『アコライト』最終回で残った謎は?
1999年に公開された映画『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』の100年前を舞台にしたドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』は、ジェダイの闇とシスの台頭を描き、大きな注目を集めた。2024年7月17日(水) に最終回となる第8話が配信され、物語は一旦の終焉を迎えている。
一方で、『アコライト』には最終話を迎えても残されている謎は多い。最終話の第8話配信の時点でシーズン2への更新は発表されていないが、『アコライト』には明らかに今後描かれるであろう謎が複数散りばめられていた。
制作を指揮したレスリー・ヘッドランドは、シーズン1の理想は「視聴者が満足できるくらいにまとまっていながら、シーズン2が観たくなるようなミステリーを残しておくこと」と述べている。まさにその意図通りの終わり方だったと言える。
今回は、『アコライト』シーズン1のラストを迎えた時点で残された7つの謎を整理して、今後の展開を考察していこう。以下の内容は『アコライト』第8話の結末までの重大なネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』第8話の結末までの内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『アコライト』に残された7つの謎
1. オーシャとメイの出自
ドラマ『アコライト』最大の謎とも言えるのが、オーシャとメイの出自の秘密だ。オーシャとメイは“フォースの集中”が見られた惑星ブレンドクでマザー・アニセヤによって生命を創り出された。第7話の回想回では、二人のミディクロリアン値が全く同じであることから、一つの命が人為的に二つに分たれたことが指摘されている。最終話の第8話でも、ソルがオーシャとメイは「同一の人間」と発言している。
二人には父親がおらず、アニセヤが二人をマザー・コリルの身体に宿したとされている。この二人の出自は、アナキン・スカイウォーカーの設定と同じであり、オーシャとメイの出自の秘密が明らかになるということは、アナキンの出自の謎が明かされるということでもある。
アナキンの出自についてのこれまでの経緯はこちらの記事に詳しい。
もちろん、「フォースの集中」とは何なのか、どうやってフォースを使って生命を創り出せるのかということも気になるのだが、何より、“なぜ”そうする必要があったのかということも謎である。アナキンはパルパティーンがミディクロリアンを操作して自分の弟子になり得る強力な命を創り出したという可能性がある。一方、マザー・アニセヤはなぜオーシャとメイを創り、一つの命を二つに分けなければならなかったのかという点は気になるところだ。
その答えは、アニセヤの魔女の集団が置かれていた状況にも関連することなのかもしれない。魔女たちをめぐるスピンオフで明かされることもあるかも……?
2. オーシャの力と二つの力
”フォースの集中”が見られた場所で生まれたオーシャは、アナキンと同じように特別な力を持っていると思われる。第6話ではザ・ストレンジャーがオーシャを「皆が欲しがる娘」と形容した。そして、ソルのフォースの力を「あれはお前のフォースだ」と発言したのだった。
ところが、ソルは最終話でザ・ストレンジャーを倒すくらいに見事な闘いぶりを見せており、フォースの力は本物のようだ。あるいは、ソルはオーシャを弟子にとったことで、そのフォースの力を自身に取り入れたのかもしれない。オーシャの力が、手を組んだ相手のフォースの力を増強するタイプのものという可能性もあるだろう。
同時に、ザ・ストレンジャーは「二つの力(Power o two)」を求めていると話していた。二人で一つになること、つまりオーシャの相棒になることでより強力な力を得ることができれば、ザ・ストレンジャーが求める真の自由に近づく。そんな思惑がザ・ストレンジャーにはあったのかもしれない。
ザ・ストレンジャーが自ら提案してメイの記憶を消したり、最後にライトセーバー越しに二度オーシャの手を触れたりしているのは、自分がオーシャの相棒の地位を手に入れ、直接触れることで自らのフォースの力を増強していたとも考えられる。このミステリーの答えは、ザ・ストレンジャーとオーシャのその後を描くシリーズで明かされることだろう。
3. 洞窟の中の人物
『アコライト』最終回で最も説明がなかった謎は、星から飛び去ったザ・ストレンジャーとオーシャを洞窟から見ている人物の件だ。ファンダムやメディアでは、やはりこの人物をダース・プレイガスだと考察している意見が多い。
ダース・プレイガスは、ダース・シディアス/パルパティーンの師匠であり、映画『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005) ではパルパティーンがアナキンに、プレイガスは知識を授けた弟子に殺されたと話していた。同時に、ミディクロリアンに影響を与えて命を生み出すことができたとも紹介されている。
もしあれがプレイガスならば、ザ・ストレンジャーが住む島にいたプレイガスは、ザ・ストレンジャーの当時の師匠なのかもしれない。今後、ザ・ストレンジャーがオーシャの出生の秘密を知るとすれば、プレイガスはそこから生命を創り出す方法を知り、新たな弟子のパルパティーンに教えることで、パルパティーンに殺されることになるのかも。
もっとも、あれがダース・プレイガスではない可能性もおおいに残されているので注意が必要だ。いずれにせよ、レスリー・ヘッドランドが言うように、あの人物がシーズン2のために残した謎であることは明らかであり、遅かれ早かれその正体は明かされることになるだろう。
追記:スター・ウォーズ公式とレスリー・ヘッドランドは洞窟の人物の正体を明かした。詳しくはこちらから。
4. メイのその後は?
気になるのはメイのその後だ。ヴァーネストラ・ロウに保護されたメイは、ロウの元弟子であるザ・ストレンジャーを見つけるために協力してほしいと依頼される。メイの記憶のほとんどはザ・ストレンジャーに消されている上、ロウはメイによるジェダイの連続殺人をソルの仕業として報告しており、メイにとっては新しい人生を歩む機会となっている。
一方、メイにあってオーシャにない点として、メイはマザー・アニセヤ達による儀式を完了しているという点が挙げられる。第3話で描かれたこの儀式は「アセンション(昇格)」と呼ばれており、「魔女になるための儀式」と語られている。
アニセヤは16年前のメイの儀式を「追放されてから初めての儀式」と語っているため、メイが残されたほとんど唯一の“魔女”であると予想できる。この儀式によって、メイの額には魔女たちの紋章がついており、メイはすでに“魔女”になっているはず。ロウはそれでもメイをジェダイにするのだろうか。
『アコライト』最終話では、オーシャの黒い服とメイの白い服が“陰と陽”のようになっており、当初の印象から逆転してオーシャがダークサイドであるという演出がなされていた。実はすでに儀式を済ませたメイの方がダークサイドに堕ちる可能性は低く、ジェダイに適性があるということはないだろうか。だとしてもロウの弟子になるというのは心配だが……。メイの今後もまた、オーシャとロウの今後と共に描かれていくことになるだろう。
5. コリルはどこへ?
魔女で言うと、第7話の回想で黒い霧となって消えたマザー・コリルのその後も気になる。追放されたという魔女の集団の謎が明かされるのであれば、生き延びたコリルの口から、ということになるだろう。
米YouTubeチャンネル Star Wars Explainedのインタビューでは、レスリー・ヘッドランドはコリルについて「死体がないということは死んでいないということ」と語っている。また、コリルの種族がこの物語がどこに行き着くかということのヒントであるとも発言した。
コリルの種族は頭に角が生えたザブラクだと思われる。ザブラクはダース・モールと同じ種族であり、ダース・モールはダソミアの魔女と呼ばれていたナイト・シスターのマザー・タルジンの息子だった。ダース・モールはダース・シディアスによって拐われてシスの道を歩むことになるが、コリルがこのストーリーの流れに絡んでいくことになるのだろうか。
第7話では、コリルらの部族とナイトシスターは異なる存在であることが、ジェダイ達の口から語られていた。一方でドラマ『アソーカ』(2023-) では、シリーズで初めて登場した“別の銀河”でナイトシスターの祖先が登場していた。「スター・ウォーズ」世界の“魔女”をめぐる物語は、もう少し複雑な物語が描かれていくことになるのかもしれない。
6. ザ・ストレンジャーの過去
おそらく魔女とは関係ないという結論に至ったと思われるのがザ・ストレンジャーの過去についてだ。最終話でヴァーネストラ・ロウの弟子であったことが明らかになったが、過去に何があったのかは明かされないままだった。
ヴァーネストラ・ロウは長寿の種族で、『アコライト』の時点で116歳くらいと言われている。一方のザ・ストレンジャーも第6話でオーシャに過去を聞かれて「大昔」にジェダイだったと答えている。つまり、ザ・ストレンジャーも意外と長寿であり、ソルたちが知らない世代のパダワンだったのかもしれない。
少なくとも、第6話でザ・ストレンジャーの背中についていた傷が、ヴァーネストラ・ロウの操るライトウィップ(鞭型のライトセーバー)によるものであるということは間違いなさそう。第6話のライトセーバーアクションはロウが巨大ダンゴムシ相手に振るったライトウィップのみであり、ザ・ストレンジャーの傷と関連付ける意図で披露されたことは明らかだ。
それにオーシャから傷について聞かれたザ・ストレンジャーは「俺を捨てた奴」につけられたと話している。その後の「ジェダイマスター?」という問いは無視しているが、かつてのマスターから背中を攻撃されたことは確かなようで、その経験がザ・ストレンジャーの心にも傷を負わせたのかもしれない。
いずれにせよ、ザ・ストレンジャーはコルトシス製のマスクを被ってロウの意識を遮断するほどにはロウのことを警戒している。ザ・ストレンジャーの過去に何があったのか、ロウはザ・ストレンジャーの存在さえもジェダイの歴史から葬ったのか、気になる点は尽きない。
ちなみにレスリー・ヘッドランドは、米Entertainent Weeklyで、「彼はもう一段階上の自由も欲していて、シーズン2があればそれを掘り下げられると思っています」と発言している。米Inverseでは、ザ・ストレンジャーは元々シーズン2のための「準備」として登場させる予定で、シーズンの後半にはあまり登場しない予定だったと明かしている。結局、ザ・ストレンジャーを演じたマニー・ジャシントのスクリーンテストを見て脚本を書き直すことになったということだが、シーズン2が制作されればザ・ストレンジャーが中心人物になることは間違いないだろう。
7. ヨーダへの相談
ヴァーネストラ・ロウといえば、最終話第8話ラストでヨーダのもとを訪れたことで大きな話題を呼んだ。『アコライト』でジェダイ殺人事件が起きている間もヨーダは登場しなかったが、一体何をしていたのだろうか。
もちろんロウの隠蔽体質が原因で、グランド・マスターであるヨーダまで今回の話が上がっていなかった可能性は高い。一方で、最終話ではロウがヨーダに接触しようとした際に、通信相手に「異例のこと」と言われている。ロウはこの直前に「彼がそうだということはわかっています(I know he is.)」と言っており、ヨーダが何らかの“状態”にあることを示唆している。
つまり、ヨーダは長い瞑想か何かに入っており、接触が憚られる状況だったのではないだろうか。となれば、重要になるのはロウがなぜヨーダに無理をしてまで接触したのかということだ。全ての罪をソルに着せたロウだが、その上で「相談があります(We need to talk.)」とヨーダを訪ねたのだ。
ロウがヨーダに相談することがあるとすれば、かつての弟子であるザ・ストレンジャーが生きていたことについてだろうか。ヨーダは『アコライト』の時点で864歳くらいであり、仮にザ・ストレンジャーも長寿の人物だとすれば、ジェダイでその存在を知るのはヨーダくらいということになる。ザ・ストレンジャーがよっぽど危険な存在でジェダイを追放されたのだとすれば、いよいよヨーダに相談しなければならないという状況に追い込まれたのかもしれない。
あるいは、ロウはヨーダに“フォースの集中”について相談しようとしたのかもしれない。最終話でブレンドクを訪れてサイコメトリー(フォースを通して過去の情報を読み取る能力)を使ったことで、そこにフォースの集中があったことなどを知ったはずだ。
この時、もしヨーダがブレンドクのフォースの集中と人工的に創り出されたオーシャ&メイという“前例”に触れていたとしたら、『エピソード1』でクワイ=ガン・ジンからフォースの集中を見つけたと報告を受けたヨーダは、100年前のことを思い出したのではないだろうか。『エピソード1』のヨーダはクワイ=ガンに「フォースの集中と言ったか?」と驚く様子を見せているので、あながち間違いでもなさそう。
その後アナキンと面会したヨーダは、母に会えなくなることを恐れるアナキンに、その感情がダークサイドに繋がると警告している。クワイ=ガンが猛プッシュし、その当人が命を落とした結果、アナキンはオビ=ワンの庇護の下でジェダイ入りする。一方で、当初アナキンのジェダイ入りに懐疑的だったヨーダの脳裏には、同じくフォースの集中から創造され、母の死を哀しみ、ダークサイドに堕ちたオーシャのことが浮かんでいた可能性もある。
ここで答えは出せないが、ヴァーネストラ・ロウがヨーダに相談した内容はいずれにせよ「スター・ウォーズ」史にとって重要なポイントになる。シーズン1のラストにサプライズで登場したヨーダが、シーズン2では活躍を見せることにも期待したい。
追記:制作を指揮したレスリー・ヘッドランドはヨーダ登場の背景とロウからヨーダへの相談内容について明かした。詳しくはこちらから。
『アコライト』のシーズン2への更新、あるいはここから派生するスピンオフの発表は近いうちにあるのだろうか。続報に注目しよう。
ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト』は全8話がディズニープラスで独占配信中。
『エピソード1』の200年前を舞台にした正史小説「ハイ・リパブリック」シリーズは講談社より発売中。
Source
Star Wars Explained / Entertainent Weekly / Inverse
シーズン2についてレスリー・ヘッドランドが語った内容はこちらから。
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ザ・ストレンジャーのコルトシスとライトセーバー戦の型についての解説はこちらから。
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