大ヒット映画『キングダム 大将軍の帰還』
2024年7月に公開された映画『キングダム 大将軍の帰還』は、日本国内の興行収入が80億円超を記録した大ヒット映画。原泰久原作の同名漫画を実写化した映画シリーズの第4弾にして、シリーズ最大のヒット作品になった。
今回は、映画『キングダム 大将軍の帰還』について、ラストの展開を中心にネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容は結末に関する重大なネタバレを含むため、必ず本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『キングダム 大将軍の帰還』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『キングダム 大将軍の帰還』ネタバレ解説
前作からの繋がり
「キングダム」シリーズでは、山﨑賢人演じる主人公の信は、吉沢亮演じる幼馴染の漂そっくりな秦の王・嬴政(えいせい)と出会い、天下の大将軍を目指す。奴隷時代にその姿を見て憧れていた天下の大将軍・王騎(おうき)に可能性を認められ、信は王騎の軍で力をつけていくことになる。
一方の嬴政も中華統一という目標を掲げ、髙嶋政宏演じる昌文君(しょうぶんくん)らの助けを得ながら父・荘襄王(そうじょうおう)から受け継いだ秦を統治する。そして、一線を退きながらも趙の侵攻に際して総大将に任命された王騎。映画『キングダム 大将軍の帰還』では、信・嬴政・王騎の物語が中心に描かれる。
映画『キングダム 大将軍の帰還』の冒頭は、前作『キングダム 運命の炎』(2023) のラストから繋がる。『運命の炎』の終盤では、①李牧(りぼく)の登場、②龐煖(ほうけん)の登場、そしてポストクレジットシーンでの③楊端和(ようたんわ)が目撃した北の騎馬民族の全滅、この三つが『大将軍の帰還』に繋がる要素として描かれていた。
小栗旬演じる李牧は趙の三大天の一人に数えられる軍略家で、王騎をも超える実力の持ち主と見られている。一方で橋本環奈演じる軍師見習いとなった河了貂(かりょうてん)には非戦闘員であるため手を下さないなど、自分のルールを持った人物でもある。
吉川晃司が演じる龐煖は「武神」と呼ばれる最強の武将で、実は馬陽の戦いの趙の総大将だった。軍を率いるようなタイプではないが、群を抜く個の力を持っている。個の力と軍略の双方に長けた王騎とは9年前に因縁があり、龐煖は王騎に殺されたと思われていたが、前作のラストで突如として現れて清野菜名演じる羌瘣(きょうかい)ら飛信隊を崩壊させた。
前作の馬陽の戦いでは、龐煖に代わって趙を率いていた趙荘(ちょうそう)を信が討ち取り武勲をあげたが、『キングダム 大将軍の帰還』では、李牧と龐煖の登場によって大きく戦局が変わることになる。
王騎の過去
その中で明かされるのが王騎の過去だ。かつて王騎は新木優子演じる摎(きょう)と「百個の城をとったら妻にする」という約束をしていたが、摎は百個目の城を取ろうとした馬陽の戦いで龐煖に殺されてしまった。回想シーンでは小さい頃に交わした約束を王騎が覚えていたこと、摎が取った城の数をきちんと数えていたことが明かされており、王騎の人柄が窺える。
また、摎は嬴政の曾祖父・昭王の娘だった。二人は出会った瞬間にその事実に気付くが、二人が親子だということは秘密にされたままだった。王騎からその事実を聞かされていた昌文君は、9年後の馬陽の戦いに際して嬴政にこの話を明かしたのだった。
ということは、龐煖が摎を殺していなければ、王騎と嬴政は遠い親戚になっていた可能性もあったのだ。『キングダム 大将軍の帰還』では、王騎が摎を殺した龐煖への仇討ちを再び果たすため、一騎打ちに挑むことになる。
李牧の軍略
『キングダム 大将軍の帰還』では、平山祐介演じる蒙武(もうぶ)が王騎の指示を破って龐煖を深追いし、窮地に陥ってしまう。ここで王騎は蒙武を見捨てることをせず、救援に駆けつけた。このシーンでの要潤演じる王騎軍の副官・騰(とう)の無双ぶりは圧巻。シリーズ4作目でついにその実力が明かされることになった。
しかし、ここで『キングダム 運命の炎』のポストクレジットシーンから繋がる要素が登場する。楊端和が目撃した北の騎馬民族・匈奴10万人の全滅は趙軍によるものだったが、この情報は秦には伝わっていなかった。この圧倒的な軍略と徹底した情報統制は李牧が仕掛けたものだった。
王騎が龐煖を打倒しかけた時、李牧の隠し球であった大軍が馬陽に到着。王騎は趙の援軍の到着を予測していたが、李牧はその予想を上回る早さで援軍を投入し、この軍略が運命を分けることになる。
『キングダム 大将軍の帰還』ラストをネタバレ解説
王騎の最後
『キングダム 大将軍の帰還』のラストでは、李牧の支持を受けた魏加(ぎか)が、龐煖と戦う王騎を弓矢で攻撃。一瞬の隙をついた龐煖の矛が王騎の腹を貫き、龐煖にとっても不本意な形で勝負が決する。
信は重傷を負った王騎を戦場から逃すが、馬の上で王騎は「将軍が見る景色」を信に教える。視界を広く持ち、大局を見るのが将軍だ。敗走の中にも教えを持たせることもまた、王騎が大将軍たる所以だと言える。
李牧はこの戦の目的は王騎の死だとして、自分に深追いを禁じる。「無意味な死は絶対に許しません」と言い渡す李牧もまた信念のある将軍なのだ。
そして王騎は、兵士たちを前に最後の言葉を伝えていく。王騎は副官の騰に軍の全権限を譲ると告げる。騰にはすでに王騎に見劣りしない力があるというのだ。今回、一応“戦犯”である蒙武は、けれど王騎から秦軍の顔になるべきだと助言を受けるのだった。
王騎は信にきちんと修行をつけてやれなかったことから、自分で戦場を駆け回って学ぶようにと告げる。最後には「素質はありますよ、信」と、「童信」ではなく名前だけで読んでいる。そして信は、王騎の矛を受け継いだのだった。王騎は最後まで倒れることなく、馬の上で堂々と死んだ。見事な最期である。
ラストの意味は?
王騎の死が伝わると、嬴政は戦前の王騎から聞いた昭王の遺言を明かす。その内容は、「戦さに慈悲は無用なれど、奪い取った地にある民は奴隷にあらず。虐げることなく、自国の民と同様に愛を注ぐこと」という言葉だった。戦乱の時代にあっても民を虐げてはならないということだ。
嬴政は曽祖父の昭王の言葉を父である前王から聞かされていなかった。王騎はその理由を、自分が伝えなかったからだと話す。昭王の遺志を継ぐ素質のある者に遺されたものだとして、王騎は「仕えるに値すると思う王にのみ伝えよ」と言われていたのだ。
王騎が嬴政にこの遺言を伝えたということは、嬴政が王騎にとって「仕えるに値すると思う王」だと認められたということである。歴戦の天下の大将軍である王騎は嬴政を「大王」と呼び、共に中華統一を目指そうと告げたのだった。
李牧が乱世全盛の到来を予期する中、信は騰の許可を得て全兵に馬陽は守られたこと、胸を張って王騎と共に堂々と城へ帰るとう告げる。嬴政は馬陽を守り、王騎の遺体も敵に渡さなかったことから、これは秦の勝利であると宣言する。
「大将軍が死すとも、大将軍の魂は我々に宿る」という名台詞。王騎と共に戦い、その魂を宿した信たちの帰還が、「大将軍の帰還」なのである。信は王騎の矛をかろうじて掲げると、「全軍、前進」という王騎の言葉を引用して隊を動かす。舞台は城へ帰るが、秦にとってはこれは前進なのである。
エンディングで流れる主題歌はONE OK ROCK「Delusion:All」。ONE OK ROCKが「キングダム」の主題歌を担当するのは2019年公開の第1作目以来。第2作目はMr.Children、第3作目は宇多田ヒカルが主題歌を担当している。
『キングダム 大将軍の帰還』ネタバレ感想&考察
アクションもキャストも最高の名作
『キングダム 大将軍の帰還』は、シリーズの一つの区切りとして、集大成となる見事な作品に仕上がっていた。騎馬戦を含むアクションは世界的に見ても一級品のレベルにあり、日本のアクション映画のレベルの高さを示す作品でもあった。
同時に、これまでの個性的で実力派の俳優陣に見劣りしない小栗旬と吉川晃司という二人のスターが実写「キングダム」に新たな風をもたらした。長澤まさみの再出演も嬉しく、今や実力派俳優の戦場と化しつつある「キングダム」はキャストの演技だけで見ても相当なレベルにあると言える。
その中で大沢たかお演じる王騎が最期の時を迎えた。映画版はどうしてもストーリーや心情描写を短縮する必要があるが、そのハンデを補って余るあるほどの大沢たかおの演技力によって、感動のフィナーレが演出されていた。要潤演じる騰も『大将軍の帰還』では武将としてのかっこよさと王騎の副官としてのチャーミングさの両方が出ている、まさに“神回”だった。
続編はある?
気になるのは続編についてだが、2025年7月11日(金)、映画「キングダム」第5作目が2026年夏に公開されることが発表された。ティザービジュアルには、甲冑を着る信の姿が捉えられている。
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2026年、再びあの熱い
「キングダムの夏」がやってくる!
\🎬2026年夏 公開決定!
映画『#キングダム』続編「思いを受け止め、前へ」
新たに甲冑を着用した信が佇む
スーパーティザービジュアル解禁!大将軍の意思を継いだ者たちが
再び立ち上がる――。出演:#山﨑賢人 #吉沢亮 他… pic.twitter.com/lOrXHNcqSQ
— 東宝映画情報【公式】 (@toho_movie) July 10, 2025
『大将軍の帰還』で王騎は去ったが、次は誰が秦を率いる将軍になるのだろうか。長澤まさみ演じる楊端和(ようたんわ)の再登場にも期待したい。そして、李牧と龐煖への王騎の仇討ちは——。新たなフェーズに入る映画「キングダム」シリーズ。今後の動向にも注目しよう。
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原作漫画『キングダム』は最新刊76巻が7月17日発売で予約受付中。
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