5話ネタバレ感想『日本沈没―希望のひと―』“第一章”に幕 リアルに描かれた関東沈没 あらすじ・解説 | VG+ (バゴプラ)

5話ネタバレ感想『日本沈没―希望のひと―』“第一章”に幕 リアルに描かれた関東沈没 あらすじ・解説

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ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第5話はどうなった?

ドラマ『日本沈没―希望のひと―』は、日曜日午後9時から放送されるTBS「日曜劇場」の枠で公開されている新作ドラマ。小松左京原作のSF小説を再ドラマ化した作品で、小松左京作品としてはアニメ『日本沈没2020』(2020) に続き、Netflixでも世界配信されている。

第4話では、主人公・天海と記者の椎名による関東沈没情報のリークが実り、関東の住民の避難が始まった。一方で天海はリークが政府にバレたことから東山総理に切り捨てられ、未来推進会議を外された。そして、危険地域に住む住民の避難がほぼ終わり、天海と椎名の家族も避難用のバスに乗車したところで、遂に大きな地震が関東を襲った。

天海を失い、関東沈没の現実に直面した日本政府は、この現実にどのように向き合うのだろうか。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第5話の内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第5話ネタバレあらすじ&感想

関東沈没、第二波の恐怖

冒頭の回想では、天海と椎名がリークだけでなく、東山総理の会見実施を画策したこと、田所博士をテレビ出演させて市民の危機感を煽ったことも触れられた。二人の行為は「許されるものではなかったが、避難を大きく前進させた」と紹介されている。

そして、第5話の冒頭は東山総理の会見によって、関東沈没が現実のものとなったこと明かされる。海に沈む関東沿岸部の姿も映し出された。作業着を着て会見に臨む総理の姿は、3.11を想起させる。

天海は椎名を庇おうとして頭に怪我を負ったが、命は助かったようだ。海に沈んだレインボーブリッジの姿も映し出される。東京のテレビ局も無事ではないだろう。だが、予想されていた範囲の9割は無事で、住民の避難もほとんど済んでいたという。首都高や幹線道路は損壊しているというが、羽田空港と成田空港は被害を免れたらしい。被害が最小限に留まっているのだ。

田所博士は、予想よりも被害が少なかったことから「次がいつ来るか」を心配している。里城副総理もまた、これまでの言動をよそに「肝心なのは第二波がいつ来るか」と言い放つ。3.11前に「原発事故は起こらない」としていた人々が掌を返したことを思い出す。

被災地では、電話がつながらず、公衆電話を取り合う人々の姿が。3.11の時に注目された災害ユートピア(災害に見舞われた状況を共有することで、人々が助け合う現象。日本だけでなく、他の文化圏でも起こる)とは程遠い姿だ。一方、天海は娘の茜の姿を探していた。

未来推進会議は、第二波に備えて更に住民の避難を進めることに。総務省と国交省の官僚同士が話し合い、防衛省は自衛隊を出動させて災害対応に当たる。当然、官僚の中でも、自分の命を優先して逃げるかどうかの議論が起こる。3.11の時、原発事故の対応にあたっていた東電は民間企業だったが、『日本沈没』の場合は政府の人間だ。意見が分かれるところである。

つまるところ、天海なき未来推進会議は分裂していた。更に対策本部を停電が襲うが、ここは常盤がリーダーシップを発揮し、住民避難を進めるよう職員を盛り立てるのだった。

椎名は、災害用伝言ダイヤルを利用して迷子の少女の母親を見つけていた。災害用伝言ダイヤルは、電話がつながりにくくなる災害発生時にラインが開かれる。被災者は「171-1」の後に自分の電話番号を入力して伝言を残すと、被災者の安否を確認したい人が「171-2」の後に被災者の電話番号を入力して伝言を聞くことができる。災害の時に備えて覚えておこう。

「第二波はこない」

被災者の間には、第二波の恐怖が広がっていた。天海は田所博士に電話をかけ、この規模の沈没で済んだ理由を聞き出そうとするが、田所博士の回答は「第二波はこない」というものだった。沈没による地震でプレートが断裂し、プレートが沈み込む動きが止まったのだという。田所博士は、関東沈没は最小限の被害で終息したと言い切る。意外な展開である。

この結果に、天海は目を潤ませて喜び、前回あれだけ感情的に虐げられた総理にも「伝えてあげてください」と告げる。田所博士は「関東沈没は完全に終息した」「第二波はこない」と政府に説明。山城は拍手をして喜んでいるが、都合の良い報告は素直に聞く与党の政治家らしいリアクションである。「第二波」という言葉がコロナ禍と重なり、逆に不気味だ。麻生太郎は2020年5月の時点で、新型コロナの流行を「6月に何となく収まる」と楽観視していた。

そして、あまりに早い展開で「関東沈没終息」が伝わっていく。この報告を喜ぶ推進会議のメンバーに対し、常盤は正しいことを言い続けてきた天海のことを思い出していた。

天海と椎名は毎朝新聞のオフィスに留まっていたが、東名高速で起きたトンネル崩落に椎名の母と天海の娘が乗った避難バスが巻き込まれたことを知る。茫然とする椎名に、天海は事故現場へ行くことを提案。「どこでもやれることはある」とは、第4話での椎名から天海への助言である。

二人は大回りして神奈川県伊勢原市まで来るが、どの道も崩落しており、事故現場のトンネルまで行き着くことができない。椎名は「もっと早く行かせればよかった」と涙を流し、天海は「家族さえ救えない」と悔やむが、それは情報を身内に伝えて情報格差を作ることを拒んだ結果だった。

それでも、天海は希望を捨てない。天海が“希望の人”なのだろう。ガッツ石松演じる漁師に頭を下げ、トンネルのある松葉町近くまで船を使ってたどり着く。地震直後に海に出るのは危険なことだが、漁師役のガッツ石松の演技が良い味を出している。ガッツ石松のTBSドラマへの出演は『ブラックジャックによろしく』(2003) 以来、18年ぶりだという。なお、ガッツ石松は『孤独のグルメ Season2』(2012) でも漁師役を演じている。

常盤はまた天海のことを思い出していた。第二波が来ないという展開にならなければ、それほどの余裕はなかっただろう。最初の沈没が小規模に終わることで、天海が正しかったことを周囲の人々が理解し、反省するという展開を盛り込むことができている。

常盤は自身の提案通りに情報開示を2ヶ月後にした結果、何百万人が犠牲になるという夢を見たという。自分が見ていたのは「株価と為替の数字だけ」と反省する姿は、経済優先が人命を危機に晒すというメッセージと受け取ることができる。外務省の相原は一人で抱え込まないよう助言するが、常盤は天海を追放するという判断を下した張本人だ。

災害の恐怖

船で移動した天海と椎名は通行止めに直面。紙の地図で古道を確認し、山道を進んでいく。社会インフラが止まってしまえば、アナログな方法に頼るしかない。大規模な被災時には、スマホはそれほど役に立たないのかもしれない。

一方、田所博士には南ロンドン大学から、年俸50万ポンド=7千万円のオファーが届いていた。関東沈没を予言した学者として、世界中の大学からオファーが来ているという。文科省の発表によると、東大教授の平均年収が2018年度で約2,000万円となっている。海外の一流大学の教授職の年収は平均で2,000万〜4,000万円となっており、学者を大切にする海外の状況がこのドラマには如実に反映されている。

そこにラジオから地震の情報が入る。滅多に地震が起きない場所であり、データを見た田所博士は助手たちにすぐに海保へ連絡するよう指示を出すのだった。あまりに早かった「終息宣言」。やはり一筋縄ではいかないようだ。この時映し出された巨大な日本列島は、どこか怪獣のような不気味な恐ろしさを醸し出していた。

山道を越え、ついに松葉町へとたどり着いた天海と椎名は、被災者で埋め尽くされた病院の状況を目の当たりにする。実際に巨大地震に見舞われ、交通インフラが止まった状況では、このように一つの病院に患者が集中することになる。だが、患者の名簿には二人の名前はない。そこに運ばれて来た意識不明の少女は茜ではなかったが、ホッとしてしまうのも悲しいことではある。

天海は近くの公園から聞こえたハーモニカの音を聞いて、茜の姿を見つける。茜はそもそも怪我をしていなかったのだ。天海は涙を流して再会を喜ぶ。天海の元妻である香織と椎名の母も生きていた。香織との再会を天海があまり喜んでいなかったのは気になるが。

この感動の再会の場面も、“安心”というよりは、危険に備えることの大切さ、そして巨大な災害に見舞われることの怖さの方が伝わる演出になっていた。私たちは、災害への備えができているだろうか。

経済vs人命ふたたび

家族と合流した天海は、しばらく避難所で過ごすことを決めるが、周りの人々からはまだ政府で働いていると思われている。天海は常盤のことを思い出すが、天海の負い目は情報をリークしたことではなく、常盤を蚊帳の外に置いて単独で動いたことだった。これは、常盤が自身の甘い予測よりも、天海を会議から追放したことを負い目に感じていることと似ている。大きな物語が動いている中でも個人間の小さなストーリーがブレーキなる展開は、MCUのキャプテン・アメリカとアイアンマンの関係を想起させる。

被災地では、赤ちゃんのミルクもなく、まだ家族との再会できない人々もおり、町の役人は対応に追われていた。なぜかここには物資が届いていないという。天海は天性の人助けスキルを発動し、役場の人を助けるのだった。

東山総理には、早期の情報開示と避難指示によって、海外メディアからは称賛の声があがっていた。一方の里城副総理は、すでに復興のビジョンについて常盤に語っていた。常盤も忙しいだろうに、迷惑な話である。山城は、この関東沈没からの復興を機に東京を世界一の未来都市にし、日本を繁栄させる「千載一遇のチャンス」と言い放つ。死者や被災者が出ている中で、どこからこのモチベーションは湧き上がってくるのだろうか。

天海は、ウエンツ瑛士演じる厚生労働省の石塚に電話をかけていた。喧嘩別れした常盤ではなく、石塚を頼ったのだ。天海によると、松葉町に支援物資が届いていない理由は、関東沈没の地震そのものではなく、トンネル事故という二次災害で被災したことから、政府から見落とされているということだった。

この通話を聞いていた常盤は、天海がこんな状況にあっても人を助けるために動いていることを知るのだった。この場面は、経済のことしか頭にない里城副総理と、実際に避難所の現場で動く天海の対比になっている。続けて二人の姿を知った常盤は、心が動かないはずがない。

個人で動くことの限界

関東の交通網は戻りつつあったが、天海はまだ避難所に残っていた。役場の人に頼られ、リーダーシップを発揮していおり、被災者から要望を集めて、リストで持病まで把握している。ホテルが被災者の受け入れを開始するが、民間企業には限界がある。10名しか枠がない状況で誰かを優先すれば、避難所の人々に更なる不満が生まれることは明らかだ。

天海は、国家だけではなく、小さな場所でも人々を助けようと動いているが、「一人ひとりに寄り添うことは難しい」と弱音を吐露する。そもそもの社会インフラが成り立っていなければ、救われる人の絶対数自体は増えない。優先順位をつけざるを得ないし、多くの人を救うことは難しい。物質的に最低限満たされなければ、人の心も豊かにならないという現実もある。

だが、そこに現れたのは自衛隊の車両群だった。一瞬にしてキャンプを作り、お風呂や食事を提供する。続いてやってきた政府の車両から降り立ったのは東山総理だ。メディアも入っており、里城副総理が「こんな時に人気取り」と言っていたのはこのことだろう。それでも、総理が直接被災者を激励する姿は人々に勇気を与えていた。

その姿を隣で見守っていたのは常盤だった。心なしか白髪増えたようにも見える。東山総理が天海のいる避難所を訪れるよう仕組んでいた常盤は、天海が正しかったと認め、謝罪する。天海自身も、思い上がっていたと告白する。天海は実際に被災して、自分の無力さを痛感していた。自分が行動できたのは組織にいたからであり、人々に寄り添うことの大変さを知ったという。それでも、天海の判断が何百万人もの人々を救ったことは事実だ。常盤は天海を未来推進会議に戻るよう告げ、天海はそれを受け入れる。たった一話でのスピード復帰だ。

天海を切り捨てた東山総理も天海に感謝を述べ、災害後の復興について力を貸してほしいと手を差し伸べる。感動的な感じになっているが、なかなかに都合のいい人たちである。そうして、天海と椎名は東京へ戻ることに。新しい家族を持った香織と茜を笑顔で見送る天海の姿が好印象だ。

また、椎名は毎朝新聞への復帰が決まっていた。そういえば椎名は毎朝新聞の政治部から左遷されたという設定だった。今回、リークした情報が的中したことが新聞社に評価されたのだろう。

日本沈没へ

第二波はないと田所博士が断言したからか、災害からわずか二週間で子ども達の登校は再開されていた。東山総理は、復興を「戻す」のではなく、「新しく作る」ことと宣言し、山城副総理の意向を取り入れていることを示唆する。

だが、田所博士が見ていたのは東海地方の地図だった。東海といえば、現実でも南海トラフ沿いで発生する大規模な地震が想定されている場所だ。田所博士によると、名古屋付近でスロースリップが発生し、関東沖で海底地殻変動が再び起きているという。関東沈没に連動して名古屋でスロースリップが起こり、名古屋の地震が関東の海底に影響を与えている。関東と東海で連鎖反応が起きているのだ。

田所博士は「嫌な予感」を口にし、より大きな第二波が来る危険を察知していた。平和な日々を取り戻したかに見えた天海だったが、カラスが集団移動する姿を見つめる。これは、地震の予兆とされる動物の異常行動なのだろうか……。

そして映し出されたのは、「第二章 日本沈没編」の文字だ。つまり、『日本沈没―希望のひと―』第5話までは「第一章 関東沈没編」だったということである。予告では、「予想は絶対じゃない」と言い張る山城の姿が。世界から見捨てられるという危惧の中、他国への移民を約束してもらうために奔走する政府の人々、移民後の人々の人生まで考えろという声や、涙する田所博士の姿。沈んだままの東京沿岸部は、象徴的な光景として今後も残されるようだ。

ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第5話 感想まとめ

第5話は予告編からして常盤回に思われたが、引き続き主人公・天海の活躍が描かれた。天海を批判してきた人々が頭を下げる描写は、どこか「半沢直樹」的な、視聴者を“スカッと”させたい演出の意図を感じる。野良で生きていく天海の姿も見たかったが、第5話では逆に官僚として働くことの優位性を天海が実感する回でもあった。

中途半端な立場にあるのは常盤だ。天海と和解しながらも、山城副総理にはまだ信頼を置かれている。改めて立場を選ばなければならない場面が訪れるのだろう。また、見落としがちだが、前回天海と椎名に動かされた東山総理は、今回は常盤に動かされている。優柔不断というか、強いリーダーシップがないことは改善されていないようだが、日本沈没に直面して変化が生まれるのだろうか。

その東山総理が会見で話していたのは、自身の念願である首都機能の北海道移転ではなく、東京を未来都市として復興するという山城副総理の意向だった。再び沈没危機が迫った時に山城がどのように動くのか、そしてどのタイミングで折れるのかという点にも注目だ。

地震については、ついに現実でも発生が予測されている東海地震が描かれることになる。ドラマ『日本沈没―希望のひと―』の中では、関東沈没が東海のプレートに影響を与え、東海の地震が関東のプレートに影響を与えるという悪夢のような循環が生まれつつある。プレートによる地震のラリーのような、人類の抑えようがない状況を前に政府はどう動くのだろうか。

一方、ドラマ『日本沈没―希望のひと―』は、災害時のシミュレーションとしての役割も果たしている。地震調査研究推進本部は南海トラフで発生する大地震は、正確に予測することは困難としながらも、2013年の時点で今後30年以内にマグニチュード8〜9レベルの地震が発生する確率を60〜70%としている。この予測から既に8年が経過しているが、30年以内に起きうるということは、明日起きるかもしれないということである。

『日本沈没―希望のひと―』第5話では、スマホが通じない状況や災害用伝言ダイヤルの活用、避難所での生活が描かれた。これを観ている私たちも、ドラマの中の「お話」としてではなく、身近に起こり得ることとして考える必要があるだろう。

関東沈没は序章に過ぎなかった。“日本沈没”が始まる『日本沈没―希望のひと―』後半戦も目が離せない。

ドラマ『日本沈没―希望のひと―』は、TBS系の日曜劇場枠で2021年10月10日(日)より毎週日曜日21時から放送中。Netflixでも配信されている。

『日本沈没―希望のひと―』公式サイト

小松左京『日本沈没』は新装版がハルキ文庫から発売中。

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『日本沈没―希望のひと―』第6話のネタバレ感想はこちらから。

第1話のネタバレ感想はこちらから。

第2話のネタバレ感想はこちらから。

第3話のネタバレ感想はこちらから。

第4話のネタバレ感想はこちらから。

『日本沈没―希望のひと―』の出演者まとめはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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