シーズン3第7話ネタバレ解説『マンダロリアン』グローグーの声、ディン・ジャリンの忠誠 あらすじ・考察・感想 | VG+ (バゴプラ)

シーズン3第7話ネタバレ解説『マンダロリアン』グローグーの声、ディン・ジャリンの忠誠 あらすじ・考察・感想

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『マンダロリアン』シーズン3第7話はどうなった?

2023年3月1日(水) より配信を開始したドラマ『マンダロリアン』シーズン3が佳境に入っている。これまでのシーズン同様、全8話で構成されるシーズン3は第7話に突入。直前の週末にはロンドンで開催された「スター・ウォーズ セレブレーション」でドラマ『アソーカ』の8月配信と共に予告編が公開され、新たな「スター・ウォーズ」映画三作品の制作も発表されるなど、「スター・ウォーズ」フランチャイズ全体も大いに盛り上がりを見せている。

新映画三作品のうちの一作は、『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』(2008-2020) などを手掛け、『マンダロリアン』でも監督と脚本を務めるデイヴ・フィローニが指揮を執ることも発表された。『マンダロリアン』が映画に合流すると見られ、本作の位置付けはさらに重要なものになりつつある。

最終話目前となる『マンダロリアン』シーズン3では、どんな展開が待っていたのだろうか。今回も各シーンを解説していく。なお、以下の内容はネタバレを含むため、必ず本編をディズニープラスで鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『マンダロリアン』シーズン3第7話の内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『マンダロリアン』シーズン3第7話チャプター23「スパイ」ネタバレ解説

二つの謎

『マンダロリアン』シーズン3第7話を手掛けるのは、リック・ファミュイワ監督。長編映画『DOPE/ドープ!!』(2015) で知られ、『マンダロリアン』ではシーズン1で第2話と第6話、シーズン2で第7話、シーズン3で第1話、第7話と第8話の監督を務める。つまりここからの二話はリック・ファミュイワ監督の作品になるということだ。なお、第7話はジョン・ファヴローに加えてデイヴ・フィローニも共同で脚本を手掛けている。

シーズン3第7話の回想では、惑星マンダロアが生息可能な空気であったこと、ボ=カターンがアーマラーによって新たなマンダロアの統治者に選ばれたこと、デス・ウォッチメンバーを連れ戻すと共にダークセーバーがボ=カターンの手に渡ったことが描かれた。いよいよマンダロア再興に向けて物語が動き出すことが示唆されている。

一方で、前話の考察でも書いたモフ・ギデオン脱走の現場に残されていたベスカーと、新共和国に入り込んだ帝国の残党のイライア・ケインの謀略というミステリーが残されていることも改めて提示されている。とても丁寧な回想だ。

残党会議

サイバーパンクな街並みにぴったりのコート姿で現れたイライア・ケインは、ドロイドに対して「TK-2755」と自身の識別番号を明かす。「TK」はストームトルーパーに割り当てられる識別番号の一種であり、イライアが元トルーパーだったということを示している。

そしてホログラムで現れたのは、シーズン3で初登場となるモフ・ギデオン。イライアはネヴァロの海賊がやはり帝国と繋がっていたことを明かし、モフ・ギデオンはマンダロリアンによる海賊退治を知る。ここでギデオンは、チルドレン・オブ・ザ・ウォッチとデス・ウォッチのボ=カターンが協力していたことに対し、両者は敵対する派閥であり、あり得ないと感情を露わにしている。

仲間割れしていて連帯することはないと思われていた人々の予想外の団結は敵を動揺させる。アーマラーはモフ・ギデオンの脱走を知らないため、敵のことは念頭になかったはずだが、マンダロリアンの未来を考えた勇気ある決断が帝国の残党を震え上がらせているのだ。

モフ・ギデオンはマンダロリアンに自ら対処することを表明。シーズン2ではモフ・ギデオンはベスカーの槍を持ったディン・ジャリンに敗れたが、ダークトルーパーを含むチームとしてはジェダイマスターのルーク・スカイウォーカーが介入なければ、勝負の行方は分からなかった。ギデオンにはマンダロリアンに対抗する秘策があるようだ。

モフ・ギデオンはかっこいいレーザータイプの扉を通り抜けていくが、その廊下にはトルーパーとタンクに入ったクローンのような影が確認できる。フロアでは帝国の残党による会議が行われており、まだ力を隠しておくべきだとか、ハイパースペース・レーンを奪って資金を作るべきだとか議論を交わしている。

ハイパースペース・レーンとはハイパースペース・ジャンプをする時の航路のこと。どこでもジャンプしていいわけではなく、ジャンプ先で惑星に突入したりする事故を防ぐためにルートが開拓されており、ハイパースペース・ジャンプは開拓済みのルートを使うのが基本だ。ハイパースペース・レーンを押さえれば航路を押さえることができるが、もちろん帝国の残党の存在感を銀河に示すことになってしまう。

パレオン艦長は、自分たちのことを「統制の取れていない残党の寄せ集め」と冷静な分析を披露している。こういう謙虚さを持ち合わせたメンバーが一人いるとチームとしては強い。実際、続三部作においてはファースト・オーダーは新共和国からは烏合の衆として見られていたという設定もある。その思い込みがファースト・オーダーの台頭を許し、パルパティーンの野望に歯止めをかけられなかったのだから、パレオン艦長の貢献は大きい。

パレオン、スローン、ハックス

一方で「パレオン艦長」は、ついに「スローン大提督の帰還」が軍再興の先触れとなり、「ハックス司令官の蘇り計画」を進められると断言する。パレオン艦長は元々非正史のレジェンズ作品に登場していたキャラクターで、正史の『スター・ウォーズ 反乱者たち』(2014-2020) で音声でのみ登場した。この時はまさにスローン大提督から作戦中に通信で呼び出されていた。このことからスローン大提督から信頼されていた人物だと考えられる。

スローン大提督は「スター・ウォーズ」ファンに人気のキャラクターで、こちらもレジェンズのキャラクターだったが、アニメ『反乱者たち』で正史に登場。青い肌と赤い目、そして白い制服が特徴で、『マンダロリアン』シーズン2ではアソーカ・タノが帝国崩壊後もスローンを追っていることが明かされた。

ちょうどシーズン3第7話配信前の「スター・ウォーズ セレブレーション」で発表されたドラマ『アソーカ』の予告編では、「スローン大提督の帰還」に触れられ、その後ろ姿が映し出された。そして、翌日には『反乱者たち』でスローンの声を担当したラース・ミケルセンが同役を演じることが発表された(詳しくはこちらの記事で)。

これが『マンダロリアン』シーズン3第7話とリンクする発表だったことも驚きだが、続く「ハックス司令官の蘇り計画」発言にも驚かされた。ハックス司令官といえば続三部作でファースト・オーダーの将校として登場したアーミテイジ・ハックスだ。しかし、ハックスは父のブレンドル・ハックスも帝国の司令官だったため、ここではどちらのことを指しているのかは定かではない。

少なくとも、特定の人物を“蘇らせる”ということだから余程有能で忠誠心の高い人物だったと考えられる。ジェダイとして帰還したダース・ベイダーことアナキン・スカイウォーカーを蘇らせても仕方ないわけだが、そもそもここで言う“蘇らせる”とは、パルパティーンのようにクローンとして蘇えるということなのだろうか。冒頭から驚きの連続……。さすがはデイヴ・フィローニ共同脚本回だ。

なお、ギデオンはこの会議の名前が「シャドー評議会」だと明かしている。帝国勢は相変わらずのネーミングセンスである。

ネクロマンサー計画

しかし、モフ・ギデオンはスローン大提督は姿を消したままだと主張する。おそらくスローン大提督の動向はドラマ『アソーカ』に繋がっていくのだろう。スローンは『アソーカ』で戻ってくることが確実視されているが、パレオン艦長はスローンの帰還を秘密にしてこそ目的を達成できると主張する。ギデオンがそれを信じていないことを見るに、パレオンの方針は成功していると言える。欺くなら味方からだ。

モフ・ギデオンは、スローンの帰還を信じていないというより、新たなリーダーシップの確立を急いている。もちろん自分が新たなリーダーになりたいのだろう。現時点で“烏合の衆”である帝国の残党がどのようにしてファースト・オーダーへと組織されていくのかは見ものである。

また、「蘇り計画」は新たな指導者を生み出すためのものだとも述べられているが、ここでの「蘇り計画」の部分は英語では「Project Necromancer」となっている。ネクロマンサー計画というのが、死んだ人間を蘇らせる計画ということだろう。リーダーシップと蘇りというキーワード、そして直前に映ったタンクの人影を見るに、やはりこの計画はクローンによって死者を蘇らせるという計画のように思える。

また、ドクター・パーシングのクローン研究にも触れられており、ギデオンは少なくとも今はその研究成果は失われたと言っている。イライア・ケインの話を出さず、クローン計画についても口を閉ざすあたり、やはり敵を欺くなら味方から、という帝国のスタイルが読み取れる。

モフ・ギデオンは余裕のある陣営にプレトリアン・ガードを3人タイ・インターセプターの増援部隊、そして爆撃機のボマーを要請したことが明かされている。プレトリアン・ガードは『スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』(2017) に登場した赤い防具を身にまとった衛兵で、パルパティーンを護衛していたロイヤル・ガードがローブを取ったような姿をしている。

プレトリアン・ガードは後の最高指導者スノークの衛兵であり、モフ・ギデオンが新たな指導者になろうとしているのは明らかだ。一方でギデオンがマンダロリアンの脅威を明かすと、一同は急にギデオン側に立ち増援を送ることに合意するのだった。帝国側は惑星マンダロアの存在を計画の中に入れていることが伺える。

ギデオンが「帝国に栄光あれ」という標語を唱えると一同もそれに続く。「我らの道」に対抗する標語が宣言されたところで、シーズン3第7話チャプター23の「スパイ」というタイトルが明かされる。物々しい雰囲気でのスタートだ。

甘やかされるグローグー

一転して場所は惑星ネヴァロ。第5話での海賊襲来からの復興に取り組んでいる様子が映し出されている。そこに到着したのは第6話で合流したデス・ウォッチの艦隊。元帝国の艦隊だが、メイン機体の軽クルーザーにはマンダロリアンの紋章であるミソソーの頭蓋骨が描かれている。

ボ=カターンは心強すぎる艦隊を連れ帰り、アーマラーはそれを歓迎する。なんと美しい光景か。ちなみに船を操縦するボ=カターンの膝の上にはグローグーが乗っている。先週までは隣でフローティング・ポッドに乗っていたが、ボ=カターンもグローグーを甘やかしているのだ。

甘やかしたくなるのがグローグーの魅力だが、ボ=カターンはデス・ウォッチとチルドレン・オブ・ザ・ウォッチが団結できるかを心配しており、ボ=カターンにとってもストレス緩和、緊張軽減の効果があるのだろう。グローグーは、グローグーをケアする側に変化をもたらすというのが第7話のリック・ファミュイワ監督の考え方である。

マンダロリアンの団結を祝すグリーフ・カルガは、あるプレゼントをディン・ジャリンに、いや、グローグーに授ける。それは、アンゼラ人がIG-11から改造したIG-12だった。IG-12は操縦式に改造されており、それを見たグローグーはすぐに乗り込もうとする。第1話で抱きしめ殺されそうになったアンゼラ人はグローグーを警戒しているが、グローグーはそれよりIG-12に興味津々だ。

シーズン3第4話では「戦うには幼い」というラグナー(パズ・ヴィズラの息子)の言葉を否定していたディン・ジャリンだが、今度は「操縦には幼すぎる」と主張している。そこにはドロイド嫌いのバックグラウンドもあるのだろう。かつてグローグーの命を狙ったドロイドということであれば尚更だ。

「もっと成長してから……」と言うマンドーに対し、IG-12に乗り込んだグローグーは「いいえ」ボタンを駆使して自己主張を始める。初めての反抗期である。無理やりIG-12から降ろそうとするマンドーの腕をグローグーはIG-12を操作して振り払い、自由に歩き回る。ちなみにアンゼラ人は第1話でグローグーがフォースを使って食べていたグリーフ・カルガのオフィスにある豆のようなものを食べている。みんな自由だ。

ここでは初めてマンドーと同じレベルの“力”を手に入れたグローグーの奔放な行動が描かれている。市場で勝手に食べ物をたべ、ディン・ジャリンが代金を支払う場面も。代金を支払うだけじゃなくて、しっかり怒らないと! ディン・ジャリンの子育てはまだまだこれからだ。

惑星マンダロアへ

一方、マンダロリアンの歓迎の宴ではボ=カターンがスピーチをしている。まずは艦隊をマンダロアに送り安全な場所を確保すること、両方の部族から志願者を募ってこの作戦を実行することを提言。やはりここで先陣を切るのはディン・ジャリンだ。グローグーも同行させると言っており、アニメ『バッド・バッチ』(2021-2024) におけるハンターのオメガの扱いとの違いが示されている。

ディン・ジャリンはまずグローグーを立派なマンダロリアンに育てたいと思っているのだろう。加えて、「クラン・オブ・ツー=二人の氏族」としてはセットで動くというのが基本なのだろうか。他のマンダロリアンも次々と「I will go.」と宣言。なんとアーマラー師匠もここに加わる。ボ=カターンとディン・ジャリンへの連帯はもちろん、もしかするとここでも、グローグーが行くなら自分も行かないわけにはいかない、という心理も働いたのかもしれない。

“マンダロリアン艦隊”が惑星マンダロアへ。胸熱展開だが、グローグーが新しいお気に入りになったIG-12に乗り込んでボ=カターンの船に乗っているのが可笑しい。ボ=カターンからすればグローグーが膝の上に乗ってくれたのはプラジール15からネヴァロへの片道だけであり、少し寂しいのではないだろうか。

降下前にはパズ・ヴィズラが大粛清時にマンダロアにいたデス・ウォッチメンバーから当時その場にいたことを聞かされるシーンが挿入されている。大粛清時には既にチルドレン・オブ・ザ・ウォッチは惑星マンダロアを離れており、最後まで戦っていたのはデス・ウォッチだったのだ。

地表の安全を確認し、一同が無事に降り立つと、ボ=カターンは鍛冶場を探して安全を確保したのちに入植者たちを降ろすとプランを話す。流石のリーダーシップを発揮している。

ディン・ジャリンの忠誠

一同が遭遇したのは、惑星マンダロアに残っていた流浪のマンダロリアンたち。なんとボ=カターン・クライズの帰還を信じてここで暮らしていたのだ。降伏を拒んだマンダロリアンたちは銀河への見せしめとして帝国に罰せられたと話すが、ボ=カターンは実際には降伏を受け入れていたことを明かす。

「千の涙の夜」というのは帝国による惑星マンダロアの大粛清のことだ。モフ・ギデオンに出会ったボ=カターンは、停戦交渉を行い、武装解除をすればマンダロアは助かるはずだったが、ダークセーバーがモフ・ギデオンの手に渡ると約束は反故にされ、大粛清が行われたという。

ここで初めて『反乱者たち』でボ=カターンの手に渡ったダークセーバーがモフ・ギデオンが手に入れた経緯が明かされた。話を聞く限りは、モフ・ギデオンもボ=カターンを倒してダークセーバーを手に入れたわけではないようだ。だからシーズン2のラストで、ダークセーバーは倒して奪わなければならないとギデオンは言ったのだろうし、ギデオンが倒される姿を見てボ=カターンもそれに同意したのだろう。

一方、アーマラーも、チルドレン・オブ・ザ・ウォッチはコンコーディアに隠れていたと正直に話す。デス・ウォッチが多くの敵対勢力に分裂したという話から、ボ=カターンは、マンダロリアンはどんな敵も退けてきたが、常に分裂によって身を滅ぼすと反省を述べる。シーズン3第7話は明らかに“団結”がテーマになっている。

ボ=カターンが民を救うために降伏を選んでいたことを知ったディン・ジャリンは、自分たち以外は道を捨てたと誤解していたと話すが、ボ=カターンは「憎しみが深い」と正直な気持ちを吐露する。一方で、ディン・ジャリンは、デス・ウォッチはダークセーバーや階級、家柄にこだわるが、チルドレン・オブ・ザ・ウォッチは名誉、忠誠心、人柄にこだわると話し、その上でボ=カターンへの忠誠を示す。

ボ=カターンが王族だからとか、クライズ氏族だからとか、ダークセーバーを持っているからとか、そういうことでボ=カターンを支持しているのではなく、ボ=カターンの人柄を支持し、そこに仕えることが名誉であると感じるから従う——。かつてこれほど心を揺さぶる忠誠の表明があっただろうか。

ディン・ジャリンは「君の歌はまだない」と話す。歌はマンダロリアンの文化の一つ。「ミソソーがマンダロアの新時代を告げる」という予言も「古代の歌」として紹介されていた。ボ=カターンの歌がないということは、ディン・ジャリンはボ=カターンが背負う歴史に仕えているわけではないということだ。ディン・ジャリンが仕えるのはこれからのボ=カターンのため。様々なものを背負ってきたボ=カターンにとっては、その言葉はとても新鮮なものだったのではないだろうか。

グローグーの声

放浪していたマンダロリアンの船のキャプテンは、一同を鍛冶場へ案内する。パズ・ヴィズラとアックス・ウォーヴスはチェスのようなゲームで遊んでいるが、「エンフォーサーはそうは動かせない」「横っ跳びだ」「そう動かせるのはウィングガードだ」「エンフォーサーは横にある時はウィングガードのように動ける」と揉めている。ローカルルールで揉めることあるけど。

これだけのことで決闘を始めた二人。やはり好戦的な民族として知られているだけのことはある。この文化で生きてきたボ=カターンとディン・ジャリンがそれを傍観する中、二人を止めたのはグローグーだった。介入する“力”と主張する“声”を手に入れたグローグーは、IG-12で二人を抑えると「No」ボタンを連打してこの場を治める。

もしかしたらグローグーはこれまでマンドーたちと一緒にいて、介入したくなる場面も何度かあったのかもしれない。シーズン3第7話では、その純粋無垢な存在が初めて力を持った時にどんなことが起きるのかということが示されている。冒頭の好き勝手に振る舞う姿はその負の側面だったが、ここでの喧嘩の仲裁は大人たちができなかったことを平気でやるプラスの側面が出ている。

ちなみにボ=カターンは「立派な弟子だね」と言っているが、「弟子」は英語で「apprentice」と言っており、これはシーズン3第4話で紹介された「孤児から弟子へ (from foundling to apprentice)」というマンダロリアンの成長のステップに一致する。ボ=カターン的にはグローグーはもう弟子になったと考えているようだ。

帝国による簒奪

アーマラーは放浪していたマンダロリアンのうち、負傷していたメンバーを連れて艦隊へと戻る。アーマラーのこの行動が、シーズン3最終回の命運を握る伏線になることは間違いない。

鍛冶場に向かう一行の前に現れたのは巨大怪獣。飛べないグローグーのIG-12はアックスとパズが持ち上げて避難させている。船を放棄して一同が逃げ込んだのは、かつて文化の中心地だったという鍛冶場。ここに現れたのはベスカーのアーマーを身につけた帝国のトルーパーだ。冒頭でモフ・ギデオンが歩く廊下で並んでいたトルーパーである。

マンダロアの地下にあった鉱山はベスカー鉱石の産地だった。帝国はここでベスカーを採取し、マンダロリアンをモデルにした新型トルーパーアーマーの開発を進めていたのだろう。ベスカー仕様のアーマーだけならまだしも、ジェットパックもつけているのだからマンダロリアンのスタイルをパクっていることは間違いない。

ここでアックスは離脱して援護を呼びに行っている。残された一同はトルーパーたちを追い詰めたかに思われたが、これは待ち伏せ作戦だった。タイ・インターセプターのあるフロアにディン・ジャリンを残し、一同は閉じ込められてしまう。捕えられたディン・ジャリンの前に現れたのは、マスクを着けたモフ・ギデオンだ。

ギデオンは、シーズン2でルークに敗れたダーク・トルーパーを改善するためにベスカーを使って新スーツを作り、自らのスーツもベスカー製にしたという。「あらゆる社会は役に立つ」と言い、クローン、ジェダイ、マンダロリアンの特徴を取り入れて銀河を支配するというギデオン。まさに「帝国主義」だ。

第6話では多元的な文化を受容するプラジール15が舞台になったが、帝国は様々な文化を簒奪し、盗用することでその力を奪おうとする。アニメ『バッド・バッチ』では、帝国は惑星カミーノを滅ぼしてクローン技術を奪い取っており、帝国はマンダロリアンに対しても同じことをしていたことが判明した。

また、ジェダイの名前が挙がっている点については、フォース・センシティブであるグローグーの血を手に入れようとしていたこととも繋がっているのだろう。一方で、シスやフォースの力は帝国にとってはそのパワーの一部分でしかないというモフ・ギデオンの宣言とも受け取れる。“帝国”とはあくまでもシスの組織ではなく、シス卿がいなくても生き延びる帝国主義の組織なのだ。

最後に現れたのは…

ディン・ジャリンは尋問部屋へと連れていかれ、ボ=カターンは大粛清の時以来となる降伏を迫られるが、今度はそれを拒否して、ダークセーバーを退却のために使ってマンダロリアンを逃すのだった。しかし、シーズン3第7話はそれでは終わらない。

パズ・ヴィズラは皆を安全に逃すために自らが犠牲になって一人戦う。流石の戦闘力を誇るパズはトルーパーたちを全滅させるのだが、手負いのパズの前に現れたのは、3人のプレトリアン・ガードだった。この直前にはモフ・ギデオンはタイ・インターセプターとボマーを艦隊退治に向かわせており、冒頭で要請した援軍をフルに活用している。

『最後のジェダイ』ではカイロ・レンとレイの前に8人がかりでも敗れ去ったプレトリアン・ガードだったが、手負いのパズに対して一方的な戦いを繰り広げている。エネルギー系の近接武器はベスカーのアーマーを貫いているようにも見えるが、アーマーの隙間に刃を刺し込んでいるようにも見える。パズは倒れてシーズン3第7話は幕を閉じる。最終回を前にして衝撃的な幕切れだ。

『マンダロリアン』シーズン3第7話 感想&考察

パズは生きている?

衝撃のクリフハンガーだ。シーズン1から登場し、ドラマ『ボバ・フェット』ではダークセーバーをかけてディン・ジャリンと決闘も繰り広げたパズ・ヴィズラが倒れるとは。パズ・ヴィズラの声を演じているのはシリーズのショーランナーを務めるジョン・ファヴローで、自分のキャラならば退場させやすかったのかもしれない。

しかし、プレトリアン・ガードの武器がベスカーを貫いたわけではなく、その隙間から刺されただけだとすれば、パズは生きている可能性が高い。なぜならシーズン3第3話でアーマラーはベスカーの装甲が弱点を守るためのものであることを示唆しており、アーマーで守られていないところを刺されたとしても死には至らないだろう。実際、プレトリアン・ガードの武器の刃は肩と腹部に刺さっているように見える。

パズは生きていると信じたい。もしジョン・ファヴローがショーランナーをやりながら声優もやるのが大変だと感じているとすればシーズン3で退場となることもいた仕方ないが……。

スパイは誰?

そんなパズの容体にも関わるのがアーマラーの動向だ。一同がピンチに陥る直前に船を離れたことで、すでにネット上では“アーマラー=スパイ説”が飛び交っている。マンダロアが危機に陥った時にコンコーディアに隠れていたという話をしていたのが伏線と捉えることもできるし、帝国がベスカーを手に入れたところで鍛冶師なしでアーマーを鋳造できるのかという疑問もある。

加えて、シーズン3第7話のタイトルは「スパイ」。それも英題は「Spies」で複数形になっている。それが冒頭に登場したイライア・ケインとアーマラーのことではないかと考えることもできるのだが、流石にそうあってほしくはない。いや、アーマラーさんはそんなことはしない。

ヒントになるのは、第7話の冒頭でモフ・ギデオンがデス・ウォッチとチルドレン・オブ・ザ・ウォッチが団結したことについて、「あり得ない」と感情を露わにしていたことだろう。仮にアーマラーがスパイであえてボ=カターンをリーダーに祭り上げたのだとすれば、それも計画の一つであるはずで、ギデオンが焦りを見せるはずがない。ギデオンにとって両者の団結が予想外のものだったのだとすれば、アーマラーとギデオンが通じている可能性は低い。

確かに、一同が怪獣に襲われて船を失い、鍛冶場に逃げ込んで罠にハマるという展開を見れば、マンダロリアンに内通者がいる可能性は高い。現地の流浪のマンダロリアンも怪しいが、トルーパーに撃たれて負傷したメンバーもいるので全員グルということはないだろう。

となれば、一同が捕えられる直前に援護を呼びに行くと言って戦線から離脱したアックスも十分に怪しい。アックスはまだボ=カターンからリーダーの座を奪われたことに納得していないのかもしれない。また、シーズン3第5話のラストでモフ・ギデオンを脱走させた護送船からベスカーの破片が見つかっていることから、アックスが帝国に金で雇われている可能性もあるが、果たして……。

気づけばシーズン1からお馴染みのパズ、アーマラー、そしてディン・ジャリンが色んな意味で窮地に立たされてる。ファンを不安にさせるのが絶妙に巧い。

グローグーのマンダロリアンへの道

では、お楽しみの方の話をしよう。今回のハイライトの一つは、歩くのが非常に遅いグローグーがIG-12の身体を手に入れたことだ。ドロイド嫌いだったマンドーは複雑な気持ちかもしれないが、明確な意思表示もできるようになった。

第7話では喧嘩の仲裁くらいしか活躍の機会がなかったが、やはり最終回はグローグーの大活躍に期待したい。特にディン・ジャリンが捕えられている状況で、これまでにないほどのフォースの力を見せる展開もあり得るだろう。

また、今回はグローグーがディン・ジャリンの弟子として扱われていた点も興味深かった。グローグーが正式にマンダロリアンになるには宣誓を行う必要があるが、喋りについてはシーズン3で少しずつ習得してきている。加えて、第7話では「はい」「いいえ」の意思表示を行う機会を得た。つまり、グローグーは幼くて自我が曖昧ということは全くなく、表明する手段がなかっただけということだ。

だからこそ自分の意思でジェダイではなくマンダロリアンになることを選んだのだろうし、ディン・ジャリンと一緒にいることを選んだのだろう。グローグーのマンダロリアンへの道が最終回でどこまで進むのかにも注目したい。

ペドロ・パスカルのご尊顔

そしてもちろん『マンダロリアン』のシーズン最終回のお楽しみといえば、ペドロ・パスカルのご尊顔である。今やハリウッドでもトップのスター俳優となったペドロ・パスカルだが、『マンダロリアン』では基本的に顔出しをせずにその演技力を発揮している。それは表情で演技をするよりも難しいことのように思える。

シーズン1とシーズン2の最終回ではその顔を見せたディン・ジャリン。シーズン1では治療のためにヘルメットを取ったが、治療をしたのはIG-11で、「ドロイドだからノーカン」ということで掟破りは免れた。シーズン2ラストではグローグーをルークに引き渡す際に、皆の前でヘルメットを外してグローグーとの別れを惜しみ、これによって一度はマンダロリアンを破門されてしまった。

シーズン3の最終話では、尋問される際にヘルメットを取られてしまうということもあり得るだろう。その場合のアーマラーさんによる判定も気になるが、ボ=カターンらの合流によってヘルメットを人前で外しても破門にならない流れが生まれるかもしれない。もっとも、ディン・ジャリンは既にマンダロアにいるので、いつでも泉につかることはできるが。

語り出すとキリがないので、とにかく今はシーズン3の最終回を楽しみに待とう。8月には『マンダロリアン』と同じ時代を舞台にしたドラマ『アソーカ』の配信も始まる。『マンダロリアン』と同じく8話で構成されているということなので、こちらにも期待しよう。

ドラマ『マンダロリアン』シーズン3は2023年3月1日(水) より、ディズニープラスで独占配信。

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『マンダロリアン』シーズン4の情報はこちらの記事にまとめている。

シーズン3最終回の7つの注目ポイントと見どころはこちらの記事で。

 

ドラマ『アソーカ』特報予告に登場した『スター・ウォーズ 反乱者たち』からの繋がりについてはこちらの記事にまとめている。

尋問官の登場も? 新キャラたちが並ぶ『アソーカ』のヴィランについての考察はこちらの記事で。

「スター・ウォーズ」映画の新三部作についての発表の詳細はこちらの記事で。

シリーズで最も過去を描くジェームズ・マンゴールド監督の作品については、同監督が「フォースの始まり」と「最初のジェダイ」を描くと話した。詳しくはこちらの記事で。

ドラマ『スター・ウォーズ:アコライト(原題)』の情報はこちらから。

 

シーズン3第8話のネタバレ解説はこちらから。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

第4話のネタバレ解説はこちらから。

第5話のネタバレ解説はこちらから。

第6話のネタバレ解説はこちらから。

 

シーズン3第7話と第8話を手がけるリック・ファミュイワ監督が語ったグローグーの魅力はこちらの記事で。

ボ=カターン・クライズ役のケイティー・サッコフが語ったシーズン3におけるボ=カターンの心情はこちらから。

シーズン3配信のタイミングで、主演のペドロ・パスカルは生涯マンダロリアンを演じると宣言した。詳しくはこちらから。

ジョン・ファブローと共に『マンダロリアン』の監督・脚本・制作総指揮を手掛けるデイブ・フィローニは、グローグー=ヨーダのクローン説に言及した。詳しくはこちらの記事で。

 

アニメ『バッド・バッチ』シーズン2最終回第16話のネタバレ解説はこちらの記事で。

ドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』最終回のネタバレ解説はこちらから。

高い評価を受けている「スター・ウォーズ」ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン1の解説はこちらから。

ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』の解説はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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