『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話はどうなった?
2019年から5シーズンに渡り配信されてきたプライムビデオのドラマ『ザ・ボーイズ』は、いよいよファイナルシーズンを迎え、物語は佳境へと入っていく。全8話で構成されるシーズン5もいよいよ後半へ突入する第5話が配信された。
今回は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話をネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ずプライムビデオで本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話「それぞれの物語」ネタバレ解説&考察
三位一体とチーズケーキファクトリー
『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話の監督は製作総指揮にも名を連ねるフィル・スグリッシア。『ザ・ボーイズ』では通算6話目の監督で、過去にはエリック・クリプキが手がけたドラマ『スーパーナチュラル』(2005-2020) にも携わっている。脚本は、シーズン4でも第5話の脚本を担当し、シーズン5ではシリーズフィナーレとなる最終回でも共同脚本を務めるジュダリナ・ネイラが担当している。
『ザ・ボイーず』シーズン5第5話は、これまでのエピソードとは異なり短編集のような作りになっている。前回のラストでアメリカ民主主義教会の設立が発表され、ホームランダーの神格化が幕を開けた。そんな中、まずは寄付金を集めたいオー・ファーザーとファイアクラッカーが火花を散らす。
ファイアクラッカーは、キャンペーンの認知度は平均22%を上回ったとセブンの会議で報告しているが、大事なのはこの数字が「支持率」ではなく「認知度(Awareness)」でしかないという点だ。オー・ファーザーも同様のレトリックを使い、「ネット寄付の“クリック率”は44%の新記録」と報告する。大事なのは寄付の額なのに。
外部に使うようなマーケティングの手法(外部にも使うべきではないが)でホームランダーの機嫌を取ろうとするが、ホームランダーは「預言者」や「神の子」として扱われることに不満を見せる。ホームランダーは「神」として扱われたいのだ。
オー・ファーザーは、復活祭(イースター:磔にされたイエス・キリストが復活したことを記念する祭日)に合わせてキャンペーンを張ることを望むが、ホームランダーはやはり“神の子”たるキリストと同一視されるのを嫌がっている。これに関しては、実はオー・ファーザーの失点ではない。
オー・ファーザーが念頭に置いているのは、神・キリスト・聖霊が三つで一体であるとする“三位一体”の考えだ。通常、このセオリーは理解するものではなく信仰するものだと教えられるが、ホームランダーはそのこと自体が理解できないので、オー・ファーザーの説明に対して「紛らわしいからうちの教会ではナシ」と却下している。
そしてファイアクラッカーは『ホームランダー聖書』を取り出し、本を間に合わせるために時間を取るべきだと忠告する。この聖書には、キリスト以前を描く「旧約聖書」、キリストの歩みと教えを描く「新約聖書」、そしてAIが書いた「アメリカ聖書」が収録されるという。ソルジャー・ボーイの「バカげてる」とまともな反応をしていることだけが救いだ。
ファイアクラッカーが「私たちはファストフードではありません」と言うセリフは、英語では「私たちはアービーズではなく、チーズケーキファクトリーです」と言っている。アービーズはオハイオ発祥のファストフードチェーンだが、チーズケーキファクトリーも中価格帯のチェーンレストランというボケだ。だがホームランダーは家族や友達と行くようなチーズケーキファクトリーに行ったことがないだろうか、納得してファイアクラッカーに任せると決断している。
さらにホームランダーは暴動に備えて海外のヒーローを呼び戻すことを決定。ドナルド・トランプが進めた海外在留米軍の撤退を思わせる展開だ。もっとも、呼び戻されたヒーローたちは米市民に矛先を向けることになるのだが。
エピソード:ファイアクラッカー
ここでファイアクラッカーのスマホに、マイアミ州デイトナからの着信が入る。そして、『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話では、『ザ・ボーイズ』のタイトルロゴの代わりに、「ファイアクラッカー」のタイトルロゴが登場。本エピソードでは、こうしてサブキャラクターたちの視点で物語が描かれていくことになる。
ファイアクラッカーが通っていた教会の牧師であるグレッグ・デュプリーは、アメリカ民主主義教会の登場によって、信徒が流れ、残っている人々も恐れているという。地元のヒーロー、プレイング・マンティスによってステンドグラスも溶かされたといい、ついにキリスト教内に弾圧が広がっていることが明らかになる。
デュプリーから助けを求められたファイアクラッカーは、けれど「複雑で……」と良い答えを返すことができない。しかし、デュプリーは「複雑ではない」「彼は神ではない」と言い切る。「複雑」というのは議論を避けるために利用されがちな言葉だ。デュプリーは、「私が聖書を教えたミスティ・グレイなら分かるはず」と、ファイアクラッカーを本名で呼んで訴えかけるのだった。
ファイアクラッカーがソルジャー・ボーイにピロートークでこのことを相談すると、ソルジャー・ボーイは、あいつが神なら俺はヨセフか? と問う。ヨセフは処女でキリストを身ごもり出産したマリアの夫で、イエス・キリストの養父である。
ファイアクラッカーは正直に、神とキリストとの間でホームランダーをどう位置付けるかを悩んでいると、信仰心で揺れ動く心境を吐露する。「仮に神がいても、俺のタマからは出てこない」という、ホームランダーの神性を否定するソルジャー・ボーイの名言も飛び出している。
自身が支持する政治家が自分を神聖な存在であるかのように振る舞い始めた時、真の信仰者はこうした葛藤を抱くことになるのだろう。前話のアニーの父もそうだったが、現実にもこうした人は少なくないはずだ。
信者からの母乳をホームランダーの棚に納めに来ていたオー・ファーザーと鉢合わせたファイアクラッカー。オー・ファーザーは二人のことを「ペテロとヨハネ」と表現しているが、ペテロとヨハネはイエス・キリストの十二使徒の中でも共に行動することが多かった兄弟弟子だ。
そして、このパートのラストでは、相談を受けていたデュプリー牧師のホーリー・バブテスト教会がスターライターの温床となっていたというフェイクニュースをファイアクラッカーが読まされることになる。涙を流しながら牧師を侮辱する嘘の報道を読みあげたファイアクラッカーには同情の余地もあるが、その信仰心とは裏腹に、大事な人が犠牲になっても頑なに引き返そうとしない“弱さ”は、もはや擁護のしようがない。
エピソード:ブラック・ノワール
そして、『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話では、時間が巻き戻り、別の人物のストーリーが描かれる。シーズン5で沈黙を続けていたブラック・ノワールだ。ディープにエドガー確保の手柄を横取りされた2代目ブラック・ノワールは、普段は劇場での演劇の仕事に励んでいた。そしてその舞台の監督は、これまでに何度もシリーズに登場しているP.J. バイロン演じるアダム・バークだ。
2代目ブラック・ノワールことジャスティンがブラック・ノワールを演じていると知らないバークは、演技に影響を与える本業を辞めるよう助言する。ジャスティンを苛ませているのがディープだとは知らずに、「ジャレッド・レトと同じレベルのガキ」と、例えでディープをディスっているが、ジャレッド・レトは役になりきった時に共演者に動物の死体を送るといった奇行をとったことなどで知られる。
ブラック・ノワールはオー・ファーザーをゲストに招いたポッドキャストで、自身をイースターの企画に売り込む。ホームランダーの奇跡を演出してブラック・ノワールが飛んでみせると言うのだ。オー・ファーザーは、信仰による治癒はペンテコステ派を囲い込めると、信仰治療や奇跡を信じる傾向にあるペンテコステ派へのアピールとして食いついている。オー・ファーザーはこのキリスト教の宗派の膨大な知識を使って商売をしているのだろう。
ディープに一杯食わせたブラック・ノワールは、バークからブロードウェイ・ミュージカルへの誘いを受けるが、黙っていなかったのがディープである。バークがトイレに行った際に尻から巨大ウナギを入り込ませ、バークを殺してしまったのだった。アダム・バーク、ファイナルシーズンのここでお別れとなる。
なお、バークは死ぬ前にスマホを見て「トニー・ギルロイめ」と言っているが、トニー・ギルロイは近年、「スター・ウォーズ」ドラマ『キャシアン・アンドー』(2022-2025) を手掛けて高い評価を受けている。
ブロードウェイ・ミュージカルは制作中止となり、ディープに怒りをぶつけるブラック・ノワールだったが、逆にディープからホームランダーは全米芸術基金を閉鎖したんだぞと、“副業”をバラすと脅されて黙ってしまう。トランプ政権もまた、芸術的なプロジェクトを支援する全米芸術基金のDEI(多様性・公平性・包括性)を推進するプロジェクトへの資金提供の中止を指示し、2025年5月には同機関の完全廃止を提案している。
エピソード:テラー
『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話の三つ目のストーリーは、意外にも犬のテラーが主人公になるものだ。今回はセブンメンバーが中心のストーリーになっているが、ザ・ボーイズメンバーの日常(?)はテラーの視点で垣間見ることになる。
ホームランダーのお尻を犬の視点で見られるサービスシーンはテラーの夢で、テラーはお気に入りのホームランダーのぬいをアニーに洗濯のために持って行かれてしまい、部屋の外へ冒険に出かける。テラーはMMが落としたチョコレートを食べようとするが、ブッチャーが必死にそれを止める。犬にとってチョコレートは最悪の場合中毒死に至る毒だ。
潔癖だったのに落ちたチョコレートを拾って食べるMMは、自分が死んだも同然だと気づいてから、強迫観念がなくなったと明かす。家族にとっても、自分がいない方がいいし、自分にとっても家族がいない方が希望を抱かずにいられるというのだ。
MMの内心を視聴者に聞かせてくれたテラーは、お次はフレンチーの元へ。フレンチーはフレンチーで、キミコは平穏を求めているが、果たして自分がそれをもたらせるのか、と悩んでいた。
だが、フレンチーは調理に失敗したチョコレートスフレをそのままゴミ箱に捨てると、テラーはそれを食べてしまう。V1を作ってもキミコとアニーのためのワクチンは作らないとヒューイに強弁するブッチャーだったが、テラーがチョコレートを食べていることに気づく。
テラーはなんとか、ヒューイが持ってきた過酸化水素でチョコレートを吐き出して急死に一生を得る。この時のブッチャーの焦り具合といったら……。ブッチャーにはまだ失いたくないものがあるのだ。
テラーが回復した後、ブッチャーはヒューイに素直に礼を言うと、弟のレニーのマジック大会のトロフィーに目をやって、ヒューイに状況が許せばV1をアニーとキミコ用に使ってもいいと話す。V1が見つかる前にウイルスが完成すればすぐに使うという条件付きだが、大事な存在を守りたいというヒューイの気持ちを汲んだのだ。
レニーはブッチャーにとって自分の善性を思い出させてくれる存在だった。ブッチャーはヒューイにレニーを重ね合わせて見ていて、完全に無慈悲になることはできなかったのだ。レニーのトロフィーとテラーをイギリスから連れてきた時点で、分かっていたことなのかもしれないが。ともあれ、テラー視点で語られる素敵な短編だった。
エピソード:シスター・セージ
次の短編はシスター・セージだ。セージは副大統領のアシュリーに海外のスーパーヒーローたちを呼び戻させる。どうやらウクライナを支援していたグループを呼び戻したようで、「侵略された理由があるのでは?」と、現実でも侵略から守ると言った大義名分を前言撤回する合衆国政府らしい交渉を行っている。
シスター・セージは、人の考えが読めるアシュリーの後頭部を頼りにしていて、ソルジャー・ボーイの狙いと、ホーランダーに心を開いたかを確認させることに。ホームランダーに反目するような動きに抵抗しようとするアシュリーに、後頭部はアンサン・スーチーの言葉を腰に彫ったはずと指摘する。
ミャンマーの解放運動家アウンサン・スーチーは「真の監獄は恐怖」という言葉を残したが、これは真に自由を制限するのは物理的な牢屋ではなく、心の中に抱く恐怖だという意味である。まさにファイアクラッカーが似た状態にあると言えるが、アシュリーの場合は信仰心ではなく、自由を愛する気持ちを通して揺さぶりをかけられている。
ウイスキーを飲み交わす二人(三人)は、アシュリーの母とセージの祖母は癌で死んだと経験を共有。Vで「賢さ」という能力を得たセージは両親に嫌われて祖母のもとで暮らしたそうだが、祖母はその能力を「贈り物」だと言ったという。
セージが幼少の頃に一語一句暗唱したという「オセロ」はシェイクスピアの『オセロー』のことで、シェイクスピアの4大悲劇の一つとして知られる。一方のアシュリーも母のように誰にも屈しない人になりたかったと漏らすと、ついにセージは自分の壮大な計画を明らかにする。
シーズン4のラストでも触れていたが、セージにとっての「第1章」は、ホームランダーが国を掌握することだった。そして、第2章は対能力者のウイルスが世界中にばら撒かれること。これを機に人間と能力者の世界大戦が起き、全てが終わればセージはコロラドの地下壕で本を読んで静かに暮らすという。
アシュリーの後頭部とアシュリーも地下壕に招待するというが、セージが抱いていたのは人類と能力者の殲滅というより大きな野望であったことが明らかになった。つまり、ウイルスを使ってホームランダーを倒すという目的はザ・ボーイズと一致するが、その先に人類も破滅させるというブッチャーもびっくりのアナーキーな計画があったのだ。
エピソード:ソルジャー・ボーイ
『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話の最後のパートはソルジャー・ボーイのパートだ。前回、ソルジャー・ボーイはホームランダーを閉じ込めて濃縮ウランを浴びさせる仕打ちをした。一方で、かつての仲間を殺して涙するソルジャー・ボーイをホームランダーは殺さなかったことから、その借りを返すとしてV1の在処について口を割らないエドガーを説得すると申し出る。
エドガーはホームランダーに「父親代わりの者を切望している」と言い放ち、いつもの余裕を見せていたが、アリゾナ州テンビに孫のゾーイとその父親がいるという情報をソルジャー・ボーイに掴まれていた。孫を守りたいエドガーは、LAのミスター・マラソンを訪ねるよう告げる。ちなみにミスター・マラソンの名前はシーズン2第7話で、かつてランプライターがミスター・マラソンと一緒に女子大学生をヴォート・タワーに忍び込ませていたという小話で名前が登場している。
そうしてホームランダーとソルジャー・ボーイの親子はLAへ。まぁいいんだけど、この人たちはいつもちょっとしたヒントだけで動くな……(じっとしていられないのかもしれない)。ロサンゼルスを背景に流れる曲はローズマリー・クルーニー「Hooray for Hollywood」(1987)。「ハリウッド万歳」と歌われるが、このシーンではホームレス状態にある人々のテントが映されている。
『スーパーナチュラル』とSSU
そして登場したのは、ジャレッド・パダレッキが演じるミスター・マラソンだ。ジャレッド・パダレッキは、ザ・ボーイズを手がけるエリック・クリプキのもう一つの代表作『スーパーナチュラル』の主演だった俳優で、ソルジャー・ボーイ役のジェンセン・アクレスと兄弟という役柄でダブル主演を務めている。
アントニー・スター演じるホームランダーとのスリーショットが実現する嬉しい演出だ。また、日本語吹き替え声優も、ソルジャー・ボーイの声は東地宏樹、ミスター・マラソンの声は内田夕夜が担当しており、『スーパーナチュラル』と同じ人選になっている。
Aトレインと交代するまでセブンにいたというミスター・マラソンは、Aトレインとほぼ同じ能力を持っている。過去には映画にも出ていたようで、『マダム・ウェブ』(2024) が元ネタと思われる『マダム・マラソン』や、『モービウス』(2022) と『クレイヴン・ザ・ハンター』(2024) をを掛け合わせたようで『スーパーナチュラル』の要素もある『ミスター・マラソン ヴァンパイア・ハンター』、『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021) が元ネタの『レット・ゼア・ビー・ランペイジ』といった作品のポスターが貼られている。
だが、2億ドルの製作費に対して興行収入が3,500万ドルに過ぎないなど、どこかで見たことのある作品群の匂いがする……。ソルジャー・ボーイが「ヴォート映画との違いは?」と問うと、ホームランダーは「落ち目のヒーローの墓場」と切り捨てる。そして、その製作会社が「ソニー・ピクチャーズTV」だと明かすのだ。
観ていて思わず吹き出してしまったが、ソニー・ピクチャーズ・テレビジョンは、『ザ・ボーイズ』の制作会社で、親会社はソニー・ピクチャーズ エンタテインメントだ。そう、ミスター・マラソンの映画が属していたのはソニーが「スパイダーマン」キャラで展開したSSU(ソニー図・スパイダーマン・ユニバース)のようなシリーズで、同シリーズではヴォート社の作品には言及できないという細かいネタまで用意されている。
ソニー側からの自虐ネタだが、普段はソニーが権利を持つ「スパイダーマン」キャラをMCUに登場させることができない、あるいはスパイダーマンをドラマ作品に登場させられないという話題ばかりが目立つため、ソニー側が弱い立場として振る舞っているのは不思議な感覚もある。
また、『ゴーストランナー2』のポスターの下部には、「スーパーナチュラル・スピードスター」と書かれており、ドラマ『スーパーナチュラル』のオマージュも忘れていない。
カメオが続々
ここまででもお腹いっぱいになってしまう内容だが、ミスター・マラソンの家には、MCU『エターナルズ』(2021) などでお馴染みのクメイル・ナンジアニやウィル・フォーテ、クリストファー・ミンツ=プラッセ、クレイグ・ロビンソンの俳優陣に加え、『ザ・ボーイズ』の製作総指揮でありセス・ローゲンが本人役で登場する。セス・ローゲンはシーズン1に続く出演だ。
ハリウッドゴシップと悪口に花を咲かせる一同だが、この中にミーシャ・コリンズ演じるマルケミカルという能力者もいる。ミーシャ・コリンズもまた、ドラマ『スーパーナチュラル』でキャスことカスティエルを演じた俳優だ。こちらも『スーパーナチュラル』に続き津田健次郎が声を演じる贅沢なファンサービスが実現している。
ナチスを信奉している様子のミスター・マラソンの部屋では、ソルジャー・ボーイはリバティーこと当時のストームフロントの写真を目にする。ミスター・マラソンはV1はボムサイトが持っていると認めた上で、ボムサイトを呼ぶと約束するが、これは罠だった。
毒ガスを吐けるマルケミカルがホームランダーにガスを吹きかけ、ホームランダーを戦闘不能状態に。ミスター・マラソンらはソルジャー・ボーイにホームランダーにトドメを刺すよう懇願するが、その要請は売人の取り締まりなどが許せないという“クズ”の立場からのものである。
だがソルジャー・ボーイは、自分の息子をヤるのは自分だけだとこれを拒否。ソルジャー・ボーイは、ミスター・マラソンの高速移動に対して、Aトレインがかつてやってしまった“人轢き”を次々にさせて仲間を殺させる。
ソルジャー・ボーイがミスター・マラソンの足をへし折るグロシーンと復活したホームランダーがミスター・マラソンの顔面を踏み潰すグロシーンで、ここでのミッションは終了。ソルジャー・ボーイはホームランダーにファイアクラッカーと寝たがピロートークが煩わしかったと告げて、ミスター・マラソンのコレクションの中から、ソルジャー・ボーイのコミックを持ち帰っている。
ファイアクラッカーはどうなった?
『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話のラストシーンでは、ファイアクラッカーが子どもの頃から大事にしていたイエス・キリストのフィギュアを捨て、ホームランダーのもとを訪ねる。イエスへの信仰心を捨てるという決意の表れだ。
だが、ホームランダーはピロートークで葛藤を語っていたファイアクラッカーにヴォート・タワーを出ていくよう告げる。ファイアクラッカーは、ホームランダーを愛していたのは自分だけで、他の者は利用しようとしているだけだと食い下がるが、ホームランダーを何年も観てきた視聴者はこれが完全に悪手だと分かるはず。
ファイアクラッカーは、ホームランダーを癒せたことで祝福を感じた、神にも愛は必要なのでは、と畳み掛けるが、これも全然ダメ。ホームランダーが一番嫌がるのは憐れみをかけられることです。
案の定、添えられた右手でワシの像の翼に右のこめかみをサクッと押し込まれて、ファイアクラッカー死す。少しだけ目が動くのがリアルだ。人が死にまくった内容とは裏腹なローズマリー・クルーニー「Hooray for Hollywood」がエンディング曲として流れて、『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話は幕を閉じている。
『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話ネタバレ感想&考察
支配から逃れる動機
『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話は、いつもと違うサブキャラたちの視点でサイドストーリーが描かれる楽しい回だった。一方で、お馴染みのカメオ陣とファイアクラッカーが死ぬというイベントも待っていた。シーズン5第1話のAトレインに続く大きな展開だ。
一本筋が通っていたのは、ホームランダーの恐怖政治と神格化が進められる中で、人々がそれに争う動機が三者三様に描かれていた点だ。ファイアクラッカーやデュプリー牧師にとっては、そのブレーキは信仰心と信教の自由だった。シスター・セージとアシュリーにとってはインテリが志向する自由、そしてミスター・マラソンとマルケミカルにとってはクズが求める堕落する自由だ。
支配に対抗する理由は様々であって良いはずだが、興味深いのは、『ザ・ボーイズ』では信仰心がほとんど役に立たないものとして描かれていることだ。知的階級は着実に長期計画を進めており、クズたちはホームランダーをあと一歩というところまで追い詰めた。これらの描写は、製作陣による現代アメリカへの挑発なのかもしれない。
だが、そのどれでもない動機によってホームランダーを打ち倒す可能性があるのがブッチャーだ。そこにある動機はもはや呪いと呼べる執着であり、ブッチャーはその後の世界がどうなろうと知ったこっちゃないと言わんばかりだる。
そんな中で、『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話では、ブッチャーがテラーを通してヒューイの優しさに触れ、弟のレミーを思い出すような描写があった。MMが捨てたような、こうしたわずかな希望や優しさが、ブッチャー&ホム後の世界を再建に導くのだろうか。
ホームランダー打倒は既定路線?
注目は、これまで何が目的か読めなかったセージの狙いが、ホームランダーと人類を破滅させることにあったと分かった点だ。インテリのアシュリーなら仲間にして良いと思ったのか、セージは全ての計画をアシュリーに伝えている。
アシュリーはこの計画を良しとはしないはずだが、いつものように流されて利用されてしまいはするのだろう。一方で、途中まではザ・ボーイズとセージの狙いは一致しているため、ホームランダー打倒に向けては力強い味方が現れたと考えることもできる。だが、セージはV1によるワクチン作成は阻止したいはずで、やはりミスター・マラソンが5年前に会ったというボムサイトの行方が鍵になる。
なお、『ザ・ボーイズ』シーズン5第5話の配信前に、スピンオフドラマ『ジェン・ブイ』の2シーズンでの終了が発表された。同作の登場人物たちのストーリーは『ザ・ボーイズ』の方で描かれるということなので、残り3話の中でどのような活躍を見せるのかに期待しよう。
ドラマ『ザ・ボーイズ』とスピンオフドラマ『ジェン・ブイ』はAmazonプライムビデオで独占配信中。
『ザ・ボーイズ』原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。
『ザ・ボーイズ』シーズン5第6話の解説&考察はこちらから。
シーズン5第4話の解説&考察はこちらから。
シーズン5第3話の解説&考察はこちらから。
シーズン5第2話の解説&考察はこちらから。
シーズン5第1話の解説&考察はこちらから。
【ネタバレ注意】『ジェン・ブイ』シーズン2最終回の解説&考察はこちらから。
『ザ・ボーイズ』シーズン4最終回で残された11の謎についてはこちらの記事で。
『ザ・ボーイズ』シーズン4最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。
