シーズン3第6話ネタバレ解説『マンダロリアン』上質なSF刑事ドラマ回 ディン・ジャリンの解釈は… あらすじ・考察・感想 | VG+ (バゴプラ)

シーズン3第6話ネタバレ解説『マンダロリアン』上質なSF刑事ドラマ回 ディン・ジャリンの解釈は… あらすじ・考察・感想

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『マンダロリアン』シーズン3第6話はどうなった?

ドラマ『マンダロリアン』(2019-) は、マンダロリアンのマンドーことディン・ジャリンとヨーダと同じ種族でフォースの力を持つグローグーの旅を描く「スター・ウォーズ」の人気シリーズ。シーズン3は全8話で構成されており、2023年4月5日(水) 配信の第6話で早くもラスト3話に差し掛かる。

『マンダロリアン』シーズン3第6話では、どんな展開が待っていたのだろうか。今回も各シーンを解説していこう。なお、以下の内容は本編のネタバレを含むため、必ずDisney+で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『マンダロリアン』シーズン3第6話の内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『マンダロリアン』シーズン3第6話チャプター22「傭兵」ネタバレ解説

監督はブライス・ダラス・ハワード

ドラマ『マンダロリアン』シーズン3第6話の監督を務めるのはブライス・ダラス・ハワード。俳優としても「ジュラシック・ワールド」シリーズのクレア役、ドラマ『ブラック・ミラー』シーズン3「ランク社会」の主演など多方面で活躍している人物だ。

ブライス・ダラス・ハワードは、『マンダロリアン』シーズン1第4話「楽園」で惑星ソーガンを描き、シーズン2第3話「後継者」ではボ=カターンの実写初登場を描いた。また、ドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2022) では、マンドー登場回の第5話「マンダロリアンの帰還」を手がけている。

シーズン3第6話「傭兵」の冒頭では、そのブライス・ダラス・ハワードが監督したマンドーとボ=カターンの初遭遇シーンが挿入されている。思えばボ=カターンは、初対面のディン・ジャリンをマンダロリアンと見て「brother(兄弟)」と声をかけ、グローグー共々助けてくれたのだった。その隣でマンドーを「異端 」と見ていたのがアックス・ウォーヴスだった。

その後、シーズン2最終話でモフ・ギデオンによって語られたダークセーバー譲渡の条件と、シーズン3第1話でダークセーバーを失ったボ=カターンからアックスらが離れていったとボ=カターンが語ったこと、シーズン3第2話で捕えられたマンドーをボ=カターンが救ったことと恩返しをすると約束したこと、前回の第5話でアーマラーがボ=カターンのことを認めてマンダロリアンの再結集を託したことも回想されている。第6話ではこれらの展開が全て実を結ぶことになる。

傭兵のマンダロリアン

本編冒頭ではクオレンの貨物船が登場。シーズン2第3話ではクオレンの種族にマンドーが捕えられ、ボ=カターンの一味が助け出している。そしてこの船が向かっている惑星トラスクは、まさにボ=カターンがマンドーを助けた場所である。

クオレンの貨物船は帝国船に遭遇し、シャガス船長は撃退は不可能と判断するや交渉に挑む。この時の帝国の残党を刺激しないようにしつつも、「喜んで雇う」と申し出るなどどこか見下した態度は、新共和国の時代における帝国軍残党の微妙な立ち位置がうまく表現されている。

ところが、この帝国船に乗っていたのはアックス・ウォーヴスが率いるマンダロリアンだった。これはシーズン2のラストでモフ・ギデオンを逮捕して奪った艦であり、シーズン3第1話でボ=カターンが傭兵業のために譲ったと話していたものだ。

前回のラストでは帝国の残党の脱走にマンダロリアンが関与していることが示唆されたが、この場面のアックスらは単に帝国船を使って傭兵としての任務に就いているだけのようだ。モン・カラマリの総督から、シャガス船長と駆け落ちした息子を連れ戻してほしいと依頼を受けアックスらは、圧倒的な武力を背景にプリンスを連れ戻すのだった。

モン・カラマリはクオレンと同じ惑星モン・カラを母星としている種族で、緊張関係にあった。シャガス船長が「カラマリとはようやく和解したのに平和を壊すわけがない」と言っているのは、その件に触れているのだ。

また、アックスの傭兵としてのスタンスは「ジャッジはしない」というもので、とにかく報酬のいい仕事をこなすという態度だ。ある時期までのマンドーやボバ・フェットを見ているようでもある。フリーランサーとしてのその姿勢は一見冷徹なように見えるが、物事の正しさを考えずに済む安易な道であり、幼さの現れだ。

ボ=カターンのもとを離れたデス・ウォッチの一派が、高潔さを失いながら傭兵稼業に取り組んでいることが示され、『マンダロリアン』シーズン3第6話「傭兵」は幕を開ける。それにしても今回は映像表現、特に船のディテールや見せ方にこだわった実に精巧な演出がなされおりついつい見入ってしまう。

プラジール15へ

ボ=カターンとディン・ジャリン、そしてグローグーが降り立ったのはプラジール15。チルドレン・オブ・ザ・ウォッチが用心棒として定着した惑星ネヴァロと同じく新共和国に加盟していない惑星で、アックスたちが防衛部隊として雇われているらしい。

ちなみにグローグーは今回もボ=カターンのパイロット席の横に陣取っており、ディン・ジャリンの言い付けを守ってマンダロリアンとして航海術を身につけようとしているようにも見える。たまによそ見をして外の景色を眺めているが、ちゃんとコクピットの計器やディスプレイも見ている。

離れたところに船を停めて徒歩でアックスらに会いに行こうとした一同だったが、プラジール15のシステムに完全に主導権を握られてしまい、君主と会うことに。アナウンスではプラジール15は「外縁部 唯一の民主主義国」と紹介されている。

また、ボ=カターンが「楽しいドライブだね」と言うと、グローグーは声をあげている。グローグーは、シーズン3では更に銀河標準語(現実の英語にあたる)をよく理解できるようになっている感じがする。

三人を出迎えたのは帝国ドロイド。R2-D2に似ているドロイドは、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016) に登場したC2-B5と同じ型のドロイドだ。人型の方はモフ・ギデオンも連れていたRA-7プロトコル・ドロイドだろうか。プラジール15では帝国が残したドロイドを再プログラミングして労働力にすることで豊かさを享受していた。

シャトルでは二人はチェーンコードの提示を求められる。これは「スター・ウォーズ」世界のマイナンバーのようなもので、『マンダロリアン』から導入された設定だ。アニメ『スター・ウォーズ:バッド・バッチ』(2021-) では、帝国が管理社会を築くために導入した背景が描かれている。

これまでのチェーン・コード登場シーンの詳細はこちらの記事に詳しい。

シャトルで移動する間に見えるプラジール15の街の景色もディテールが素晴らしい。この1話のためにここまで精巧に作り上げたというのはVFX班の負担も心配になるものの、これぞ「スター・ウォーズ」というシーンが続いている。

民主主義の弱点

宴の席に招かれた一行。客人は、魚のような生き物が入ったタンクから出ているチューブでその水槽?の水を飲んでいる。また、護衛兵のアーマーは旧帝国軍のストームトルーパーの防具を流用したと思われる装備になっている。

公爵夫人を演じるのはアーティストのリゾだ。夫のボンバルディエを演じるのは数多くのコメディ作品で知られる俳優のジャック・ブラック。ボンバルディエは元々帝国で施設計画の担当官として働いていたが、帝国崩壊後は恩赦プログラムでプラジール15の再興に寄与したという。女公はグローグーを抱きたがるが、マンドーは「初対面では懐かない」とこれを拒否。しかし、食べ物に釣られたグローグーはあっさり懐いており、任務中も一緒に遊んでもらっていたようだ。

プラジール15は新共和国時代になって民主主義を導入したのだという。二人は正当な選挙で選ばれたが、ボンバルディエが元帝国の人間ということで軍隊は保有できず、自衛のためにマンダロリアンを雇っているらしい。少し日本を思わせる設定だ。

ボ=カターンとディン・ジャリンは、アックスたちマンダロリアンと面会する条件として、更生済みのはずなのに問題を起こしている街の帝国ドロイドに対処することを受け入れる。ちなみに公爵夫人の服の背部についているホログラムの飾りは、座っている時も椅子の後ろに出現しており邪魔にならないという便利な代物だ。

プラジール15は、「スター・ウォーズ」世界ではそれほど多くない民主主義の惑星だが、この機会に民主主義の弱点も描かれているように思える。「武力を市内に入れると違憲」「ドロイドの稼働停止は住民投票で可決された」など、民意優先の仕組みによって意思決定に時間を要することが紹介されるのだ。

一方で、プラジール15は「多元的社会」を重視しているため、武装が文化であるマンダロリアンの客人の武器携行は認められるという。この原則に対する柔軟な“解釈”というのが、民主主義における法運用のヒントとして提示されているようでもある。もちろんそれはプラジール15のように運用する側が善意に基づいて行動するリーダーでなければ機能しない。

ボンバルディエは、この任務を「惑星間の外交成果」として捉えると表明。依頼を受けてくれれば、プラジール15はマンダロアを主権星系と認めるというのだ。マンダロリアンは既にネヴァロと友好関係を築いており、プラジール15とも同盟を結べれば大きな前進だ。それにプラジール15は未加盟ではあるものの新共和国とは友好的な関係を結んでいるようで、再興したマンダロアを正式に認めるよう新共和国に掛け合ってくれるという。

住民投票の結果

マンダロアの未来のためにも任務を受けることにした二人は、保安部のヘルゲイト長官から状況の確認をする。このヘルゲイトを演じているのは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのドクことエメット・ブラウン博士役でお馴染みの俳優のクリストファー・ロイドだ。遂に「スター・ウォーズ」初出演を果たしている。

ヘルゲイトは「本来はカーソンに送られて廃棄されるはずの帝国ドロイド」と話しているが、兵器解体所があるカーソンはシーズン2で登場している。ヘルゲイトはドロイドの稼働停止はボタン一つでできるが、利便性を失うことを恐れた人々が住民投票で否決したと説明する。多少危険があっても便利な方を選ぼうとするというのは、なかなかリアルである。

なお、アメリカでは住民投票は選挙とセットで行われている。選挙の候補者への投票とともに、いくつかの法改正について賛成・反対の投票を行い、その結果が法改正に反映される。たとえば、ドナルド・トランプ大統領が誕生した2016年の選挙では、大麻合法化を問う住民投票も9州で行われ、カリフォルニア州を含む8州で賛成多数により合法化が決定している。本作は日本よりは住民投票がカジュアルに行われる国で作られたお話なのだ。

それにしても“絶対に押してはいけないボタン”がめちゃくちゃ押しやすい場所にカバー一枚だけで置かれているのはヒヤヒヤする……。

「有無は言わせん」

ヘルゲイトはあまり協力的ではなく、マンドーとボ=カターンは地下の職人アグノートたちに暴走ドロイドのリストをもらうことに。エレベーターではマンドーが「ドロイドは信用ならん」と言っているが、マンドーはクローン大戦中に分離主義勢力のドロイドによって両親を殺されて孤児になったことから、元々はドロイドを嫌っていた。

シーズン1のラストでは自らを犠牲にしたIG-11に助けられ、ドロイド嫌いもマシになったかに思われた。しかし、ドラマ『ボバ・フェット』第6話ではR2-D2に「ドロイド」と呼びかけたり、ドロイドばかりのルークの拠点で「生きてる奴はいないのか?」と呼びかけたり、ドロイドに対する冷たい態度は変わっていなかった。

二人はアグノートの工場に着くと、ボ=カターンが上から目線で呼びかけるもアグノートたちからは無視されてしまう。しかし、シーズン1で同じアグノートのクイールと交友を持っていたディン・ジャリンが話し出すと、状況が一変する。

マンドーがクイールの友達であることを明かし、「有無は言わせん (I have spoken.)」という口癖を引用すると、アグノートたちはようやく話を聞く姿勢に。クイールはマンドーとグローグーのために命をかけて戦ってくれたアグノートであり、2シーズンぶりにスポットライトが当てられることになった。なお、クイールはIG-11をグローグーを狙わないように再プログラムし、使役ドロイドにしていた。ここのアグノートたちも同じ作業に取り組んでいるのだろう。

アグノートを追求しようとするボ=カターンに対し、アグノートは「誤作動など起こしてない」と頑固な姿勢を見せて「有無は言わせん」と取り合わない。だが、ディン・ジャリンは「銀河で最も勤勉な種族」とリスペクトを見せて「それを見習って私たちも役目を果たしたい」と低姿勢に助けを求める。

クイールとの交友で学んだアグノートの扱い方を実践し、ドロイドのリストを得たディン・ジャリン。最後にはいつもの「我らの道(This is the way.)」ではなく、「借りは返す。有無は言わせん」で会話を締めくくるのだった。強制的に会話を終了させられる「有無は言わせん」は、「我らの道」に匹敵する便利ワードである。

上質なSF刑事ドラマ

荷物搬入所ではB2スーパー・バトル・ドロイドが荷役ドロイドとして労働に励んでいる。バトル・ドロイドは元は分離主義勢力の戦力だったが、銀河帝国でも使用された。ディン・ジャリンは「全部怪しい」と言い、B2スーパー・バトル・ドロイドを蹴り出すのだが、これには訳がある。

シーズン1の回想で描かれたことだが、ディン・ジャリンが両親を失ったのは、B2スーパー・バトル・ドロイドの軍隊による襲撃を受けた時なのだ。いわば親の仇のようなものなのだが、事情を知らないボ=カターンから見れば、アグノートに対する振る舞いから一変しているので情緒が心配になるだろう。

ちなみにチルドレン・オブ・ザ・ウォッチのマンダロリアンがディン・ジャリンを助けて脱出した一方で、マンダロアを守ろうとB2スーパー・バトル・ドロイドと戦っていたのは、ボ=カターンが所属するデス・ウォッチのマンダロリアンたちである。

見つかった暴走ドロイドは夜の街を逃走。未来都市での追走劇はさながらSF刑事ドラマのようだ。ディン・ジャリンが回り込んで暴走ドロイドを止め、ボ=カターンが銃撃で倒すナイスコンビネーション。すぐにドロイドがホログラムのバリケードテープで現場保存をするなど、この一連のシーンだけでも短編映画として楽しめるスーパークオリティになっている。

現場検証をしたボ=カターンは、スパークパッドと呼ばれるバーの名刺のようなものを拾い、二人はその住所へと向かう。そこはドロイドによるドロイドのためのバーで、プラジール15の市民の生活を支えるドロイドたちは、決して奴隷のように扱われているわけではないことが示されている。

アグノートに対しては紳士に接していたディン・ジャリンだが、ドロイドに対してはいきなり脅しをかける強硬さを見せる。ドロイドを前にすると冷静になれないマンドーに対し、ボ=カターンが「グルだとは限らない」と擁護する姿勢を見せたところで、バーテンダーのドロイドが協力を申し出る。

この流れは、アメリカで定番のグッドコップ・バッドコップ(良い警官・悪い警官)方式ではあるのだが、面白いのはアグノートに対してとドロイドに対してで、二人の役回りが入れ替わる点である。グッドコップ・バッドコップの戦術では、怖い警官が脅しをかけ、優しい警官が説得して犯人から自供を引き出す。『マンダロリアン』では、二人の得意不得意に応じてその役回りを交代しているのだ。

もちろん二人は意図してやっているわけではないのだが、優しく見える人が常に誰に対しても優しいわけではなく、厳しい人がずっと厳しいわけでもない。ボ=カターンのように相手のことをよく知らなくて感情が入らなかったり、ディン・ジャリンのように過去にトラウマを抱えていて感情的になってしまったりして、対話が上手くいかない場面だってある。

ここではディン・ジャリンとボ=カターンの二人を通して、どちらかが固定された役割を担うのではなく、その場その場で支え合う理想的なコンビの形が示されていると言える。

真犯人は…

バーテンダーのドロイドが協力を申し出たのは、事故が続けば人間と置き換えられるから。帝国は分離主義勢力のドロイドを再利用したが、新共和国は分離主義勢力と帝国産のドロイドを廃棄しており、プラジール15はそれらのドロイドが生き延びられる場所なのだという。今回も新共和国の負の側面とまでは言わないが、新共和国が救えない存在が描かれることになった。

バーテンダーのドロイドは、創造主である人間に貢献したいといい、周囲のドロイドもこれに賛同する。「人間の寿命は短く多くを求めない」とも言っているが、900年生きるであろうグローグーよりディン・ジャリンの寿命が遥かに短いことを思い出させる言葉だ。

二人は亜粒子更新のプログラムを含む潤滑油のネペンセが原因であることを突き止める。バーで出されていたネペンセに含まれる亜粒子がドロイドのプログラムを更新していたのだ。それを解析したドロイドが暴走したことでこの疑いは確信に変わり、チェーン・コードを刻んだナノ・ドロイドによってドロイドたちが操られていたことが発覚する。チェーン・コードはブロックチェーン的な使い道もあるようだ。

製造元のテクノ・ユニオンは、ドゥークー伯爵が指揮する独立星系連合に加わった旧分離主義勢力で、犯人が共和国時代の分離主義勢力の人間であることが示唆されている。結果的に、このナノ・ドロイドを発注していたのがヘルゲイト長官だったことが明らかになる。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のドク役で知られるクリストファー・ロイドの「スター・ウォーズ」参戦が悪役だったとは。

グローグーの外交

ここからは刑事ドラマのクライマックスシーン。いわば「火曜サスペンス」の崖のシーンである。追い詰められたヘルゲイト長官は、やっぱりあのめちゃくちゃ押しやすいボタンに手をかけて脅しをかけるが、もう勝ち筋はない。

ヘルゲイトは元分離主義者で、ドゥークー伯爵の信者だった。ヘルゲイトはドゥークー伯爵が民主主義の先駆者だったと主張。確かにドゥークーが率いた分離主義元老院は民主主義の理念を採用しており、独裁ではなく会議を通して方針を決定していた。

だが、ヘルゲイトの考えは間違っている。なぜなら実際にはドゥークーはパルパティーンの傀儡であり、帝国成立に向けて民主主義を利用していただけだからだ。ヘルゲイトは最後にドゥークーがジェダイにやられたことに触れているが、その相手はもちろんアナキン・スカイウォーカーだ。

長話の最中にボ=カターンがテーザーで仕留め、ヘルゲイトはあっさり捕まる。なので、ヘルゲイトがドロイドたちを暴走させた目的がどこにあったのかはイマイチ分からないままだ。

伯爵夫人たちは巨大なダンゴムシを投げるゲームで遊んでいるが、グローグーがフォースでこれをヘルプしている。グローグーは早くもフォースを自在に操る力を身につけてきているようだ。

そこに連れてこられたヘルゲイトは、ボンバルディエを憎んでいたことを吐露する。ドロイドたちはボンバルディエが再プログラミングしていたので、帝国出身のボンバルディエに対する嫌がらせ、あるいは失脚を狙っての行動だったのかもしれない。

ヘルゲイトにはパラクアットの月への流刑が言い渡され、ボ=カターンとディン・ジャリンにはマンダロリアン傭兵部隊との面会が許可される。加えて巨大な“プラジールの鍵”を受け取り、いつでも立ち寄る許可も得る。これでマンダロアとプラジール15の友好関係が結ばれた。

さらに、グローグーには古代独立摂政騎士団のナイト爵の称号が与えられる。ジェダイの騎士ではなく、よく分からない騎士団の一員になってしまった。あわよくばグローグーを置いて行ってもらおうとしている感じがするが、もちろんディン・ジャリンはそれを許さない。ちなみにボ=カターンはこの一連の流れをニヤニヤしながら眺めている。

伯爵夫人はグローグーとの別れを惜しんでいるが、これから850年くらい生きるグローグーにとっては、こうした“外交”は重要だ。いつかどちらかが助けを必要とする時が来るかもしれない。人間より長生きするドロイドが数百年後に借りを返してくれることだってあり得るだろう。

ダークセーバーを巡る“解釈”

そして、シーズン3第6話のクライマックス。ボ=カターンはかつての仲間たちと対峙する。ボ=カターンは新たなリーダーとなったアックス・ウォーヴスと決闘に臨むが、注目したいのはボ=カターンが一切火器を使用しないことだ。周囲のマンダロリアンを傷つけ得る武器は使用せず、近距離戦闘とワイヤーを使った戦いに徹するのだ。

一方でアックスは仲間がいるところにミサイルは撃つは火炎放射は出すはで危なっかしい戦いを見せる。ボ=カターンは最後まで倒すのではなく降伏させることを目的とした戦い方を見せるが、アックスはやはりボ=カターンがダークセーバーを奪えなかったことにこだわって降伏しようとしない。

それでも、ボ=カターンは同胞同士で血を流したくないとダークセーバーを持つディン・ジャリンに挑戦することを拒否する。アックスがディン・ジャリンを「マンダロリアンの血が流れていない異端」と差別するのに対し、ボ=カターンは教義に誓いを立てたディン・ジャリンはマンダロリアンを立ち上げた祖先と同じだと庇い、改めて彼が正当なマンダロリアンだと宣言する。

それでもアックスが「ダークセーバーの持ち主が統治者」という掟にこだわる中、助け舟を出したのは、ほかでもないディン・ジャリンだった。プラジール15のリーダー達がそうしたように、ディン・ジャリンは“解釈”によって所有権問題を乗り越えてみせるのだ。

曰く、①シーズン3第2話でディン・ジャリンはマンダロアの地下にいた生物にダークセーバーを奪われた②ボ=カターンがディン・ジャリンを助けるためにダークセーバーを持ってその生物を倒した③故にダークセーバーの所有権はボ=カターンに移っている、というものである。

つまり、ダークセーバーの所有権はディン・ジャリン→マンダロアの生物→ボ=カターンという流れで移行しているということだ。確かにこれならマンダロリアン同士が戦わない形での所有権の移行が完了している。

その後もダークセーバーを持っており、この第6話でもドロイドを倒す時にダークセーバーを振るっていた姿を見るに、ディン・ジャリンは最初からそう考えていたわけではないだろう。ボ=カターンがディン・ジャリンを庇い、正当なマンダロリアンだと宣言してくれたこと、そのボ=カターンが困っている様子を見て、おそらくこの場で思いついた解釈なのではないだろうか。加えてディン・ジャリンは、シーズン3第2話で恩は返すとした約束もここで果たすことになった。

この解釈を一同が受け入れ、遂にダークセーバーがボ=カターン・クライズの手に渡る。ボ=カターンがダークセーバーの所有者となるのは、『スター・ウォーズ 反乱者たち』(2014-2020) 以来。ボ=カターンがマンダロアの統治者の資格を得て、『マンダロリアン』シーズン3第6話は幕を閉じる。

『マンダロリアン』シーズン3第6話 感想&考察

ディン・ジャリンの生き方

ダークセーバー問題とボ=カターンの仲間問題が解決。ディン・ジャリンが機転を効かせたのは、プラジール15の公爵らが柔軟な法解釈を行なっていたことにインスパイアを受けたのだろうか。いや、そもそもディン・ジャリンはずっとアーマラーの自在な掟解釈に接してきたので、素養はあったのだろう。

やっぱりディン・ジャリンは全く権力欲や名誉欲がない点が良い。マンダロリアンにも復帰できたディン・ジャリンにとって、今一番欲しいのはグローグーとの安定した生活または楽しい冒険なのだろう。もしかしたら、色々と早く片付けてグローグーの育児に専念したいと思っているかもしれない。

けれど、前話で触れられたようにマンダロリアンの未来を安定させるということは、グローグーのような幼いマンダロリアンの未来をより良くしていくということでもある。そのためには自己主張をするのではなく、皆にとって最適な行動を取るというのがマンドーにとって正しいと思う生き方なのだろう。とはいえ、グローグーだけは人に譲らない我の強さは見せていたが。

マンダロリアンの同盟惑星

ボ=カターンとマンダロリアンにとっては大きな前進になった。惑星マンダロアを取り戻した時の統治者は間違いなくボ=カターンになり、デス・ウォッチのメンバーも帰ってくることになりそうだ。それに、モフ・ギデオンから奪った旧帝国艦隊もマンダロリアンの戦力に加わることになる。これまではディン・ジャリンとボ=カターンの機体しかなかったことを考えれば大補強である。

加えて、マンダロリアンはこれで新共和国に加入せず軍隊を持たないネヴァロとプラジール15に防衛隊を置くことになる。これまで雇われの用心棒などをやって生きてきたマンダロリアン達が手を携え、惑星規模の同盟を結んで星の平和を守る——劇的な展開だ。

マンダロアを復興させた後も同盟惑星での駐留を続ければ、友好的な関係を維持することができる。新共和国による独裁への牽制にもなるが、新共和国は手が回らない状態であり、むしろ銀河の平和のことを考えれば、マンダロリアンの存在は助かるのではないだろうか。

敵は帝国だけじゃない?

残る心配はモフ・ギデオン帝国の残党、そして前回ラストに見られたベスカーの破片だ。第3話ではボ=カターンの城が爆破されており、帝国の残党がマンダロリアンに復讐しようとしていることは確かだ。そして、第6話ではアックス達が信念を持たずに仕事を受けていることが示唆された。

モフ・ギデオンの脱走を手助けしたのが傭兵として雇われたアックスらデス・ウォッチのメンバーだとすれば、マンダロリアンは帝国の残党だけでなく新共和国まで敵に回すことになる。同盟国は軍を持っておらず助けてはもらえないだろう。助けてくれるとすれば、ドラマ『ボバ・フェット』でディン・ジャリンとグローグーが手を貸したタトゥイーンのボバ・フェットくらいか。

そして、この展開にイライア・ケイン&クローン技術の話が残り2話でどこまで絡んでくるのかにも注目したい。『マンダロリアン』シーズン4の制作は既定路線だが、シーズン3はどこまで進むのか、残り2話も刮目しよう。

ドラマ『マンダロリアン』シーズン3は2023年3月1日(水) より、ディズニープラスで独占配信。

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シーズン3第7話のネタバレ解説はこちらから。

シーズン3第7話と第8話の監督が語ったグローグーの重要性とシーズン3のテーマについてはこちらの記事で。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

第4話のネタバレ解説はこちらから。

第5話のネタバレ解説はこちらから。

 

ボ=カターン・クライズ役のケイティー・サッコフが語ったシーズン3におけるボ=カターンの心情はこちらから。

シーズン3配信のタイミングで、主演のペドロ・パスカルは生涯マンダロリアンを演じると宣言した。詳しくはこちらから。

ジョン・ファブローと共に『マンダロリアン』の監督・脚本・制作総指揮を手掛けるデイブ・フィローニは、グローグー=ヨーダのクローン説に言及した。詳しくはこちらの記事で。

 

アニメ『バッド・バッチ』シーズン2最終回第16話のネタバレ解説はこちらの記事で。

ドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』最終回のネタバレ解説はこちらから。

高い評価を受けている「スター・ウォーズ」ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン1の解説はこちらから。

ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』の解説はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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