シーズン3第3話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』アメリカ史の闇、ラストベルト、無敵の人 あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン3第3話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』アメリカ史の闇、ラストベルト、無敵の人 あらすじ&考察

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『ザ・ボーイズ』シーズン3第3話はどうなった?

2022年6月3日(金)より配信を開始したドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3は、初回に一挙3話を配信。第1話から第3話までが配信され、以降は7月8日配信の第8話まで毎週金曜日に最新話が配信される。

一般人によるスーパーヒーローへの復讐劇から始まった『ザ・ボーイズ』も紆余曲折を経てアメリカ社会とその歴史を巻き込む展開に。第3話はどんなサプライズが待っていたのだろうか。今回は第3話の各シーンを解説していく。以下の内容はネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

なお、本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっている。また、露骨な残虐描写と性描写が含まれるので苦手な方は注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3第3話の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン3第3話「荒波」ネタバレ解説

「笑え」という要求

時は遡ること17年前。リトル・ミス・ヒーローコンテストに出場するのは後のスターライトことアニーだ。母ドナから「強くなれば痛みは消える」「笑顔を絶やさないこと」と教えられたアニーは10歳の頃からセクシュアルな振り付けのダンスを踊り、顔では笑顔を作りながら背中で拳を握りしめていた。

MCU映画『キャプテン・マーベル』(2019) では、主人公のキャロル・ダンヴァースがほとんど笑顔を見せないことが話題になった。主演のブリー・ラーソンが女性嫌悪(ミソジニー)の感覚を持つ人々からSNSで「笑え」と攻撃を受けたことは記憶に新しい。男性はそうではないが、女性は笑顔であることを求められるというこの性差別は、スーパーヒーローであっても例外なく対象になる。

ラストベルトの支持者たち

現代に戻り、第2話ラストで開き直ったホームランダーは支持率が21%増、特に衰退地域の白人男性の支持率は44%上昇していた。アシュリーの言う「衰退地域」は英語で「ラストベルト(=Rust Belt)」と言っており、ラストベルトには「錆び付いた工業地帯」という意味がある。

ラストベルトは、グローバル化による工場の海外移転や、IT化によるアメリカ国内の脱工業の流れが進み、衰退した地域だ。かつては労働者の地域であり、民主党の支持基盤だったが、産業が衰退したことによって民主党と共和党の激戦区になった。

この衰退地域に目をつけたのがドナルド・トランプである。トランプは、生産拠点の移転先となった中国やメキシコ新たに産業の主役となったシリコンバレーに代表されるような都市部のリベラルな人々を攻撃することで、「仕事を奪われた」と感じていたラストベルトの人々の心を掴んだ。トランプ前大統領の標語「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」には、ラストベルトの人々がかつて自分たちが経済の中心にいた時代をもう一度、という思いが重ねられることになった。

ホームランダーの支持率は、都市部の18〜34歳では7%落ちているというが、おそらくこれは元々数字が高くなく、下げ止まりしているものと思われる。結果、リベラル層と若年層の支持を得ていると思われるスターライトと合わせると、二人で98%の支持率をカバーしているという。二大政党制のアメリカらしい状況だ。

ザ・ボーイズ再集結

V-24の反動で嘔吐するブッチャーと、ザ・ボーイズのもとに戻り掃除をするMM。この場面で流れている曲はN.W.A.「Express Yourself」(1988)だ。MMもN.W.A.のTシャツを着ている。「それは本当の自分じゃないだろ、自分を出せ」と歌われている曲で、ザ・ボーイズにカムバックしたMMの状況を表現している。

MMが「敬意を払わないと」と言っているフラットアイアン・ビルは、マンハッタンの歴史あるビル。シーズン3ではザ・ボーイズの拠点になっており、ザ・ボーイズのシーンになる度に名前の通りのアイロンのような形をしたビルの姿が映し出されている。ビルが完成したのは1902年で、ニューヨークの建築物で最も古いビルになる。

ヒューイもザ・ボーイズに戻り、久しぶりの全員集合を果たすが、ヒューイは早速仕事をサボるのがバレないようにキミコに腕を折ってもらうことに。MMは止めてくれるのかと思いきや後遺症が残らないプロのやり方を指南する。この“腕折り”シーンも、正視できないグロさである……。

“都合の良い”マイノリティ

テレビではセブンの座を争う『アメリカン・ヒーロー』でムスリム女性のスーパーヒーローであるシルバー・キンケイドが話していた。テレキネシスの能力を持っているらしい。奇しくもDisney+では6月8日(水)よりマーベルで初めてムスリム女性が主人公になるドラマ『ミズ・マーベル』の配信が始まる。

マーケティング部門は中南米の支持を得るために、メキシコ系2世であるスーパーソニックを推している。スピンオフ番組『Seven on 7』でも人気急上昇と報道されていたムーンシャドーも推されており、二人ともセクシュアルな方面でファン受けがいいという。

アシュリーはシルバー・キンケイドがムスリムであることから、イメージだけでアフガニスタン出身と思っているが、実際にはイングランド出身だとスターライトは指摘する。これはパキスタン系イギリス人の俳優リズ・アーメッドが、15年以上に渡って空港などで“イギリス人”ではなく“テロリスト”として扱われてきたことを告白した件を思い出させる。

マイノリティ間の競争の中でも、権力者に都合の良いマイノリティが選ばれるという現実を映し出す展開。それでもスターライトはマーケティング部を無視して、救出率がトップでユニセフ大使でもあるシルバー・キンケイドを推すことに決めるのだった。

緊急の用事があると言っていたフレンチーが会っていたのはシェリーだった。シーズン1で登場したフレンチーの元恋人だ。リトル・ニーナの仕事をしくじったというシェリー。リトル・ニーナは原作コミックにも登場した犯罪組織のボスである。

今では表の仕事を受けているフレンチーに皮肉を言いながらも、シェリーはフレンチーと一緒に逃げることを望むが、今のフレンチーにはキミコがいる。フレンチーもまた過去には戻れない。

グローバル・ウェルネス・医療画像センターから出てきたAトレイン。スピンオフ番組『Seven on 7』では、若い頃に薬物依存に陥ったスーパーソニックがグローバル・ウェルネス・センターでリハビリを受けたことと、シーズン2で全焼したセージ・グローブ・センターをヴォートが買い取って新たにグローバル・ウェルネス・センターを建てる計画があると紹介されている。

センターの前でAトレインを待っていたのは、シーズン1でトレーナーとしてAトレインの世話をしていた兄のネイサンだった。シーズン1から続々と登場人物が戻ってきている。ネイサンは、身体機能に問題を抱えるAトレインに、オハイオ州クリーブランドの地元によることを提案し、Aトレインもこれを受け入れいる。Aトレインはもう走れる身体ではなく、故にドキュメンタリーやゲームなど、アスリートではない方面へのリブランディングを試みていたのだ。

アメリカ史の闇に触れる

フレンチー以外のザ・ボーイズメンバーはグレースのもとへ。一同はブッチャーがライアンに慕われていることに驚きを隠せない。ライアンとキミコは、自分能力が好きじゃない、能力なんてほしくなかった、他者を傷つけるのが怖いと思っているという点で一致する。自分の力を最大限活用しようとするスーパーヒーローたちとは一線を画す感覚だ。

MMはソルジャー・ボーイに家族を殺された過去を明かし、ブッチャーがグレースの金庫内にある初代ブッシュの写真の裏に隠された世界中のスパイの名簿を公開すると脅すと、グレースはついにニカラグアの真実を話し出す。相変わらずブッチャーは容赦ない。

1984年、グレースはニカラグアにおり、ソルジャー・ボーイが消えた時の極秘任務の中にいた。作戦名はチャーリー作戦 (Operation Charly)。これは史実として存在した作戦であり、1970年代から1980年代にかけて起きた中米で右派勢力(政府であれ、反乱軍であれ)を支援する動きで、アメリカ政府とアルゼンチン軍が共同して進めていたとされている。

『ザ・ボーイズ』では、この作戦は第2話でソルジャー・ボーイと写真に収まっていたレーガン大統領による機密作戦とされている。サンディニスタ民族解放戦線が左翼政権を樹立した後に台頭した右派武装組織コントラを支援する作戦と説明されているが、これも史実の通りである。

他国の武装勢力を支援するための資金を作るために、イランに武器を売り、足りない分をコカインの取引で補ったと話すグレース。残念ながらこの部分もフィクションではなく史実である。イランに武器を売却し、その資金を右派ゲリラのコントラに流していた事件は“イラン・コントラ事件”として1986年にスキャンダルとなった。イランとコントラの窓口になっていたとされるのは、当時副大統領だった初代ブッシュ。グレースが金庫に写真を入れている人物だ。

『ザ・ボーイズ』では、コカインは「ブラック・ノワール コーヒー豆」の箱に入れられ、偽装して輸出されたことになっている。イラン・コントラ事件が明るみに出る中で、CIAがコントラに協力してコカインを米国内に流通させていたことが明らかになった。MMはコカインを有色人種に売る目的もあったことを指摘し、グレースは非白人を不安定にするためにやったことと認めている。

現実に、コカインはアメリカの富裕層ではなく拠り所を求める貧困地区に流され、黒人コミュニティにダメージを与えた。こうした史実を見れば、マイノリティを積極的に採用するアファーマティブ・アクションや、メンバーの一定数をマイノリティに割り当てるクォータ制を積極的に取り入れて政府や権力の側が歴史の罪を償うことは当然だと言える。人種間の格差に対し、「個人の努力」や「甘え/怠け」という言葉で片付けることはできないということが分かるだろう。

『ザ・ボーイズ』は過激な映像表現がフィーチャーされがちだが、アメリカ社会の暗部に堂々と触れるという点においても特筆すべき作品だ。

ブラック・ノワールの過去

1984年にニカラグアで大規模攻撃を準備していたというグレース。ペイバックの登場シーンで流れているのは、スコーピオンズの「ハリケーン」。舞台となっている1984年にリリースされてヒットを記録した曲だ。

グレースが「バカの寄せ集め」と語るヒーローチームのペイバックは、クリムゾン・カウンテス、マインドストーム、スワットー、TNTツインズ、ブラック・ノワール、ガンパウダー、ソルジャー・ボーイで構成されていたことが明かされる。TNTツインズは双子であり、セブンと同じく7人で編成されている。

このニカラグアにいたのが若き日のエドガーだった。1984年に“スーパーヒーローの従軍”のテストケースをペイバックで試みていたのだ。エドガーは「30年以上前と同様の効果が得られる」と話しているが、第2話ではソルジャー・ボーイは第二次世界大戦でも活躍したと宣伝されていた。

「不満はケーシー長官が聞く」と言っているが、これは1981年から1987年までの間CIA長官を務めていたウィリアム・J・ケーシーのこと。CIA長官肝入りのプロジェクトのようだ。グレースがキャンプを歩く場面で流れている曲はLos João「Despiértame Antes De Que Te Vayas」(1985)。メキシコの曲だ。

ブラック・ノワールがマスクを外してエドガーと話している場面を見かける。いつもマスクをつけているブラック・ノワールが黒人だということは、シーズン2でクイーン・メイヴがアレルギーのナッツを食べさせた時に明らかになっている。同じく黒人のエドガーとは若い頃からフランクに話せる仲だったようだ。

ブラック・ノワールはようやくマスクを取って話す姿を見せているが、これまで中の人を演じてきていたネイサン・ミッチェルではなく、ここでは俳優のフリッツィ・クレヴァンス・デスティンが演じている。グレースやエドガーと同じく若い頃の姿は別の俳優が演じるということだろう。エドガーは80年代のヒーローチームにおいて、黒人が世間に受け入れられないと考えてブラック・ノワールにマスクを被せていたようだ。

「マスクを外す」と言うノワールに対し、エドガーは「ミネアポリスに転属になったら必要だ」と脅しをかける。ミネアポリスはカナダに隣接するミネソタ州に位置する街。エドガーはこの頃から地方いじりをしていたようだ。一方で、エドガーがマスクがいる理由を「単純に寒いからな」と言っている通り、黒人への差別がひどい南部に飛ばすと言っていないところにエドガーの良心が見える。

ブラック・ノワールは後にペイバックからセブンに移籍することになるが、他のペイバックメンバーが表舞台から消えたことを考えれば、エドガーなりにノワールを優遇してあげたのだろうか。アニメ『ザ・ボーイズ ダイアボリカル』(2022) 第8話では、ホームランダー加入時にはノワールがセブンの人気ナンバーワンになっていたことが明かされている。エドガーが「忍者は子どもに人気」と言っていた通りだ。

無敵の人

ソルジャー・ボーイはグレースに「もっと笑え」と言う。「笑顔を作る」というのがシーズン3第3話の一つのテーマだ。ソルジャー・ボーイは口説いた相手としてロニ・アンダーソンの名前を挙げているが、ロニ・アンダーソンは1980年前後に活躍した俳優で、“ハリウッドスマイル”がその特徴だった。

グレースに相手にしてもらえないソルジャー・ボーイは、グレースを「キャプテン・レズボー」と蔑む。かなりの性差別主義者であり、極端に認知が歪んだ人物であることが示されている。

現代では、ホームランダーがスターライトにディープの復帰を提案。性加害の相手に会わせて同じ職場に復帰させるとは、ひどい二次加害である。金とダイアモンドで作ったイルカのアクセサリーを持参したディープを、スターライトは当然拒絶する。

スター・ライトが推していたムスリムのシルバー・キンケイドを「キャプテン・アルカイダ」と呼んで差別するホームランダーは、「人気は力」として強気な態度を見せる。スターライトは、シーズン1でホームランダーが墜落させた37便のビデオを公開すると脅しをかけるが、ホームランダーは「公開しろ」「失うものはない」と開き直るのだった。

公開されればあらゆるものを破壊すると言い始めるホームランダー。失うものをなくし、無差別殺人などの破壊的行動に出ることへのブレーキをなくした“無敵の人”である。ホームランダーは「I am the Homelander.」と「I am Ironman.」を思わせるセリフを披露。どう見てもサノスだが。

一方で、この交渉が通用しない感覚は、グレースを脅したブッチャーと共通している。スパイの名簿を流せばその家族が被害を受けるというグレースの主張を、ブッチャーは「どうでもいい」と切り捨てていた。

作り笑いと作られたブランド

スターライトはセブンを抜けることを考え始めていたが、ザ・ボーイズに戻り、ホームランダーを倒す鍵に近づいているヒューイは、スターライトにセブンに残るよう告げる。「作り笑いをしろと?」と言うスターライトに、ヒューイは「必要なこと」と言い放つのだった。アニーが親から言われ続けてきたことであり、拳を握りしめて耐えてきたことをヒューイから言われるとは……。ヒューイはニューマン議員の策略を見抜けなかったことから「腹黒くならないと」と、ブッチャー流の、ザ・ボーイズ流のやり方を選んだ。その代償は大きい。

地元に帰ったAトレインは生き残るために、急に「権利」について発言するようになったことを兄に告白する。兄はブルー・ホークという名のヒーローに歩いていただけの近所の黒人男性が殺されたとAトレインに相談する。ブルー・ホークはスピンオフ番組で“いかにも”な保守派のシーツ会社でPRを務めることが発表されていた。

Aトレインは遺族への見舞金で解決しようとするが、兄は発言を求める。Aトレインは、自分はマイケル・ジョーダンでありマルコムXではないと言い訳する。都合が悪くなると、自分はアスリートであり黒人解放活動家ではないと主張するAトレインの姿が描かれている。

憎しみの連鎖

ディープの謎のベッドシーンを挟み、ブッチャーが目からのビームを抑えることに難儀する様子が描かれる。V-24の効果は一時的であるはずだが、まさか身体が変化しつつあるのだろうか。ライアンは、優れた聴力と嗅覚で相手が能力者かどうか分かるらしい。キミコが能力者だと分かった理由もそういうことだろう。

ニカラグアの回想では、スワットーが無闇に空を飛んだことから敵に居場所がわれる。ちなみに「スワット (swat)」とは「ハエを叩くこと」を意味する。ペイバックのメンバーは敵味方構わず殺す無能っぷり。部隊は全滅、116名が死亡し、ブラック・ノワールは顔の左半分が焼けただれる大怪我を負っている。クリムゾン・カウンテス曰くソルジャー・ボーイはソ連の武器で殺され、遺体はソ連に回収されたという。

つまり、ソルジャー・ボーイを倒したのはソ連の兵器であり、ソルジャー・ボーイの身体もソ連に渡ったということだ。グレースは、能力者を倒せる兵器があるという可能性を知ればブッチャーは別の能力者にも使うだろうと恐れていた。

だが、この時ブッチャーが考えていたのはライアンとベッカのことだった。ホームランダーを倒していれば、ライアンが父を恐れて隠れ住むこともなかったし、ベッカも死ななかった。ブッチャーに「許さない」と言われたグレースは、ブッチャーを虐待していた父を持ち出して「父親と同じ」と言い放つ。立ち去ろうとするブッチャーにライアンは力ずくで止めようとするが、ブッチャーはライアンがベッカを殺してしまったことを盾にライアンを突き放す。悲しい憎しみの連鎖である。

「自由」の意味

その頃、フレンチーはリトル・ニーナの取り巻きに拐われ、ロシア料理屋でリトル・ニーナと向き合っていた。過去にフレンチーがバンのドアでターゲットの頭を切り落としたことが明かされている。ドラマ『デアデビル』(2015-2018) におけるキングピンを彷彿させる所業だ(フレンチーの場合はスライドドアらしいが)。

ニーナによると、シェリーは仕事をしくじったのではなく、シェリーがニーナのコカインを盗んだのだという。ニーナは、フレンチーとの間で決めていた「限界」の隠語を「ヴァンサン・カッセル」と言っているが、ヴァンサン・カッセルはハリウッドでも活躍するフランス出身の俳優だ。

フレンチーにとって、ニーナはブッチャーの前の“主人”。確かに、フレンチーはヤバい奴ではあるのだが、同時に主人に従順な人物でもある。今回もCIAと働いていると“お上”の存在を使ってニーナの依頼を断っている。シーズン3では、ザ・ボーイズメンバーの過去がフィーチャーされる流れが続いている。

ホームランダーは、セブンに復帰したディープのお祝いに魚介類のコースを出す嫌がらせをしている。マーティン・ルーサー・キングとの関係性が「深まっていると感じる」というホームランダーは、「真実を話したから迫害された」という点で共通していると言う。なお、キング牧師はアメリカ黒人の権利獲得に多大な貢献をしたことはもちろんだが、倒錯した性生活を送っていたとも言われている。

「自由を得た」と喜ぶホームランダーだが、その自由とは、他者を支配し、遠慮なく好き勝手に振る舞う自由のことのようだ。ディープはベッドシーンに登場したタコのティモシーを食べることを強要される。ちなみにティモシーはオスだったようだ。ホームランダーは韓国の食べ方と話しているが、サンナッチと呼ばれるタコの踊り食いのことだろう。

スーパーソニックの過去

禁煙促進のニコチンパッチを貼るフレンチーに対し、キミコは友達になれたライアンにひどい態度を見せたブッチャーに怒り浸透の様子。ザ・ボーイズを出てフランスのマルセイユに逃げようとフレンチーに提案するが、ブッチャーはBLCレッドを手に入れるためにロシア人のリトル・ニーナのもとへ行くとフレンチーに告げる。

キミコにフランスへ行こうと言われているのに、すぐにブッチャーからロシアへ行くと言われて流されてしまうフレンチー。リトル・ニーナが言っていた通り、上の人物から言われると弱いのがフレンチーなのだ。同時に、ヒューイもフレンチーもブッチャーと関わって大事な人のことが見えなくなりつつある。

スターライトから、ホームランダーの何かが壊れ、危険にさらされるので新メンバー入りを断ってほしいと言われいてたスーパーソニックだが、その忠告に反してセブン入りを心に決めていた。その理由は意外なものだった。

スーパーソニックにはドラッグ依存で母を殺しかけて、人々から見放された過去があった。スピンオフ番組で触れられていた若い頃のドラッグ依存の設定が本編でも初めて登場した。そんな自分を唯一見放さないでいてくれたのがスターライトであり、今度は自分がスターライトを「見放さない」と、スターライトのためにセブンに入ることを決めたと明かすのだった。

一方、自分を怪物だと言うブッチャーに、ヒューイは共感を示す。「本気の戦い」について語ろうとするヒューイの顔面に、ブッチャーは思い切り嘔吐する。すでにV-24の摂取から24時間は過ぎているはず。ブッチャーはこのまま能力者になってしまうのだろうか。

衝撃のラスト

オーディション番組『アメリカン・ヒーロー』はクライマックス。一人目のセブン新メンバーにスーパーソニックが選ばれた時に流れる曲は「Rock My Kiss」。第1話でも流れていた曲だ。第2話エンディングの「You’ve Got a License to Drive (Me Crazy)」と同様、スーパーソニックを演じたマイルズ・ガストン・ビヤヌエバ自身が歌っている。

メキシコ系のスーパーソニックに、ホームランダーはスペイン語で「名誉は私のものだ」と言っているが、わざと間違えたのだろう。そしてここから胸糞悪すぎる展開に。二人目の新メンバーにディープの復帰を発表するまでは予定通りだったが、ホームランダーはスターライトと付き合っていると発表。ハッシュタグ「#ホームライト」を発表し、ブロンドの二人が新たなスターカップルとして映し出される。何がなんでも白人同士の異性愛に着地させようとするホームランダー……。

呆然とするスターライトだったが、覚悟を決めると、求められた通り、いや求められている以上の行動に出る。スターライトはホームランダーとキスを交わすと、幼い頃にミスコンで歌って踊った時にやったように、背中で拳を握りしめるのだった。

『ザ・ボーイズ』シーズン3第3話まとめ

ここまでの3話を同時配信にする製作陣の意地の悪さが際立つ。ホームランダーが権力を握り直す一方で、ザ・ボーイズのメンバーは不安定な状況が続く。ヒューイはニューマン議員の裏切りにショックを受け、ブッチャーのように強硬な姿勢を見せ始めている。それがスターライトを過去の姿に引きずり戻す引き金になってしまった。

フレンチーは過去と変わらない部分を指摘され、それと向き合うことができないでいる。まだ大きな問題にはなっていないが、より不安定な状態にあるキミコとの関係が心配だ。キミコは幼少の頃から変わらず内臓まみれになる日々に気持ちが沈んでいる様子。キミコが他のメンバーと違う点は能力者であるということだが、能力が芽生えつつあるブッチャーとの関係にも注目だ。

普通の生活に戻って鬱状態にあったMMは、ザ・ボーイズに戻ったことで比較的落ち着いている。一方で、家族を殺したソルジャー・ボーイの一件はここから大きな事件に発展していくはず。ソルジャー・ボーイが復活すればMMの復讐はシーズン3の主要なテーマの一つになるだろう。

第3話で確定した新たなセブンの陣営は、ホームランダー、スターライト、クイーン・メイブ、ブラック・ノワール、Aトレイン、スーパーソニック、ディープの7人に。男性が5人、白人が4人と、マジョリティが過半数を占めるホームランダーにとって理想的な陣容になった。

仮にスターライトの希望通り、ムスリム女性のシルバー・キンケイドと黒人女性のムーンシャドーがセブンに加入してたとすれば、男性も白人も3人ずつでマイノリティになっていたのだから、ホームランダーの計算高さが際立つ。

第3話までで舞台が揃った『ザ・ボーイズ』シーズン3。次回第4話で全8話のうちの折り返しを迎える。どんな展開が待っているのか、金曜日の配信を楽しみに待とう。

ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3はAmazonプライムビデオで独占配信。

原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。

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第4話のネタバレ解説はこちらから。

第1話の解説はこちらから。

第2話の解説はこちらから。

シーズン3までの経緯とスピンオフ番組の内容、アニメ版の注目エピソードはこちらの記事で。

シーズン3の新キャストを含む詳細情報はこちらから。

シーズン2最終話のネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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