ネタバレ解説&考察『バズ・ライトイヤー』ラストの意味は? バズはなぜ〇〇できた? ポストクレジットは? | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&考察『バズ・ライトイヤー』ラストの意味は? バズはなぜ〇〇できた? ポストクレジットは?

Pixar Animation Studios

2022年公開の映画『バズ・ライトイヤー』

ディズニー・ピクサーの『バズ・ライトイヤー』は2022年7月1日(金)に日本で公開された映画作品。本作は「トイ・ストーリー」シリーズでお馴染みのバズ・ライトイヤーを主人公にした作品で、「トイ・ストーリー」のアンディが大好きだった映画という設定になっている。

『バズ・ライトイヤー』の監督を務めたのは本作が長編映画での単独監督デビューとなったアンガス・マクレーン監督。主人公バズ・ライトイヤーの声をMCU「キャプテン・アメリカ」シリーズで知られるクリス・エヴァンスが新たに演じた。

“おもちゃ”のバズの姿を描いた「トイ・ストーリー」から一変し、全く新しいSF映画として生まれ変わった映画『バズ・ライトイヤー』。今回は意外な展開が待っていたそのラストについて解説していこう。

以下の内容は、映画『バズ・ライトイヤー』の結末についてのネタバレを含むので、必ず本編を鑑賞してから読むようにしていただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『バズ・ライトイヤー』の結末に関するネタバレを含みます。

映画『バズ・ライトイヤー』ラストをネタバレ解説&考察

ザーグの意外な正体

映画『バズ・ライトイヤー』最大の注目ポイントだった“ザーグの正体”は、終盤で“未来のバズ・ライトイヤー”であることが明かされた。原作の「トイ・ストーリー」シリーズでは、「スター・ウォーズ」シリーズのオマージュで、その正体は父だったという設定が採用されいてた。これは大きな改変ポイントではあるのだが、この点については最後に考察したい。

この未来のバズは、現在のバズと同じく任務のために光速航行を繰り返し、一人だけ62年の時を“スキップ”していた。相棒のアリーシャが亡くなり、光速航行の燃料となるクリスタルが完成したタイミングで光速航行に成功したところまでは同じ道を歩んでいる。

だが、未来のバズが違ったのは、この惑星に帰ってきたときにザーグの侵略がなかったため、バーンサイド中佐率いる部隊に捕らえられそうになったことだ。英雄扱いしてもらえると思っていたのに、宇宙船を盗んだことを咎められた未来のバズは、そのまま逃げて遙か遠い未来まで光速航行を行い、未来の技術と出会う。

ロボットの戦力を得て、クリスタルを燃料にタイムトラベルを成功させたもう一人のバズは、過去に戻って自らの失敗を“なかったこと”にしようとした。だがクリスタルは既に尽きかけており、完成したクリスタルを持つもう一人の自分に会いにきたのだった。共に任務を遂行するために。

疑問の一つは、“なぜバズが二人いるのか”というもの。これは、時間軸が一つしか存在しないのではなく、未来のバズが過去にタイムスリップして干渉したため、時間軸の分岐が生まれたと考えてよいだろう。タイムスリップSFではよくあることだ。

また、“ザーグ”という名前は、未来のバズが従えるロボットに「バズ」と言わせようとしても「ザーグ」としか発声できなかったことからついた名前だった。

実は、未来の自分がヴィランになるという展開は映画『ロスト・イン・スペース』(1998) を踏襲したもの。

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『バズ・ライトイヤー』は1995年に公開された映画という設定で、タブレットや携帯端末のような最近のガジェットがほとんど見られない。2022年に公開されあt本作最大のネタの核心部分に98年公開の大ヒットSF映画を持ってきたのは、1975年生まれで90年代に10代後半から20代前半を過ごしたアンガス・マクレーン監督の趣味だろう。

バズ・ライトイヤーの決断

映画『バズ・ライトイヤー』では、未来のバズ・ライトイヤーは、かつて独りよがりにハンドルを握ったことで惑星脱出に失敗し、そのせいで人々が数十年をこの惑星で過ごさなければなくなったことを後悔していた。だが、主人公の方のバズは、惑星がザーグによる侵略を受けていたおかげでアリーシャの孫のイジーたちと知り合うことができた。

そして、その出会いから、他者のミスと自分のミスを許すこと、独りよがりになるのではなく、他者と協力することを学んだ。元は落ちこぼれだった過去を共有し、そんな自分を肯定してくれたアリーシャの姿を思い出し、“ルーキー”の未熟さを許せるようになっていく。それはバズにとって、アリーシャがソックスと共に遺してくれたギフトでもあった。

映画『バズ・ライトイヤー』のラストでは、この過去を“なかったこと”にしたくないバズは、未来のバズと対立。ターミネーター風になった未来のソックスも現在のバズに加勢し、対決することになる。未来のバズはもちろん自分が惑星に戻ったときにはザーグの侵略がなかったためイジーらとは出会っておらず、イジーらに思い入れがない。未来のバズは孤独に生きてきたのだ。

イジーは人々が宇宙を目指すことを諦めた後に生まれた世代だったが、その恐れを克服。そのイジーに助けられたバズは、イジー、ダービー、モー、ソックスと共にザーグの宇宙船を脱出する。バズは追ってきたザーグにクリスタルを奪われるが、クリスタルもろとも狙撃して未来の自分に勝利する。

バズは人々を脱出させ、かつての自分のミスを取り返すこと、そして英雄になることを目指してクリスタルに固執してきた。しかし、バズは仲間ができたことでその執着から解放され、この惑星で生きていくことを決めたのだった。それがバズがクリスタルごと未来の自分を撃つことができた理由だ。

映画『バズ・ライトイヤー』のラストでザーグを倒したことでバーンサイド中佐に認められたバズは、エリート兵を率いるよう要請される。しかし、バズが選んだのはイジー達と共にかつてアリーシャが活躍したスペース・レンジャーを復活させることだった。ここで遂にアンディが遊んでいたおもちゃのバズの姿が完成。チームで任務に挑み、バズはイジーに忘れているものがないかと確認する。仲間がいればミスも事前に防ぐことができる。

最後にスペース・レンジャーは光速航行に挑み、再びクリスタルの生成に成功したことが示唆されている。そして、イジーとバズの「無限の彼方へ」「さぁ行くぞ」の掛け声と共にスペース・レンジャーは光の中へと消えていく。イジーから「無限の彼方へ」という掛け声を発したのは、中盤でイジーも掛け声を知っていると思ったバズが「無限の彼方へ」の掛け声を発していたからだろう。

ポストクレジットシーンは?

映画『バズ・ライトイヤー』のラストには、ミッドクレジットシーンとポストクレジットシーンがあった。ミッドクレジットの後に挿入されたのは、バーンサイド中佐のオフィス。バズらが途中で冬眠から起こしてしまった巨大な“虫”が基地に入ろうとするが、レーザーシールドがそれを許さない。

バーンサイドはドヤ顔で「レーザーシールド」と言い放つ。人々がこの惑星に定住することを決めた理由は、レーザーシールドの完成が大きな要因だった。そして、ザーグの襲来にあってもレーザーシールドだけは決して破られなかった。確かにもっと評価されてもよいはずだ。

そして、本当の最後になるポストクレジットシーンは、エンドロールのみならずピクサーのロゴタイトルが終わるまで待ってやっと現れる。映し出されるのは宇宙に浮かぶザーグの姿。その目が赤く光って『バズ・ライトイヤー』は本当の終わりを迎える。

ザーグもとい未来のバズはまだ生きていたのだ。続編の可能性と“ザーグの逆襲”を示唆するラスト。本記事の冒頭では、「バズの父」という設定だった「トイ・ストーリー」本編との矛盾について触れたが、『バズ・ライトイヤー』が今作限りの物語でないのであれば、まだその矛盾は解消される可能性はある。

そもそもザーグがタイムスリップを含む高度な技術を持っているのだとすれば、なんだって起こりうる。過去から連れてこられた父が2代目ザーグになるなんてこともあるかもしれない。

いずれにせよ、映画『バズ・ライトイヤー』で表現したかったテーマは、「本当の敵は自分自身」というものだろう。バズもルーキーや未熟な人に厳しいようでいて、かつて落ちこぼれだった自分やミスをした自分に固執して続けていただけだった。それが仲間との出会いを経て、他者と向き合うことでその呪いから解き放たれたのだ。

過去の自分に囚われたバズから、仲間と共に宇宙をまなざすバズへ。未来への準備は整ったようにも思えるが、果たして……。

映画『バズ・ライトイヤー』はディズニープラスで配信中。

『バズ・ライトイヤー』公式サイト

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SF作家・佐伯真洋による映画『バズ・ライトイヤー』の考察はこちらから。

監督が語った「トイ・ストーリー」からの改変の理由についてはこちらから。

 

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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