『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話はどうなった?
Amazonプライムビデオのドラマ『ザ・ボーイズ』のファイナルシーズンとなるシーズン5が配信を開始し、2019年から親しまれてきた物語がフィナーレへ向かって動き始めた。エリック・クリプキの新たな代表作は、どんな着地を見せるのだろうか。
今回は、『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話をネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ず本編をプライムビデオで視聴してから読んでいただきたい。なお、以下は性暴力に関する内容を含むので注意していただきたい。
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話「どいつもこいつもクソばかり」ネタバレ解説&考察
差別国家の“同志”となったアメリカ
『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話の監督を務めたのはカレン・ガヴィオラ。ドラマ『LOST』(2004-2010) や『プリズン・ブレイク』(2005-2017) などで指揮をとったベテランドラマ監督で、『ザ・ボーイズ』シーズン4第2話と第6話、『ジェン・ブイ』シーズン2第3話も指揮した。脚本のエリー・モナハンはシーズン1から毎シーズンで脚本を手がけ、『ジェン・ブイ』シーズン2第1話も担当している。
『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話の冒頭では、ロシアのスジャに身を隠しているライアンの姿が描かれる。姿を現すまではホームランダーかと思ってしまうくらいにライアンは成長している。演じるキャメロン・クロベッティもシーズン5配信開始時点で18歳を迎えた。
動画ではソルジャー・ボーイのセブン復帰が紹介されている。やはりウイルスを耐え切って生きていたようだ。“オールドメディア”によって裏切り者に仕立て上げられたということになっているが、ソルジャー・ボーイがロシアのスパイだったという言説はヴォートが流したフェイクである。
フェイクを流したとされるニュースの映像は、「NNC」というチャンネルのものになっており、これはもちろんCNNをモデルにしている。CNNはワーナー・ブラザース傘下にあるメディアで、ドナルド・トランプ米大統領が目の敵にしていることで知られる。
ヴォート・タワーの爆発はスターライトの仕業ということになり、ソルジャー・ボーイは1984年以降、クレムリンと共にウクライナの裏切り者を根絶してきたという紹介も。少し前まではロシアは敵国という設定だったが、一転して親露路線をゆく米政権を茶化す演出だ。
ソルジャー・ボーイがプーチンと握手する写真に続き、ディープはロシアには「多様性トイレ」もないと発言。英語では「トランストイレもない」と言っており、吹き替えでは「トランスジェンダーを許さない我々の同志」と言っている。ロシアでは2023年に性別適合手術やホルモン治療、さらに法律上の性別変更も禁止されている。アメリカはそんな国の「同志」となってしまったのだ。
ソルジャー・ボーイのお披露目会が行われる最中、ホームランダーは前回のメガチャーチで「私の坊や」という声が聞こえた経験に支配され、突然ソルジャー・ボーイが自分の父だと発表する。ホームランダーの突発的な“アウティング”は今に始まったことではないが、現実で国の首脳が気ままに発言するようになった今となっては“あるあるネタ”に見えてしまう……。
ソルジャー・ボーイが生きていた理由
ソルジャー・ボーイはなぜウイルスで死ななかったのか。検査の結果、ソルジャー・ボーイには初代のコンパウンドV、V1が投与されており、ウイルス自体がV1を想定した設計になっていなかったのだという。
V1はVより10倍強く、老化も防ぐことができるが、不安定で投与に成功したのはごく少数で、ソルジャー・ボーイとストームフロント以外では、ボムサイト、トルピード、プライベート・エンジェルの名前が挙がっている。この3人は、前日譚スピンオフ『ヴォート・ライジング(原題)』にも登場するとされている。
今のウイルスではソルジャー・ボーイは殺せないが、ホームランダーには免疫がないという絶妙な状況。しかし、ホームランダーがV1を打てば同じ効果を得られるということで、『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話では、ホームランダーが不死になることを阻止するためのV1奪取競争が展開される。
ソルジャー・ボーイは、ホームランダーが自分をウイルスにぶつけるために解凍したと思っており、まだ怒っている。だがある意味では、ホームランダーにとって骨のある存在が現れたということだから、ホームランダーも悪い気はしていないのかもしれない。それでもパパは、「弱くて泣き虫な子ども」「惨めで中身は空っぽ」と、ほとんどAトレインと同じ評価をホームランダーに突きつけるのだった。
『ジェン・ブイ』S2から繋がったのは?
ブッチャーをのぞくザ・ボーイズメンバーは、スタン・エドガーとゾーイのもとへ。スピンオフドラマ『ジェン・ブイ』のシーズン2を観ていないと唐突な展開に思えるが、エドガーは同作でゾーイをレッド・リバー(問題を起こした能力者の子どもが入る施設)から引き取っていたことが明かされ、さらに主人公のマリー達を助けた。『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話でも「マリーは遅刻か」と、マリーの存在に触れている。
一方でエドガーは娘のニューマンを殺したグループとしてザ・ボーイズには少なからず敵意を抱いている様子だ。「ブッチャーは許されないから来てない」というのが、ヒューイらなりのバランスの取り方で、ホームランダーが永遠の命を得るのを防ぐために手をくむというのが両者の落とし所だった。
ヴォートのCEOだったスタン・エドガーも、今ではすっかり穏健派に見える。石破茂ばりに再評価が進みそう。先鋭化が進んだ時代では、“真ん中”の軸はズレていくし、少なくともロジックに則って動いていた人たちはマシに見えてくるものだ。
また、協力を願い出るのがエドガーと同じ黒人男性のMMであることもポイントだろう。MMは復活したソルジャー・ボーイに父を殺されたという経緯もある。そしてエドガーが、シーズン1でヒューイが殺したトランスルーセントの息子、マーベリックを匿っていることも明らかになる。
マーベリックは『ジェン・ブイ』にも主人公らが通うゴドルキン大学の学生として登場している。マーベリックは、父はヒューイではなくホームランダーに殺されたと教えられており、復讐を誓っていた。ブッチャーがサミールに、ニューマンとゾーイはホームランダーに殺されたと嘘をついた時は顔をしかめたヒューイだったが、今回はこの嘘に乗っかることに。自分のことになると保身に走ってしまうのが人間の弱さだ。
エドガーはV1について、ヴォート博士のダッハウでの実験の結果、成功は5例のみだったと話す。ダッハウとはナチス・ドイツの強制収容所があった場所で、ヴォートはユダヤ人や政治犯を実験台にしていたということだろう。
ヴォート博士はアメリカへの亡命後も米兵でV1の実験を行ったといい、その当時の写真には実験台にされた黒人兵が写っている。これは、MCUドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) でも題材になった、タスキギー実験をベースにしたものと考えられる。
米国では1932年から1972年まで40年に渡り、アフリカ系アメリカ人の男性を利用した梅毒感染に関する人体実験が行われていた。非人道的なこの実験について、1997年にビル・クリントン大統領が謝罪を行ったが、のちに新型コロナウイルスによるパンデミックが発生した際には、政府不信によって黒人の人々のワクチン接種に遅れが出るという事態を招いた。
MMが人体実験の写真を見て「驚きはないな」と口にする背景には、実験対象がナチス下のユダヤ人から、米政府下の黒人に置き換わったことに対する言葉だったのかもしれない。そして、エドガーによると、50年代にVは安定化し、V1は葬り去られたという。
ヒューイはゾーイに、ブッチャーがニューマンを殺すとは思わなかったと弁明するが、「もう関わらないで」と言われてしまう。ヒューイは恋人が殺されたことについてAトレインと決着をつけることができたが、次はゾーイとマーベリックという次の世代の能力者たちに、“加害者”の立場として接することを迫られるのだ。
ホームランダーの霊的体験
一方のホームランダーは、遺伝子上の父のソルジャー・ボーイからの「失望した」、ビジネス上の父のエドガーからの「哀れな存在」、生みの親のヴォーゲルバウム博士からの「最大の失敗作」という言葉を思い出して参っている。やっぱり心の弱さはホームランダーの弱点だ。
そんな中、ホワイトハウスが投稿する生成AI映像のような演出で登場したのはマデリンだった。父も息子も思い通りにならないという中で、幻影のマデリンから不死の力を得て真の神になるよう諭されるホームランダー。まだ自分が弱くて人間的で、嫌われていることを自覚できていたホームランダーだったが、マデリンからは敵を血で清め、邪悪な者を消し去るよう告げられている。
『ザ・ボーイズ』ではあまり見なかったスピリチュアルな展開だが、オー・ファーザーの力が関係しているのだろうか。一方で、現実と照らし合わせると、これくらい強烈な霊的体験をしたのでなければおかしいと思うほどの行動を某国の大統領が行なっていることも確かだ。決して大袈裟な演出ではないとすら感じてしまう。
ゾーイはこっそりライアンと会っていた。二人は『ザ・ボーイズ』シーズン4第1話の大統領選のパーティー会場で出会っている。ゾーイは一緒にブッチャーを殺そうと持ちかけるが、ライアンにはその気はないらしい。
ゾーイが去ると、そこに現れたのはブッチャーだった。怒りを見せるライアンにブッチャーは、同じ女を愛していて、同じ奴を憎んでいるだろと語りかける。愛しているのはブッチャーの妻でライアンの母であるベッカ、憎んでいるのはホームランダーだ。
“母乳風呂”(シーズン5までいってよく思いつくな……)に浸かるホームランダーは、V1の捜索をソルジャー・ボーイに指示するがスルーされる。天使のマデリンを見たホームランダーは自信を取り戻していたが、ソルジャー・ボーイには「白い陰毛だらけの変人」と言い放たれている。シーズン4では陰毛に白髪が混じるようになったことでホームランダーが悩む場面があった。やはり老いはホームランダーの悩みの種なのだ。
ライアンの憂鬱
ヒューイはマーベリックに声をかけて、自分も父を亡くしたが、復讐をしても気は晴れない、幸せに暮らせと助言する。一方でブッチャーはライアンをバーに連れて行き、ホームランダーに復讐するのがお前の運命だと告げる。清々しいほどに真逆の発想だ。
ホームランダーを電話で呼び出し、ウイルスを浴びせてホームランダーもブッチャーもライアンも死ぬ、というのがブッチャーの提案だった。死んだ父親が望むであろうことをしろというのがヒューイの言葉だったが、ブッチャーは、そんなこと死んだ母親は望まないだろうが、これが正義だと言い切る。「犠牲によって世界を救えるのはお前だけだ」と。
ブッチャーはライアンの服に追跡装置を忍ばせると、先日父を殺したと明かす。悲劇が起きる前にやるべきだったと語るが、ライアンからすれば、今はブッチャーこそがその悲劇を起こそうとしている“父”ではないか。だからライアンは「僕もいつか父親みたいになる?」と不安を抱いている。
それにライアンは、自分の力で母ベッカと育ての親であるグレースを殺してしまっていた。その事実をブッチャーは否定することもなく、自分たちのような能力者がいなければ世界はもっと平和な場所になると言い切るのだった。
テスラのサイバートラックでV1の捜査を行うディープとブラック・ノワール。後部座席にはシンディと、『ジェン・ブイ』シーズン2に登場した犬のような能力を持つドッグノットが乗っている。シンディの意味不明な経歴を聞き流しつつ、一行は近くにいたキミコとフレンチーの前を通っていき、エドガーの秘密基地に迫っていることが示唆されている。
キミコはV1を手に入れて長生きすることに希望を抱いており(V1は不老だけでなくワクチンとしての効果も期待できる)、将来的に3人の子どもと穏やかに暮らせる家で暮らしたいという望みを明かす。状況が変われば、条件が揃えば、人は新しい希望を持つことができるのだ。
エドガー教授の講義
MMたちは、資料に頻出する「フォート・ハーモニー」という言葉が、ヴォート博士の働いていた極秘の陸軍病院であることを知る。シーズン5でなんだか頼りなかったMM、第5話ではしっかり者に戻っている。
そこにディープらが到着するが、ゾーイは小学校へ向かったキミコとフレンチーのバンにこっそり乗り込んでいた。ゾーイはブッチャーに復讐するつもりだったのだが、そこにいたのは父サミールで、二人は感動の再会を果たす。
ゾーイは生きており、ニューマンを殺したのはブッチャーだったと知ったサミールは、ラボを破壊して立ち去ろうとする。ウイルスの存在は娘のゾーイの命すら脅かしてしまうからだ。
フレンチーは銃を向けるが、キミコは「私たちみたいにしたくない」とそれを止めたのだった。キミコとゾーイは同じ能力者というのもあるが、キミコは目の前で親を殺されて声が出なくなった自分の過去をゾーイの未来に重ね合わせたのだろう。
一方、エドガーはMMと高級葉巻で一服。なんだか親子のようで、エドガーもヴォートと戦った弁護士であるMMの父を認めていたことも明かされる。それでも、エドガーはMMたちが「不滅のもの」と戦っていると指摘する。
ヴォートもホームランダーも敵わない、利益と損失、需要と供給、そして通貨の流れ。つまり経済そのものであり、経済合理性や資本主義とも言い換えることができる。思うにエドガーは、経営者の中でもマルクスの『資本論』や新自由主義の原典を読み、経済学を熟知しているタイプの経営者だ。資本主義を批判的に分析した書物さえ“説明書”として読み、構造を理解しているのだろう。
さらに芯を食っているのが、セブンを潰してもヒーローに代わり別のものが台頭するという指摘だ。スーパーヒーローブームがひと段落し、『ザ・ボーイズ』自体も最終局面を迎えている今だからこそ説得力のある言葉だ。どうせこの波が過ぎ去っても、また別のものが現れ、人々はそれに熱狂するのだ。
エドガーはスーパーヒーロー問題が片づけばヴォートに復帰する心づもりがあるようで、MMは心底呆れた上で、その日が来たら自分も役割を果たすと、エドガーを殺すことを宣言。それまでは共闘だ。最近おとなしかったエドガーじいさんの嫌な部分を改めて見せてくれる、良いシークエンスだった。
親になれない面々
ホームランダーは、V1の捜索とV1再現の実験のためにキャンプの囚人を使うことをシスター・セージに提案。黒人であるシスター・セージにはタスキギー実験が脳裏をよぎったのか、一瞬暗い表情を浮かべているように見えた。
一方、自分の母乳が出なくなったことでホームランダーがミルクを飲んでいるのを見かけたファイアクラッカーは、父ソルジャー・ボーイにアプローチ。謎の銃自慢を経てベッドを共にすることになる。
ファイアクラッカーは、ホームランダーから“ママ”のように扱われていることに不満を抱いていた。一方でソルジャー・ボーイは、ホームランダーが自分を父として敬っていないと考えている様子。この二人のやりとりを見ても、『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話は擬似的なものも含めて家族関係がテーマになっていることが分かる。
ブッチャーはライアンにテラーを愛でさせている。なんかこういうところで人間らしさを見せるから完全には憎めない、ブッチャーの人たらしぶりが出ている。ところが、ここでブッチャーはサミールがウイルスを破壊してゾーイと逃げたことを知る。
ウイルスを失ったブッチャーは、ライアンには一旦作戦を中止することを告げるが、「今やらないと世界が終わる」と主張するライアンとは決裂してしまう。だが、フレンチーがいつウイルスを再現できるか分からないというのが実情だ。ライアンはライアンで死ぬ覚悟を決めたのにハシゴを外れた気持ちになったのだろう。
連鎖を断ち切るには
地下シェルターにいるヒューイたちは、透明人間のマーベリックにハロタンの手榴弾を地上のディープのもとまで持っていかせるという作戦に。ここでマーベリックを気にかけるヒューイに対し、アニーはやめるよう警告するが、ヒューイは「殺した数だけその子どもに復讐される」として、この連鎖を断ち切る努力をしないといけないと主張する。
アニーがヒューイを評価したのは、「連鎖を断ち切る」と言っても、何もしないということではなく、積極的に行動し、対話することで連鎖を断ち切るという姿勢を持っていたからだ。断ち切るための努力がなければ、真の解決は目指せない。
ところが、マーベリックの存在は犬のような嗅覚を持つドッグノットによって嗅ぎつけられてしまう。マーベリックはマンゴー・サンダーのボディースプレーを身体に振っていたからだ。
ここでマーベリックは、ディープから父を殺したのはホームランダーではなくブッチャーの仲間だと知らされる。透明な目から涙だけが流れているのが分かる(なぜ涙は見えるのかは分からない)。そしてマーベリックはディープにシェルターのパスワードを教えたらしく、ディープたちの侵入を許したのだった。
逃げようとするヒューイたちだったが、ここでエドガーは自分だけ逃げるためにドアを閉めてしまう。ところがエドガーはすぐにブラック・ノワールに連れ去られたのだった。しかもディープはエドガーとノワールをハロタンで眠らせ、手柄を独り占めするためにノワールを捨てて車を出してしまった。何をやってるのかこの人たちは。
シェルターでは、ドッグノット vs スターライト&MM、そしてヒューイ vs マーベリックの戦いが繰り広げられる。ヒューイはトランスルーセントを殺したことを認め、自分の父も殺したと認める。ヒューイの父ヒューは認知症でVのパワーを暴走させたために殺さざるを得なかったのだが、マーベリックが言う通り、字面だけ読むと本当にヤバい一般人である。
ヒューイは、セブンに恋人を殺されたという背景はあるものの、トランスルーセントを殺したことは後悔しているし間違っていたと認める。シーズン1でブッチャーに唆されたあの戦い、あの決断のしっぺ返しがファイナルシーズンでやってくるとは。
シーズン1以来となる透明人間戦、そこにやって来たシンディが殺したのはマーベリックで、そのシンディの首をアニーが折って決着。だがアニーはマーベリックではなくヒューイが殺されたと思い、強いショックを受けてしまっている。
ライアン vs ホームランダー
プラネット・ホームランダーに改装中のプラネット・ヴォートは、シーズン2でホームランダーとストームフロント、ライアンが訪れていた場所だ。ここで再会を果たしたライアンとホームランダーだったが、ホームランダーはV1で永遠の命を得るから後継者はいらなくなったと告げる。
自由に生きろと言うのだが、ライアンは、ホームランダーがベッカに性的暴行を加えたことを許すつもりはなかった。ホームランダーは合意の上だったと主張するが、ライアンは超聴力で鼓動の早さを読み取り、嘘をついていることを見抜く。
二人は初めて本気の親子喧嘩に突入していくが、ホームランダーは「ママが迫ってきた」「結果としてお前が生まれた」と典型的な言い訳を並べていて本当に酷い。ライアンはなかなかの強さを見せたが、ホームランダーは文字通りマウントを取ると、馬乗りになってライアンを殴り続けるのだった。
ピンチは脱したザ・ボーイズだったが、ウイルスは全滅、ヴォートはエドガーを得てV1に近づいている。フレンチーがブッチャーのスキャナーを使って読み取った黒塗り資料の文字は、1963年にフォート・ハーモニーの近くで胸部が引き裂かれボーイスカウトの死体を発見したという内容だった。
『ジェン・ブイ』シーズン2でゴドルキン博士が自らにVを打ったのが1967年のことで、この時、Vはまだ未完成とされていた。もしゴドルキンが接種したのがV1だった場合、ゴドルキンの周辺からV1が出現する可能性もあるだろうか。
一方、アニーは一瞬だが“ヒューイの死”を体験し、ヒューイが死んだら立ち直れない、一人の方がいいとして飛び去ってしまう。アニーはヒューイを愛していて、善良な人間だと思っているからこそ、自分と同じ戦いを強いるわけにはいかないと考えているのだ。
ライアンの返り血を浴びたまま、部屋で呆然とするホームランダーの前に、ディープはエドガーを連れてくる。殺されるかとも思ったが、ホームランダーは話が山ほどあるとして、優しくエドガーを抱きしめるのだった。相変わらず対人の情緒が不安定すぎる。
そして、ブッチャーがライアンのもとに着いた時には、ライアンは瀕死の状態だった。それでも、最後に少し動いたので生きているのだろう。エンディングはボブ・ディラン「In My Time of Dyin’」(1962)。資料にあった1963年の前年に発表された曲だが、元は黒人霊歌の曲で、ボブ・ディランがカバーしている。「私が死の淵にあっても、嘆いたり取り乱したりしないでほしい」と、バッドエンドになった『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話にピッタリ(?)な楽曲となっている。
『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話ネタバレ感想&考察
世代間対立と反面教師
『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話では、親殺しと復讐、そして世代間対立がテーマになっていた。現実の世代間対立は『ザ・ボーイズ』のように分かりやすい暴力ではなく、社会課題を後世に残してしまったとか、誤った政策を推進してしまったとか、責任の所在がわかりづらい形で立ち現れる。
前の世代の人間に必要なことは、その責任を認めながら、歴史が繰り返されることを避けるにはどうすればいいかを、次の世代の人々に伝えていくことなのだろう。そうしたマクロな話をミクロなストーリーに落とし込んでいるのが『ザ・ボーイズ』の面白さだ。
一方でホームランダーは、そうして老いて次の世代にバトンタッチする際に直面する課題と向き合おうとせず、永遠の命を得ようとする。息子に自由に生きろと言い、問われた責任について嘘をつきはぐらかそうとする。そして、暴力によって全てを片付けようとするのだ。
このホームランダーの幼稚さは、常に自分が主人公でありたい、世界の中心でありたいという欲望に根ざしている。だがブッチャーもまた、対話によって解決するのではなく、自分諸共破滅させるという極端な道を突き進んでいる。
矮小な個人主義のホームランダー、アナキズムのブッチャー、そしてキャピタリズムのエドガーと三者三様だが、ザ・ボーイズメンバーがオルタナティブな道を提示できるのかどうかに注目したい。その観点では、今回MMが復活してて良かった。
誰がゲームチェンジャーになる?
なんとなく、ライアンとゾーイは年齢的に大学を舞台にしたスピンオフ『ジェン・ブイ』に合流していくのだろうと思っていたが、『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話を見るに、特にライアンは『ザ・ボーイズ』を生き延びれるかどうかが怪しくなってきた……。“ホームランダーの息子”として葛藤を乗り越えてヒーローになっていくライアンの姿が見てみたいが……。
ブッチャーはライアンを犠牲にするつもりで、もう完全に一線を越えているが、そうでなければホームランダーとは戦えないと思ったのだろう。一方で、ライアンが単独行動に出ることを見越して発信機を取り付けてもいた。ライアンはあくまで囮で、ブッチャーは確実にライアンも殺すというつもりではなかったのかもしれない。
気になるのは、ブラック・ノワールだ。シーズン5になって全然喋らなくなったノワールは、中身が『ジェン・ブイ』のポラリティになっているということはないだろうか。『ジェン・ブイ』シーズン2では2代目ノワールが俳優としてのポラリティに心酔していることが明かされていた。
ただ、ノワールの中身がポラリティだったとして、ディープによってシェルター前に捨てられた今、ザ・ボーイズと合流してもヴォート内部の情報を提供するくらいしかできないはず。ザ・ボーイズもヴォートもV1がまだ存在しているかどうかを調査しているというのが現在の状況で、誰がゲームチェンジャーになるのかは読めない。
『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話では、『ジェン・ブイ』シーズン2の流れからエドガーが登場したが、ポラリティに限らずそろそろ『ジェン・ブイ』の中心メンバーが登場してもおかしくない。飛び去ったスターライトはマリーらと合流するかもしれない。
戦いは振り出しに戻った感じもあるが、ファイナルシーズン前半の折り返しとなる第4話では、どんな展開が待っているのか。引き続き目が離せない。
ドラマ『ザ・ボーイズ』とスピンオフドラマ『ジェン・ブイ』はAmazonプライムビデオで独占配信中。
『ザ・ボーイズ』原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。
『ザ・ボーイズ』シーズン5第2話の解説&考察はこちらから。
シーズン5第1話の解説&考察はこちらから。
【ネタバレ注意】『ジェン・ブイ』シーズン2最終回の解説&考察はこちらから。
『ザ・ボーイズ』シーズン4最終回で残された11の謎についてはこちらの記事で。
『ザ・ボーイズ』シーズン4最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。
