シーズン3最終回第8話ネタバレ解説『マンダロリアン』ラストの意味は? 名前の謎、二人の今後 あらすじ・考察・感想 | VG+ (バゴプラ)

シーズン3最終回第8話ネタバレ解説『マンダロリアン』ラストの意味は? 名前の謎、二人の今後 あらすじ・考察・感想

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ドラマ『マンダロリアン』最終回

ドラマ『マンダロリアン』は2019年11月にディズニープラスで配信を開始した「スター・ウォーズ」シリーズの人気作品。シリーズの開幕から4年目を迎える中で、2023年3月よりシーズン3の配信が始まった。孤児としてマンダロリアンに受け入れられ、賞金稼ぎとして生きるディン・ジャリンは、ジェダイ聖堂で育った孤児のグローグーとの出会いを通して変化を経験していく。

シーズン3では、ディン・ジャリンだけでなく二人を取り巻く人々にも変化が生じる。そして、物語はマンダロリアンという集団全体の未来に関わるものへと発展していく。シーズン3の最終回となる第8話では、どんな結末が待っていたのか、今回も各シーンを解説していこう。

なお、以下の内容は本編と結末部分のネタバレを含むので、必ずディズニープラスで最終話を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『マンダロリアン』シーズン3最終回第8話の内容に関するネタバレを含みます。

シーズン3最終話第8話「帰還」ネタバレあらすじ&解説

いよいよフィナーレ

『マンダロリアン』シーズン3第7話では、マンダロリアンが団結し、ついに惑星マンダロアに上陸。かつて帝国の大粛清によって荒地になったマンダロアを取り戻し、マンダロリアンの新時代を築こうとした一同だったが、そこで待っていたのはモフ・ギデオンが率いる帝国の残党だった。

マンダロリアンと同じくベスカーを装甲に使うモフ・ギデオンたちの前にディン・ジャリンが捕えられると、今度はパズ・ヴィズラが一同を逃すために一人戦い、プレトリアン・ガードの刃の犠牲になってしまう。タイトルでは「スパイ=Spies」と裏切り者の存在が示唆される中、絶体絶命のマンダロリアンはこの危機にどう立ち向かうのか。

シーズン3最終話の第8話も、第7話に続いてリック・ファミュイワ監督が指揮をとる。なお、シーズン1最終話はタイカ・ワイティティ監督が、シーズン2最終話はペイトン・リード監督が指揮をとっている。そして、前回はデイヴ・フィローニも脚本に加わっていたが、最終話は前の2シーズンと同じくジョン・ファヴローが一人で脚本を手がけている。

助けに来たのは…

ディン・ジャリンとパズ・ヴィズラを背後に退却するボ=カターン・クライズは、宇宙へ向かうアックス・ウォーヴスに主力艦を囮に退却するよう告げる。一方、捕えられたディン・ジャリンはトルーパーを倒して脱出しようとしていたが、マンダロリアンと同じ火炎放射器とワイヤーを使う相手に苦戦している。しかし、ここに助けに来たのはIG-12に乗ったグローグーだった。ここで泣いた人いませんか?

グローグーは一人でグループを離れてディン・ジャリンを助けに来たのだ。思い返せばシーズン3の第2話では、グローグーは捕えられたディン・ジャリンを助けることができず、この時はマンダロアを逃げ出してボ=カターンに助けを求めた。この時、グローグーにはディン・ジャリンを助ける力が自分にもあればという思いがあったのかもしれない。

再び訪れたマンダロアで再び捕えられたディン・ジャリン。今のグローグーにはIG-12の身体がある。なんと言ってもトルーパーを制止する時に、必要ないのに「いいえ」ボタンを連打しているところにグローグーの強い意志を感じる。

グローグーは直前にディン・ジャリンに治療のためのバクタスプレーをかけて、腕を引っ張って立たせてもいる。私たちの誰もがグローグーをケアされる存在として見ていたが、この時はグローグーがディン・ジャリンをケアしている。少し早いがディン家の介護を見ているようだ。そう、誰もがケアしケアされる存在になりうるのだ。

そしてディン・ジャリンは、グローグーに「もう逃げない。モフ・ギデオンを倒さないと終わりはない」と覚悟を決めることを確認する。この時のグローグーは、IG-12の声ではなく、自分の身体で頷いて「はい」の意志を表明している。

そして、シーズン3最終話のタイトルは「帰還(The Return)」。「帰還」といえばもちろん『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還(Return of the Jedi)』を想起させる。

それぞれの役割、そしてクローン

ディン・ジャリンはボ=カターンに通信し、逃れてグローグーといることを伝える。ちなみに「I escaped. I’ve got the kid.」と言っており、グローグーに助けてもらったことは伏せている。一同はマンダロリアンを連れて退避するボ=カターンと、モフ・ギデオン討伐のディン&グローグーに分かれることに。

ディン・ジャリンとIG-12に乗ったグローグーのコンビは、はたから見ればシーズン1のディン・ジャリン&IG-11コンビが三度任務に挑んでいるように見える。シーズン1からのファンには嬉しいサプライズだ。

ディン・ジャリンはR5-D4にモフ・ギデオンの司令部を割り出すことを依頼するが、R5には第2話でマンダロアの地下に住んでいたアラマイトに襲撃された嫌な思い出がある。それでも、R5-D4はかつてのR2-D2のように帝国基地への侵入に成功すると、見事に図面を手に入れてディン・ジャリンへ送信している。

ディン・ジャリンは図面を見せながらグローグーに作戦を伝えるが、おそらく角度的にグローグーからはちゃんと見えていない。けれど、情報を共有して相棒として二人が共に任務に挑むことが大切なのだ。

一方のアックスはやっと艦隊と合流し、奇襲を受けたことを報告。主力艦であるクルーザーを自分に託して自分以外の全員を地上に向かわせるよう告げる。一人でクルーザーを手に入れる気か? と視聴者が疑いをかけられる展開になっているが、むしろアックスは捨て身でタイ・インターセプターと交戦。帝国クルーザーとタイ・インターセプターが交戦する珍しい映像になっている。

ディン・ジャリンは前回登場したモフ・ギデオン基地のかっこいいシールドを一つずつ解除し、トルーパーを排除していく。ベスカー装甲の相手をナイフで刺す容赦のなさがディン・ジャリンの魅力だ。また、トルーパーの武器を次々奪って自らの武器にする戦い方は、ジェダイでは見られないスタイル。そして、ベスカーの装甲があってもその隙間を狙って敵を倒す戦法は、普段からベスカーを着ているマンダロリアンだからこそ分かる弱点をついたものだと言える。

シールド突破後、ナイスアシストを見せたがマウス・ドロイドに見つかってしまったR5は空を飛んで脱出。マウス・ドロイドは単純作業用のドロイドなのでぶつかるくらいしか攻撃ができない。兵が出払っている状態ではあまり驚異ではない。

そしてディン・ジャリンは、人がポットに入ったの数々を目にする。そのポットに入っていたのは、なんとモフ・ギデオンと同じ顔の人間だった。グローグーもびっくりしている。ギデオンはシャドー会議のメンバーにも内緒で、ドクター・パーシングから奪った研究結果を流用してクローンの開発を進めていたのだろう。自分のクローンを何体も作るとは、なかなかのナルシストに思えるが、ディン・ジャリンは容赦なくこれを爆破して廃棄する。

アーマラー見参

ボ=カターンはマンダロアに残っていたマンダロリアンたちに隠れ家の洞窟に案内してもらう。大粛清後は各地の洞窟に住んでいたというが、マンダロアでは人間がいなくなった後に自然が戻ってきたという。これは原発事故などで人が住めなくなった土地に自然が戻ったという話と重なる。マンダロアの場合は長年の争いが自然の芽を摘んでいたのだ。

ここに到着したのはマンダロリアンの援軍。率いていたのはアーマラーだ。珍しいアーマラーの降下も見られる。その隣でアーマラーと視線を合わせたボ=カターンは、ダークセーバーを取り出すとマンダロリアン部隊を率いて帝国の部隊と激突する。

アーマラー師匠が空中戦でもベスカーの鍛冶に使う金槌とヤットコを駆使する戦い方がカッコいい。ブラスターなどの光線エネルギー系の武器を信じない、裏を返せばマンダロリアンの伝統に全幅の信頼を置いたアーマラーのスタイル。こんな芯の通った人が裏切り者であるはずがない。

ギデオンのクローン計画

ディン・ジャリンはいよいよモフ・ギデオンと対面。ギデオンはクローンを台無しにされてブチギレの様子だが、そのクローン計画の狙いは、フォースの力を持たせたクローンを作り出すことだったと明かす。フォースを操るための潜在能力を摘出し、それを組み込んだクローンを作るつもりだったという。

この「潜在能力」とは、ミディ=クロリアンのことだろうか。「スター・ウォーズ」の世界では、細胞中のミディ=クロリアンの数が多い場合にフォースの感知能力を持つことができる。ちなみに史上最大のミディ=クロリアン値を検出したのはアナキン・スカイウォーカーだ。ギデオンはグローグーから採取した血液でこの計画を進めようとしていたようだ。

そして、ディン・ジャリンとモフ・ギデオンの対決が始まる。ヘルメットを被ったモフ・ギデオンはダース・ベイダー風の格好ではあるが、よりメカメカしくパワフルな印象だ。フォースが使えない分、メカニックでカバーしようということだろう。それにしてもギデオンのチームは帝国の中でもかなり科学力に長けたチームであることが窺える。

ここに現れたのはやはり前回パズ・ヴィズラを倒したプレトリアン・ガードの3人。4対1で追い詰められるディン・ジャリンを助けたのはまたもグローグー。今度はIG-12の力ではなく「いいえ、いいえ」という“声”で、プレトリアン・ガードを引きつけるのだが、ここでプレトリアン・ガードの3人と共にディン・ジャリンとは別の部屋に封じ込められてしまう。

空中戦ではコスカ・リーヴスの膝ミサイルが決まる一方で、追い詰められたグローグーはIG-12を降りて部屋の中を縦横無尽に跳ね回る。新三部作のヨーダの戦いを思い出させる動きだ。ディン・ジャリンはモフ・ギデオンに押さえ込まれる中、上空からボ=カターンが助けにやってくる。こんなところで戦っていたのか。基地の作りがよく分からない。

グローグーのフォース

ボ=カターンの参戦でディン・ジャリンはグローグーの元へ。そうだ、ディン・ジャリンにはモフ・ギデオンを倒すよりもグローグーを守ることの方が大事だ。ディン・ジャリンは追い詰められたグローグーを助けると、今度は追い詰められたディン・ジリンをグローグーが助ける。二人で一つ、“クラン・オブ・ツー(二人の氏族)”なのだ。

ここでグローグーはフォースを操り始める。プレトリアン・ガードをディン・ジャリンから引き離したり、攻撃を止めたり、拾われそうになった武器を遠ざけたりと、攻撃ではなく“補助魔法”的な使い方でディン・ジャリンを助けるのだ。思えばシーズン1第2話でグローグーはフォースを使いディン・ジャリンをマッドホーンから助け、以来、二人の紋章はマッドホーンになった。成長したグローグーは、今度は3人のプレトリアン・ガードをフォースでいなし、ディン・ジャリンを助けている。

二人は見事にプレトリアン・ガードの3人を倒して見せる。パズ・ヴィズラはかなり手負いの状態で戦っていたが、『スター・ウォー エピソード8/最後のジェダイ』(2017) では8人のプレトリアン・ガードに対してレイとカイロ・レンの二人で対処できている。3人相手なら、手練れのマンダロリアンとフォースの使い手には余裕だろう。

一方のボ=カターンはダークセーバーを手にモフ・ギデオンと互角の戦いを繰り広げている。しかし、その中でギデオンはダークセーバーを破壊。「全てを失ったな」と言い放つが、ボ=カターンが「団結したマンダロリアンは強い」と言い返すと、ディン・ジャリンとグローグーが登場。この時、グローグーは結構早足で歩くことができている。

アックスは他のマンダロリアンたちを逃した上で、燃えゆくクルーザー船をギデオンの基地に落下させる。その中で繰り広げられるディン・ジャリン、ボ=カターン、グローグーvsモフ・ギデオンの戦いでは、グローグーは今度もフォースを駆使してサポートしている。グローグーを邪魔に思ったギデオンがブラスターを向けようものなら、ディン・ジャリンが二丁拳銃を放ちながらの膝スライディングで助けに来る。

ここで遂にクルーザーが基地に落下すると、ボ=カターンも駆け寄ってシールドでグローグーを守ろうとする。互いが互いを守ろうとし、絆を大事にすること、それがマンダロリアンの道だ。3人はギデオンもろとも爆風に飲み込まれるが、グローグーはフォースの力で爆風からボ=カターンとディン・ジャリンを守っていた。フォースを使い続けていたグローグーは爆風が去ると流石に尻餅をついているが、守り属性としては最強クラスのキャラになろうとしている。

孤児から弟子へ

マンダロリアンがマンダロアに帰還。アーマラーは泉でヴィズラの息子ラグナーの宣誓を改めて行なっている。ラグナーは戦いの中で父を失ったが、ヴィズラ氏族のメンバーなので孤児の扱いにはならないのだろうか。

なお、スター・ウォーズ公式サイトで明かされたパズ・ヴィズラの安否と、ラグナーの宣誓に加えられていた変更については、こちらの記事にまとめている。

そして、そこにやはりグローグーを抱っこしている(もう素早く歩けるはずなのに甘やかしている)ディン・ジャリンが登場。グローグーが自分の弟子だと主張する。グローグーのことになると積極的に主張し出すのがディン・ジャリンだ。

曰く、グローグーはもう孤児ではなく弟子なので“歌”に名前を刻んでほしいというのだ。前話ではボ=カターンがグローグーをマンドーの弟子として扱っていたが、厳格な教義を持つチルドレン・オブ・ザ・ウォッチ的にはしっかりマンダロリアンとして登録される必要があるのだろう。

アーマラーはグローグーが「教義を唱えられない」と指摘するのだが、これはシーズン3第4話でグローグーがヘルメットを被っていないと指摘したラグナーにディン・ジャリンが言ったことと同じだ。「孤児のままでいるしかない」と手厳しいアーマラーの言葉にグローグーはしょんぼりしている。

だが、アーマラーに勝るとも劣らない教義の使い手であるディン・ジャリンは、「親が許可すれば弟子になれる」というルールの存在を指摘。アーマラーはグローグーの親はいないと言うのだが、ここでのアーマラーさんはディン・ジャリンの方を見ず、ディン・ジャリンからの決定的な言葉を待っているようにも見える。

「自分が養子にする」。この言葉を聞いたグローグーは喜び、アーマラーは「我らの道」と答える。ここでのアーマラーの「我らの道」は「そうこなくっちゃ」という意味だろう。「This… is the way.」と溜めているのも良い。アーマラーは、マンダロリアンの歌にディン・ジャリンが孤児を息子にすると記すことを宣言。その名前を「ディン・グローグー」とするのだった。

ディンは苗字?

この命名をめぐっては英語圏でも様々な反応が飛び交っている。大多数は「ディン」がラストネームで「ジャリン」がファーストネームだったことに驚くものだ。フルネームが名前→名字の順になっている米国ではなおさら驚いた人も多いようだ。

一方でボ=カターンらがこれまでディン・ジャリンのことを「ディン」と呼んでいたことや、「アナキン・スカイウォーカー」や「ボ=カターン・クライズ」のように「スター・ウォーズ」の世界では名前→名字の順が基本だったことから、あくまでディン・ジャリンの名前は「ディン」がファーストネームで「ジャリン」がラストネームだという指摘もある。

日本でもかつてあった風習だが、親の下の名前を子どもがそのまま引き継ぐ習慣はアメリカにも存在する。アメリカでは「ジュニア」や「シニア」をつけて呼び分けるのだが、シーズン3最終話を見たファンの中には、親のファーストネームを引き継ぐことは親子間の強固な絆を確認するものだという主張も見られる。

また、この名前はアーマラーが決めたものという点もポイントだろう。アーマラーは「マンダロリアンは名前を捨てなければならない」という教義に忠実で、名前は「アーマー職人」を意味する「The Armorer」をそのまま名乗っている。だから、親から名字を受け継いで〜という習慣を当たり前だと思っていなくても不思議ではない。

正確なところは制作側のコメントを待ちたいところだが、元は孤児の二人だ。レイはスカイウォーカー家の苗字を引き継いだが、二人のディンにそのパターンが適用されなくてもよいはずだ。

師匠の存在

そして、アーマラーは「では、」と当然のように弟子と共にマンダロアを去って冒険に出かけるよう告げる。「お前の師もそうした」と付け加えるのだが、今後に向けた意外と重要な示唆ではないだろうか。ディン・ジャリンにも師匠がいたのだ。

記事中ではなんとなく「アーマラー師匠」と呼んでいたが、もしかするとアーマラーがディン・ジャリンの師だったのだろうか。あるいは、ディン・ジャリンも孤児であるため苗字を持たず、ディンは師から受け継いだ名なのかもしれない。

ディン・ジャリンに師匠がいたということは、これまでグローグーに航海の方法や探検の仕方を教えていたのは、師匠が自分にしてくれたようにグローグーにもしてあげていたのだろうか。そう考えるとなんだかより愛おしい。

グローグーは泉の中を覗き込むと手を伸ばす。その先には、海底に眠るミソソーの姿が。グローグーの存在を感知したのか、ミソソーが目を覚ましてマンダロリアンの新時代が訪れる。ボ=カターンが鍛冶場に火を入れ、ヘルメットを被ったマンダロリアンと被っていないマンダロリアンと、多様なマンダロリアンが宗派を超えて「マンダロアのために!」と団結を見せるのだった。

やはり、デス・ウォッチのヘルメットを被らないやり方も共存できたようで、弟子になったがヘルメットを被っていないグローグーは、このデス・ウォッチの習慣を取り入れたらしい。グローグーがマンダロリアンになったらヘルメットを被って顔が見えなくなってしまうと心配になった人もいるかもしれないが、アクロバティックな方法でそれを回避している。

二人のその後

マンドーは第5話にも登場した新共和国のパイロットたちが集うバーに降り立つ。今度はグローグーを歩かせている。ディン・ジャリンはいつもグローグーを抱っこするか、ポッドに乗せていたが、弟子になった今、ようやく“自立”させたようだ。

ディン・ジャリンがカーソン・テヴァにこっそり仕事を回すよう交渉している間、グローグーは今までになく自由に動き回っている。また少し成長したようだが、すぐにスナックに手を出す食欲は相変わらず。よく見ると左手にお菓子を持ちながら右手で新しく出されたお菓子を取って食べている。このままだとグローグーは太るのではないだろうか。

ディン・ジャリンはグローグーがいるので、これまでのような賞金稼ぎの仕事はできないが、仕事を選んで受けると話す。手が回っていない新共和国にとってもありがたい申し出だが、あくまで自由(それはグローグーを守るための自由でもあるだろう)でいたいディン・ジャリンは、契約はせず受けたい仕事だけやるという方法で話をつける。銀河に名を馳せたであろうマンダロリアンだ、それくらい強気でも良い。

バーでIGシリーズのヘッドパーツを見つけたグローグーは声を出して何かを主張する。これも成長した点だろう。ドロイドの頭部を指差す時、字幕があるとグローグーの手が隠れてしまうのだが、ディン・ジャリンとグローグーは二人で一緒にパーツを指差している。

「前払金」としてIGシリーズのパーツを手に入れたディン・ジャリンは、ネヴァロでグリーフ・カルガから街の近くにある家をプレゼントされると、お返しの贈り物として復活したIG-11を紹介する。ディン・ジャリンが欲しかったパーツは、IG用の記憶回路だったようだ。アンゼラ人に修理してもらったのだろう。ネヴァロを守る新保安官として市民に歓迎を受けている。

そして、ネヴァロに一軒家を手に入れたディン・ジャリンは、グローグーとゆっくり過ごしている。その間もフォースを使う練習をしているグローグーは、フォースでカエルを浮かせているが、これはドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021-2022) でルークとの修行中にやっていたことだ。その時はカエルを食べようとしていたが、少し成長したグローグーは、そのカエルを池に返してやるのだった。

ドラマ『マンダロリアン』シーズン3はここで幕を閉じる。シーズン2のようなポストクレジットを利用した予告もなく、一旦これで終わり、という演出に。緊張が走るクリフハンガーで数年待たされるより100倍良い。次の冒険が始まるまで、二人で幸せな時間を過ごしてほしい。

『マンダロリアン』シーズン3最終話第8話 感想&考察

幸せを手に入れた二人

これ以上ないハッピーエンドだった。マンダロリアンはマンダロアに帰還し、新たな歴史をスタートさせた。ディン・ジャリンとグローグーは正式に親子になり、新しい生活を手に入れた。

思えば、シーズン3でディン・ジャリンが寝ていた場所はN-1 スターファイターの中だった。ハイパースペースを通る間、ディン・ジャリンは居眠りをしてグローグーはその膝の上で眠っていた。やっと落ち着ける二人のマイホームを手に入れたことになる。

家族と家はアメリカにおける伝統的な“幸せの形”であり、一見、保守的な結末のようにも思える。だが、幼い頃に親を失い、戦争から逃れてきた孤児の二人がようやく“人並み”の生活と安住の場所を手に入れたことを誰が非難できようか。出会って、別れて、マンダロリアンを救って——大忙しの日々を終えたのだから、二人にはとりあえず一息ついてほしい。

なお、デイヴ・フィローニは「マンドーが彼の家族」として、グローグーの種族としてのルーツを深掘りするつもりはないと話した。この件はこちらの記事に詳しいが、しばらく二人の関係に横槍が入ることはなさそうだ。

スパイとは?

結局、シーズン3第7話でファンを騒然とさせ、気が気でない一週間を過ごさせた「スパイ疑惑」は杞憂に終わった。モフ・ギデオンの護送船に残っていたベスカーは、ベスカー製のトルーパーの新しいアーマーの破片だったようだ。

米大手掲示板のRedditでは、脚本を手がけたジョン・ファヴローはユダヤ人で、旧約聖書ではユダヤ人が古代イスラエルに「スパイ(偵察隊)」を送り、その土地が住めるかどうか調査させる物語があると指摘されている。前回のタイトルの「スパイ」は「裏切り者」という意味ではなかったということだ。

海外でも多くのファンとメディアが裏切り者がいると思い込んだため、おそらくジョン・ファヴローが意図して仕込んだミスリードだったのだろう。スパイがいるという発想自体が間違いという種明かしとなり、安心はしたけれど、一週間ハラハラしていた時間を返してほしい……。

クローン計画は頓挫?

シーズン3第8話では、新たなクローン計画を目指していたモフ・ギデオンの野望も打ち砕かれている。それにしてもフォースを宿らせたクローンの開発というのは、続三部作の最高指導者スノークにつながっていきそうなものだが、ギデオンは仲間にも内緒でこの計画を進めていたらしい。前回のシャドー会議ではクローン研究についてシラを切っていたのだ。

しかし、ギデオンは炎に包まれたがベスカーのアーマーを着ていたし、アナキンのように大火傷は負っても生きている可能性もある。それに「スパイ」だったイライア・ケインも新共和国内にいるので、このクローン計画はまだ存続する可能性もあるだろう。何より、研究はかなり進んでいたようでもあった。

ドクター・パーシングは個々の特性を掛け合わせたクローンの発明を目指していたが、ギデオンは自分の長所にグローグーのフォースの力を掛け合わせたクローンを作りたかったのだろう。シーズン1からグローグーの血液が狙われていた理由がこれで判明した。

一方で、ギデオンがグローグーの血液を求めていた理由が3シーズンかけて判明したことで、物語もひと段落したように思える。3シーズンで一区切りとなり、次からはまた新しいテーマの物語に入るのではないだろうか。だからポストクレジットも不安にさせるようなクリフハンガーも置かなかったのではないか。

次はどうなる?

もしかすると、次にディン・ジャリンとディン・グローグーが登場するのは、シーズン3のラストよりまた数年経った時点から、という可能性もあるかもしれない。グローグーの成長を追えないのは少し寂しい気もするが、900年は生きる種族なのだから、あまり成長をゆっくり描いてもいられないだろう。

他の「スター・ウォーズ」作品でディン親子がゲストキャラとして助太刀する展開があったら胸熱だ。孤児だった二人がこれから親子として銀河の英雄になっていくとすれば、私たちは物凄いオリジンを目撃したのかもしれない。

一方、「スター・ウォーズ」のドラマシリーズは、2023年8月配信の『アソーカ』2023年中の配信を予定している『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー(原題)』が控えている。『アソーカ』は『マンダロリアン』にも登場したアソーカ・タノが主人公で、『スケルトン・クルー』はジュード・ロウ演じるジェダイが主人公だ。

両作ともフォースの使い手が主人公ということだが、時代設定は『マンダロリアン』と同じ時期に設定されている。『マンダロリアン』とのクロスオーバーも期待できる。なお、『スケルトン・クルー』については、『マンダロリアン』シーズン3第5話でゴリアン・シャードを見捨てて逃げた海賊のヴェインが登場することは確定している。詳しくはこちらの記事で。

加えて、2023年のスター・ウォーズ セレブレーションでは、デイヴ・フィローニが手がける新作映画の制作発表も行われている。同作では新共和国時代を舞台に、ドラマのキャラクターたちが登場するとされており、実質『マンダロリアン』の映画化と見る向きもある。

加えて、ジョン・ファヴローは既に『マンダロリアン』シーズン4の執筆に取り掛かっており、「ずっと続いて欲しい」と話している。早くからそうした発信をしていた背景には、シーズン3が綺麗に終わるのでファンを心配させたくないという思いがあったのかもしれない。ジョン・ファヴローのシーズン4に関するコメントはこちらの記事にまとめている。

二人はやっと一息つけたが、『マンダロリアン』はまだまだ終わらない。今度はどんな冒険が待っているのか、私たちも一息つきつつ、次の展開を楽しみに待とう。

ドラマ『マンダロリアン』シーズン3は2023年3月1日(水) より、ディズニープラスで独占配信。

『マンダロリアン』(Disney+)

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2025年には日本で「スター・ウォーズ」最大の祭典、スター・ウォーズ セレブレーションが開催される。『マンダロリアン』のキャストに会えるかも? 詳しくはこちらから。

ドラマ『アソーカ』特報予告に登場した『スター・ウォーズ 反乱者たち』からの繋がりについてはこちらの記事にまとめている。

尋問官の登場も? 新キャラたちが並ぶ『アソーカ』のヴィランについての考察はこちらの記事で。

8月配信開始の『アソーカ』は『マンダロリアン』と同じく全8話になることが明かされている。詳しくはこちらから。

「スター・ウォーズ」映画の新三部作についての発表の詳細はこちらの記事で。

シリーズで最も過去を描くジェームズ・マンゴールド監督の作品については、同監督が「フォースの始まり」と「最初のジェダイ」を描くと話した。詳しくはこちらの記事で。

ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト(原題)』の情報はこちらから。

ドラマ『スター・ウォーズ:スケルトン・クルー』の情報はこちらの記事で。

 

シーズン3第7話のネタバレ解説はこちらから。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

第4話のネタバレ解説はこちらから。

第5話のネタバレ解説はこちらから。

第6話のネタバレ解説はこちらから。

 

シーズン3第7話と第8話を手がけるリック・ファミュイワ監督が語ったグローグーの魅力はこちらの記事で。

ボ=カターン・クライズ役のケイティー・サッコフが語ったシーズン3におけるボ=カターンの心情はこちらから。

シーズン3配信のタイミングで、主演のペドロ・パスカルは生涯マンダロリアンを演じると宣言した。詳しくはこちらから。

ジョン・ファブローと共に『マンダロリアン』の監督・脚本・制作総指揮を手掛けるデイブ・フィローニは、グローグー=ヨーダのクローン説に言及した。詳しくはこちらの記事で。

 

アニメ『バッド・バッチ』シーズン2最終回第16話のネタバレ解説はこちらの記事で。

ドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』最終回のネタバレ解説はこちらから。

高い評価を受けている「スター・ウォーズ」ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン1の解説はこちらから。

ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』の解説はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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