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『ウエストワールド』バーナード役俳優に注目
高い評価を受けるジェフリー・ライト
HBOの人気ドラマ『ウエストワールド』でバーナード役を演じるジェフリー・ライトは、2018年のエミー賞主演男優賞にノミネートされるなど、高い評価を得ている俳優の一人だ。『ウエストワールド』では、人間が”ホスト”と呼ばれるアンドロイドに対して思いのままに行動できるテーマパーク、ウエストワールドを舞台に、ウエストワールドのアンドロイドのプログラマーであり、プログラム部門の責任者であるバーナード・ロウ役を演じている。バーナードは、物語の台風の目となる人物で、バーナードがある人物に告げられた衝撃の事実は、多くの視聴者を驚かせた。
“人間”を問う『ウエストワールド』
そもそも『ウエストワールド』というドラマは、“アンドロイドの反乱”を描きながら、そもそも人間の意識はどこからくるのか、なぜ人は物語るのか、といった哲学的なテーマを扱っている。一方で、作中で問われる人間のモラルや人間らしさといった倫理的なテーマも、『ウエストワールド』の特徴だ。「何をしてもよい」テーマパークで、人間はどのように振る舞い、アンドロイドをどのように扱うのか、視聴者は登場人物に自分の心を重ね合わせることで、自問を繰り返すことになる。
ドラマにとどまらないジェフリー・ライトの活動
LGBTQ支援団体から表彰
そして、バーナード役のジェフリー・ライトは、ドラマの外においても、そうした”人間的”な問いを忘れていない。2017年、ジェフリー・ライトは、LGBTQを支援する世界最大の団体、ヒューマン・ライツ・キャンペーン(Human Rights Campaign)から性的少数者の権利獲得に貢献したとして表彰を受けている。1980年代の同性愛者たちの苦悩を描いたドラマ『エンジェルス・イン・アメリカ』(2003)での功績が認められたのだ。ジェフリー・ライトは、この作品で2014年のトニー賞助演男優賞を受賞している。
Step into analysis.@jfreewright has been nominated for “Outstanding Lead Actor in a Drama Series” at this year’s #Emmys. #Westworld pic.twitter.com/Eu2gVsLU8q
— Westworld (@WestworldHBO) 2018年7月12日
トランプ大統領の政策に言及
2017年12月、ヒューマン・ライツ・キャンペーンの表彰式に登場したジェフリー・ライトは、同年大統領の座に就いたドナルド・トランプの政策について、以下のように述べた。
今、私たちの国で何が起きているのか、私には全く理解できません。
(中略)
「大統領として、私の持てる力を使い、他国の憎きイデオロギーによる暴力と抑圧からLGBTQの人々を守る為に尽力する」と話していた国が、今や「同性愛は公衆衛生上の問題だ」と主張する国内の団体と関係を密にしているのです。
by ジェフリー・ライト
ジェフリー・ライトがスピーチに込めたメッセージ
LGBTQに対する政府の方針に言及
この年、ドナルド・トランプ大統領は、「医療コストと混乱」を理由に、トランスジェンダーの人々の米軍入隊を禁止する方針を発表していた。ジェフリー・ライトは、アメリカが過去5度の戦争を起こし、トランス・ジェンダーの人々による奉仕を受けながら、改めてトランス・ジェンダーの人々を排除しようとしていると、その矛盾を指摘。アメリカという国は、「自惚れていて、自己欺瞞的で、いつまでたっても現実と向き合おうとしない者がパイロット」であり、「嘘つきで信頼に値せず、破綻している」「アメリカ人に対する侮辱ですらある」と厳しく政府を批判した。
「”闘う”ということを教えられたではありませんか」
さらにジェフリー・ライトは、アメリカという国を一つの飛行機に見立て、以下のように述べた。
フライトの途中で減速させ、軟着陸させる――その試みは、自己欺瞞的な人々に自覚を促すことになります。
(中略)
自己欺瞞的な試みに、抵抗しなければいけません。私たちは皆、同じ経験とバックグラウンドを共有しています。”闘う”ということを教えられたではありませんか。それは目新しいことではなく、私たちにとっては恐れるに足りません。
デマと嘘を切り抜け、発信し、抵抗し、訴訟を起こし、(国歌斉唱時に) 膝をつき*、そして投票しましょう。
*同年、警察による黒人への暴力に抗議するNFL選手らが国歌斉唱時に膝をつくパフォーマンスを行なっていた。
最後には、階級や人種、宗教、性的指向の違いを越えて結束することを呼びかけ、この演説を締めている。米国では、俳優が自身の政治的信条を表明することは、一市民として当然のこととされている。フィクションにとどまらないジェフリー・ライトの現実での活動は、LGBTQの人々にも勇気を与えたはずだ。人間らしく生きるとはどういうことなのか――『ウエストワールド』が問うたテーマを、ジェフリー・ライトは現実でも問い続けている。
Source
Human Rights Campaign