スーパーヒーロー黎明期を描く『VOUGHT RISING』
邪悪なスーパーマンのようなホームランダーと、何でもありのならず者集団のボーイズを率いるビリー・ブッチャーの対決を描く人気ドラマシリーズ『ザ・ボーイズ』(2019-)。腐敗したヒーローたちによる衝撃的な結末を迎えた『ザ・ボーイズ』シーズン4第8話「シーズン4フィナーレ」の熱がまだ冷めやらぬ中、2024年のサンディエゴ・コミコンでスピンオフ作品の制作が発表された。
それが第2次世界大戦から1970年代にかけて活動していたソルジャー・ボーイとストームフロントを主人公とした『ヴォート・ライジング(原題:VOUGHT RISING)』だ。ストームフロントはかつてリバティとして活動しており、リバティとソルジャー・ボーイの2人の傲慢で人種差別的なヒーローたちの活動が描かれると考察される。Amazonプライムビデオの公式Xは以下のようなコメントを発表した。
Introducing the next deranged entry into the world of The Boys: VOUGHT RISING, starring Jensen Ackles and Aya Cash. Set in the 1950s, exploring the early exploits of Soldier Boy and a supe you know as Stormfront. Only advice for now is keep your hands off the f*cking shield. pic.twitter.com/7jdqxz5Ang
— Prime Video (@PrimeVideo) July 26, 2024
『ザ・ボーイズ』の世界の次なる作品をご紹介します。 ジェンセン・アクレスとアヤ・キャッシュ主演の『ヴォート・ライジング(原題:VOUGHT RISING)』。1950年代を舞台に、ソルジャー・ボーイとストームフロントと呼ばれるスーパーヒーローの初期の活躍を描きます。今のところ唯一のアドバイスは、クソシールドから手を離すことです。
本記事では、『ヴォート・ライジング』で主人公を務めるソルジャー・ボーイとストームフロントがどのような人物か紹介しながら、『ヴォート・ライジング』のストーリー展開について考察していこう。なお、以下の内容は『ザ・ボーイズ』シーズン4までのネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4の内容に関するネタバレを含みます。
ソルジャー・ボーイ 演:ジェンセン・アクレス
『ヴォート・ライジング』で主人公を務めるのがジェンセン・アクレスが演じるソルジャー・ボーイだ。ソルジャー・ボーイはヴォート社製作の劇中劇『ソルジャー・ボーイ誕生物語』で、そのオリジンが語られている。しかし、それが嘘っぱちなのが『ザ・ボーイズ』の世界だ。ソルジャー・ボーイの表向きのオリジンは南フィラデルフィア出身の貧しい少年が黄金の心に相応しい力を手に入れたという設定になっている。しかし、『ザ・ボーイズ』シーズン3第8話「焦土へのいざない」で語られた実際のソルジャー・ボーイ誕生物語は違う。
金持ちの製鉄所のオーナーの息子で、寄宿学校も退学になる不良少年が陸軍将校のコネクションでフレデリック・ヴォート博士のコンパウンドVの治験で力を手に入れた。それがソルジャー・ボーイの真実だ。最初期のコンパウンドVの成功例であったソルジャー・ボーイはこれによって父親に認められることを望んだが、父親からは「近道をした」と否定されてしまった。
ソルジャー・ボーイはスーパーヒーローになると周囲の人間に認められるべく、ノルマンディー上陸作戦にも参加するなどヴォート社の看板商品として活動した。しかし、実際にはノルマンディー上陸作戦に直接参加はせず、ノルマンディー上陸作戦後に撮影だけ行なったことが『ザ・ボーイズ』シーズン3第7話「過去との対峙」で明かされている。
その結果、ソルジャー・ボーイは父親など周囲の人間に認められることを渇望するようになり、自分の理想を息子であるホームランダーにも押し付け、決別するに至った。その承認欲求と支配欲は暴走していき、ヴォート社のコントロールが効かなくなったことでニカラグアの作戦でソ連へと引き渡され、ソ連の実験で血中のコンパウンドVを消す放射線を放つ体に変身した。
2026年に配信される予定の『ザ・ボーイズ』シーズン5にも出演する予定のジェンセン・アクレス演じるソルジャー・ボーイ。『ザ・ボーイズ』の前日譚となる『ヴォート・ライジング』ではその承認欲求の根源が描かれることになると考察できる。ソルジャー・ボーイがどのようにして承認欲求を肥大化させていったのかにも注目だ。また、MMの祖父の殺害に関与するなど、ソルジャー・ボーイはヒーロー活動での周囲の被害を気にせず、それに加えてマチズモと人種差別を体現したようなヒーローだ。それを主人公に据えることでドラマがどのような展開になるのかにも注目したい。
ストームフロント/リバティ 演:アヤ・キャッシュ
もう1人の『ヴォート・ライジング』の主人公であるストームフロントもソルジャー・ボーイに負けず劣らず最低の部類に入るヒーローと言えるだろう。ストームフロントはリバティとして活動していた頃、黒人だという理由で無実の青年を犯罪者扱いし、殺害したことが『ザ・ボーイズ』シーズン2第4話「この世に類を見ないもの」で語られるなど、人種差別の塊のようなヒーローである。それもそのはず、ストームフロントはナチス党員のヒーローなのだ。
そのことが明かされたのは、『ザ・ボーイズ』シーズン2第6話「開かれた扉」だった。ストームフロントは1919年ベルリン生まれで、ヴォート社の創設者であるフレデリック・ヴォートの妻であり、コンパウンドVの最初の成功例だったのだ。
ナチス党員や共産党員を嫌うソルジャー・ボーイとストームフロントは馬が合わないように思えるが、そこはソルジャー・ボーイだ。彼の目は節穴だったようで、『ザ・ボーイズ』シーズン3第6話「ヒーローガズム」では、ソルジャー・ボーイはストームフロントと共にB級ヒーローたちの乱痴気騒ぎであるヒーローガズムを立ち上げたことを自慢げに語っている。
傲慢で身勝手なソルジャー・ボーイとナチス党員のストームフロント。その2人が1950年代にどのような活動をしていたのだろうか。そして、ソルジャー・ボーイがニカラグアでソ連に引き渡され、ストームフロントがリバティという名前を捨てて身を隠すまでの間に何があったのだろうか。今後の『ヴォート・ライジング』に注目していきたい。
ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン4はAmazonプライムビデオで配信中。
原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから第6巻まで発売中。
Source
Amazon Prime Video X
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