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ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第7話はどうなった?
TBSで放送され、Netflxiで世界に配信されているドラマ『日本沈没―希望のひと―』は2021年10月にスタートした近未来SFドラマ。2023年の日本を舞台に、沈没の危機を迎える日本と、日本に住む人々を助けようとする若手官僚の物語が描かれる。
環境省の若手官僚である主人公の天海啓示を演じるのは小栗旬。2021年はハリウッド映画『ゴジラvsコング』にも出演し、立て続けにSF大作に出演している。また、過去に制作された「日本沈没」シリーズと同じく重要な役割を果たす田所博士を香川照之が演じる。ドラマ「半沢直樹」シリーズの大和田常務役で見せた“怪演”に続き、『日本沈没―希望のひと―』でも圧倒的な存在感を放っている。
そして、第6話ではその田所博士にとんでもない事態が降りかかった。第7話では田所博士はどうなってしまうのだろうか。今回もあらすじと共にネタバレ感想&解説をお届けする。
以下の内容は、ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第7話の内容に関するネタバレを含みます。
ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第7話ネタバレあらすじ&感想
田所博士逮捕の余波
田所博士は日本全域が沈没するという分析を政府に知らせ、天海たち官僚は日本の人々を移民させようと奮闘する。しかし、田所博士のもとにはDプランズ社との疑惑によって捜査が入る。第7話冒頭では田所博士がその後、逮捕されていたことが分かった。第1波の沈没規模が予測の1割だったことが、日本政府を騙そうとしたという風に捉えられたらしい。
面会に来た天海に対し、田所博士は日本沈没を信じたくない勢力によって陥れられたと主張。だが、田所博士が何より心配していたのは、自身が勾留されている間に日本沈没の分析が進められないことだった。政府が用意した専門家メンバーも、田所博士の発想を理解できないでいた。
この状況に天海が連れてきた人物は、世良教授だった。別パートの悪役が味方として登場するのは、『半沢直樹』を思わせる展開だ。天海は世良を「改竄したということは沈没の可能性を見抜いていた」と評価。世良は天海に言われた「学者を名乗る資格はない」という言葉を引きずっていたが、田所博士自身が世良を推したと知って協力することに。
長沼官房長官は、データ改ざんに及んだ世良の復帰に難色を示すが、東山総理は天海の説得を受け入れる。やはり東山総理は天海の言葉に動かされやすいように思う。しかし、日本沈没を言い当てた天海の言葉を、この期に及んで軽視できないのかもしれない。
世良が田所博士のデータを引き継いで再検証を行った結果、やはり日本の全土沈没という結論が出る。政府は、命を最優先にして移民交渉を進めること、未来推進会議がその作戦を進めることを決定。推進会議は早速、TOYOTAをモデルにしていると思われる生島自動車や三洋電気をモデルにしていると思われる三葉、トミカをモデルにしていると思われるトニカなど、日本を代表する企業をリストアップ。その中には、常盤の父の会社である常盤医療も含まれていた。
日本沈没を否定したのは…
東山総理は経団連に直々に「慈悲を求める」と協力を乞う。それにしても、経団連の理事たちは高齢者男性ばかりである。リアルだが、未来を描くSFとしては希望がない……。頭を下げる東山総理に対して、生島経団連会長はこれまで築き上げてきた事業や社員を委ねられないと突っぱねる。
常盤社長も移転先を政府に決められることに難色を示す。息子である官僚の常盤も強気で交渉するが、常盤父は「そもそも日本が沈むとは決まっていない」と、ジェンキンス教授が田所説を否定したと主張する。第3話で登場したピーター・ジェンキンスである。里城副総理が独自に動いていたのだ。日本沈没を否定する分析結果にはジェンキンスの署名もある。
里城は、田所と世良が「曰く付き」であることを盾に、世界的権威が日本沈没を否定したからには企業を交渉材料とした移民交渉は必要ないと主張する。ジェンキンス教授をつなげてくれと迫る天海に対して、官房長官がかけた「天海君」という言葉は「空気をよめ」という意味だろう。一方のDプランズ社は、日本政府に20倍の価格でモンゴルとインドの土地を買わないかと持ちかけてきていた。田所博士が勾留されている今、一体誰がDプランズ社を動かしているのだろうか。
天海はやはり諦めていなかった。単独行動でアメリカへ行ってジェンキンス教授に会うという。これを止めたのは意外にも、天海の家に居候している椎名だった。椎名は記者としてアメリカへ渡り、ジェンキンス教授に真相を確かめることを約束。カリフォルニア中央大学を訪ねた椎名は、日本政府がジェンキンス教授に日本沈没の情報を求める人物からの接触を禁じていることを突き止める。
その頃里城は、日本が沈没しないことを前提にした経済優先の「新東京経済都市計画」を経団連の会合で発表していた。里城と経団連が動けば、東山総理でも止められないだろう。天海はこの状況に「日本沈没がなきものにされてる」と悔しがったところで、第7話のタイトルが登場。第7話に及んで日本沈没を否定する新たな敵が現れたのだ。
意外な黒幕の正体
椎名はしぶとくジェンキンス教授の居場所を突き止めるが、教授は口を固く閉ざしている。しかし、椎名は圧力を受けたり、大金を積まれたりしたのではないかと学者が嫌がる疑いを投げかけ、ジェンキンス教授の口を開かせる。第6話で英語を披露した天海役の小栗旬、石塚役のウエンツ瑛士と同じく、椎名役の杏は英語が話せる。杏の父はハリウッドでも活躍する渡辺謙だ。
椎名は、ジェンキンスがもらったデータを正しく分析して否定したという証言を掴む。ということは、データを送った人物が怪しいということになる。田所博士はジェンキンス博士にデータを送っていないと主張。世良が調べたところによると、送られたのはスロースリップが停止していた時の古いデータだったという。
そして、ジェンキンス教授に日本沈没の可能性を否定させるために意図的にデータの一部分だけを送っていたのは、田所博士の助手だった。それが単独犯ではないことを見抜いた天海は、黒幕の正体を聞き、驚きの表情を見せる。
一方、東山総理はDプランズ社が土地の販売価格を20倍を5倍まで落としてきたという報告を受け、購入の判子を押していた。これには里城も「無駄遣いだと」反対しており、Dプランズ社と里城が繋がっているわけではないことが示唆される。
そこに入ってきたのは天海。田所博士の助手が脅されて古いデータを送ったことを明かしたのだという。そして、それを指示した真の黒幕とは、長沼官房長官だった。Dプランズ社も、モンゴルやインドの土地購入を長沼官房長官から進言されたことを認めたという。先回りして土地を購入したにも関わらず、企業移転案のせいで土地が売れなくなりそうになったために、ジェンキンス教授に田所説を否定させたのだ。
確かに思い返してみれば、第6話で田所博士がDプランズへ情報を流出させていると報告したのは長沼官房長官だった。第7話でもジェンキンス教授の分析結果に食い下がろうとする天海を制している。
官房長官は、これまで東山総理のために根回しをしてきたのに、総理が天海や常盤の言葉ばかりを聞くようになったことに嫉妬していた。更に「日本は自由民主主義の国」だから市民を置いて逃げる自由があると言い張る。
「自由民主主義」という言い回しが、自由民主党を想起させる。“自由”を求めるこの国の政治思想は、誰にとっての自由なのかということを考えさせられる展開だ。経済・地位・情報、全てに格差がある国で、その全てを揃えている人が最も自由に動けるのだとすれば、市井の人々は置き去りにされだけだろう。
長沼は「本気で救えると思ってるのか」と本音を吐露。移民できても地獄が待っていると主張する長沼に対し、天海は「生きていれば希望は見える」と主張する。天海は“希望のひと”なのだ。その姿を嘲笑う長沼だったが、東京地検に連行されていく。残念ながら、現実の日本では官房長官が汚職の罪を犯しても逮捕されることはないだろうが……。
日本売ります
新たなデータを分析したジェンキンスは、田所説を全面的に支持。みたび日本沈没説が肯定されることになったが、里城はこの事態を「あっていいはずがない」と駄々をこねる。天海が「日本は沈むんです」とキッパリ言い切ると、里城は戦後のどん底から経済発展を遂げてきた日本の姿を回想する。日本を「にっぽん」と言っている点が、里城が根っからの保守であることを示している。
里城は愛国者だ。であるが故に日本が沈むことを簡単に信じることができない。理論よりも感情が優先されてしまうのだ。天海は日本が築き上げてきたものを再び築けるように力を割くことを訴えかける。涙を流しながら話す天海に、里城はついに観念し、日本の「叩き売りが始まる」と投げやりな言葉を漏らすのだった。
なお、『日本沈没』の原作者である日本SF界の巨人・小松左京は、「日本売ります」というSF短編小説を発表している。こちらはハルキ文庫の同作が表題作になった短編集に収録されている。
田所博士は釈放。やはり国策捜査だったのだ。国策捜査について深く触れられることはなかったが、この国では、政府の人物の意向で捕まったり捕まらなかったりする人々が存在するという事実をドラマに取り入れたことは称賛したい。
そして、世良教授と田所博士が再会するシーンで、初めて田所博士の過去が明らかになる。かつては海外で環境問題にのめり込んでいたという田所博士だったが、3.11のニュースを見て、関東沖のプレートの危険を知らせることが使命だと思い日本に戻ったと、その経緯を初めて口にする。10年前から日本沈没の可能性を読み取っていたということである。そして、和解した世良教授と田所博士の共同作業が始まる。
田所博士、世良教授、ジェンキンス教授の三人が日本沈没を認めたことで、生島会長もあっさり日本企業の移転案を受け入れる。生島自動車が先陣を切り、最大限の移民枠を勝ち取り、生島の海外移転発表と共に日本の窮状を訴えるというのが政府の作戦だ。
そして、生島は、日本の「唯一の同盟国」であるアメリカと、距離的に近くスケールも大きい中国が移転先の候補になる。リベラルの東山にはアメリカに太いパイプがあり、保守の里城には中国に太いパイプがあるというのが、面白い設定である。現実においても、かつて保守党・保守新党・自民党の幹事長を歴任した二階俊博も中国との太いパイプがあることで知られる。
天海は、交渉先に足元を見られないように、アメリカと中国と同時に交渉することを提案。確かに、日本最大の企業である生島自動車は第一手にして切り札。アメリカと中国を競合させ、より良い条件を引き出すにはうってつけだ。里城の言う「叩き売り」ではなく、日本を「競売にかける」ということだ。
日本という国は戦後、大国の後ろ盾なく外交で強気に出たことはない。選ばれなかった方の国は日本に悪感情を抱くだろうが、一人でも多くの市民を受け入れてもらうためには怯んでいられない。
アメリカ・日本・中国
東山総理と常盤はアメリカ大使館へ、里城副総理と天海は中国大使館へ出向く。この4人が残ってチームプレーに出るとは、意外な展開である。アメリカ大使のロバート・クロフォードは、お笑いコンビ・パックンマックンの“パックン”ことパトリック・ハーランが演じている。パックンは原作小説のファンだという。
アメリカ大使のロバート・クロフォードも中国大使の周家平も、沈没の可能性が日本全土に及んでいると聞き、強気な態度に出る。同盟国のアメリカが移民受け入れを「多くても50万人程度」と答える。1億2,000万分の50万……あまりにも少ない数字である。クロフォード大使は経済あってこその同盟だと主張。国土が沈没すれば日本に価値はないということだ。アメリカらしい、徹底した現実主義である。
里城は、中国が自動車大国を目指しているという切り口で、東山は優れた企業をアメリカに渡すとすれば、という枕で、「生島自動車を渡すとなればどうなりますか」と同じセリフを大使に投げかける。結果、アメリカからはナショナルモータースに吸収合併されることを条件に300万人の受け入れを、中国は合併不要で200万人という回答を得る。
生島会長は、支社もあるアメリカなら社員も馴染みやすいが生島の名前は消える、中国は国家体制に縛られる可能性があることが懸念と悩む。一方、天海は生島で300万人なら、他の企業はそれ以下になると懸念し、次の交渉ではより良い条件を引き出すと宣言する。東山、里城、常盤と歩調を合わせて挑むアツい展開だ。
アメリカから戻った椎名は知らぬ土地で生きていくことの恐怖を隠さない。未来の希望へと変えていくことが自分たちの仕事だと勇気づける天海だが、この後、思いがけない展開が待っていた。
再交渉の末、アメリカは500万人が限界だが、「もう一社いただけるなら話は別」と沈みゆく日本の足元を見始める。そもそも最初の50万人の10倍になっているが、これもまた“限界”ではなかった。日本政府は両大使に生島の他国への移転の可能性をあげ、結果的にアメリカ、中国双方の怒りを買う。しかし、憤るのは、生島を手に入れたいからだ。
里城は、主席の命を受けているなら移民枠を確保するのがあなたの仕事だと周大使を説得した上で、頭を下げる。これが里城の政治力なのだろう。味方になるとこんなにも心強いのか……。
まさかの失態
結果、アメリカは倍増で600万人、中国はなんと5倍の1,000万人もの移民受け入れを提示する。日本人口の12分の1、中国人口の140分の1である。やはり中国の事情を知り尽くしていた里城の政治力が上回る結果となった。だがここで東山総理が「アメリカとの関係にヒビが入る」と激怒。何らかの事情があるらしい。
実は東山総理にはアメリカのキング大統領から電話が入り、「日本への人道支援を全世界に呼びかける」という言葉を受けて「必ずアメリカでまとめる」と約束してしまったという。中国の方がより多くの市民の命を助けることができたはずであり、里城は「約束が違う」と激怒する。
と、ここでお笑いコンビ・ニッチェの近藤くみこ演じる秘書がGNNであるニュースが流れていると生島会長に伝える。画面では、キング大統領がナショナルモータースと生島が合併すると発表したことが報じられていた。中国に先手を取られないように、トップ同士の合意だけで既成事実化を狙ったのだ。流石は大統領制の国である。アメリカらしい強引さだ。
だがこれもまた、アメリカの一枚上手の政治力・外交力である。流石の里城も「この代償は高くつくぞ」とすごむことしかできない。これで、生島自動車のアメリカ移転は決定的に。だが、悲劇はこれだけでは終わらなかった。
中国政府が日米両政府への強い抗議を発表したのだ。中国移転に誠意をもって対応してきたが、これは裏切りであるとして、中国は1,000万人の日本人移民を受け入れることをオファーしていたと発表。「なぜなら日本が沈没するからです」と、日本政府が極秘にしていた情報が世界に発信されてしまう。すべての苦労が水の泡になり、天海は思わず「最悪だ!」と本音を吐露するのだった。
そして、次回予告は「最終回前、第8話」とアナウンスされる。『日本沈没―希望のひと―』は全9話で構成されることが明らかになっている。そして最終回は2時間超の放送時間になり、映画一本分の長さになる予定だ。また、予告では「追い込まれる国家」「国民の怒りも爆発、天海は危険な賭けに出る」という文言も踊る。
中国の発表は、日本の人々を味方につける絶妙な会見になっていた。移民計画を間に合わせることも重要だが、日本に住む人々の合意と協力は欠かせない。東山総理は対米従属で招いた失態をどのように取り返すのだろうか。
ドラマ『日本沈没―希望のひと―』第7話 感想まとめ
『日本沈没―希望のひと―』第7話はここにきて若干駆け足だったように思える。“日本沈没しない勢”との戦いは描かれる必要があったが、その展開は関東沈没時に一度やってしまっているため、巻きで見せる必要もあったのだろう。第7話の後半は一転して対米・対中の交渉がメインに。外交が描かれるのは、単純にごまかしのきかない駆け引きが見れるので面白い。
一方で、長沼官房長官が第7話で退場し、日本政府内もまとまったため、ドラマに参加するプレイヤーが減ってきている点は気になる。中村アン演じる外務省の相原美鈴の活躍にも期待したい。一方で、田所博士の心強い味方として世良教授が復活し、政府が“政治”をやっている間にも二人が日本沈没を分析する“科学”をやっている姿が映し出されたのが印象的だった。政治がどうなっていようと、自然の脅威は着実に近づいているのだ。
なお、リベラルな総理が米国大統領と勝手に合意してしまう展開は、鳩山元総理が当初「最低でも県外」としていた沖縄の普天間基地移設の問題に関してオバマ大統領に「トラスト・ミー(私を信じて)」と言ったと報じられた件を思い出す。鳩山元総理は後に、食事の際に満腹だという意思表示で「トラスト・ミー」と言ったと弁解したが、対米従属によって市民の声が無視されてきた事実は変わらない。東山総理の独断に日本の人々がどのような反応を示すのかにも注目だ。
そして、椎名記者が天海に「なんでもやります」と言い続けていることも気になる。椎名にはハッピーエンドが待っていてほしいが、果たして……。
あっという間に最終回目前を迎えるドラマ『日本沈没―希望のひと―』。次の展開を注視しよう。
ドラマ『日本沈没―希望のひと―』は、TBS系の日曜劇場枠で2021年10月10日(日)より毎週日曜日21時から放送中。Netflixでも配信されている。
小松左京『日本沈没』は新装版がハルキ文庫から発売中。
『日本沈没―希望のひと―』第8話のネタバレ感想はこちらから。
第1話のネタバレ感想はこちらから。
第2話のネタバレ感想はこちらから。
第3話のネタバレ感想はこちらから。
第4話のネタバレ感想はこちらから。
第5話のネタバレ感想はこちらから。
第6話のネタバレ感想はこちらから。