があれば、彼はこの時点で何が起きているかをある程度理解していたとする方が面白くなるんじゃないかと思っていました。ヨーダが元老院や共和国から何かを隠すのはそれが初めてではありませんからね。『クローン・ウォーズ』シーズン6では、ヨーダがクローン軍の創設と黒幕について真実を隠していたことが明かされました。
もしその話をするのが許されるなら、そしてさらにシーズンを重ねることができるのなら、そこに探究する楽しみがあると感じています。彼を登場させる件についてはたくさん話をしました。でも、最終的には、私の作品だからって思ったんです。
『ファントム・メナス』の時点でヨーダにはシスに関する知識があり、同時にヨーダも共和国や元老院に隠していることがあった。そうした過去シリーズですでに描かれている要素を拾い、ヘッドランドはその背景を深掘りしようとしているようだ。
ヨーダが最終的にジェダイ・オーダーの崩壊を救うことができなかったことも事実であり、それは長らく一部ファンから指摘されてきたことでもある。だが、そこにそれなりの歴史と背景があったとすれば、ヨーダに対する見方も変わってくるかもしれない。『アコライト』がシーズン2に更新され、そうした過去についても探求されることに期待したい。
ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』は全8話がディズニープラスで独占配信中。
『エピソード1』の200年前を舞台にした正史小説「ハイ・リパブリック」シリーズは講談社より発売中。
Source
Inverse
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