CGアニメの金字塔!
ディズニー・ピクサーだけではなく、アニメの歴史を語る上で外すことのできない名作として挙げられるのが劇場用長編映画として世界初のフルCGアニメーション作品である『トイ・ストーリー』(1995)だろう。『トイ・ストーリー』は子供たちに自由に生きているところは見られてはいけないが、子供たちの成長を助けたい、そんな思いを抱えたオモチャたちの冒険を描いている。
2026年には『トイ・ストーリー5』が公開されることが予定されているなど、一大フランチャイズと化している「トイ・ストーリー」シリーズ。多くのスピンオフ作品も制作されるなど、様々な展開が期待される「トイ・ストーリー」シリーズだがその原点である第1作『トイ・ストーリー』を観直してみるのはいかがだろうか。
本記事では、CGアニメの金字塔である映画『トイ・ストーリー』について解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容には映画『トイ・ストーリー』のラストのネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。
以下の内容は、アニメ『トイ・ストーリー』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『トイ・ストーリー』ネタバレ解説
オモチャのルール
アンディはどこにでもいる普通の少年。好きなことはごっこ遊び。その中でもお気に入りのオモチャが、古めかしいカウボーイのおしゃべり人形のウッディだった。オモチャたちのリーダーでもあるウッディも自分がアンディの一番のお気に入りだと誇りに思っていたが、それをアンディには伝えてはいない。
それには理由がある。オモチャは実は生きていて、自由に行動しているということを子供に知られてはいけない「オモチャのルール」が存在していたのだ。今日もカウボーイごっこで遊ぶアンディとウッディだったが、そこに暗雲が立ち込める。
それはアンディの誕生日プレゼントのことだった。今年もアンディの誕生日がやってきた。オモチャたちは新しい仲間が増えると大喜びしているが、ウッディは不安そうだ。何故ならば、アンディが新しいオモチャをお気に入りにして、ウッディがお気に入りではなくなるかもしれなかったからだ。
兵隊のオモチャのグリーンアーミーメンを偵察に行かせたところ、誕生日プレゼントとして最新のSF映画のオモチャのバズ・ライトイヤーが入っていた。アンディが観たという設定のSF映画は2022年に『バズ・ライトイヤー』としてCGアニメ映画化されている。
スペース・レンジャー、バズ・ライトイヤー
ウッディが懸念していた通り、アンディのお気に入りのオモチャはバズ・ライトイヤーに変わってしまった。部屋は宇宙飛行士をイメージしたものに変わっていく。アンディはウッディでカウボーイごっこ遊びはしなくなり、バズ・ライトイヤーで宇宙飛行士ごっこ遊びをするようになっていた。
自分のことをオモチャではなく、本物の宇宙飛行士だと思い込んでいるバズ・ライトイヤーは空を飛ぼうと試み、それが上手く行ったことでオモチャたちもバズ・ライトイヤーを慕うようになるように変わってしまう。ウッディは「かっこつけて落ちてるだけさ」と言うが内心では不安と不満を募らせていく。
ウッディがアンディだけではなく、仲間のオモチャたちの心も奪われてしまっている頃、新たな問題が浮上する。それはアンディが引っ越しするということだった。オモチャたちは引っ越しの準備で大忙しになる。アンディたちが荷造り終わりにピザ・プラネットに向かうとき、ウッディは邪悪なことを思いつく。
それは棚と壁の間にバズ・ライトイヤーを落してしまおうというものであった。RCカーを操作してバズ・ライトイヤーを突き落とそうとしたウッディだったが、失敗が巡ってバズ・ライトイヤーは窓の外に落ちてしまう。ウッディはRCカーの告発で「オモチャ殺し」の汚名を着ることになる。
邪悪な隣人シド
ウッディは自分を本物だと信じているバズ・ライトイヤーを助けるため、アンディのいるピザ・プラネットに向かう。バズ・ライトイヤーがUFOキャッチャーをロケットだと思い込んだことにより、2人はオモチャを破壊して遊ぶ邪悪な隣人の少年シドに捕まってしまう。このシドの家のカーペットは映画『シャイニング』(1980)のオーバールック・ホテルのカーペットと同じになっている。また、シドは『トイ・ストーリー3』(2010)でゴミ収集車の運転手として登場している。
シドは妹のオモチャを奪って首をもぎ、改造をするような不良少年だ。その部屋に閉じ込められたウッディたちはシドに改造されたオモチャたちに怯え、シドの拷問に苦しめられ、その愛犬のスカッドから逃げ回ることになる。バズ・ライトイヤーはスカッドから逃げる最中、テレビで自分のオモチャのCMを観てしまう。このオモチャ屋は『トイ・ストーリー2』(1999)に登場するアルのトイバーンだ。それでも自分はオモチャではないと信じるバズ・ライトイヤーは空を飛ぼうと階段から飛び降り、失敗して片腕がもげて心も折れてしまった。
心の折れてしまったバズ・ライトイヤーは使い物にならず、ウッディはもげた片腕だけ使って窓の向こうの仲間たちに向けて仲の良いふりをするがあっさりと露呈してしまう。それによってウッディは親友だったスリンキー・ドッグからの信頼も失ってしまう。更には改造されたオモチャたちにバズ・ライトイヤーの腕を奪われてしまった。
しかし、実は改造されたオモチャたちはバズ・ライトイヤーを治そうとしていただけだった。バズ・ライトイヤーも治り、脱出できそうになったのも束の間、シドのもとにロケット花火が届く。ロケット花火を縛りつけられたバズ・ライトイヤーは完全に生きる気力を失っていた。その頃、アンディはウッディとおそろいの帽子を持って寂しがっていた。
『トイ・ストーリー』ラストをネタバレ解説
オモチャだから宝物
スペース・レンジャーではないという重圧に押しつぶされてしまうバズ・ライトイヤー。このスペース・レンジャーに拘る性格は、映画『バズ・ライトイヤー』でも描かれており、オモチャのバズ・ライトイヤーの性格も映画の登場人物がモデルになっていることが考察できる。
そんなバズ・ライトイヤーにウッディは、アンディがバズ・ライトイヤーを大事にしている理由はスペース・レンジャーだからではなく、オモチャだからだと説得する。子供の傍に寄り添うオモチャだからこそ、バズ・ライトイヤーは大事にされているのだ。そう解説するウッディは自分がバズ・ライトイヤーに嫉妬していたことも打ち明ける。
それに心打たれたバズ・ライトイヤーは閉じ込められたウッディを救出しようとする。そのとき、窓の外に引っ越し用のトラックが見える。急がなければアンディと再会できない。焦る2人だったが、そこで寝ていたシドが起き、シドによってバズ・ライトイヤーが連れ去られてしまった。
ウッディはバズ・ライトイヤーが残された1人だけの友達だと語り、シドの改造されたオモチャに協力して貰えるように頼み込む。こうして、子供たちの味方であるはずのオモチャの復讐劇と救出劇がはじまった。ウッディたちは「オモチャのルール」を破り、二度とオモチャをいじめないようシドに釘を刺すのだった。
「かっこつけて落ちてるだけさ」
引っ越しのトラックを追いかけるウッディとバズ・ライトイヤー。協力しながら追いつきかけたが、シドの飼い犬スカッドにウッディが噛みつかれてしまう。それを止めようとしてせっかくトラックに飛び乗ったのにもかかわらず、スカッドに飛び掛かってウッディを助けるバズ・ライトイヤー。ウッディはそのようなバズ・ライトイヤーを救うためにRCカーを箱から取り出す。
RCカーをトラックから落とし、バズ・ライトイヤーを犬のスカッドから救うウッディだったが、他のオモチャの目から見れば「オモチャ殺し」でしかない。トラックから突き落とされたウッディはRCカーに拾われ、何とかトラックに追いつこうとするがRCカーのバッテリーが切れる。スリンキー・ドッグが命綱になるが、伸びきってしまい助けることができなかった。
ウッディとバズ・ライトイヤーは一発逆転をかけて、バズ・ライトイヤーの背中にガムテープで張り付けられたロケット花火に火をつける。それによってRCカーは急加速し、トラックに飛び込む。バズ・ライトイヤーとウッディは高く飛びあがり、ロケット花火が爆発する寸前でバズ・ライトイヤーが翼を開いて切り離し、空を滑空した。
ウッディはバズ・ライトイヤーを飛んでいると褒めるが、バズ・ライトイヤーは「かっこつけて落ちてるだけさ」と返すのだった。2人はそのままアンディの乗っている車に飛び込み、アンディに抱きしめられてオモチャとしてアンディを支えるのだった。
引っ越ししてから最初のクリスマスがやってくる。クリスマス・ツリーにはグリーンアーミーメンが隠れて、オモチャたちは新しい仲間は誰なのかと待っていた。バズ・ライトイヤーとウッディは2人で少し心配するが、プレゼントの中身は子犬だった。
『トイ・ストーリー』ネタバレ感想&考察
一大フランチャイズのはじまり
制作時間が4年以上かけられた『トイ・ストーリー』は、劇場用長編映画としては世界初のフルCGアニメーション作品である。そのため、『トイ・ストーリー』を抜きにしてアニメ、いや映画の歴史を語るのは不可能だろう。スティーブ・ジョブスも出資するなど、アニメ映画の技術の躍進にもつながった『トイ・ストーリー』はオモチャの価値というテーマをもとに一大フランチャイズとなった。
『トイ・ストーリー』は『トイ・ストーリー2』、『トイ・ストーリー3』、『トイ・ストーリー4』(2019)、そして現在制作が進行中とされている2026年公開の『トイ・ストーリー5』など多数の続編が制作されている。その他にもアンディがバズ・ライトイヤーのオモチャを購入するきっかけとなったという設定の映画『バズ・ライトイヤー』など、スピンオフ作品も多数存在する。
現在も長編と短編をあわせてどこまでも広がり続ける「トイ・ストーリー」の世界。それはまるで子供のごっこ遊びのようなもので、キャラクターというオモチャをもとに様々な監督や脚本家がストーリーをつくり、空想の世界を広げているのだ。
子供とオモチャの関係
「トイ・ストーリー」シリーズでは一貫して子供とオモチャの関係が描かれている。子供はオモチャを通して様々なことを学び、そして最後は卒業していく。それをオモチャの視点から描くことで寂しいながらも、「トイ・ストーリー」シリーズは親のように子供の巣立ちを見守る気分にさせてくれる。
そのため、オモチャの持ち主も成長していき、それによってオモチャたちの扱いも変わる。その代表的な例が第1作『トイ・ストーリー』から主人公を務めたアンディだろう。アンディは『トイ・ストーリー』、『トイ・ストーリー2』へと時間の流れと共に成長していき、『トイ・ストーリー3』では大学生となって家を出る。そこでウッディたちはアンディの成長を見届け、新しい持ち主であるボニーのもとへと行くのである。
『トイ・ストーリー4』では今までの子どもたちとの関係とは違う道をウッディが選んだ。それでは、『トイ・ストーリー5』ではオモチャのウッディたちはどのような道を選ぶのだろうか。現代の子供たちとオモチャの関係性と合わせて、「トイ・ストーリー」シリーズの今後の展開について注目していきたい。
映画『トイ・ストーリー』はDVDとBlu-rayが発売中。
映画『トイ・ストーリー』はDisney+で配信中。
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