6話ネタバレ感想『日本沈没―希望のひと―』日本沈没を“信じたくない”人々 第二章開幕 あらすじ・解説 | VG+ (バゴプラ)

6話ネタバレ感想『日本沈没―希望のひと―』日本沈没を“信じたくない”人々 第二章開幕 あらすじ・解説

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ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第6話はどうなった?

小松左京の伝説的なSF小説『日本沈没』(1973) をTBSで再ドラマ化した『日本沈没―希望のひと―』は、環境省で働く若手官僚の天海を主人公に据えた作品。主演を小栗旬が務め、過去の映像作品全てに登場している重要人物の田所博士を香川照之が演じる。

第5話では関東沈没が現実のものに。天海と椎名は行方不明になった家族を見つけ出し、被災地を助ける。関東沈没の可能性を主張し続けた天海の正しさが証明され、更に被災地を助ける姿に、未来推進会議の議長である常盤と東山総理は天海に職務に復帰することを依頼するのだった。

こうして、第一生「関東沈没編」は幕を閉じた。そして第6話から始まるのが第二章「日本沈没編」だ。踏みとどまったはずの日本列島に新たな危機が訪れる。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第5話の内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第6話ネタバレあらすじ&感想

関東沈没から三週間

地球の新たな異変を感じ取った田所博士。スーツ姿に戻った天海。未来推進会議のメンバーは水没した東京沿岸部の姿を見て、それぞれの思いを語る。人間の罪、東京の復興や汚染された海の浄化など、これからやるべき仕事について語る中、外務省の石塚は妹が被災して亡くなったことを明かす。『日本沈没―希望のひと―』第二章は被災者への黙祷で幕を開ける。

第6話は関東沈没から三週間後が舞台。内閣支持率は80%に跳ね上がったという。新聞社に戻った椎名は里城副総理に歯に絹を着せぬ質問をしている。「君はどこの記者かね」と聞く里城の姿は、やはり麻生太郎の横暴さを思い出させる。

未来推進会議は、東京の復興へ向けて自然エネルギーだけで動くグリーンシティの開発計画と地域再生を同時に進めていた。東山総理も、里城が企業用地に回そうとしていた東京西部に30万人の居住区を作ると内閣の会議で表明するが、一方の里城はこれに反対。環境派の東山と経済優先の里城では、見ている“未来都市”の形が違うのだ。

しかし、東山総理は、自分たちの意見を通したから多くの命を救うことができたと、関東沈没の際の功績を盾に強気に出る。他の政治家も東山派についており、味方を失った里城は常盤を通して未来推進会議を動かそうとするのだった。

政局よりも人

未来推進会議は、長沼官房長官から復興計画中止の総理命令を受けて作業が止まってしまう。官房長官は「君たちは指示に従っていればそれでいい」と、関東沈没から全く学んでいない姿勢を見せる。復興が遅れ、人々に影響が出ることが許せない天海は総理を問いただす。ことの真相は、里城が「週刊新報」にCOMSが関東沈没の原因という話を流したということだった。政局を有利にするために、東山総理に脅しをかけたのだ。

里城にとっては、日本に住む人々ではなく、政局が第一。これに対し、天海、常盤、椎名の三人は逆に里城のネタを上げることで対抗しようとする。後釜として期待をかけられていた常盤だったが、今度は堂々と里城を問い詰める。続いて天海は、関東沈没前に里城が国家機密情報を流した件を交渉材料にしておどしをかける。

政局しか頭にない里城に対し、天海は里城を「実質的なこの国の最高権力者」と持ち上げ、痛み分けの折衷案で和解を持ちかける。天海の頭にあるのは、いかに人々のためになる計画を進めるかということだけだ。それが実現するためならば何でもやるというのが、『日本沈没ー希望の人ー』における天海の一貫した姿勢だ。

そんな天海に里城が出した条件は、里城の派閥から出馬して政治家になることだった。常盤を見切って天海に乗り換えたのだ。天海はあっさりこれを了承。常盤は関東沈没を経験してキャリアに対する思いは吹っ切れたようで、あまり気にしていない様子である。

日本沈没のシミュレーション

そうして、復興案はあっさりと可決。だが、久しぶりに田所博士のもとを訪れた天海は、日本各地でスロースリップが加速していることを聞かされる。田所博士が示した「とてつもない第二波」のシミュレーションは、東京全体がしずみ、そこを起点に日本列島全体が太平洋側に沈没していく姿を映し出していた。

この報告を聞いた東山総理らは唖然とするが、田所博士は「この結末は避けられません」と言い切る。そして、沈没する期限を「1年以内」と予測。1年以内に日本が地図上から亡くなるという事態に、案の定、里城副総理はこれを信じられないと言い部屋を出て行ってしまう。「信じられない」というよりも、「信じたくない」ということだ。3.11以前に原発事故の可能性を指摘されても、原発を推進する人々は経済優先で事故の可能性は「信じたくなかった」のだろうし、現在も原発を動かしても3.11のようなことが再び起きるとは「信じたくない」人々は多い。

「国が沈む」という異常事態に、天海も政治的な判断を避けられない。今度は人々にすぐに知らせず、入念な準備を行うことを提案する。日本が沈むとなれば、外国に避難するしかなく、政府主導で避難の道筋をつけなければならない。田所博士は海保から日本中の海底のデータを集めて分析を進めることに。

この情報は未来推進会議で共有される。この規模の危機となれば、逃げ出す人物がいてもおかしくないが、今のところ官僚たちは懸命に問題に取り組もうとしている。「他国に移民として受けれてもらうしなかない」と主張する天海に、外務省の相原ら他の官僚は悲観的な言葉を並べる。

外交的に弱い立場に立たされるということは、日本がこれまでやってきたこと全てがその身に返ってくるということだ。私たちは、日本に住む人々が難民になるという可能性を考えることが出来ているだろうか。

排外主義の傷痕

極秘で外国との交渉を進めなければいけないという事態に、石塚はまず家族とつながりがあるトラビス前首相を通してオーストラリアに探りを入れることに。一方、官邸では、地価の安い国の土地を買うこと、対日感情や国土を考え、モンゴルやインドに移民の受け入れを依頼することを話し合っていた。

しかし、里城によるとDプランズ社がモンゴルやインドの不動産を買い漁っているという。情報が漏れているのだ。かつてDプランズ社と癒着疑惑が報じられた田所博士の身辺調査が行われることに。その頃、田所博士はスーツの人々と会っていた。このスーツの人々は誰なのだろうか。

石塚と天海はオーストラリアのサイモン・トラビス前首相と面会。ハリウッド映画『ゴジラvsコング』(2021) に出演した小栗旬と、2020年まで1年半ロンドンに留学していたウエンツ瑛士が見事な英語のセリフを披露している。

二人は、日本からオーストラリアへの移住希望者が増えているという体で話を進めようとするが、トラビスは日本に新たな危険が近づいていることを見抜く。さすがは首相経験者である。更に現政権は移民に寛容ではないため、期待には沿えないと厳しい態度を示すのだった。

日本とオーストラリアの関係は良好だったが、それでも断られたという事実に、天海と石塚はショックを隠せない。善意だけでは国際政治は動かないということだ。

一方で、オーストラリアの現政権が移民に対して良い感情を持っていないという話は、対日本というより、そもそも排外主義が席巻したあとの世界における対移民感情の悪化を表している。だが、その世界の流れは日本も国ぐるみで加担したことであり、日本政府が排外主義の一翼を担っていたことは言うまでもない。

企業を売り渡す

この交渉の間に、東山首相は復興を中止し、首都機能の札幌移転を進めようとしていた。東京から沈没が始まるため、北海道が最後まで残ると予測してのことだろう。“政府沈没”の時間稼ぎにしかならないが、やらないよりはマシである。

復興予算は移民計画に回し、他国の心象をよくするために海洋浄化もやるという。国内政治の舵は取れているようだ。だが、政府は移民計画の突破口を見つけられていない。天海は企業を発展途上国へ移し、生島自動車のような大企業は先進国へ移すことで移民を受け入れてもらうことを提案する。

企業を中心とする“会社社会”である日本の特徴を利用し、企業を諸外国に売り渡すということだ。企業を他国に差し出しても人々を守るというこの提案を受け、経済界に支えられてきた里城は、遂に「日本は沈没しませんよ」と言い切るのだった。

確かに日本企業を輸出した後に日本沈没が現実にならなければ、日本はもぬけの殻になる。リスクの高い提案ではあるが、移民計画を進める以上、いずれにしても企業は海外へ移らなければならない。国家として戦略的にそれを進めるかどうかという違いに過ぎないのだ。

ここで里城は“切り札”を持ち出す。田所博士が学術誌に「匂わせ発言」をしていたのだ。里城は田所博士を信用できないとし、博士に対する疑念を強めようとする。

天海は田所博士を問い詰めるが、博士はDプランズとの関わりを否定する。「すぐに情報を開示すべき」とする田所博士は「君は怖くないのか」と天海に聞くが、天海は恐怖を感じながら移民計画を急いでいるのだと正直な心情を吐露する。

注目すべきは、田所博士は前回関東沈没を予見したことで、南ロンドン大学をはじめとする海外の大学から教授職のオファーを受けていたことだ。だが、第6話ではまだ日本におり、人々のために分析を続けている。何が田所博士をここまで突き動かすのだろうか。

椎名は母から共に避難所で暮らしていた茜からの手紙と亡き父の写真を預かる。この時点で椎名はまだ日本沈没の危険を知らない。茜からの手紙を渡された天海は、茜が英語の勉強を頑張って海外で仕事をすることを目指していることを知る。茜の母は翻訳家だ。

椎名は復興計画が止まったという情報を掴み、田所博士の「匂わせ発言」も手伝って、また沈没があることを嗅ぎ付けていた。これについて聞かれた天海は、日本沈没の可能性を否定せず、椎名は新たな沈没が来るということを確信する。「なんで日本ばかり次から次へと」と漏らした天海の言葉は、地震や台風など継続的に災害に晒されてきたこの国に住む人間の誰もが一度は感じたことのある脱力感を言い表している。

田所博士は有罪?

官房長官は、Dプランズへの情報流出の情報源が田所博士であったと東山総理と里城博士に報告する。没収した携帯電話に記録が残っていたのだという。里城は田所博士が詐欺師であり、「日本は沈まない」と断言。東京地検特捜部が田所博士のもとへ向かう。

田所博士は、Dプランズ社から金品を受け取ったとして加重収賄の疑いで任意同行を求められる。これで、スロースリップの予測と検証が不可能に。たとえ収賄が事実だったとしても、分析結果が事実であれば、こんなことをしている場合ではない。焦る天海と連行される田所博士の姿を映し出し、『日本沈没ー希望のひとー』第6話は幕を閉じる。

次回予告では、田所博士と面会する天海の姿が映し出されている。田所博士は有罪なのか、無罪なのか、第5話で会っていたスーツの人々は誰なのか。予告のテロップには「世界を巻き込んだ事態に」と記され、第3話に登場したモーリー・ロバートソン演じるアメリカのジェンキンス教授の姿も。

一方で、「アメリカと中国を天秤にかけると」というセリフも聞こえ、外国との移民交渉が進められることが示唆されている。天海と日本政府は、日本が沈没する前に日本に住む人々を逃すことができるのだろうか。

ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第6話 感想まとめ

『日本沈没―希望のひと―』の「第二章 日本沈没編」が開幕した第6話では、いきなり外国との交渉が困難であることが示された。それでも負けじと案を出す天海だったが、田所博士への捜査で全てが台無しになろうとしている。

なぜなら、海外から高い評価を受ける田所博士を弾圧すると言うことは、日本政府は国内だけでなく海外からも厳しい視線にさらされることになるからだ。研究者を弾圧しながらも、その人物の学説を根拠に移民を依頼するという矛盾した活動は、諸外国の目にどのように映るだろうか。

もし田所博士が無実で、捜査が仕組まれたものだとすれば、日本に深い根を下ろしている国策捜査の問題にも切り込むことになる。この国では長年、政治の都合によって誰を捜査し、あるいは捜査しないかという判断が下されている。それは、森友・加計学園の問題を見れば明らかだ。日本社会が抱える恥部に切り込んできた『日本沈没―希望のひと―』には、国策捜査の問題にも切り込むことに期待したい。

そして、近隣の国に頼ることが出来ない日本は、どの国に助けを求め、そしてどの国が日本の移民を受け入れてくれることになるのだろうか。これは単純に日本に住む視聴者の納得感、つまりリアリティと、ドラマとしての面白み、そして理想といったいくつもの要素の中で決定されることになるだろう。

そして本作は、Netflixを通して海外に配信されていることも忘れてはいけない。いよいよ世界が舞台になる『日本沈没―希望のひと―』。海外の視聴者の反応にも注目だ。

ドラマ『日本沈没―希望のひと―』は、TBS系の日曜劇場枠で2021年10月10日(日)より毎週日曜日21時から放送中。Netflixでも配信されている。

『日本沈没―希望のひと―』公式サイト

小松左京『日本沈没』は新装版がハルキ文庫から発売中。

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『日本沈没―希望のひと―』第7話のネタバレ感想はこちらから。

第1話のネタバレ感想はこちらから。

第2話のネタバレ感想はこちらから。

第3話のネタバレ感想はこちらから。

第4話のネタバレ感想はこちらから。

第5話のネタバレ感想はこちらから。

『日本沈没―希望のひと―』の出演者まとめはこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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