シーズン3第3話ネタバレ解説『マンダロリアン』新共和国の意外な一面、“転向”の意味とは あらすじ・考察・感想 | VG+ (バゴプラ)

シーズン3第3話ネタバレ解説『マンダロリアン』新共和国の意外な一面、“転向”の意味とは あらすじ・考察・感想

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『マンダロリアン』シーズン3第3話はどうなった?

「スター・ウォーズ」のドラマシリーズを開拓した『マンダロリアン』(2019-) は2023年3月よりシーズン3の配信をスタート。映画『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983) の後を舞台にした作品で、マンダロリアンのマンドーことディン・ジャリンとヨーダと同じ種族であるグローグーの旅が描かれる。

『マンダロリアン』シーズン3では、グローグーはマンドーの元に帰ってきたが、マンドーはチルドレン・オブ・ザ・ウォッチを破門された状況からスタート。贖罪を果たすために全てのマンダロリアンの故郷である惑星マンダロアを目指す。全8話で綴られるシーズン3の第3話では、どんな物語が待っていたのだろうか。今回もネタバレありで各シーンを解説していく。

以下の内容は『マンダロリアン』シーズン3第3話のネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『マンダロリアン』シーズン3第3話の内容に関するネタバレを含みます。

『マンダロリアン』シーズン3第3話チャプター19「転向」ネタバレ解説

冒頭のあれは誰?

『マンダロリアン』シーズン3第3話からは、米国がサマータイムに入ったため、日本時間の水曜日16時(米西海岸時間の水曜日0時)配信になる。その第3話を手がけるのは、韓国系移民の一家の物語を描いて数々の賞を受賞した映画『ミナリ』(2020) で知られるリー・アイザック・チョン監督だ。

冒頭では、シーズン1のドクター・パーシングの回想が登場。ドクター・パーシングは、マンドーが依頼を受けて連れ帰ったグローグーの血液を採取した科学者で、帝国の残党であるモフ・ギデオンのために働いていた。シーズン2ではドクター・パーシングがグルーグーからの輸血によってフォースを再現する実験に取り組んでいることが明かされた。

だが、ドクター・パーシングの実験は成功せず、輸血を受けた被験者の身体が血液を拒絶するという結果になった。採血した分は使い果たしたと説明しており、グローグーはモフ・ギデオンに再度を狙われることになった。

ドクター・パーシングは基本的には従順で、グローグーをマンドーに渡したり、捕えられたグローグーの居場所を教えたりしている。また、実験のためだと思われるが、帝国軍のクライアントがグローグーを殺害してよいと言うのに対し、ドクター・パーシングは生きたまま確保することを依頼している。

その後、「報告しろ」と言う帝国残存勢力の通信士官は、ドクター・パーシングと同様にモフ・ギデオンに仕えていた人物。ギデオンとパーシングの通信を取り持っていた。名前は不明で、シーズン2で船に襲撃してきたボ=カターンらに倒され、ディン・ジャリンが通路を通るシーンでも倒れている姿が見られた。

「我らが道」

前回、グローグーとボ=カターンに助けられながら惑星マンダロアの泉に辿り着いたマンドー。宣誓の途中で泉の深みにハマったところをボ=カターンに助けられたが、贖罪は果たしたということでOKらしい。ボ=カターンが証人になり、泉の水も採取して晴れてマンダロリアンに戻ることができたようだ。

ボ=カターンによるとこの泉の深さは大粛清の爆撃によって地形が変わったことによって生まれたものらしい。ということは、ボ=カターンが見たミソソーはかつて人目につかない地下深くに生き残っていたということなのだろう。ボ=カターンはミソソーのことをマンドーには告げずに泉を後にしている。

ミソソーについては、ドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』(2021-2022) の中でアーマラーが「ミソソーがマンダロアの新時代を告げる」という予言を紹介している。ボ=カターンはこの予言を知っているのだろうか。ボ=カターンはマンダロアの復興を諦めていたが、マンダロアが汚染されていなかったことと、新時代を告げるミソソーを見たことによって、その考えは変わることになりそうだ。

マンドーがマスクを外せないから食事に誘えないと言うボ=カターンに、マンドーは「我らが道 (This is the way.)」と答えると、意外にもボ=カターンは違う宗派であるチルドレン・オブ・ザ・ウォッチの合言葉を復唱する。逆にこの柔軟さがデス・ウォッチの魅力でもある。

そして、それに呼応するように、なんとグローグーが「This is the way.」の音節で声を発する。マンダロリアンとして育てられることになったグローグーが初めて「我らが道」と言った瞬間だ。あと850年は生きるであろうグローグーの歴史に残るシーンである。

驚異のドッグファイト

これに驚いたマンドーとボ=カターンは思わず顔を見合わせるが、ここでタイ・インターセプター6機による襲撃を受ける。シーズン2でボ=カターンが帝国の残党の船を奪った報復に来たようだが、第1話ではこの船はボ=カターンの元を離れて傭兵になった元兵士たちにあげたと話していた。

襲撃を受ける中、グローグーは自分の乗り物のシャッターを下ろしている。前回は自分を守るためにフォースを使ってアラマイトを倒しており、自衛の意識が強くなってきていることが分かる。マンドーは決死のヘイロー降下でN-1スターファイターに辿り着くと、ここからカレヴァラを舞台にした圧巻のドッグファイトが始まる。間違いなく『マンダロリアン』シーズン3前半のハイライトの一つになるだろう。

マンドーの急上昇からの急降下撃破、ボ=カターンの土地勘を活かした戦い方にジェットエンジンを止めての反転技など、見どころ盛りだくさんで帝国の残存勢力を撃破していく。ボ=カターンはN-1スターファイターを「使える骨董品」と言っているが、この機体は旧共和国時代のもので、新共和国時代を舞台にしたこの時代から見れば「骨董品」なのかもしれない。

二人が安心したのも束の間、ボ=カターンの根城が空爆で破壊されると、大量のタイ・インターセプターが登場。二人はハイパースペースジャンプで逃げ切るが、帝国の残存勢力の復権を示唆してシーズン3第3話(チャプター19)の幕が開く。第3話のタイトルは「転向」。英語では「The Convert」で、野球のポジション変更などで使われる「コンバート」という言葉が使われている。「Convert」には「改宗」という意味もある。

遂にテーマは“クローン”へ

一転して舞台は新共和国時代の栄華を極める惑星コルサントのギャラクティック・シティに。コルサントは共和国時代と帝国時代の首都惑星だったが、ドラマ『キャシアン・アンドー』(2022-) にも登場したモン・モスマが新共和国の初代議長に就いてからは首都惑星を輪番制にしている。『マンダロリアン』のこの時点では既に首都惑星の役割は終えて豊かな惑星の一つになっていると思われる。

そこに現れてのは、回想に登場した通信士官だった。どうやら生きていたらしい。胸のバッジは“恩赦組”に付与されるものと見られ、帝国を思わせる白・黒・赤の配色になっているが、解体されたことを象徴するかのようにフラットでシンプルなデザインになっている。

新共和国時代には、不本意ながら帝国に従っていた人々の“恩赦計画”が実行されたようで、ドクター・パーシングがその恩恵を受けたとスピーチをしている。「ある人物がクローン技術を権力に利用したせいで」自分の研究が歪められたと語り、幼い頃に母を心臓病で失った、臓器のクローンができれば避けられた死だったと、自身がクローン研究に取り組んだ理由を語っている。

カミーノ人のクローン技術を引き継いだと語るパーシングは、「複数の鎖を重ね合わせ最高の特質を持つ複製を作ること」が自身の目標としている。英語では「combining multiple strands to create replicas that incorporated the best genetic attributes of both donors.」と言っており、複数のドナーの良いとこどりをしたクローンを作り出そうとしていることを窺わせる。

今、「スター・ウォーズ」フランチャイズのホットトピックは“クローン”だ。『スター・ウォーズ エピソード9/スカイウォーカーの夜明け』(2019) で突如登場した「パルパティーンのクローン」という設定を回収するように、アニメ『スター・ウォーズ/バッド・バッチ』(2021-) でもクローン大戦後のクローン技術の行方が描かれている。

『バッド・バッチ』シーズン2は途中から『マンダロリアン』シーズン3と同時配信になっており、両作の絡みが注目されていたが、やはり“クローン”というテーマで両作をつなげてきた。ドクター・パーシングが名前を出したカミーノはかつて共和国にクローントルーパーを提供した惑星だが、『バッド・バッチ』では帝国がクローン技術を独占するために科学者だけを連れ出してカミーノを滅ぼす展開が描かれている。

『バッド・バッチ』シーズン2でもパルパティーンの指示でクローン関連の計画が進められていることが示唆されている。パーシングの「ある人物がクローン技術を権力に利用したせいで」というセリフはパルパティーンのことを指しているのだろう。

一方で、単なるクローンを作るという話にとどまらず、パーシングが遺伝子操作に取り組んでいる点は興味深い。『ボバ・フェット』ではルークがグローグーに“ジェダイかマンダロリアンか”の二択を迫った一方で、パーシングは良いとこ取りを目指している。これは、“ジェダイかシスか”という二元論からの脱却という続三部作以降の流れに沿ったものでもある。

また、科学の力でそれを達成しようとする姿は、グローグーがマンドーとの経験を重ねてマンダロリアンとジェダイの“良いとこ取り”を実現しようとしている点と対比になっているようにも思える。ここにきて銀河に波及するレベルで物語が大きく動き始めた。

帝国で働いた“普通の人”

スピーチを終え、大人気のドクター・パーシング。帝国崩壊から約7年後という時代で、徴兵を逃れたと帝国時代のことを語る人物の姿も。クローン兵撤廃からの徴兵導入の経緯も『バッド・バッチ』で描かれている。「権力の変遷が激しくて迂闊に口をひらけん」と言う人物もいるが、こういう人はずっと時の権力におもねって生きていくのだろう。

ドロイドのドライバーからコルサントの名所を教えられながら、ドクター・パーシングは恩赦住宅に到着。恩赦士官のM34に酒に誘われ、自身の名前を「L52」と名乗る。最近まで「再教育施設」に入っていたらしい。G27、M40、G68と挨拶を交わすが、このG68がモフ・ギデオンに仕えていた通信士官だった。

G27とM40は、モフ・ギデオンは裁判前に逃げた、いやマインド操作されたと、モフ・ギデオンが今も生き延びていることを示唆している。通信士官は「新共和国に貢献したい」と”転向”したように見えるが、M34は「ここは楽園」「新共和国万歳」と言っており、なんだか洗脳されてるっぽい。パーシングも空気を読んで「新共和国万歳」と言って乾杯するが、飲んでいるものもSF的には怪しく、なんだかドラマ『ブラック・ミラー』(2011-) の世界のようだ。

一方で、帝国軍で働いていた人々のその後というのはこれまで十分に描かれておらず、笑顔で会話を交わす一同からは、やはり“普通の人”という印象を受ける。かつてのナチスドイツや大日本帝国がそうであったように、帝国軍を支えていたのは極悪人ばかりではなく、私たちのような一般の人々だ。恩赦組は生き延びて笑顔を見せているが、帝国が圧政を敷いて多くの犠牲者を生んだことも事実であり、だからこそ、体制に流されるだけではない個々人の生き方が日頃から問われることになる。

自由と大義

ドロイドからの案内ではコルサントに興味を抱いていなかったドクター・パーシングも、この交流でほぐれてきたのか、自室ではコルサントのことを勉強している。コルサントのエキュメノポリス=都市惑星としての側面が紹介されたところで、先ほどの会話に出ていた黄色いトラベル・ビスケットが届けられる。

パーシングは専門とは異なる記録係に配属されている模様。話しかけてきた同僚は、今日が「ベンドゥデー」だと言っているが、ベンドゥとはアニメ『スター・ウォーズ 反乱者たち』(2014-2020) に登場したキャラクターで、ジェダイでもシスでもない立場でフォースを司る特別な存在。強大な力を操るのだが、ジェダイも有害かもしれないと考えるキャラクターであり、“二元論にとらわれない”というテーマがここでも示唆されている。

元通信士官と夜の街に繰り出したパーシングは、露店に大道芸人もいる明るい街の姿に驚く。なお、惑星コルサントの永住市民の人口は一兆人であると語られている。帝国時代は「大義に生きていた」という元通信士官と、倫理の観点から新共和国の気を引けないがクローン研究を進めたいドクターは、現状への不満という点で一致する点を見出す。

一方で、新共和国における“自由”を謳歌している姿も印象的だ。「新共和国は盤石じゃない」という言葉も飛び出すが、これは『スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』(2015) で新共和国がファースト・オーダーの台頭を許した背景に繋がっているのだろう。なお、この場面の音楽は「レジスタンスのマーチ」がテーマパーク風にアレンジされた曲が流れている。いわば軍歌であり、これもちょっとプロパガンダっぽい感じがする。

大義と自分の意思

ドクター・パーシングは新共和国の紋章が掲げられている建物で、娯楽として研究を進めてもよいか確認するが、コルサント協定で禁じられていると言われてしまう。パーシングは新共和国ならクローン技術の使い道を誤らないとしながらも、研究を続けるためのリスクを取ることに同意できずにいた。

パーシングが取り掛かるのは帝国の廃品をリスト化して反乱同盟軍の艦隊を処分するという“戦後処理”。自分の能力を発揮できず、“申請のための確認”がいるというお役所仕事にストレスを抱えながら、トラベル・ビスケットを口にするのだった。この後のドロイドとのやり取りで分かることは、パーシングは帝国から解放されたにも関わらず新共和国という新たな権力に仕えて自分のやりたいことができない現状に不満を持っているということだ。

面接後のドロイドの無機質な「Thank you for your service.」的な文言は、明らかにディストピアSF映画のそれであり、パーシングにとってはここが緩やかなディストピアであることを示している。そしてついにパーシングは移動式ラボの調達をG68こと元通信士官に依頼。「新共和国のため」「正しいこと」と言い聞かせる姿は、パーシングがかつても自分の意思と大義をすり替えて帝国に仕えていたことを窺わせる。

恩赦組の服を着替え、コルサントの電車に乗った二人は、新共和国が押収した帝国船がある廃船置き場へ向かう。G68はトラベル・ビスケットをそこからくすねてきていたらしい。『ボバ・フェット』『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018) を思わせる列車アクションを経て廃船置き場にたどり着いた二人は、廃船と化したスター・デストロイヤーを発見するのだった。

新共和国の闇

ホラーっぽい雰囲気が漂う艦内。『バッド・バッチ』シーズン2では二週間前の第11話で同じく真っ暗なゴースト船を探索している。二人はようやく名前を教え合い、G68はイライア・ケイン、ドクター・パーシングはペン・パーシングとフルネームを名乗る。

帝国艦の中で番号の名前から本当の自分に戻るというのは、イライア・ケインの計算通りの演出のように思える。また、パーシングが名乗った「科学者」と違い、イライア・ケインの「通信士官」はあくまで帝国軍での位置付けになる。帝国の残存勢力との繋がりを示唆する演出だ。だが、この一連の“脱走劇”は全てイライア・ケインの罠だったことが明らかになる。

逮捕され、診察台に乗せられたドクター・パーシングは、「“調整”は困難」「帝国の洗脳は克服しにくい」と言われると、「緩和装置」に入れられてしまう。モフ・ギデオンが「マインド操作」をされたという噂はこの装置のことだったようだ。「低電圧を使って任意のトラウマを緩和する」という非人道的な処置で、音楽も合わせて非常に『ブラック・ミラー』的な展開だ。

それにしても新共和国が「治療」と称して元帝国の人間にこうした対応を行なっていたとは意外である。帝国時代の傷痕が尾を引いているのかもしれないが、モン・モスマやレイア・オーガナはこのことを知っているのだろうか。

ドクター・パーシングを裏切った、というより完全に誘導して嵌めたイライア・ケインには、どうやら別の目的があった。信頼を勝ち取ったイライア・ケインはパーシングと二人で部屋に残ると、緩和装置を操作して パーシングに刺激を与えていく。装置の光は赤くなっているが、これは帝国的な過激な思想に陥る操作をしたのだろうか。あるいは、“緩和”を最大化し、意志薄弱で自分の言いなりになるような状態にしようとしているのだろうか。

いずれにせよ、イライア・ケインはパーシングに勧めたようにコソコソ動くやり方ではなく、新共和国内での信頼を獲得しながら別の目的を達成しようとしているようだ。イライア・ケインは最後に帝国時代に支給されていたトラベル・ビスケットを口にして、帝国復権を望んでいることを示唆している。

贖罪と転向

そしてようやくマンドーのターン。やっとグローグーが見れる。やはりマンドーはチルドレン・オブ・ザ・ウォッチの隠れ家にボ=カターンを案内していた。洞窟の前で銃を携えるマンダロリアン一同は、さながらギャングのようだ。

背教者のディン・ジャリンと、異宗派のボ=カターンを迎えるのだから当然かもしれないが、グローグーを怖がらせないでいただきたい。また、マンドーは第1話でマンダロリアン一同を救ったわけで、背教者にしても厳しすぎないだろうか。やはりここはボ=カターンを連れてきたということが気に食わないのかもしれない。

パズ・ヴィズラはマンドーがマンダロアの泉に入ったことを嘘だと断定し、宗派が異なるボ=カターンの証言も拒む。ここでは、ヴィズラ氏族とクライズ氏族というマンダロリアンの二大名家の微妙な関係も示されている。ボ=カターンは、かつてはマンダロアを統治していた姉のサティーン・クライズの元を離れ、好戦的なデス・ウォッチを創設したプレ・ヴィズラに仕えている。

ディン・ジャリンはこうなることが分かっていたのだろう。泉の水という証拠を見せると、ようやくアーマラーの工房に通され、アーマラーはシーズン3第1話の冒頭で使っていた容器に水を入れると、何やら光の波紋が走って水が真正であることが証明される。どういう原理なのだろう……。

これでディン・ジャリンの贖罪が果たされると、この直前に泉に入ってディン・ジャリンを助けたと言っていたボ=カターンも教義によって赦しを得る。泉の水を浴びて、それからヘルメットを脱いでいないということで、ルール上はチルドレン・オブ・ザ・ウォッチが認めるマンダロリアンということになるらしい。

そんな急に言われてもボ=カターンは受け入れるのは難しいだろうが、アーマラーは、「好きな時に出られるが、それまでは我らの仲間」と柔軟な運用をしてみせる。家を失ったボ=カターンにとってはありがたい展開だ。

アーマラーが、ボ=カターンがクライズ氏族であることを強調して受け入れを表明すると、ヴィズラ氏族のパズ・ヴィズラ以外のメンバーは次々とボ=カターンとマンドーを祝福する。権力を失って孤独になったボ=カターンは、再びマンダロリアンに受け入れられることになったが、今度は権力で従わせるのではなく、同じ教義の上で仲間になるという展開だ。

最後に、ボ=カターンが見つめたのは、洞窟の壁にかけてあるミソソーの頭蓋骨だった。マンダロアの地下のミソソーの存在を知るボ=カターンは、家を失い、仲間を得て、ここからどんな行動に出るのだろうか。

『マンダロリアン』シーズン3第3話感想&考察

マンダロリアン vs 帝国の残党?

ちょっとグローグー要素が足りないのではないか。という思いもあるが、なんだかドラマ2話分を観たような贅沢な回だった。マンドーとボ=カターンについては、すっかり仲良しになり、揃ってチルドレン・オブ・ザ・ウォッチに所属する展開に。二人が惑星マンダロアが呪われていないことを示したため、一同が惑星マンドロアに帰還する展開も考えられる。

そうなれば復活したマンダロアは誰が統治者になるのだろうか。実質的なリーダーであるアーマラーなのか、ダークセーバーを持っているディン・ジャリンなのか、それともかつての統治者であるボ=カターンなのか。だが、ボ=カターンはチルドレン・オブ・ザ・ウォッチでは新入りだ。

また、パズ・ヴィズラは名家の末裔ということもあるし、本人も『ボバ・フェット』でマンドーにダークセーバーを賭けた決闘を挑んだように、権力欲や名誉欲がある人物でもある。パズ・ヴィズラが懲りずに統治者のポジションを狙う可能性は十分にある。

惑星マンダロアへの帰還についての懸念事項は、今回見られた帝国の残存勢力の復活だろう。おそらく続三部作で脅威となったファースト・オーダー結成に向けた初期段階にあると思われるが、それを率いているのはモフ・ギデオンなのだろうか。マンドーとボ=カターンへの恨みを返そうとするだろうし、あのまま誰もいなくなったマンダロア星系を根城にしようとするかもしれない。そうなれば、マンダロリアンは一致団結して戦わなければならなくなる。

グローグーはというと、第3話はあまり見せ場がなかったが、グローグーが「我らが道 (This is the way.)」と言おうとしたことは第3話全体のハイライトの一つだ。シーズン3では第1話からマンドーがマンダロリアンとしての生き方を教えてきたが、ここにきて“自覚”が見られた。第2話で言葉を発したことが、第3話のこの展開の導入になっていたようである。

新共和国をどう描く?

シーズン3第3話のタイトル「転向 (The Convert)」は、ボ=カターンの“改宗”にもかかっているが、もちろんドクター・パーシングの物語にもかかっている。帝国から新共和国への転向、新共和国から帝国への転向、どちらとも取れるが、最終的にはイライア・ケインがパーシングを無理やり「コンバート」させたということのようだ。

確かにドクター・パーシングは優柔不断なところがあり、自分の意思なのか大義のためなのかを曖昧にしながら、人に流されて行動を選択している。こんな状態で仲間になられても困るということなのだろうか、イライア・ケインはかなり強引な手でドクター・パーシングを利用しようとしているように見える。

『マンダロリアン』では帝国崩壊直後の、『バッド・バッチ』では帝国成立直後の不安定な銀河の様子が描かれているが、まさか新共和国が“治療”と称したナチスドイツのような処置をとっているとは思わなかった。新共和国はこの件について必ずしっぺ返しを喰らうべきであり、そのしっぺ返しというのが続三部作におけるファースト・オーダーの台頭ということなのかもしれない。

続三部作では新共和国側に多くの損失が生まれた。レイア・オーガナは新共和国にファースト・オーダーへ対応することを求めたが、元老院が衰退しており適切な処置は取られず、私設のレジスタンスで戦っている。つまり、ただ悪い奴らが復活したという話ではなく、新共和国側にもそうした勢力の拡大を許すような要因があったということだ。

カイロ・レンはジェダイ・オーダーを復活させようとしたルークの闇に触れてダークサイドに堕ちた。映画の方では唐突な感じもしたが、『ボバ・フェット』ではルークはグローグーにジェダイの道を行くか二度とジェダイになれないかの二択を迫るなど、その後の失敗を示唆するような展開が見られた。

ファースト・オーダーに共感する勢力が増えていった背景には、銀河には新共和国に対する不信感も存在していたと考えるのが筋だろう。帝国時代のトラウマが色濃く残る中での“行き過ぎ”は起こりうることだが、『マンダロリアン』がそうした方向で新共和国を描くのかどうかに注目したい。

クローン研究はスノーク用?

最後に触れておかなければならないのはクローンについてだ。『バッド・バッチ』でパルパティーンがクローン技術を利用しようとしている姿を描いている最中に、『マンダロリアン』でもクローン研究が更に進められることが示唆された。ドクター・パーシングが進めようとしている複数のドナーの最高の部分を重ねるというクローン技術は、例えばジェダイと誰かを掛け合わせたようなクローンを生み出すことができるようになるのだろう。

元々クローントルーパーはジャンゴ・フェットという銀河最高の賞金稼ぎをホストとして作られた兵士であり、フォース感知者のクローン兵が作れるとすれば、銀河は新時代へと突入する。これはパルパティーンのクローン作成とは関係なく、ドクター・パーシング自身が目指す枝分かれしたプロジェクトなのかもしれない。

だが、最も有力なのは、ドクター・パーシングの研究が生み出すのはパルパティーンのクローンではなく、最高指導者スノークの方だというものだろう。単純なクローン技術はすでに実現しているが、スノークのようにフォースの力を持ったパルパティーンの“操り人形”を作り上げるには、パーシングの計画が必要だったのではないだろうか。だとすれば、スノークの力を見るに、その計画は成功したと言えるが、果たして……。

また、イライア・ケインは今もモフ・ギデオンのもとで働いていると考えるのが順当だろう。ファースト・オーダーがクローン技術を今も追い求めているのだとすれば、相当にしぶとい。モフ・ギデオンの再登場に期待しつつ、あっという間にシーズン3全8話の折り返しとなる第4話の配信を待とう。

ドラマ『マンダロリアン』シーズン3は2023年3月1日(水) より、ディズニープラスで独占配信。

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シーズン3第4話のネタバレ解説はこちらから。

シーズン3第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

 

同日配信のアニメ『バッド・バッチ』シーズン2第13話のネタバレ解説はこちらから。本エピソードには地震と津波の描写が含まれるので注意していただきたい。

ドラマ『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』最終回のネタバレ解説はこちらから。

高い評価を受けている「スター・ウォーズ」ドラマ『キャシアン・アンドー』シーズン1の解説はこちらから。

ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』の解説はこちらの記事で。

 

シーズン3配信のタイミングで、主演のペドロ・パスカルは生涯マンダロリアンを演じると宣言した。詳しくはこちらから。

ジョン・ファブローと共に『マンダロリアン』の監督・脚本・制作総指揮を手掛けるデイブ・フィローニは、グローグー=ヨーダのクローン説に言及した。詳しくはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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