『デッドプール&ウルヴァリン』が全米でも公開
映画『デッドプール&ウルヴァリン』が日本で世界最速公開されたのに続き、2024年7月26日(金) に全米でも公開された。『デッドプール&ウルヴァリン』では、旧20世紀フォックスでデッドプールを演じてきたライアン・レイノルズと、ウルヴァリンを演じてきたヒュー・ジャックマンが復帰。『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009) 以来となる共演をMCUで果たすことになった。
『デッドプール&ウルヴァリン』の見どころは、もちろんデッドプールとウルヴァリンの掛け合いと、二人が出会いを通して変化していく姿だ。米国でも劇場公開を迎え、米マーベル公式ではライアン・レイノルズが『デッドプール&ウルヴァリン』で描かれる二人のテーマについて語っている。本作で描かれた場面と重ね合わせながら、その内容を見ていこう。
なお、以下の内容は『デッドプール&ウルヴァリン』のネタバレを含むので、必ず劇場で本編を鑑賞してから呼んでいただきたい。
以下の内容は、映画『デッドプール&ウルヴァリン』の内容に関するネタバレを含みます。
『デッドプール&ウルヴァリン』主演俳優が明かしたテーマ
ウェイドとローガンが直面した危機
『デッドプール&ウルヴァリン』では、デッドプールことウィルソン・ウェイドが自分のユニバースが消滅する危機を救うため、他のユニバースのウルヴァリンをリクルート。唯一捕まえられたのが、世界を失望させてヒーローになれなかったウルヴァリンだった。
このウルヴァリンは、X-MENとして戦うようスコット(サイクロップス)たちから求められたというが、それを断り続けていた。ある日、X-MENが襲撃された際にも酒に逃げて、X-MENは全滅してしまったという。このウルヴァリンが今までヒュー・ジャックマンのウルヴァリンが一度も着なかった黄色いコスチュームを着ている理由は、自分の罪を忘れないための戒めだったのだ。
一方のデッドプールも問題を抱えている。前作『デッドプール2』(2018) の後、デッドプールはアベンジャーズの面接を受けたが落とされてしまい、中古車販売の仕事に就いていた。ウェイドにヒーローとして活躍することを期待していたヴァネッサとも別れ、同僚のピーターからデッドプールとして活動することを求められても乗り気ではない。ハッピー・ホーガンの「居場所を見つけろ」という助言が、ヒーローとしてのデッドプールの課題を示している。
共通するのは「恥」
米マーベル公式では、デッドプール役のライアン・レイノルズとウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンのインタビューを公開。二人のキャラクター像について語られている。
ライアン・レイノルズ、ヒュー・ジャックマン、そして監督のショーン・レヴィはよくつるんでいたということだ。ライアン・レイノルズは本作でウルヴァリンのキャラクター像を創り出すにあたってのヒュー・ジャックマンの貢献に触れつつ、二人に共通するテーマについて語っている。
君はこのキャラをどうやってスクリーンに復帰させるか、という根本的な課題を解決してくれた。混沌としていて他とは違うデッドプールの世界では、皆さんが思っている以上にこの二人のキャラクターには多くの共通点がある。二人とも全く異なるやり方で“恥”に対処しているんです。
『デッドプール&ウルヴァリン』でデッドプールとウルヴァリンが共に向き合っているのは、自分の中にある“恥”だという。『デッドプール2』のラストでは、デッドプールはタイムトラベルで『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(2009) の原作とかけ離れたデッドプールや、『グリーン・ランタン』(2011) のオファーを受けようとしている自分を殺していた。これもある意味で過去の“恥”を消し去る行為だったと言える。
『デッドプール&ウルヴァリン』おいては、「“なかったこと”にしなくてい」というメッセージが作品全体を通して訴えられている。ヴェネッサの期待に応えられず、ヒーローになれないデッドプールの恥。X-MENの誘いを断り、仲間を見殺しにしたウルヴァリンの恥。確かに、『デッドプール&ウルヴァリン』の二人が背負っていた問題は「恥」という言葉に集約できそうだ。
『デッドプール&ウルヴァリン』では、ウルヴァリンは恥を捨てて自分の過ちと向き合い、“デッドプールの仲間たち”という自分が助けられる目の前の人々を助けることにした。デッドプールは「世界を救うタイプのヒーローじゃない」とハッピーやカサンドラから言われながら、大切な人たちを守るという等身大の目標を達成するために自分を犠牲にしようとした。
過去の過ちに対する恥、プライドを捨てることに対する恥。中高年の歳に差し掛かった二人が互いの問題を指摘し合いながらそれを乗り越えていくというのが『デッドプール&ウルヴァリン』の物語だったのではないだろうか。
オデッセイでの口論
ライアン・レイノルズは、そんな『デッドプール&ウルヴァリン』のお気に入りのシーンとして、ホンダ・オデッセイの中でデッドプールとウルヴァリンが口論する場面を挙げている。
このシーンでは、まずデッドプールがしつこくウルヴァリンが黄色いスーツを着ている理由を聞き出そうとウルヴァリンをイラつかせてしまう。ちなみにデッドプールは挫折を味わった時に真っ先にスーツを脱いだとも話しており、アベンジャーズに入れなかったことを“挫折”と捉えていることも分かる。
そして、ウルヴァリンはデッドプールが「もしあんたの世界が修正できたら」と言ったことに激昂し、世界を修復できる確証がなかったことに対して、デッドプールに「嘘をついた」と詰め寄る。するとデッドプールは、「自分にとっての世界」として仲間の写真を見せながら、自分の弱さを認めて「俺には救い方が分からない。雇われて人を殺すことしか知らない」と吐露する。デッドプールが仲間を救うためにプライドを捨てた瞬間だ。
だが、怒りのウルヴァリンはここからデッドプールに対して畳み掛ける。「お前はアベンジャーズにもX-MENにも入れない」「200年生きてこんなクソ野郎に出会ったのは初めて」「お前に世界は救えない。ストリッパーとの関係すら修復できなかった」「死ねばいいのに皮肉にもお前は死ねない、世界の厄介者だ」と、言い過ぎなくらいに言い切るのだ。
普段寡黙なウルヴァリンがデッドプールに投げかけた率直な言葉。実はこのシーンのウルヴァリンのセリフは、デッドプールを演じたライアン・レイノルズ自身が書いている。デッドプールはこれらの言葉に反論できず二人の戦いが始まるのだが、デッドプールを一番理解しているライアン・レイノルズだからこそ、デッドプールが反論できない耳の痛い批判を並べることができたのだろう。
ライアン・レイノルズはこのシーンの撮影について、こう語っている。
私は普段おしゃべりな人間なんですが、でもヒューのスピーチの一言一言を感じられて(良かった)。あのレベルのスピーチを見れたというのがね。あのセリフを書いたものとしては、体外離脱をしているような体験でした。役になり切りながらも、あれほどいい気持ちになったことはありません。彼のあんな役者ぶりを見られたことは、私のキャリアを通してのハイライトの一つになるでしょう。
ヒュー・ジャックマンもライアン・レイノルズの演技について、「ライアンの演技を見て私の心が燃えるのは、その人間性」「素晴らしい俳優で、キャラクターをとても大切にしているから、(そのキャラの)あらゆる面をきちんと見せようとしている」と称賛している。
寡黙なウルヴァリンが声を荒げ、お喋りなデッドプールが黙り込んだあのシーンにこそ、『デッドプール&ウルヴァリン』の真髄が宿っていると言える。ラストシーンでは、デッドプールとウルヴァリンは仲間たちと笑顔を見せて食卓を囲むことになる。後悔と恥に飲まれて強がっていたウルヴァリンの姿はそこにはなく、自分の背中を押してくれたローラと一緒にドッグプールを愛でている姿が印象的だった。
正反対なようで共通する問題を抱えていた二人が揃った『デッドプール&ウルヴァリン』。願わくばまた近いうちに二人のタッグが見たいところ。デッドプールが言うように、「90歳まで」続けてくれるだろうか。
『デッドプール&ウルヴァリン』は2024年7月24日(水) より全国の劇場で公開。
原作コミックでのデッドプールとウルヴァリンの関係も紹介! デッドプール30周年の歴史を振り返るムック本『デッドプール 30th Anniversary Book』は発売中。
『デッドプール&ウルヴァリン』のオリジナル・サウンドトラックは発売中。
『デッドプール』『デッドプール2』は2枚組のBlu-rayコレクションが発売中。
ダニエル・ウェイ&スティーブ・ディロンによるコミック『デッドプール VS. ウルヴァリン』は、吉川悠による邦訳版が発売中。
Source
Marvel.com
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