『デッドプール&ウルヴァリン』公開
映画『デッドプール&ウルヴァリン』が2024年7月24日(金) より全国の劇場で公開された。2024年唯一のMCU映画として公開された本作は、初日で2億円近い興行収入を記録し、幸先の良いスタートを切っている。
『デッドプール&ウルヴァリン』では予想を大いに裏切るサプライズが多数用意されていた。今回は、デッドプールが劇中で繰り返し触れていたアノ人との関係について解説していきたい。以下の内容は『デッドプール&ウルヴァリン』のネタバレを含むので、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『デッドプール&ウルヴァリン』の内容に関するネタバレを含みます。
『デッドプール&ウルヴァリン』に“登場”したソー
ソーの名を呼ぶデップー
映画『デッドプール&ウルヴァリン』でマーベルファンを驚かせたのは、冒頭でデッドプールがTVAに連れてこられた際にアベンジャーズの映像を観る場面だ。様々な映像の中にマイティ・ソーが泣きながら傷ついたデッドプールを抱き抱えているシーンがあったのだ。デッドプールはこの映像に食いついたが、TVAのミスター・パラドックスは職員に「ネタバレはやめろ」と注意している。
パラドックスは、この映像が遠い未来の話だとも言っていた。ソーを演じていたのはいつものクリス・ヘムズワースではなかったが、アベンジャーズに入りたかったデッドプールはもちろんソーのことを知っており、あのシーンについてかなり気にしていた様子だった。
それもあってか、その後、デッドプールは作中でことあるごとにソーの名前を呼んでいる。虚無でパイロらに捕まり、ウルヴァリンと共に磔(はりつけ)にされた際には、デッドプールはうわ言のように「雷神様……」と呟いていた。また、ホンダ・オデッセイでウルヴァリンと戦った後、エレクトラたちの拠点で目を覚ましたデッドプールは「ソー!」と言いながら飛び起きている。
ちなみにエレクトラたちの拠点には虚無に流れ着いた使えそうなものが集められているようで、デッドプールが寝ていたベッドは、映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017) でハルクが使っていたベッドだった。『デッドプール&ウルヴァリン』では、デッドプールは無意識にソーの名前を呼んでしまう状態になっていたようだが、その理由はあの未来の映像だけではないように思われる。
原作コミックにヒントが
デッドプールがソーにこだわる理由、そのヒントは原作コミックにある。原作コミックでは、ウルヴァリンはもちろん、キャプテン・アメリカ、スパイダーマンなど、様々なキャラクターとタッグを組んできたデッドプールだが、ソーとタッグを組んだこともある。
2010年に発表された『Deadpool Team-up #887』では、デッドプールとソーが成り行きでチームを組んだ。デッドプールは一方的にソーのファンで、ソーはデッドプールのことを鬱陶しがっていたが、一方で軽口を叩き続けるデッドプールに弟ロキの姿を重ね合わせる場面も。そして、喋り続けるデッドプールはソーに「本当に魅力的だと思う」と思わず告白してしまう。
「え、今の声に出てた?」と自分でも驚いていたデッドプールだったが、ここで邪魔が入って話は有耶無耶になっている。このエピソードは「デッドプールがソーに恋をした回」として知られており、『デッドプール&ウルヴァリン』でもデッドプールがソーの名前を繰り返し呼んでいたことから、MCUでも同様の展開が用意されている可能性もある。
デッドプールはパンセクシュアル
「デッドプール」の原作コミックのライターであるジェリー・ダガンは、2013年にデッドプールがパンセクシュアル(属性に関係なくあらゆる相手が恋愛対象になるセクシュアリティ)であることを明言している。映画版でもこの設定は引き継がれており、『デッドプール』公開時の2016年の英ガーディアン・ガイドのカバーでは、実写版デッドプールの写真に「口の悪いパンセクシュアルの殺し屋の記事が読みたい?」という吹き出しが付けられた。
映画『デッドプール』一作目のティム・ミラー監督も、「コミックの設定に忠実にしたかった」として実写版のデッドプールもパンセクシャルであることを認めている。また、米Colliderによると、『デッドプール&ウルヴァリン』で製作総指揮を務めたサイモン・キンバーグは、『デッドプール』公開時に以下のように語った。
デッドプールの(コミックにおける)正史にできるだけ忠実であろうとしていることは分かっていただけるかと思います。ご存知のように、このキャラクターはコミックではパンセクシュアルであり、今作ではそれを深く掘り下げることはしませんが、間違いなく暗示はされています。今作では主にコミックにも登場するヴァネッサとのラブストーリーを扱っています。しかし、今後の映画作品ではもっと掘り下げていけることは確かですし、今作でもその要素は存在感を示しています。
デッドプールのパンセクシュアルという設定を「今後の映画(future movies) 」で掘り下げていく予定であると、『デッドプール&ウルヴァリン』の約8年前に明言していたのだ。
ソー・ロキ・デッドプールの物語に?
『デッドプール&ウルヴァリン』では、①デッドプールがヴァネッサと別れてヴァネッサには新しい恋人ができたこと、②ソーがデッドプールを抱いて涙する未来が待っていること、③デッドプールがソーにのぼせていること、が示された。
そして、将来的にデッドプールがパンセクシュアルであるという設定を掘り下げると製作総指揮のサイモン・キンバーグが発言していたことと、原作コミックの描写から、デッドプールとソーのロマンスが描かれる可能性は十分に考えられる。
それに、原作コミックでソーがデッドプールにロキの姿を重ね合わせていたことを考えると、MCUのソーも亡き弟ロキの面影をデッドプールに求めることになる可能性もある。
ドラマ『ロキ』(2021-) ではロキは“物語の神”となり、『デッドプール&ウルヴァリン』ではデッドプールは“マーベル・ジーザス(マーベルのキリスト)”を名乗るようになった。こちらの記事で考察しているが、クライマックスでデッドプールとウルヴァリンがなぜか死ななかった背景には、ロキによる介入があったとも考えられる。
実はとても近い距離にいる三人。MCUのソー・ロキ・デッドプールを巡る物語は、『デッドプール&ウルヴァリン』で幕を開けたのかもしれない。
『デッドプール&ウルヴァリン』は2024年7月24日(水) より全国の劇場で公開。
原作コミックでのデッドプールと各キャラクターの関係も紹介! デッドプール30周年の歴史を振り返るムック本『デッドプール 30th Anniversary Book』は、7月26日(金) 発売。
『デッドプール&ウルヴァリン』のオリジナル・サウンドトラックは発売中。
『デッドプール』『デッドプール2』は2枚組のBlu-rayコレクションが発売中。
ダニエル・ウェイ&スティーブ・ディロンによるコミック『デッドプール VS. ウルヴァリン』は、吉川悠による邦訳版が発売中。
映画『デッドプール&ウルヴァリン』ラストのネタバレ解説&考察はこちらから。
ポストクレジットシーンは『シー・ハルク』に繋がる? ラストの更なる考察はこちらの記事で。
『ロキ』と『デッドプール&ウルヴァリン』の繋がりについての解説はこちらから。
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