シーズン3第8話 最終話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』父から子へ…ラストの意味は? あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン3第8話 最終話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』父から子へ…ラストの意味は? あらすじ&考察

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『ザ・ボーイズ』シーズン3最終回、第8話はどうなった?

Amazonプライムビデオの人気ドラマ『ザ・ボーイズ』のシーズン3がついに最終回を迎えた。全8話で構成されたシーズン3もいよいよフィナーレ。既にシーズン4の製作が発表されているが、シーズン3はどのようなラストを迎えたのだろうか。

今回も各シーンをネタバレありで解説していく。以下の内容はシーズン3最終話となる第8話のネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっている。露骨な残虐描写と性描写も含まれるので注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3最終話 第8話の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン3第8話「焦土へのいざない」ネタバレ解説

Snowflake

『ザ・ボーイズ』シーズン3第7話のラストでは、ホームランダーがソルジャー・ボーイの精子から作られた存在であることが明かされた。まさかまさかの親子関係というドラマ版オリジナルの設定である。

最終話となる第8話の冒頭は、その流れを引き継いでホームランダーの血を引くライアンの姿から幕を開ける。ライアンも少し大きくなったように見える。そしてライアンの前に姿を現したのはホームランダー。やはり取引をしたニューマン議員からからライアンの住所を得ていたようだ。

ライアンは能力者なのに能力のないグレースを、親戚関係を意味する「おばさん (aunt)」と呼んでいることに顔をピクつかせるホームランダー。本物の血縁関係を見つけた今は尚更ムカつくらしい。ブッチャーから切り捨てられたライアンは、ホームランダーの「何があろうとお前への愛は不変」という甘い(都合の良い)言葉に心を許してしまう。

一方ヴォートタワーの前には、第6話でのスターライトの告発と第7話での隠し撮りによってホームランダーの蛮行が明らかになり、スターライトを支持する群衆が集まっていた。掲げられているプラカードには「#MeToo」の文字や、女性労働者のシンボル的扱いを受けている「We Can Do It!」の絵が使われている。

一方で、ホームランダー支持者も集結している。男性のTシャツやプラカードにはホームランダーの写真と共に「Sorry, snowflake」と書かれているが、「Snowflake」は左派の人々を揶揄するスラングである。2010年代に本来の「雪片」という意味から転じて「デリケート/敏感/弱い」という意味で用いられるようになり、ドナルド・トランプ元大統領も好んで使用していた。

検察当局がメイヴを解放しようとしているというニュースが入る一方で、ホームランダー派はスターライトが子どもの人身売買に関わっているという嘘を信じて主張している。第7話で報道されていた内容が民衆にも浸透しているのだ。メディアが果たす役割というのをうまく捉えている。

ヒューイの耳からは緑の液体が出ている。ブッチャーは緑の液体を吐いていたので、二人とも同じ症状が出ている。ソルジャー・ボーイは遺伝子上の息子であるホームランダーを殺すことに葛藤を抱えているが、ブッチャーは約束通りにホームランダーを倒しに行こうとする。ブッチャーはアニーからV-24の副作用について聞いているため、もう時間がないことを知っているのだ。

司法長官がメイヴを探しに来るという状況で、アシュリーとディープはメイヴを眠らせて移動させようとする。しかし、ここは流石メイヴ。簡単に警察を倒し、メイヴが世に解き放たれる。

ヘロドトスの言葉

フレンチーは第7話でソルジャー・ボーイを眠らせる神経剤だということを見出したノビチョクをアニーに手に入れてもらっていた。スターライトの「WISH」という香水に入れられている。MMは娘のジャニーヌの前で人を殴り倒してしまったことで気を落としているが、フレンチーは昔、映画館で喋っていたやつの耳を切り落としたと話して励ます。英語では『幸せになるための27のドレス』(2008) を観ていた時、と話しており、割と最近の出来事だということが分かる。

ここでMMは「大事なのは俺自身の問題をジャニーヌから遠ざけること」と話す。トラウマを与えてしまったことを悔いているのだ。ショーランナーのエリック・クリプキは、シーズン3では「父が子に与えるトラウマ」について描いていると話している。ブッチャーの父がそうであったように、MMもまた我が子にトラウマを植え付けしまったのだ。

しかし、フレンチーは古代ギリシャの歴史家ヘロドトスの『歴史』から「男の不幸の中で一番辛いことは、多くを知りながら制御できないこと」という一節を引用しながら、本当の自分を隠さないように助言する。それにしても、MMもこのヘロドトスの一節について「知ってるよ、本を読んだ」と言っており、二人ともなかなかのインテリであることが分かる。

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確かにMMの場合は「強くならなければ」と、更に自分に重荷を課そうとしている。それではよりマッチョで孤独に、“男性らしく”なっていくだけだ。キミコに助けてもらうことを受け入れたフレンチーは、ありのままの「壊れてるけど最高」なMMを受け入れ、「抗うつ剤にも頼れ」と優しい言葉をかける。MMは一筋の涙を流している。

トイレの鍵

NNCはテレビでホームランダーの映像によってヴォート株が暴落していることを伝えている。アシュリーがホームランダーにメイヴの脱走を報告する中、ブラック・ノワールはヴォート・タワーにカムバック。バスター・ビーバーも一緒だ。

ノワールが書いて見せた紙は、字幕では「ソルジャー・ボーイは俺たちを殺しに来る」となっているが、英語は「SOLDIR BOY WILL COME WE KILL」となっており、綴りも文法も間違っている。ホームランダーはソルジャー・ボーイについての心配がなくなったからか、余裕の表情でノワールを迎え入れる。何度も触れているが、ホームランダーにとってブラック・ノワールは唯一の“先輩”であり、ルーキーの頃から唯一ずっと味方でいてくれた存在だ。

ブッチャー達が立ち寄ったガソリンスタンドもヴォートの関連会社になっている。どんだけ手広いのか。トイレから出てきたヒューイがブッチャーに渡そうとしているのはトイレの鍵。アメリカのガソリンスタンドは基本的にコンビニが併設されており、そのコンビニのトイレは治安維持の観点から店員に鍵を借りて使う方式になっている。タイヤのホイールが付いているのは紛失や持ち逃げ防止のためだろう。ブッチャーは「弟に瓜二つ」と言いつつヒューイをぶん殴ると、鍵をトイレの個室に入れてヒューイを置き去りにするのだった。

ヒューイがいないことに気づいたソルジャー・ボーイは「フル○ンは?」と聞いているが、英語では「精○ガブ飲み野郎は? (Where’s the cum guzzler?)」と聞いている。ブッチャーはヒューイに逃げられたことにして、ヒューイを守ったのだった。

ブルー・ホークの暴力によって下半身付随となった兄ネイサンの前に現れたAトレインは、元のコスチュームに身を包んでいる。第7話でブルー・ホークの心臓を移植されたことが明らかになったが、それにより再び走れるようになったようだ。

ネイサンにコーチとしての力を借りたいと頼むAトレインは、「残りの人生で償いたい」と誠意を見せる。しかし、ネイサンはAトレインがブルー・ホークを殺したことを見抜いていた。ブルー・ホークが殺されるのではなく逮捕されることを望んでいたネイサンは、Aトレインがブルー・ホークを殺したことを「自分のため」と看破し、「事態を悪くしている」と叱責する。

ネイサンはAトレインに英語で「メンソールベイプ(電子タバコ)を売れ」と言っているが、ブッチャー達が立ち寄ったガソリンスタンドにもその商品の広告が出ていた。ネイサンはそんなAトレインに、二度と自分に関わらないよう告げ、家から追い出すのだった。

それぞれの中にあるもの

置いていかれたヒューイを迎えに来たのはアニー。V-24によってヒューイに命の危険が迫っていることを知っているアニーは、少しヒューイに優しくなっている。ヒューイは“ピザロール”の話を始めるが、これはブッチャー、ソルジャー・ボーイと出発の準備をしている時にテーブルの上にあった食べ物だ。ヒューイは小さい頃にこれを食べながらドラマ『探偵レミントン・スティール』(1982-1987) を観ていたと話している。

ヒューイの父ヒューは頼りなかったものの近くにいてくれたと言い、「彼は弱くなかった」と気づく。「強さ」がマッチョであることだと思い込んでいたヒューイは、ようやく「アニーを守りたい」という欲求に支配された自分の愚かさを認め、アニーに謝罪する。

その二人とMM達に合流したのは逃走したメイヴ。アニーのハッシュタグ「#FreeMaeve」運動の高まりによって司法長官が動いたことが出られた要因だと説明する。字幕は「世界中のLGBの子がヴォートに声をあげた」となっているが、英語ではLGBTのTとTeen(ティーン)を重ねた造語の「LGBTeen」と言っており、T(トランス)を外しているわけではない。

キミコはコカインに溺れるフレンチーを叱責している。フレンチーはニーナの「首輪の持ち主が変わるだけ」という指摘を気にしていたが、キミコは「過去は私たちの本質じゃない」と言い、フレンチーの内に「私のモンクールが見える」と言うのだった。モンクールはフランス語で恋人など大切な人に語りかける時の言葉で、英語でいうと「my heart」になる。

一方、ヒューイはソルジャー・ボーイがホームランダーの父であるという重大な秘密をメンバーにシェアする。ソルジャー・ボーイによるホームランダー退治の雲行きが怪しくなると共に、アニーがヴォートタワーからの避難を指示しても聞く耳を持たれない。アニーは発言がほぼ全てFワードで代替されるほど苛立っている。

ヒューイはブッチャーの中には善の心が残っていると主張し、全員を救うと宣言する。フレンチーはMMが壊れていてもその中に“最高”な部分を見出したし、キミコはフレンチーの中に“モンクール”を見出した。ヒューイは父の弱さの中に“強さ”を見出し、最後に自分を退場させたブッチャーの心の奥底に“善”を見出したのだった。

ソルジャー・ボーイの父

そのブッチャーはソルジャー・ボーイと過ごしていたが、ライアンを連れていかれたグレースからの連絡をシャットアウトしてしまっていた。ソルジャー・ボーイが話題に挙げている『ソルジャー・ボーイ物語』は『巴里のアメリカ人』(1951) と同年に公開されたという。

ソルジャー・ボーイが「やれた」と話すジェーン・ワイマンは1940年に後に大統領となるロナルド・レーガンと結婚し、1948年に離婚している。史実では1951年は『花婿来たる』と『青いヴェール』に出演しているため、かなり多忙な身である。英語では「コート預かり所でやった」と話している。本当にどうでもいい情報だがしんみりした顔で話しているところが、ソルジャー・ボーイのナチュラルな「そういう人」感を醸し出している。

ニューヨークの隣州である南フィラデルフィア出身で、優しい心に見合うパワーを手に入れたというストーリーは全て嘘だと明かすソルジャー・ボーイ。これはマーベルのキャプテン・アメリカの誕生譚をベースにした皮肉だろう。ソルジャー・ボーイは、実際には出来の悪い富裕層の少年だったという。父は製鉄所のオーナーで、英語では「州の半分の製鉄所を持っていた」と話しており、ソルジャー・ボーイが生まれた1920年代では相当な金持ち一族だったと考えられる。

ソルジャー・ボーイは虐待を受けることもなく、名前を継がせないために単に捨てられ、一族に存在していなかったことにされた。ソルジャー・ボーイは自力で米陸軍省にいた父のゴルフ友達を頼り、ヴォート博士のコンパウンドV治験に参加したという。スーパーパワーを得たが、父はそれでも「ショートカットをした」と認めてくれなかった。ソルジャー・ボーイもまた父からの“承認”というコンプレックスを抱えていたのだ。

「父よりうまくやれる」と、子どもを欲しがっていたというソルジャー・ボーイに、ブッチャーはホームランダーは彼の子どもではないと説得しようとする。近年のハリウッド作品では、「血がつながっていなくても家族になれる」というメッセージの作品は多い。ザ・ボーイズのメンバーも疑似家族なのだが、ここでは逆に「血のつながりだけを根拠に家族だと主張すること」への抗議が行われている。この“肯定”ではなく“否定”の主張に勇気づけられる人も少なくないはずだ。

ストーリーとしても、確かにブッチャーの言う通り、ホームランダーの登場によってソルジャー・ボーイはロシアへ送られ、ブッチャーとも協力への見返りにホームランダーを倒す約束をしている。後から獲得した“意味”は全てホームランダーとの対決という結論に向かっており、「血がつながっている」ということ以外にそれを覆す理由は存在しない。

メイヴの気持ち

ブラック・ノワールはソルジャー・ボーイ戦に備えて刀を研ぎ続けていた。ソルジャー・ボーイに暴力を受けていたノワールはホームランダーに彼を「悪」と説明するが、ホームランダーはソルジャー・ボーイが自分の父だと明かす。最近は使っている描写がなかったが、そういえば透視力があるホームランダーはマスクの下のノワールの感情が全て見えていると話す。観念したノワールが全てを知っていたと認めると、ホームランダーは案の定ノワールの臓器を抉り出す。

ブラック・ノワールは最後にバスター・ビーバーと仲間達に見送られるが、本当にノワールは死んでしまったのだろうか。第7話のアニメーションでは頭を割られ、脳みそが飛び出しながらも生きていたノワールのこと。超回復能力があるなら復活に期待したい。

そしてブッチャーのもとに到着したのはブッチャー以外のザ・ボーイズメンバー+アニーとメイヴ。フレンチーは「だまれ」と言われるがこれを拒否する。字幕では「有給休暇と歯の治療を与えろ」と言っているが、英語では吹き替えと同じく「有給休暇と歯科保険 (dental plan) をつけろ」と言っている。アメリカは皆保険制度ではないため、保険がないと歯の治療に数十万円を請求されることになる。

ヒューイは、レニーのように止めて欲しかったんだろうとブッチャーに語りかけるが、ここで裏切ったのはクイーン・メイヴ。だが気持ちは分かる。第7話ではホームランダーはメイヴから強制的に卵子を摘出して子どもを作ろうとしたのだから。身体を支配しようとする相手を許せるはずはなく、メイヴが打倒ソルジャー・ボーイよりも打倒ホームランダーの側につく理に適った展開になっている。

そこにソルジャー・ボーイが戻ってきてザ・ボーイズは万事休す。ブッチャー、メイヴ、ソルジャー・ボーイ以外の面々は金庫に閉じ込められてしまう。ヴォートタワーへ向かう前に、ブッチャーは「ティンカー・ベルのパワーを断たないと」とブレーカーを落とす。これは光を操るスターライトのことだが、ティンカー・ベルは壊れた鍋などの金物を修理する妖精であり、どこかが壊れたメンバーが集まるザ・ボーイズのことを考えれば、言い得て妙である。

決戦の時

スターライトからの避難勧告を無視するようAトレイン、ディープ、アシュリーに告げるホームランダーは、ノワールのヘルメットを差し出す。現メンバーで唯一入れ替わりのなかった最年長のベテランが粛清されたわけで、一同は驚きを隠せない。

ホームランダーは、ディープがヒーローガズムでタコとやっていたことを指摘。ストレスで髪をむしる癖があり、ほとんど全ての髪を抜いてしまっていたアシュリーにはウィッグを取るよう指示する。さらにAトレインがブルー・ホークを殺したことを指摘すると、「君らは家族ではない」と突き放すのだった。

第7話で副大統領候補選出について報道されていたラマー・ビショップはプールで溺死。ホームランダーから指示を受けたディープの仕業だ。遂に政府に手を出すという一線を越えてしまった。

メイヴにぶん投げられてノビチョクを失ったザ・ボーイズだったが、金庫を脱出するとヴォートタワーのラボでノビチョクを作る作戦に出る。捨身の作戦だが、それしかない。一方でヴォートのアーカイブで過去の記録を見るホームランダーは、ソルジャー・ボーイがナチスから捕虜を解放する映像を観ていた。ストームフロントとは同じ時代を生きたが逆の立場にある存在だ。

そこに登場したのはブッチャー。ホームランダーは英語で「焦土か? ウィリアム」と問いかけ、ブッチャーは「焦土だ」と答えている。シーズン3第1話での約束を果たす時が来たということだ。

父から子へ

ソルジャー・ボーイ、メイヴ、ブッチャー(V-24服用)を相手に、ホームランダーは「仲間に裏切られた気持ちは分かる」と、ソルジャー・ボーイにタッグを組むよう持ちかける。「血を引いていることが全て」と言い切るホームランダーは、切り札とばかりにライアンを召喚。“息子”に揺らいでいたソルジャー・ボーイは“孫”の登場で折れるかと思いきや、彼が選んだ道は自分の父と同じやり方だった。

ソルジャー・ボーイはホームランダーを認めなかったのだ。“父に認めてもらう”という経験がなかったソルジャー・ボーイは、ホームランダーに「泣き虫で注目を集めたいだけ、もう直せない」と言い放つと胸部のビームを発動させようとする。しかし、それを止めたのはライアンだった。ライアンごとホームランダーを殺そうとするソルジャー・ボーイを止めたのはブッチャー。めちゃくちゃである。

だが、ブッチャーがライアンを守るのは亡き妻ベッカとの約束のため。「ヤツ(ホームランダー)より弱い」という言葉を受け入れ、ブッチャーはソルジャー・ボーイに挑む。ブッチャーの中の弱さ、つまり善の心がブッチャーを人間たらしめているのだ。

クイーン・メイヴはホームランダーと交戦。スターライトとMMがブッチャーに加勢すると、ヒューイはビルから職員を逃し、フレンチーがラボでノビチョクを生成する間、キミコが警備兵を退治する。

この時キミコが聴いている曲は第7話でテレビから流れていたマイケル・センベロ「Maniac」(1983)。キミコは、テレビの映像でも流れていた映画『フラッシュダンス』(1983) でジェニファー・ビールスが踊るシーンのステップを真似している。「彼女は狂気的」という歌詞に合わせて次々警備兵を倒していく。

メイヴはホームランダーに右目を抉られながらも善戦し、フレンチーも足を狙撃されながら、キミコの援護の下でノビチョクの生成に成功。スターライトが追い込まれる中、ヒューイは基地で拾ったV-24を使うかどうか迷うが、戦場になったスタジオの電力供給を上げることでスターライトの力を増幅させると、スターライトは見事にソルジャー・ボーイにダメージを与えることに成功する。

ヒューイは、これまでの経験から学び、やるべきことは自分の手でスターライトを救おうとすることではなく、サポートすることだと思い至ったのだ。家族を殺されたMMはソルジャー・ボーイに「お前はヒーローじゃない、強いだけのレイシスト」と言い放ち、ノビチョクを吸引させる。だが、ソルジャー・ボーイは最後の抵抗に出て爆発を起こそうとうするのだった。

ここで一同を救ったのはホームランダーを追い込んでいたメイヴ。先ほど裏切ったアニーから「ヒーローだと思ってた」と言われていたメイヴは、ここでヒーローとしての行動に出る。爆発するソルジャー・ボーイもろともビルから飛び降り、そこにいた全員を助けたのだった。

ブッチャーはライアンを抱きしめ、身を挺して守っていたが、ライアンが父として選んだのはホームランダーだった。第4話でブッチャーはライアンに「お前は父親と同じ」と言ってしまっていた。それはまさに自分の中に父と同じ部分を見出していたから出た言葉だったのだろう。しかし、その言葉がライアンのこの“選択”を生む結果になってしまった。そしてブッチャーは、遂にVの副作用で倒れてしまう。

余波

ヴォートは、ソルジャー・ボーイを止めた英雄としメイヴの仮設記念碑を建てることを報じていた。ニュースのテロップには「クレムリン(ロシア)が関与を否定、テロ行為を非難」と書かれている。ベッカから受け継ぎ、ライアンから突き返されたネックレスを触るブッチャーは余命が数ヶ月から1年半であることを言い渡されていた。

MMは、これまで娘のジャニーヌに伏せてきた、家族が殺された経験、その時の感情と今の感情、そして家族の戦いと誇りを伝えていた。フレンチーの助言をまっすぐに実行しているのだ。一方、アニーは生きていたメイヴに再会。メイヴは「だまれスマーフェット」とジョークを飛ばしているが、スマーフェットとは『スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険』(2017) に出てくる女の子のスマーフのこと。

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ソルジャー・ボーイの光を浴びたメイヴは、スーパーパワーを失っていた。世間的にはメイヴは死に、一般人としての人生を歩んでいくことになるのだろう。失った右目を海賊のアイパッチにするか、サミー・デイヴィスの義眼にするかと聞いているが、サミー・デイヴィス Jr.は1950年代から60年代にかけて活躍した歌手で俳優。彼は左目が義眼だった。

メイヴは、シーズン2で登場した元恋人のエレナと共に生きていくことにした様子。英語ではエレナはメイヴがカリフォルニア州の田舎町であるモデストの出身で、アメリカ合衆国学校農業クラブ連盟(FAA)に所属していたことを明かしている。FAAは全米に存在する青年クラブで、広大なアメリカの農業を支えている存在でもある。

メイヴは、アニーが自分と救ったと話す。これはアニーが始めた「#FreeMaeve」によって助けられたことを指しているのだろう。「私はジャンプ、あなたは飛べる」とアニーに話すメイヴの態度は、飛べることを鼻にかけてソルジャー・ボーイを見下していたホームランダーと対をなしている。世代交代はこうして行われるべきだ。

エルトン・ジョンの「Goodbye Yellow Brick Road」(1973) が流れる中、アシュリーはメイヴが生きている証拠の映像を削除。この曲の「Yellow Brick Road」とは、「オズの魔法使い」に出てくる「富と名声へと繋がる道」のことで、そうした道へ別れを告げる曲だ。

グレイスが見守る中、ソルジャー・ボーイは再封印。脅威は残ったままであり、グレイスの表情は暗い。ディープは、別れたカサンドラがゴーストライターを務めていたの続編『IN 2 DEEP』を自著として刊行している様子を目の当たりにしている。

「自分でいることが力だった」と語るアニーはスターライトのコスチュームを葬る。MMは、1996年に25歳の若さで凶弾に倒れたラッパーの2PACのTシャツを着ている。シーズン3第3話では同じ西海岸のN.W.A.のTシャツを着ていた。

ブッチャーを除くザ・ボーイズの一同は、アニーを新たなザ・ボーイズメンバーとして認める。その一方で、大統領選を戦うダコタ・ボブが、亡くなったラマー・ビショップに代わる副大統領候補にニューマン議員を選んだことが報じられる。そしてブッチャーは、ニューマンを次のターゲットに選ぶのだった。

ヴォートタワー前ではソルジャー・ボーイの像が倒されているが、これを伝えるニュースのテロップには「スターライトの児童虐待を告発したストームチェイサーは性犯罪者として登録されていた」という報道も流れている。ストームチェイサー=ネオナチを味方につけたホームランダーは、息子のライアンを紹介する。

ホームランダーが、ライアンに物を投げたスターライト派の民間人をビームで殺してしまうが、トッドが歓声をあげると民衆の反応は歓喜と支持に染まっていく。すると、それを見たライアンの表情は笑顔に変わっていく。

エンディングは『ザ・ボーイズ』シーズン3のオリジナル曲だが、そのタイトルは「I Can Do Anything / Finale」となっている。「私にはなんでもできる」。ライアンがこの標語を父から学んでいることを示唆して、『ザ・ボーイズ』シーズン3は幕を閉じる。

『ザ・ボーイズ』シーズン3最終話 第8話まとめ

『ザ・ボーイズ』シーズン3が完結。やはり哀しい結末ではあるが、「父から子へのトラウマやコンプレックスの連鎖/伝達」というのが、アメリカ社会で歴史的に起きてきたことなのだろう。

シーズン2終了時点では、ニューマン議員とライアンについての問題が中心になりそうだったが、結果的にこの二つがシーズン4へと引き継がれる要素となった。同時に、時効性Vを多用したブッチャーは余命わずかとなり、シリーズ全体のフィナーレも近くなったように思える。ザ・ボーイズのメンバーは、それぞれがそれぞれのバディを通して個々が抱える問題をクリアしており、より強くなったことで逆にフィナーレに近づいたと言える。

一方で、シーズン1から中心人物は生き延びてきたセブンは壊滅状態に。メンバーはホームランダーとディープ、Aトレインを残すのみとなった。クイーン・メイヴは力を失い一般人になったし、スターライトはザ・ボーイズ入り。ブラック・ノワールは殺されたようだが、ソルジャー・ボーイが頭を割っても殺せなかったノワールは生きていても不思議ではない。

セブンに残ったディープとAトレインは家族を失った二人であり、ホームランダーは家族という自分が最も信頼する存在を側に置くことができた。“ホームランダーとライアン”、そしてニューマンという政府の中枢に入った能力者がシーズン4の鍵になるだろう。

ちなみに邦題で「焦土へのいざない」となっている第8話のタイトルは、英語では「The Instant White-Hot Wild」となっており、直訳すると「即席の白熱した野生」になる。「White=白い」という言葉がラストの民衆を想起させる。深く考えることなく、その場その場で英雄を選ぶ民衆の判断はまさに、Instant=インスタントなものだ。

シーズン2では、ナチスの残党である100歳のストームフロントが登場したが、シーズン3では“古き良きアメリカ”の残党である100歳のソルジャー・ボーイが登場した。この二人は、まさにホームランダーの精神的な母と父にあたる。共にホームランダー=現代のオルタナ右翼とは矛盾しながらも、レイシズムやセクシズムといった、それぞれの都合の良い要素を引き継いでいる。

これは日本のネット右翼にも言えること。保守が伝統的に築いてきた具体的な制度や関係性は否定しながら、国粋的な価値観やセクシズムだけは引き継ぎ、より先鋭化してインスタントで野生的な部分だけが残っていく。法を無視してホームランダーの姿に熱狂する聴衆の姿は、もはや遠い国のことと笑うことはできなくなってしまった。

幸い、『ザ・ボーイズ』ではもがいて生きてきた何人かが幸せになってくれたことが救いだ。シーズン4では本当の決着がつけられるのか、次の展開を楽しみに待とう。バゴプラでは今後も『ザ・ボーイズ』の新情報や考察をお届けしていくので、お楽しみに!

ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3はAmazonプライムビデオで独占配信。

原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。

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第7話の解説はこちらから。

第1話の解説はこちらから。

第2話の解説はこちらから。

第3話の解説はこちらから。

第4話の解説はこちらから。

第5話の解説はこちらから。

第5話のミュージカルシーンのメイキングはこちらから。

第6話の解説はこちらから。

シーズン3までの経緯とスピンオフ番組の内容、アニメ版の注目エピソードはこちらの記事で。

ショーランナーのエリック・クリプキが語ったシーズン3におけるキャラクター配置の意図はこちらの記事で。

 

『ザ・ボーイズ』シーズン4についての情報はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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