『ザ・ボーイズ』シーズン3がフィナーレへ
Amazonプライムビデオ屈指の人気シリーズへとなったドラマ『ザ・ボーイズ』も、あっという間にシーズン3の最終話となる第8話の配信を迎える。衝撃の事実が発覚した第7話を経て、残りたった1話で終わってしまうのがもったいない。
そんな中、『ザ・ボーイズ』のショーランナーを務めるエリック・クリプキは、最終話に向けて改めて口を開いている。『ザ・ボーイズ』シーズン3の物語をより深く理解するヒントになるその言葉を見てこう。
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』第7話までの内容に関するネタバレを含みます。
ヒューイとアニー、キミコとフレンチー
エリック・クリプキが語っているのはヒューイとアニー(スターライト)、キミコとフレンチー、そしてソルジャー・ボーイ、ホームランダーとクリムゾン・カウンテス、クイーンメイヴの関係について。『ザ・ボーイズ』シーズン3では、キャラクター同士の1対1の関係性にフォーカスした描写がよく見られる。特にキミコとフレンチーが苦境の中にあっても絆を深めていくのに対し、アニーとヒューイの間には深い亀裂が生まれてしまった。
その最大の要因が、ヒューイがVを摂取したことにあるのは明白だ。これまでブレーキ役として、“常識人枠”として重要な役割を果たしてきたヒューイ。力を求めるようになり、次第にアニーとの間に距離が生まれていく。
一方でキミコは、ソルジャー・ボーイ復活の余波でスーパーパワーを失ってしまう。一度は普通の生活を求めたものの、第7話では過去から逃れられないフレンチーを前に、再びパワーを手に入れることを決意する。
このようにシーズン3では、ヒューイとアニー、キミコとフレンチーは対照的なペアとして設定されているのだが、エリック・クリプキはこの二組についてTwitterで語っている。「なぜスターライトはキミコにコンパウンドVを与えたのに、ヒューイには与えたくなかったのか」という問いかけに対して、こう答えている。
Thanks for asking! Because Hughie’s craving was selfish, to make himself feel macho & save a woman who doesn’t want saving. Kimiko’s is a selfless sacrifice that’s a burden to her, to protect a man who welcomes the protection. Big difference. #TheBoys #TheBoysTV @TheBoysTV https://t.co/eDmwCGgU22
— Eric Kripke (@therealKripke) July 4, 2022
ヒューイの渇望は利己的なものです。自分をマッチョに感じるための、守られたいと思っていない女性を守るためのね。キミコの場合は自己犠牲であり、[キミコ自身には]負荷になるものです。保護を受け入れる男性を守るためのものであり、大きな違いがあります。
キミコにとっては、保護を必要としているフレンチーを守るための力だが、ヒューイは自分が弱く小さな存在だということに不満を持ち、保護を求めていないアニーを「守るため」として力を手に入れようとする。
ヒューイはシーズン2で“炭鉱のカナリア”、つまりブレーキ役としてブッチャーを助けたが、シーズン3ではそのブッチャーがヒューイを巻き込む形で暴走を後押ししている。だが、第7話ではブッチャーは悪夢の中で自死した弟のレニーの姿を見た。虐待父の姿を見てマッチョに育ったブッチャーは、マッチョになろうともがくヒューイにブレーキをかけることができるのだろうか。それはブッチャー自身が、自分は父とは違うということの証明にもなるが、果たして……。
ホームランダーとソルジャー・ボーイの関係
父と子の関係で言えば、シーズン3第7話には驚きの新事実が用意されていた。ソルジャー・ボーイがホームランダーの父だと発覚したのだ。ホームランダーは試験管ベイビーであり、親や家族の存在を知らずに育った。しかし、そのプロジェクトのために精子を提供したのがソルジャー・ボーイだったのだ。
シーズン3第2話では、ビルの屋上から飛び降りようとする女性に、ホームランダーは自分は試験管から生まれたと話していた。自分を父のいないキリストと重ね合わせ、「空にいるのは私だけ」と発言したのが印象的だった。
第2話のタイトルは「天上にいるのは我一人」。そのように思い込んでいたホームランダーの前に現れた父について、エリック・クリプキは米TVlineにこう語っている。
もし(ブッチャーの)ゴールがホームランダーを殺すことであれば、ソルジャー・ボーイという予測不可能な存在を抱えていることになります。ソルジャー・ボーイは、振り返ってみれば何度か自分の子どもが欲しかったということに触れています。ソルジャー・ボーイがどのような行動に出るのかについては、最終話の最後の瞬間まで大きな疑問が残ります。
一部は少しスローダウンしましたが、このシーズン全体のテーマを見ると、その多くは父と子についてのものでした。マザーズ・ミルクとその娘、ライアンに、もちろんヒューイの父親に対する気持ちもね。
何度も何度も繰り返されていたのです。シーズンの中盤に入ってからですが、誰かが言ったんです。「ソルジャー・ボーイはホームランダーの父であるべきでは?」って。まさに理に適ったことだったので、それがピッタリハマったんです。物語的にホームランダーが作られた経緯に説明がつくということだけでなく、ソルジャー・ボーイの有害さがホームランダーの有害さに進化したという観点からも理に適っているんです。それは感情的にも噛み合うものでした。
エリック・クリプキは「ホームランダーがどれだけ親を欲しがっていたか、ソルジャー・ボーイがどれだけ子どもを欲しがっていたか」と、シーズン内に散りばめられていたヒントを指摘している。一方で、最初からソルジャー・ボーイがホームランダーの父という設定になっていたわけではなく、制作の途中で製作陣の中からそのアイデアが出てきたことを明かしたのも重要なポイントだ。
書き換えられたシーン
エリック・クリプキは、Amazonプライムビデオでのストリーミング配信がこうした変更を可能にしたと話す。
率直にいうと、ストリーミング配信の利点は、シーズンを途中で中断して、筋の通った物語として書き直すことができるということです。テレビのように既に放送されたものに後付けで調整することはありません。シーズンの途中でも素晴らしいアイデアが出てくれば、その時点まで遡って書き直し、ストーリーの一部にして、一貫性のあるものにすることができます。スクリプトを自然に書き換える作業と同じです。
私たちは、第5話に戻って書き直しました。ソルジャー・ボーイとクリムゾン・カウンテスの衝突が、ホームランダーとメイヴのそれと重なるようにしました。この物語を重層的に描くことで、彼らが同じ家系の出身であることを納得できるようにしたんです。
ソルジャー・ボーイもホームランダーも、共に一方的な愛を伝えるが、クリムゾン・カウンテスとクイーン・メイヴからは、好きだったことはないと言い返される。二人は暴力で相手を従わせていただけで、愛されていなかったことにも気づかず「裏切られた」と逆恨みするのだ。
エリック・クリプキは、米Varietyでは「この作品は、いかに父が子に、世代から世代へと、自分のトラウマを与えるかということ、特に、社会が求める男らしさを持たなければならないと、“有害な男らしさ”を男子に伝えることについて描いています」と語る。
ソルジャー・ボーイからホームランダーへと引き継がれた“アメリカのトラウマ”は、最終話でどのような決着を見るのだろうか。配信を楽しみに待とう。
ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3はAmazonプライムビデオで独占配信。
最終話第8話のネタバレ解説はこちらから。
原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。
Source
Twitter / TVline / Variety
第7話の解説はこちらから。
第1話の解説はこちらから。
第2話の解説はこちらから。
第3話の解説はこちらから。
第4話の解説はこちらから。
第5話の解説はこちらから。
第6話の解説はこちらから。
シーズン3までの経緯とスピンオフ番組の内容、アニメ版の注目エピソードはこちらの記事で。
『ザ・ボーイズ』はシーズン4の製作も発表されている。