シーズン3第4話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』曲の意味は? あのCMのパロディも あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン3第4話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』曲の意味は? あのCMのパロディも あらすじ&考察

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『ザ・ボーイズ』第4話はどうなった?

Amazonプライムビデオのナンバーワン人気ドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-) は、早くもシーズン3に突入。原作コミックの過激さは残しつつもドラマオリジナルのエッセンスが加わった本作は、予想できない展開を迎えている。

初回は一挙に3話が配信された『ザ・ボーイズ』は全8話で構成されており、二週目となる第4話の配信で早くも折り返しを迎える。後半戦に向けて一体どんなサプライズが待っているのか。今回は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3第4話の各シーンを徹底解説していく。

以下の内容はネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

なお、本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっている。また、露骨な残虐描写と性描写が含まれるので苦手な方は注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3第4話の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン3第4話「入念な計画」ネタバレ解説

ブロンディとN.W.A.

共同リーダーに任命されながらもホームランダーを倒すために恋人という設定を受け入れたスターライト、“開き直り”でラストベルトの白人男性層を取り込んだホームランダー、アメリカ黒人をレペゼンしながらも政治的な行動には出ないAトレイン、セブンに復帰したディープと新規参入したスーパーソニック、エドガーの養子で能力者だったと判明したニューマン、時効性Vで能力を手に入れてソルジャー・ボーイを倒した武器を探すブッチャー。初回の3話でそれぞれのキャラが急展開を見せた。

シーズン3第4話冒頭は『ソリッド・ゴールド』(1980-1988) という1980年代に実際に放送されていた音楽番組の映像から始まる。司会をマリリン・マックー一人で務めていることから1983-1984年の放送であることが分かり、第3話で触れられた“チャーリー作戦”の時期であることが示されている。

キム・カーンズ、オーク・リッジ・ボーイズ、ウェイランド・フラワーズは実在の歌手で、ここに特別ゲストとして登場するのがソルジャー・ボーイだ。ショーランナーのエリック・クリプキが楽しみながら80年代のカルチャーを再現していることが伝わる演出である。

ソルジャー・ボーイは「ラプチュアー」という曲を歌っているが、これは1982年まで活動していた(1997年に再結成)ブロンディというバンドの曲。

ポップロックバンドとしていち早くラップを取り入れた曲として知られ、1981年にシングルでリリースされると全米首位を獲得した。ソルジャー・ボーイが歌っている通り、ファブ5フレディらヒップホップの先駆者達に触れているのが特徴で、「フラッシュ」と言っているのは3大DJの一人であるグランドマスター・フラッシュのことだ。

この映像を観ていたのはMM。家族と観ていた頃の記憶とともに、「車を食べる」という内容の歌詞で家族がソルジャー・ボーイによる巻き添え死の被害にあったことがフラッシュバックしている。

なお、MMは第3話で、同じ1980年代に登場したヒップホップグループのN.W.A.のTシャツを着ていた。「主張する黒人たち」という意味のグループ名でアメリカ黒人の怒りを歌ったN.W.A.と、ソルジャー・ボーイが「金髪の人」という意味の名前の白人バンドのラップ曲を歌う姿は対比になっている。

陰謀論に走るホームランダー

第3話のラストでヒューイの顔面に嘔吐したブッチャーは時効性Vを摂取したことを明かしていた。ブッチャーがこの事実を明かした相手はヒューイが初めてだが、同時にバラしたら昏睡状態にすると脅しをかけている。元々ホームランダーとは共通点があったブッチャーだったが、スーパーパワーを盾に脅す姿はホームランダーと変わらない……。

『キャメロン・コールマン・アワー』にはホームランダーが再び登場。リベラルなニューヨーク・タイムズがホームランダーの誕生日での演説を酷評したことに触れられている。「主要メディアの嘘」「裏で糸を引く存在」という陰謀論者にとって大好物の言葉を並べるホームランダー。マーケティングを完全に理解している。オルタナ右翼や陰謀論者が既存の保守と違うところは、保守勢力の中にも操られている人間がいると考える点で、結果的に極右思想になっていく。

一方のエドガーはニューマンのもとへ。政府はホームランダーを追求しない方針だというが、エドガーはやはりホームランダーを制御する姿勢を崩していなかった。観てる側としては、敵だったはずなのに、なんだかホッとしてしまう。陰謀論者の登場によって、それ以外の人々が“マシ”に見えてくるというのは困るポイントだ。

ヴォートの中に工作員がいると発言したホームランダーに対し、エドガーは厳重注意と罰金命令を出すと話す。ニューマンは「さぞ喜ぶ」と、やはりマーケティングを理解している。エドガーは「吠えるが噛みはしない」と見積もっているが、陰謀論者の危険性を甘く見積もった結果がトランプ支持者らによる2021年1月の国会議事堂の襲撃だった。

ペプシCMのパロディが

リトル・ニーナに会いに来たブッチャーとフレンチー。リトル・ニーナロシア料理のペリメニを作っている。フレンチーの得意料理らしいカスレはフランスの豆料理だ。クレムリン=ロシア政府へのコネクションを持っているというニーナは、ロシア内務省を強請る材料を持っていた。ブッチャーはシェリーの借金に加えて10万ドル(約1,000万円)を用意するも、シェリーを差し出すよう求めるニーナに特別な取引を持ち出す。

「#ホームライト」を収録した番組は今夜放送される。スターライトは「どんな手段を使っても」と言ったヒューイの言葉を実行したと説明しするが、その二人の前にホームランダーが現れる。優れた聴力で先ほどの会話も聞いていたのだろうか。

下ネタを乱発してヒューイを挑発するホームランダーに、スターライトは、ヒューイに手を出せば自分はセブンからいなくなり、人気に便乗できなくなると脅しをかける。この時、ホームランダーは声を出さずに口パクで「Women」と言っている。この流れのどこに女性の要素があるのか意味不明の差別発言だが、自分に不都合なことを言う理由を「女だから」とする人は現実でも珍しくない。

Aトレインは黒人の市民を殺したブルー・ホークについて、ヴォートにも責任があるとアシュリーに直談判していた。意外にも「社会正義 (Social Justice)」は大切とするアシュリーにAトレインは「いつから?」と鋭いツッコミを入れている。アシュリーは「#ブラック・ライヴズ・マター」以来だと言うが、2020年にジョージ・フロイド事件を通して大きな盛り上がりを見せたこの運動も最初に登場したのは2013年である。

アシュリーはSNSのアイコンを真っ黒にしていると、本質は変わっていないにもかかわらず手軽にできるアクションには手を出している様子に、Aトレインはウンザリした表情を見せている。皮肉が込められたシーンではあるが、一方ではハッシュタグと社会運動の広がりによって商業主義の人々にも影響を与えられるという事実を示してもいる。

Aトレインはターボ・ラッシュという飲料のCM撮影に挑むが、撮影を抜け出して抗議に参加、デモ隊が警察と対峙する中、割って入ったAトレインがターボ・ラッシュを双方に与えるとデモ隊と警察が和解するという内容になっている。実際にはそんなわけはない。「互いの話を聞こう」というフレーズは「どっちもどっち論」の裏返しだ。

実はこのシーンは2017年のペプシのパロディ。自分のアートに夢中になっているモデルやアーティストたちがデモ隊に共鳴して抗議に加わると、撮影を抜け出したモデルがペプシを警官隊の一人に渡すという内容になっている。ペプシを受け取った警官がペプシを一口飲むとデモ隊は歓喜するという内容の薄さに「太く生きろ (Live Bolder)」というコピーがミスマッチで、社会運動を軽率に扱っているとして多くの批判を呼んだ。

当時、ペプシは「的外れだった」として謝罪した上でこの映像を取り下げている。特にこのCMへの批判で大きかったのは、白人女性のケンダル・ジェンナーが主人公として有色人種の人々のデモを率いたという点。当時から存在していたブラック・ライヴズ・マター運動を“ホワイト・ウォッシュ”する動きとして非難を浴びた。『ザ・ボーイズ』においては、ヴォートは一度炎上した題材で当事者のAトレインを主演に起用するという狡猾さを見せている。

一般人の腐敗とヒーローの良心

ヒューイはエアロバイクから転倒して怪我をしたことにして、ザ・ボーイズメンバーとロシアへ。ヒューイは初めての海外だという。リトル・ニーナは飛行機とパスポートの手配までしてくれたそうで、ブッチャーがニーナと何やら取引をしたようだ。

不審がるフレンチーに、ブッチャーは「アントラージュだと思え」と言っているが、これはドラマ『アントラージュ★オレたちのハリウッド』(2004-2011) のこと。韓国でもリメイクされたこのドラマは、様々な手を使ってハリウッドを生き抜く男性たちの姿を描いているが、フレンチーは「あんなドラマ、バカしかいない」と言い放っている。

スターライトが訪問したメイヴは、表舞台にほとんど姿を現していない。ヴォートからはクィアネスの象徴として商業利用されているが、メイヴはしたたかにホームランダーを倒すことに集中していた。「自分の問題」だとして他者を巻き込みたがらないメイヴ。「自業自得」として禁酒しながらトレーニングに励む姿は、拗ねた末に開き直ったホームランダーとは対照的だ。

建物に凶暴な姿のセブンメンバーが描かれている街は、ロシアのバンド Jane Airの「Junk feat. Smike」が流れていることから、ザ・ボーイズがロシアに到着したことが分かる。「#ホームライト」は放送されたようで、ヒューイはロシアのテレビでもネタにされている。

ニーナが情報を出す条件は、ロシアの地元の成金を片付けることだった模様。第3話で能力を持ったことを望んでいないと話していたキミコを「能力があるから仕方ない」「娼婦になれ」と道具のように扱うブッチャーに、キミコは「私はあなたの銃じゃない」と反論するが、「銃そのものだ」「俺が命令を下し、お前らが実行する」とブッチャーは強気だ。能力を手に入れて“ホームランダー化”が進んでいるようでもある。

スターライトがスーパーソニックに話に行くシーンで流れているのは第2話のエンディングにもなったオリジナル曲の「You’ve Got a License to Drive (Me Crazy)」。確かにクセになる曲で、製作陣も気に入っているのだろう。

スターライトは、ホームランダーを倒す作戦にスーパーソニックを仲間に引き入れる。スーパーソニックがジョークを言う際には字幕ではカットされているが、「調子に乗るな (Get over yourself.、吹き替えでは「自意識過剰だ」)と言っており、「祖母が白人との結婚を許すと思う?」というセリフは、英語では単なる「白人」ではなく「あらゆる白の中で最も白い (the whitest girl in all of white.)」と言っている。メキシコ系のスーパーソニックがスターライトの“白人性”をからかうシーンだが、続けて「正しいと思うから助ける」と、『ザ・ボーイズ』では稀に見る“良心”を見せている。

ディープ vs Aトレイン

セブンの会合では、ホームランダーはメキシコ系のスーパーソニックにタコスを出し、スペイン語で言葉をかける。スーパーソニックはスペイン語は話せないといい、メキシコ系の人間が皆スペイン語を話せると思い込んでいるホームランダーの無神経さが際立つ。

前回、仲間である魚介類を食べさせられたディープはタコスをがっつき、マスクを外せないブラック・ノワールはお絵かきをしている。そんな中、Aトレインはブルー・ホークによる黒人虐待について発言する。スターライトはAトレイン側に立ち、Aトレインもデモが起きているしパトロールをすればアフリカ系の支持が6%上がると、ホームランダー寄りのロジックで説得を試みる。

しかし、それを邪魔したのはディープだった。ディープはカサンドラからの指示で、「犯罪を許容するとのメッセージになる」「人員不足でヒーローを減らすことはできない」と言いホームランダーにその意見を採用される。問題に取り組まないための論点ずらしとしては非常に典型的なやり口だ。どう考えてもディープは(悪い意味で)無思想だが、カサンドラはそもそも保守派の共同教会の出身。ホームランダーが喜ぶ言動を心得ている。

会議後に抗議するAトレインに対し、ディープはAトレインのリブランディングを揶揄し「イーグル・ジ・アーチャーがラッパー化した結果は?」と、シーズン2で共同教会を破門になったイーグル・ジ・アーチャーの名前を挙げる。この件はスピンオフ番組『Seven on 7』で触れられており、「落ちたヒーローがリブランディングに挑む」として、ヒップホップアルバム『Bullseye Beats』をヴォート・レコーズから発売したと報じられていた。

この嫌味に対し、Aトレインは「アシュトン・カッチャーと魚の交配児」と言い返す。アシュトン・カッチャーは『チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ』(2003-2015) のウォルデン・シュミット役などで知られる俳優であり投資家。2011年には性的虐待に関与したアメフト監督を擁護したことで批判を受けるなど、お騒がせセレブとして知られる。

ストームフロントがナチであることを密告したAトレインと、37便のビデオをメイヴに渡したディープは共に弱みを握っている二人は取っ組み合いに。うまくやれば組むこともできるはずなのに、残念な二人である。

白人のディープを助けるホームランダーにフラストレーションを溜めるAトレイン。スーパーソニックは好機と見て打倒ホームランダーの提案を持ちかける。それにしてもディープはザ・スネ夫なムーブを見せている。

死亡フラグ?

MMはブッチャーがライアン、キミコとスーパーパワーを持つ人に強く当たっていることを指摘している。元兵士であるMMは指揮系統を尊重するが、最近のブッチャーはやり過ぎだと感じている。MMはブッチャーが自分を選んだ理由として、レイシストの上官を殴って拘束されていたこと、ヴォートを憎むという記録があったことを挙げるが、ブッチャーはMMの統率能力を買ったのだと話す。

訓練仲間曰く、部隊をまとめていたのはMMで、MMは生まれつきのリーダーだという。「俺が厳しく当たってもお前がフォローする」と、MMを持ち上げてはいるのだが、グッドコップ・バッドコップ(良い警官と悪い警官)で統制するというだけの話だ。MMもこんな風に能力を肯定されてしまうと、ちょっと嬉しくて黙らざるを得ない。

ザ・ボーイズのチーム状況は何も好転することのないまま、ベル・ビヴ・デヴォーの「ポイズン」(1990) と共に娼婦に扮したキミコが登場する。この曲はフックで「彼女は猛毒」と歌われており、このシーンでもその歌詞が強調されている。

セブンメンバーの性玩具をコレクション地元の成金。「輸入品」と言っているが、これもヴォート社で作っているのかもしれない。キミコは成金の顔面をディルドで顔面を貫いて任務を達成。女性から頭を撃たれるがウルヴァリン並みの治癒力で一瞬で復活するタフさを見せている。

ニューマン議員の会見を見つめる面々にはスターライトとメイヴ、スーパーソニックに、Aトレインが加わっている。交渉はうまくいったようだ。しかし、ニューマン議員は突如反旗を翻し、ホームランダーがエドガーの不正行為を指摘したとして脅迫行為、偽証、司法妨害で告発。エドガーの失脚を招き、ホームランダーは「傘はなくなった」と宣言する。

数十年かけて育てたヒーロービジネスから脱却することを唱えていたエドガーがまさかの失脚。ヴォートはヒーロー中心の会社に戻ることになり、ホームランダーは映画のタイトルに引っ掛けて「セブンの夜明け」と喜ぶ。ニューマン議員は娘のゾーイを守るための選択だとエドガーに告げるが、爆破能力を持つニューマンでもホームランダーは倒せないのだろうか。シーズン3第4話でいきなり弱気になった気もする。

実務のトップに立ったアシュリーは『キャメロン・コールマン・アワー』の司会者キャメロン・コールマンを手中に収めていた。これで同番組のニュースはすべてヴォートからの大本営発表になる。注目はアシュリーのオフィスの壁にあるセブンの彫像が、ディープ、ブラック・ノワール、ホームランダー、スターライト、クイーンメイヴ、Aトレインの6人しかいないこと。

6人なのはシーズン1開始時点のメンバーであるトランスルーセントは姿が見えないからかもしれないが、中央がホームランダーとメイヴではなく、ホームランダーとスターライトになっているため、比較的新しい彫像だと思われる。スーパーソニックが追加されていないのは気になるところだ……。

「やってられない」と話すキミコは、奇しくも『ザ・ボーイズ』シーズン3第4話の二日前に配信が始まった『ミズ・マーベル』のカマラと同じポーズでソファに寝そべっている。キミコは、自分のように売られた女性たちを見て、ブッチャーも光解放軍もリトル・ニーナも同じだと思ったと伝え、フレンチーを説得。フレンチーはこの仕事を終わらせたらブッチャーの元を離れることを提案する。「この戦いが終わったらマルセイユに行こう」というセリフは死亡フラグが立っているが、大丈夫だろうか……。

ニューマンが求めたもの

ニューマンの前に現れたホームランダーは、エドガーがニューマンを敵対者として調査資料をまとめていたことから、ニューマンが能力者だと知っていた。エドガーがニューマンを「娘ではなく武器」として見ていたと話す内容は、そのままブッチャーにも刺さるものだ。

また、「私たちに恐怖を感じている」という発言は、ホームランダーとニューマンが共に能力者であるという仲間意識を植え付けるためのものだ。自分たちが被害者であるとして種族で括ろうとする発想はマーベルの「X-Men」を想起させる。もっとも、X-Menは本当に迫害されてきた被害者なのだが。なお、ホームランダーは「11種の香辛料を使ったオリジナル」と言って約束していたというものをニューマンに渡している。

ブッチャーはまたもVを摂取していた。ブッチャーは力に取り憑かれているように見えるが、ヒューイもまた力を欲する。ブッチャーはホームランダーからライアンを守るため、ヒューイはホームランダーからスターライトを守るため……こうして核の抑止論や軍備拡張競争によく似た話だ。

ホームランダーは“一時休暇”になったエドガーにマウントを取っている。父のいないホームランダーにとって、エドガーを越えていくことが“父殺し”だったのだろう。しかし、エドガーは社内でホームランダーに反抗する者がいなくなることを後悔することになると忠告。経営者として正しい感覚だ。マネジメントに不満を持ったプレイヤーがマネージャーになることの難しさを忠告しているようでもある。エドガーはホームランダーに「不良品 (bad product)」と言い放っている。

ニューマンがホームランダーから手に入れたのはコンパウンドVだった。ホームランダーはニューマンを脅したのではなく、コンパウンドVを与えるという“報酬”でニューマンを動かしたようだ。「娘を守るため」と言っていたのはこのことだったようだ。これはこれでスキャンダルになるリスクもありそうだが……。

ソルジャー・ボーイ登場

ある施設に忍び込むザ・ボーイズ。MMは警備員に「『若き勇者たち』の借り」と言っているが、これは1984年の戦争映画のことで、原題は『Red Dawn』で、アメリカが東側から核攻撃を受ける設定がある。その後に出てくる『ロッキー4/炎の友情』(1985) では、ソ連のボクサーのイワン・ドラゴがアポロ・クリードの命を奪ってしまう。アポロが黒人ボクサーであることも、MMが根に持っている理由の一つだろう。

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ザ・ボーイズが見つけたのは、もふもふハムスターのジェイミー。コンパウンドVを投入されているジェイミーが暴れたせいで銃撃戦になると、ピンチになったザ・ボーイズはブッチャーが無双。さらにヒューイもスーパーパワーを発動するが、どうやら能力はテレポートらしい(服はついてこないみたいだが)。第2話のレッド・リバーで登場したテディ・スティルウェルと同じ能力のようだ。腕の骨折も治っている。

これでザ・ボーイズメンバーの5人中3人が能力者に。なんだか漫画『ONE PIECE』みたいだ。ブッチャーがメイヴから受け取ったV-24は3本あったが、1本あたり一回の摂取量ならばこれでメイヴからもらった分は使い切ったことになる。一方でヒューイは途端にメンバーからのリスペクトを失っていた。

そして、ブッチャーが起こしてしまったのは、この施設に眠っていたのはソルジャー・ボーイ。「ターミネーター」風に全裸で登場すると、胸部からビームを放ちキミコに重傷を負わせてしまう。キミコの治癒能力が機能しないという緊急事態にも、敵であるソルジャー・ボーイに「何かされたんだ」と庇うような発言をするブッチャーにMMは「もう面倒を見切れない」と言い放つ。

MMにとってソルジャー・ボーイは家族の仇でもあるし、ブッチャーの現在の立ち位置はソルジャー・ボーイと同じく“能力者”になってしまっている。ブッチャーが仲間に黙ってVを打っていたことと、キミコの危機にも任務のことを考えていることにMMも堪忍袋の緒が切れたのだろう。

それにヒューイは初めて手に入れた力に、血に塗れた右腕を見て恍惚とした表情を浮かべている。キミコだけが力を持っていた時はそうでもなかったのに、今は力がザ・ボーイズを分断している。

一方、スターライトをお姫様抱っこをして「見せたい光景がある」と言ったホームランダーは、惨殺されたスーパーソニックの姿をスターライトに見せる。スーパーソニックが引き入れたAトレインが計画を伝えたのだという。セブンの良心が早くも退場。残念ではあるが、最後まで良い人のまま裏切らなかったことは立派だ。

ホームランダーは従順でいなければヒューイを殺すと脅し、スターライトはそれを復唱させられる。2話連続でスターライトが屈辱を味わうラストで『ザ・ボーイズ』シーズン3第4話は幕を閉じる。

シーズン3第4話のエンディング曲はロシアで流れていたJane Air「Junk feat. Smike」。タイトル通り、麻薬についての曲で、ブッチャーらのVへの依存を表現していると思われる。

『ザ・ボーイズ』シーズン3第4話まとめ

『ザ・ボーイズ』シーズン3第4話では、ザ・ボーイズが久しぶりにチームとして任務に就いたが、たった1話で崩壊の危機を迎えた。一方で、能力者でキミコが治癒能力が発動しなくなる展開によって、ブッチャーが求めていたホームランダーを倒す力にグッと近づいたように思える。

キミコの能力が発動しなくなった理由がソルジャー・ボーイが放った光にあるのだとすれば、ソルジャー・ボーイ自体が対スーパーヒーローの兵器になったものと考えられる。ブッチャーがソルジャー・ボーイが鍵になると考えること自体は間違っていないのだが、やはりザ・ボーイズメンバーは“人間”であり、心の問題が立ち塞がる展開になっている。

解放されたソルジャー・ボーイが昔と変わらずしょうもない奴なのかどうかも気になるが、ソルジャー・ボーイ参入の一方で、エドガーとスーパーソニックが退場というまさかの展開も待っていた。全8話の折り返し地点で一気に勢力図が覆ることに。しかし、エドガーの忠告通り、ホームランダーを抑えるエドガーがいなくなったことでイエスマンばかりになったヴォートは重大な危機に直面するだろう。

鍵になるのはニューマン議員だ。エドガーが自分に似ていると言った通り、ニューマンは“超能力のあるエドガー”とも言える存在。政府がヴォートの活動を規制すれば経営にダメージを与えることはできる。それでも、娘にコンパウンドVを打ったという事実がニューマンの弱みでもある。エドガー退場でヴォートとのつながりは失ったニューマンが、どのような動きを見せるのかに注目したい。

そしてセブンはスーパーソニックを失い、気づけばセブンはまたいつもの6人(ホームランダー、スターライト、クイーンメイヴ、Aトレイン、ブラック・ノワール、ディープ)に。シーズン2の中心的なキャラになったストームフロントの例はあるが、基本的に新メンバーは遅かれ早かれ退場する流れになっている。製作陣はキャラの立ったレギュラー6人を動かすつもりはあまりないのかもしれない。

セブンに補充があるとすれば、順当に行けばムーンシャドーが繰り上がることになるのだろうが、ソルジャー・ボーイがヴォートに帰還するなら話は別だ。ホームランダーが自分を殺せるソルジャー・ボーイを近くに置くとは思えないが、果たして……。

ちなみにスーパーハムスターのジェイミーも解放されたままなので要注意だ。

ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3はAmazonプライムビデオで独占配信。

原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。

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第5話の解説はこちらから。

第1話の解説はこちらから。

第2話の解説はこちらから。

第3話の解説はこちらから。

シーズン3までの経緯とスピンオフ番組の内容、アニメ版の注目エピソードはこちらの記事で。

シーズン3の新キャストを含む詳細情報はこちらから。

シーズン2最終話のネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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