シーズン5第2話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』功利主義とリベラリズム、善の心と配信の広告 あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン5第2話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』功利主義とリベラリズム、善の心と配信の広告 あらすじ&考察

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『ザ・ボーイズ』シーズン5第2話はどうなった?

Amazonプライムビデオのドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-) より、最終シーズンとなるシーズン5が2026年4月8日(水) より配信を開始した。ガース・エニスとダリック・ロバートソンの原作コミックをベースにした人気シリーズがいよいよクライマックスを迎える。

『ザ・ボーイズ』シーズン5は、初週に第1話と第2話が同時配信されている。今回はシーズン5第2話をネタバレありで解説し、考察していこう。以下の内容はネタバレを含むので、必ずプライムビデオで本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン5第2話の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン5第2話ネタバレ解説&考察

メガチャーチとは

ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン5第2話の監督を務めるのはシーズン4第5話の監督を務めたシャナ・スタイン。脚本はこれまでにもシーズン4最終回の共同脚本を含む複数話に携わり、スピンオフドラマ『ジェン・ブイ』(2023-) でも2シーズンに参加しているジェシカ・チョウが担当している。

前話のラストでホームランダーに一矢報いて死んだAトレインは、ヴォートによって感動的に追悼されていた。表向きにはAトレインはシーズン4から行方不明ということになっており、ホームランダーに立ち向かった反逆者がいたという事実を隠蔽する動きだ。

黒人であるAトレインの追悼はステレオタイプなゴスペル合唱団と共に行われる。場所はメガチャーチと呼ばれる2,000人以上収容が可能な教会で、中絶反対、伝統的な家族観という思想を持つ福音派プロテスタント系に多い(巨大施設なのでリベラル層が多い都市よりも郊外に作りやすいという背景もある)。

前回初登場となったオー・ファーザーは、Aトレインを殺したのはスターライターであり、スターライターを「イゼベル」と呼んでいる。イゼベルは聖書に登場する古代イスラエルの王妃で、遺教を持ち込んでユダヤ教の預言者を迫害した人物として知られる。

そしてオー・ファーザーの説教(スピーチ)は、ラッパーとしても活躍するダヴィード・ディグスが見事なスキルを披露している。メガチャーチの説教は大衆を相手にすることから、パフォーマンスによりがちで、感情的で自己啓発的な内容になりやすい。同時に、この場面ではコールアンドレスポンスを取り入れる黒人教会の流れも見受けられる。

オー・ファーザーのスーパーパワーの力もあるのだろうか、教会全体が盛り上がりを見せ、よく分かってないディープもなんとなく立ち上がらざるを得ない状況に。その中でも浮かない顔をしていたホームランダーにも光が差し、「私のかわいい子」という声が聞こえる。こうした霊的な体験が信仰心を強化していくのだが、『ザ・ボーイズ』ではスーパーパワーという超自然的な力がそれとうまく組み合わさっている。

ブッチャーのウイルス開発

ザ・ボーイズはペンシルベニアのエリー郡にある小学校へ。ここはブッチャーが拠点としている場所で、ラジカセから流れるのはイギリスのパンクバンドであるチャンバワンバの「Tubthumping」(1997)。「打ちのめされても、また立ち上がる」という再びフルメンバーで集合したザ・ボーイズを象徴するような歌詞が唄われている。

そして登場したのは、シーズン4でウイルス開発をさせられていたサミール。ヴィクトリア・ニューマンの夫で、ブッチャーにウイルス開発をさせられていたが、今もブッチャーのウイルス開発を助けているようだ。

ブッチャーはサミールの妻ヴィクトリアを殺した張本人だが、ブッチャーはニューマンとゾーイがホームランダーに殺されたことにして、対ホームランダー用のウイルス開発をサミールにさせていたのである。ヒューイたちがラボに入る前に「余計なことを言うなよ」と釘を刺されたのは、嘘を突き通す必要があったからだ。

なお、ゾーイは義理の祖父であるスタン・エドガーに保護されていることが『ジェン・ブイ』シーズン2で明らかになっている。サミールがブッチャーの嘘を知るとすれば、ゾーイと再会を果たした時だろうか……。

ブッチャーによると、ウイルスは完成しており、必要なのは実地テストだけだという。その被験体に選ばれたのはティーンエイジ・キックスのロック・ハード。ティーンエイジ・キックスはDCコミックスのティーン・タイタンズを元ネタにした若手ヒーローのチームだ。

功利主義とリベラリズム

スターライターが事件を起こす前に逮捕できる「自由のための自由法」が施行される中、ブッチャー以外のザ・ボーイズメンバーはウイルスを使うかどうかで分裂していた。シーズン4第6話でサミールは、ホームランダーを倒せるほど強いウイルスは空気感染するほど高い感染力を持つと警告している。

アニーは「能力者1万人の犠牲で80億人を救える」と主張。この考え方は、“最大多数の最大幸福”を推進する功利主義の考え方だ。意外に思えるかもしれないが、功利主義は感情よりも理論に重心を置くリベラル層と親和性が高い。

例えば、中絶反対の思想は理論ではなく感情あるいはキリスト教的道徳観によって支えられるが、理論的に考えれば中絶ができることで不幸にならずに済む人が多く存在することは明らかだ。一見冷徹にも見えるアニーの態度は、冒頭で感情に支配されたメガチャーチの面々との対比となっており、アメリカのリベラルと保守の姿を反映したものと考えることができる。

だが、そうした構図や思想を一旦置いておいて、切り捨てられる存在が、ヒューイにとってのアニーのように愛する人であったり、キミコのように苦しみを知る当事者本人であるとき、見え方は変わってくる。マクロに見れば「世界にとって良いこと」が、ミクロに見れば「大切な人/自分を傷つける思想」になるのだ。一方でアニーにも、個人で抱える辛さがあるのだけれど。

ヒューイとアニーはようやく二人で話をする時間を得る。この一年間について、アニーは字幕では「リゾートにいたようなもの」、吹き替えでは「エプコットに隠れてた」と言っているが、エプコットはフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートにあるディズニーパークの一つの名前だ。

ヒューイは、アニーがブッチャーに賛成するようになるなど、この一年で「変わった」と思っていた。それでもヒューイはその変化も受け止めるとして、二人で解決していくことを約束するのだった。

キミコはシーズン4第7話で逃亡しようとしたサミールに足にウイルスを打たれて足を切断している。ウイルスの苦しみを知っているキミコは、そのウイルスを使うことに賛同できないのだ。それでもフレンチーはウイルスの全てを知る必要があるとして、一方でキミコと離れることにはさせないと約束している。

二組とも考えの違いを抱えながら、それでも解決に向けて取り組んでいこうという着地点だ。キミコとフレンチーが愛し合う時に流れる曲はINXS 「Never Tear Us Apart」(1987)。タイトル通り、「私たちを引き裂くことはできない」と歌われている。

ホームランダーの秘策

一人メガチャーチに残るホームランダーは、Aトレインの棺に話しかけていた。シーズン1に登場したAトレインの恋人を「ポップファング」と呼んでいるが、実際には「ポップクロウ」のことで、「Claw(爪)」を「Fang(牙)」と間違えている。

ホームランダーはAトレインが「裏切った」として責めつつ「I loved you」とまで言う情緒不安定ぶり。ただ、ホームランダーはこうして自分にとって骨のある奴ほどすぐ死んでしまう(殺してしまう)というある種の矛盾を抱えながら生きているということも事実だ。だからなかなか死なないブッチャーに固執するということでもあり。そして最強ゆえの孤独を感じるホームランダーは、ついに父ソルジャー・ボーイのカプセルの扉を開くのだった。

ソルジャー・ボーイはCIAで2年間冷凍睡眠状態だったという。米政府がホームランダーの支配下に入り、CIAが隠していたソルジャー・ボーイを発見することができたのだろう。

シーズン3ではブッチャーはホームランダーを倒すためにソルジャー・ボーイと手を組んだ。しかし、ソルジャー・ボーイがホームランダーごとライアンを殺そうとしたため、ブッチャーはソルジャー・ボーイを相手に戦っている。

ホームランダーはソルジャー・ボーイにブッチャーを捜してほしいと”指示”するが、そこはお父さんのソルジャー・ボーイ。簡単にはホームランダーの下にはつかない。だが、ホームランダーが求めていたのはまさにこの緊張感だったはずだ。

ホームランダーは、「ロシアのスパイ」と思われているソルジャー・ボーイの名誉を回復するという条件で協力を取り付けることに。ドラマ『ジェン・ブイ』シーズン1第6話では、ヴォートタワーでの事件後、ヴォートがソルジャー・ボーイはロシアのスパイだったと嘘のニュースを流していたことが示唆されている。

ソルジャー・ボーイがホームランダーを認めず殺そうとした過去について、ブッチャーを見つければ水に流すとして、ホームランダーは修復された盾を渡す。この盾はV24を接種したブッチャーの目からビームで破壊されていたものだ。

配信に広告を入れよう

ティーンエイジ・キックスがSNSで「カロリー0」の「ダイエット・ウォーター」などの案件の縦動画を配信している一方、ディープは肛門をUV照射する器具「ディープ監修シグマ・ソラリアム」の横動画のCMに出演している。世代の違いで仕事の内容も変わるのがリアルだ。

そしてザ・ボーイズは被験体のロック・ハードがいるキックス・クリブに辿り着くが、あまりに巨大で移動させることができず、その場でウイルスに感染させることに。ロック・ハードが目をキョロキョロさせているのは、視線でタイピングを行う視線入力の装置を使っているからだ。

ヴォートタワーでは、スターライトへの賛同やホームランダーへの批判をSNSで抽出し、スターライターと判断して逮捕するという案が、シスター・セージから大統領のスティーブン・カルフーンにプレゼンされている。

この案も笑えないのは、現実でも米政府は日本人を含む観光客に過去5年のSNSアカウントの申告を義務付けたからだ。2026年3月30日からはSNS審査の対象が大幅に拡大され、学生や専門職ビザに加えて、婚約者や配偶者、宗教活動家などもビザ取得時にSNS審査が必要となっている。なお、すべての対象者はSNSをいわゆる“鍵アカ”ではなく「公開」の設定に変更しなければならない。

収容キャンプが3倍必要になり、お金もかかるこの案について、カルフーンは「親しい隣人の逮捕や増税には反発する」と、意外と冷静な分析をしている。他人の心の声でなくなぜか自分の心の声が聞こえるアシュリー副大統領も、「逮捕者もヴォートの顧客では?」と芯を食った問いを投げかける。外国人労働者も労働者であり、対立政党の支持者も米国人であり、増やした関税を支払うのは米国内の消費者だ。

売り上げが下がれば配信に広告を入れるというセージのセリフは、英語で「selling ads on Vought Plus(ヴォートプラスに広告を入れる)」と言っている。『ザ・ボーイズ』もそうだが、プライムビデオに広告が入るようになったことを皮肉るセリフだが、ヴォートプラスの名前の元ネタであるディズニープラスも米国では広告入りプランが展開されている。

アシュリーの心の声はアシュリーに「あなたチェ・ゲバラみたい」と、発言したことを称賛。キューバ革命の英雄チェ・ゲバラの名前を挙げている。シーズン4では、チェ・ゲバラのTシャツを着てデモに参加するアシュリーの昔の写真が登場している。

そこに現れたのはホームランダーとソルジャーボーイ。反逆罪で有罪になっているソルジャーボーイに恩赦を与えるよう大統領に告げる。通常、大統領は「ミスター・プレジデント」と呼ぶべきなのだが、ホームランダーは某国の首相のように大統領をファーストネームで呼んでいる。

しかも飲み物まで入れさせるのだが、「いつものミルクを?」と聞くカルフーンに、ホームランダーはお父さんの前で格好をつける。ソルジャーボーイと同じくウイスキーベースのカクテル、マンハッタンを頼むのだ。以前はホームランダーを幼稚として認めていなかったソルジャーボーイも、大統領に奉仕させる姿を見て、印象が変わりつつあるようだ。

ザ・ボーイズの苦悩

溶岩を“発射”するロック・ハードを前に、アニーはフレンチーにセントルイス、ポートランド、サクラメント、ボイシーの支部が壊滅したと明かす。「彼らの意思だ」と庇うフレンチーだったが、アニーは強者である自分が人々に命をかけさせ、「墓に導いた」という事実に苦しんでいた。優しいヒューイはそれすらも受け入れるだろうし、ヒューイにも明かせずにいる。その罪悪感が自分が死んでも構わない、自分がリスクを背負ってでもウイルスを使うという結論に至らせたのだ。

死線を越えて生きてきたフレンチーは、「罪悪感に浸る方が楽だ。毎日起き上がって前に進むしかない」とアドバイス。「それを拒むのは死者への冒涜」と語るが、イスラエルによるパレスチナ侵攻に関してイスラエル寄りの立場をとる俳優のトメア・カポンにこれを言われてもモヤるところだ……。

一方、ワインをラッパ飲みしているMMは、壁に飾られたAトレインの写真に献杯する。原作コミックではAトレインはティーンエイジ・キックスの出身で、ドラマでもこの設定が取り入れらたものと思われる。MMが部屋に残っていたカウンテス・クロウを捕えると、アニーはここでも非情にカウンテス・クロウもウイルスの被験体とすることを決めるのだった。

住宅街ではティーンエイジ・キックスによる“スターライター”の検挙が進められていた。この数ヶ月、SNSで何度も見たICEによる居住区の“パトロール”と米国市民の逮捕そのものだ。もはや『ザ・ボーイズ』が現実を後追いする形になってしまった。

ホームランダーはシスター・セージに相談なくソルジャー・ボーイを復活させたことについて問われていたが、ウイルスを持っているブッチャーにぶつけるつもりであったことにする。父親だから起こしたという本当の理由を否定するが、清々しいくらい嘘が下手だ。だが、心の中ではせっかく復活させたソルジャー・ボーイが死ぬかもしれないとドキドキしている様子。それだけブッチャーを買っているということでもあるのだが。

ヒューイたちがラボに戻ってウイルスを受け取る一方で、キックス・クリブのアニーたちはロック・ハードに息をさせようともがいている。MMは捕まったカウンテス・クロウとの対話を試みる。MMの娘はティーンエイジャーになったと話しているが、あのジャニーヌはもうそんなに大きくなったのか。確かに、前シーズンでもすっかり大きくなっていたライアンと同じ歳くらいだった気がする。

MMは、カウンテス・クロウが10羽いたカラスのほとんどが同じティーンエイジ・キックスのシーラインに食べられこと、売り上げの6割をヴォートに取られていることを指摘。MMが見つけたプロザック、ウェルブトリン、レクサプロは、いずれも抗うつ剤だ。カウンテス・クロウはついに「家に帰って親に会いたい」と本音を漏らす。ザ・ボーイズの中で唯一子どもがいるMMだからできる手の差し伸べ方だ。

ヒューイとブッチャーはまた意見を対立させている。ブッチャーはAトレインの死を喜べと言うが、ヒューイはAトレインはヒーローだったと反論。ブッチャーはそれを「ヤワな考え」だと切り捨てるのだ。ブッチャーは“怪物”になり、父に成り変わったようだが、ヒューイにはまだ弟のレニーの姿を重ねているのだろうか。

ヒューイはブッチャーがアニーを死に導くとして、字幕では文字数の関係もあってか「僕が守る」となっているが、英語では「I won’t let you do it.」と言っており、ブッチャーを阻止するという意味合いが強いと思われる。ヒューイが「アニーを守る」というコンセプトはシーズン3で否定されている。

そこに現れたのはソルジャー・ボーイ。ホームランダーの言う通り、追跡能力に長けている。ブッチャーは、これは好機とソルジャー・ボーイと向き合うと、ホームランダーがウイルスについてソルジャー・ボーイに隠していると指摘。また捨て駒にされたのだと揺さぶる。ブッチャーはソルジャー・ボーイと相性が良い。

100年前のレイシストでセクシストのソルジャー・ボーイは、駆けつけたシーラインとジェットストリークに、「ジャップとゲイ」を追うよう指示。キミコとヒューイのことだ。ザ・ボーイズはソルジャー・ボーイとシーライン、ジェットストリークをキックス・クリブに誘き出すと、ウイルスを取り出す。

ロック・ハードは顔が崩れ落ち、完全に死んだことが分かる。ソルジャー・ボーイはやはり能力が強力だからか反応が遅かったが、発疹が出て倒れ込む姿は確認できた。ウイルスは完成していたのだ。

そして、MMがティーンエイジ・キックスのカウンテス・クロウを逃していたことも明らかになる。つまり目撃者が生きているということになるが、吉と出るか、凶と出るか……。

アシュリーの能力は…

メキシメルトを食べているシスター・セージ。メキシメルトとはメキシカン・ファストフードの大手チェーンであるタコベルの限定メニューだ。メキシコ(Mexico)と溶ける(melt)チーズから「メキシメルト」と名付けられたラップで、アメリカではたまに限定復活するなつかしメニューに分類される。

アシュリーはスターライターを検挙する横暴に抗議し、セージなら話が通じるはずだと対話を試みるが、「あなたに思考は読めない」と突き放されてしまう。そしてアシュリーが車に戻ると、ずっと聞こえていた声が後頭部にできたもう一つの顔から発されていたことが明らかになる。シーズン4最終話でアシュリーに起きていた変化の正体はこれだったのである。

アシュリーが「サイキックの腫瘍」と呼ぶこの後頭部は、かなり真っ当なことを言う。無実の人が捕まっているのにセージをのさばらせるのかと問うなど、アシュリーの善の心を反映しているようなのだ。

アシュリーの学生時代の話は、英語では固有名詞がかなり出てきている。曰く、アシュリーは学生時代、ファミレスチェーンのフレンドリーズの裏で、ジャミロクワイのライブチケットを持っていたダニー・トラクテンバーグに指で性行為をさせたが、結局ライブに連れて行ってもらったのはミリアム・アップルバウムという別の女性だったという。

ダニー・トラクテンバーグは、2025年公開の映画『プレデター:バッドランド』が高い評価を受けたダン・トラクテンバーグ監督のネームドロップだろう。実はダン・トラクテンバーグは、『ザ・ボーイズ』の製作総指揮を務めており、シーズン1第1話ではエピソード監督も担当している。

「へつらったから生き残れた」「Aトレインと逃げるべきだった」と言い合う二人は、まさに天使と悪魔の声。後頭部が引用する「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき」は、ドイツの牧師マルティン・ニーメラーの言葉で、自分は関係者じゃなかったからと見て見ぬふりをしていたら、いざ自分に火の粉が降りかかった時に誰も声をあげてくれなかった、という非常によく知られている詩の一部だ。

後頭部は、アシュリーがマルティン・ニーメラーの詩もビルケンシュトックのドイツブランドのサンダルも陶芸も好きだったのにね、と、アシュリーが知的で文化的な人間だったことを思い出させる。世界を良くすることが夢だったというが、アシュリーは努力はしたが無理だったと反論する。

政府の半分は反ホームランダーで、抗うことができると後頭部は助言するが、アシュリーは自分は「ただの」副大統領だと言い、英語では「私はリーダーじゃない」とまで言っている。能力を正当に評価されにくい女性やマイノリティが陥りやすい、インポスター症候群(自分に実力はないと過小評価してしまうこと)に近い症状が出ている。

後頭部は、私と一緒なら世界を変えられるとまで言うが、アシュリーはウィッグでその口を塞いだのだった。自分の中の善なる声——実はアシュリーはものすごいスーパーパワーを手に入れたのかもしれない。

ラストの意味は?

ウイルスは人間には感染しないことが分かり、ザ・ボーイズは次はホームランダーだと息巻く。一方のフレンチーはキミコに無人島へ逃げようと提案するが、キミコは自分たちが奪った命への償いとして、留まって戦うべきだと言う。もしかしたらキミコは、フレンチーがそう言ってくれるだけで良かったのかもしれない。

ヒューイもアニーに「死なせないよ」と言い、アニーが倒れれば二人分戦うとした上で、「だからブッチャーにはなるな」と告げる。ヒューイはアニーまで怪物になってほしくはないのだ。つまりそれはブッチャーのことは諦めていると言うことでもあるけれど……。

そしてブッチャーのもとには愛犬テラー! テラーはシーズン2以来の登場だろうか。ブッチャーはテラーをおばのジュディに預けており、シーズン2第5話では、ママ(レベッカ)を助けてくるから待っててくれと語りかけていた。シーズン5第1話でイギリスによった時に連れてきたのだろうか。ここに来てブッチャーの柔和な表情が見られるのは、ちょっと泣ける。

ホームランダーは、せっかくソルジャー・ボーイを復活させたのに死んでしまい、みんなが私を置いていくと泣きべそをかいていた。第1話のAトレイン、そして第2話のソルジャー・ボーイと、シーズン5は一人ずつ死んでいくのかも……と思ったその矢先、遺体袋に入ったソルジャー・ボーイが起き上がったところで『ザ・ボーイズ』シーズン5第2話は幕を閉じている。

エンディングは、チャンバワンバ「Tubthumping」が再び使われており、序盤でザ・ボーイズを表現する歌詞に聞こえていた「打ちのめされても、また立ち上がる」が、ソルジャー・ボーイを表現する歌詞に聞こえるというニクい演出となっている。

『ザ・ボーイズ』シーズン5第2話ネタバレ感想&考察

ソルジャー・ボーイは生きている?

『ザ・ボーイズ』シーズン5は最終シーズンということで、なんとなく毎話キーキャラクターが一人以上死んでいくのが『ザ・ボーイズ』っぽいとも思ったが、第2話のラストではソルジャー・ボーイが起き上がるというサプライズが待っていた。ソルジャー・ボーイが生きているなら、今後は二つの展開が考えられる。

一つ目は、ウイルスはやはりソルジャー・ボーイやホームランダーのような強力なスープスは殺せないということで、ウイルス制作が振り出しに戻るという展開だ。この場合、ウイルスについて情報を隠されてるというの事実だったと知ったソルジャー・ボーイは、ホームランダーと完全に敵対することになるだろう。

二つ目は、とはいえソルジャー・ボーイも瀕死状態で、ゾンビのようにフラフラしてウイルスをバラ撒いた上で死亡、パンデミックが始まるという展開である。どちらもありそうだし、ザ・ボーイズメンバーのことを考えるとどちらもあってほしくない気もする。

ヒューイはアニーが抱える自責の念を否定するでも受け入れるでもなく、ただブッチャーのようにはなってほしくないとだけ伝えた。ちょっと心配なのはMMだ。優しいのはいいけれど、任務中に酒も飲んでいるし、どこか頼りない感じがする。自暴自棄な感じになると、自ら犠牲になりかねない危うさも感じられる。

「変化」というのは『ザ・ボーイズ』シーズン5のテーマの一つのような気がするが、大事なのはどう変化するかということだ。今のところ、みんな特攻隊みたいなメンタルになっていそうで、行く末が非常にこわい……。『ジェン・ブイ』組のマリーらや、エドガーさん、ライアンの合流で流れが変わることに期待したい。

ホームランダーの憂鬱とアシュリーの善の心

ヴォート側では、ホームランダーの憂鬱がシーズン5の鍵になるだろう。全てが思う通りになったが満たされない。その穴を埋めるために、シーズン4最終回配信の時に示唆されていた世界侵略へと手を染めることになるのかもしれない(今その展開はなかなかきついが……)。

だがシスター・セージが言った通り、そんなことをしてもホームランダーは幸せになることができない。自分を満たしてくれる相手はブッチャーしかいないという事実を受け入れ、最後の決戦に挑むことになるのだろうか。

注目はやはりアシュリーで、あれよあれよと出世していったが、実は善なる心を抑圧し続けていたことが明らかになった。シーズン4のチェ・ゲバラTシャツの写真がここで繋がってくるとは。

権力を手にした政治家の善の心は、現実においても変革と平和の重要な要素になる。むしろ政治家が善くあろうとせず暴走すれば、ここまで世界はおぞましいことになると示しているのが現在の世界情勢でもある(もちろんそれを選ぶ市民にも責任はあるが)。

個々の物語と大きな流れと、相変わらずどちらも見逃せない『ザ・ボーイズ』。いよいよ幕を開けたファイナルシーズンもあと7週間。最後まで一緒に見届けよう。

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『ザ・ボーイズ』シーズン5第3話の解説&考察はこちらから。

シーズン5第1話の解説&考察はこちらから。

【ネタバレ注意】『ジェン・ブイ』シーズン2最終回の解説&考察はこちらから。

『ザ・ボーイズ』シーズン4最終回で残された11の謎についてはこちらの記事で。

『ザ・ボーイズ』シーズン4最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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