映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』公開
人気格闘ゲーム「モータルコンバット」シリーズの映画版最新作となる『モータルコンバット/ネクストラウンド』が2026年6月5日(金) より日本の劇場で公開を迎えた。本作は2021年に公開された映画『モータルコンバット』の続編にあたり、サイモン・マッコイドが監督を続投する。
そして、なんといっても『モータルコンバット/ネクストラウンド』の注目ポイントは、ドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-2026) でビリー・ブッチャー役を演じたカール・アーバンが、原作ゲームの人気キャラであるジョニー・ケイジ役で主演を務めたという点だ。カール・アーバン主演の実写長編映画は『ジャッジ・ドレッド』(2012) 以来となる。
映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』では、どんな作品になったのだろうか。今回は、そのラストを中心にネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容は結末に関するネタバレを含むので、必ず本編を劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』の結末に関するネタバレを含みます。
Contents
映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』ネタバレ解説
二人の新たな主人公
映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』は、二人の主人公を軸にストーリーが進んでいく。一人は、魔界のシャオ・カーンに支配されたエデニアの王女キタナ。そしてもう一人は、人間界の落ち目のハリウッド俳優ジョニー・ケイジだ。
前作『モータルコンバット』では、魔界と人間界の間で行われる“モータルコンバット”という格闘技大会で10連勝した方が相手の世界を支配できる、というコンセプトが紹介された。結局前作では大会開催前に魔界側が暗殺作戦を仕掛けたことで、大会自体は開催されなかった。
本作『モータルコンバット/ネクストラウンド』では、ついにその大会が開催される。前作の主人公コール・ヤング、ソニア、ジャックス、リュウ・カンが大会に備えて訓練を積んでいたことも明かされる。そこに最後の“チャンピオン”として、前作ラストでポスターが登場していたジョニー・ケイジが召喚されるのだ。
シャオ・カーンに父を殺され、母を支配されたキタナの主人公然とした凛々しさに対し、ジョニー・ケイジは今回の一般人枠。急に人間界を救えと言われてもついていけない。浅野忠信演じる雷神のライデンは、人間界を守るべく、人間界のチャンピオンたちを仕切っているのだが、前作でコールにしたのと同じように一度はジョニー・ケイジを元の場所に帰してあげている。
ライデンがジョニー・ケイジに「大きな考え方」を説くシーンもあるが、原作ゲームでもライデンはジョニー・ケイジはヒーローになれると信じた人物だ。『モータルコンバット/ネクストラウンド』でも、自分が選ばれし者だとジョニー・ケイジが気づくまで、ライデンはジョニー・ケイジに付かず離れずで寄り添うことになる。
巧みな二重構造
『モータルコンバット/ネクストラウンド』の面白いところは、前作のように“場外乱闘”に終始するわけでも、モータルコンバットの大会一辺倒になるわけでもなく、ルールのある大会とルール無用の戦いを同時に描いていく点だ。これにより、各キャラクターに単独戦の見せ場を作りつつ、勝敗はしっかりつけた上で、一度負けたキャラにもストーリー上の見せ場が生まれるという巧い構成が生み出されている。
この二重構造があるおかげで、キタナは魔界側のプレイヤーとして戦うが、実は裏でライデンに通じていて、人間界側を支援しているという設定がより活きる。一方で、魔界側も魔術師のクァン・チーの力で前作で死んだクン・ラオ、カノウ、そしてサブ・ゼロを復活させると、不意打ちでライデンを瀕死に追い込む重傷を負わせると共に、“護符”の力でシャオ・カーンを不死身にすることに成功する。
「モータル=死ぬ運命」のコンバットなのに、「インモータル=不死」になるというチートぶり。『モータルコンバット/ネクストラウンド』では、こうして、いずれのプレイヤーも死に至りうるというモータルコンバットの公平性、モータルコンバットらしさを取り戻すための、モータルコンバット外での戦いが繰り広げられることになるのだ。
二つのベストバウト
映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』のベストバウトの一つが、リュウ・カン vs クン・ラオだ。前作で義兄弟として仲の良い姿を見せていた二人だったが、クン・ラオは前作で死んでしまっていた。前作で最初から能力が覚醒していたリュウ・カンは、本作では人間界でも「最強」と言われている。
クァン・チーによって蘇ったクン・ラオが魔界側でモータルコンバットに参加し、育ての父であるライデンの暗殺を実行してしまった。その二人がモータルコンバットで戦うことになるのだが、この格闘シーンが凄まじい。
前作から圧倒的成長を遂げたリュウ・カンの逞しさ(「やらせないでくれ」と請うのも実力差の現れだ)はもちろん、クン・ラオの飛び道具である帽子が今どこにあるのか、急にリュウ・カンの喉を掻っ切らないかとドキドキする緊張感は、まさに「モータルコンバット」という死が隣にある作品の魅力を象徴している。
リュウ・カンはクン・ラオに勝利し、クン・ラオは再び死ぬことになるのだが、リュウ・カンは必ず連れ戻すと約束している。劇中では首を落とすと復活は難しいという設定に触れられており、リュウ・カンがクン・ラオの腹部に重傷を負わせて倒したのは、復活させることを前提としていたからだろう。
一方で、不死身となったシャオ・カーンに頭部を潰されてしまったのが前作の主人公であるコール・ヤングだ。コール・ヤングは映画オリジナルキャラでもあり、いわば映画視聴組と育ってきた映画世界のトレードマークでもあったので、その退場は残念だった。ハンマーで頭を潰されてしまったが、復活できるのだろうか……。
中盤のもう一つのハイライトは、キタナがもたらした護符の存在についての情報をもとに、エデニアに出向いたジョニー・ケイジがタルカタン族のバラカと戦うシーンだ。「ハリウッドの交渉術」を使った結果、バラカと戦う羽目になったジョニー・ケイジは、ジャッキー・チェンばりのコミカルなアクションを見せることになる。
しかし、アクションスターのジョニー・ケイジは、サングラスを付けるとカンフーあるいはジークンドーの達人になりきり、バラカを圧倒。最後はゲームでもお馴染みの金的で勝利している。懐かしのカンフー映画の楽しさと共に、演じたカール・アーバンの生身のアクションとコミカルな演技が楽しめる名シーンだった。
一同は護符に辿り着くも、ジャックスがシャオ・カーンによって殺され、護符はサブ・ゼロによって冥界へ持ち去られてしまう。ソニアとリュウ・カンが大会に強制参加させられる中、快楽主義者のカノウが人類を守るために人間界側につき、ジョニー・ケイジとカノウは護符を持つサブ・ゼロを追って、冥界へと向かうことになる。
映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』ラストをネタバレ解説
二つの最終決戦
映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』のラストでは、モータルコンバットの最終戦として、シャオ・カーン&キタナ vs ソニア&リュウ・カンの戦いが描かれる。ただし、裏切りがバレたキタナは拘束されている。
一方で、冥界ではジョニー・ケイジ&カノウが真田広之演じるスコーピオンことハサシ・ハンゾウと合流。妻と息子を殺したサブ・ゼロが復活したと知ったスコーピオンは、地獄のショーグンと化して分身したサブ・ゼロとチーム戦に挑むことになる。
この終盤の展開も、不死になっているシャオ・カーンのチート解除と、モータルコンバットでの正当な勝利による人間界の保護という作業が同時進行で描かれていて観客に休む間を与えない。怒涛のテンポで最終決戦が描かれていくのだ。
リュウ・カンは自らがシャオ・カーンを倒す選ばれし者ではないと悟ると、自分の役目は義兄弟のクン・ラオを連れ戻すことだとして、シャオ・カーンのハンマーを焼き切り炎となって天へと昇っていく。一方のソニアも敗れるのだが、捕えられていたキタナをソニアが解放したことで、キタナは人類側に付くと宣言。ソニア vs シャオ・カーンが最後の試合になる。ゲームの演出を意識したソニアの「Fight!(戦え!)」がニクい。
サブ・ゼロ戦は、護符の破壊方法が分からないジョニー・ケイジがカノウに「裏に説明書いてないか」と言われてノリツッコミを披露するサービスシーン(?)を挟みつつ、ジェイドが参戦。一度はキタナをシャオ・カーンに差し出したジェイドだったが、人間側についてサブ・ゼロを追い込んでいく。
スコーピオンの活躍はもちろん見どころだが、護符破壊ミッションでラストを飾ったのは、やはりジョニー・ケイジだ。ジョニー・ケイジはライデンからの「大きく考えろ」という助言を思い出すと、「俺がジョニー・ケイジ様だ(I am Johnny F○○king Cage)」と自信を取り戻して強烈なキックを喰らわせ、護符を破壊したのだった。
映画「モータルコンバット」におけるアルカナ(Arcana、秘めたる力)は、その人物が自分の内面と向き合うことで覚醒する。自分がスターであること、ヒーローになること、選ばれし者であることを受け入れたことで、ジョニー・ケイジは覚醒することができたのだ。
ライデンの「大きく考える」という助言は、自分を卑下するのではなく、客観視することで大いなる責任を受け入れろという意味でもあったのだろう。ライデンとジョニー・ケイジの絆の発展が描かれるシーンでもあり、ここもハイライトの一つだったと言える。
ラストの意味は?
護符が破壊されたことでシャオ・カーンはインモータル=不死ではなくなった。不死であったことの驕りが出たか、キタナに首を斬られてシャオ・カーンは追い込まれていく。後がないから“モータル”の人間は強いのだ。
それでも、シャオ・カーンの鍛冶場の馬鹿力で首を絞められたキタナは、薄れゆく意識の中で父のことを思い出す。キタナは、父の仇であるシャオ・カーンに対して父の形見であるリボンを使いマウントを取ると、回転扇子ノコギリで頭を切り落として勝負あり。エデニアの女王となったキタナが、王妃の座にジェイドを据えるシーンがカッコ良すぎる。
『モータルコンバット/ネクストラウンド』のラストシーンでは、ジョニー・ケイジが弟子にしたバラカとタルカタン族の子ども達に「2〜3脚色した」英雄譚を語り聞かせている。「英雄は周囲を助け、危機の時に周囲に助けられる」という言葉が印象的だ。
そこに復活したライデンがソニアやキタナたちと現れると、一行は捕らえた魔術師のクァン・チーと共に仲間たちを連れ戻しに行くという。ライデンとジョニー・ケイジを中心としたバチバチにカッコいいラストショットと共に、映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』は幕を閉じている。
映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』ネタバレ感想&考察
2026年トップ級の面白さ
映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』、予想に反して、と言うと申し訳ないが、2026年のかなり上位に入る出来で、テンポも良くて繰り返し観たくなる楽しさだった。前作から続投したサイモン・マッコイド監督は、長編を「モータルコンバット」しか撮っていないという異端だが、前作と比べると(良い意味で)非常にまとまった作品を作れるようになったのではないだろうか。
既に書いたが、トーナメント内の戦いとトーナメント外の戦いを並行して描くことで、ストーリーの自由度を上げつつ、ゲームの要素はふんだんに取り込んだ上で、実は20人近く登場しているメインキャラをゴチャつかせずに描き切ることに成功している。これを本編110分という尺にまとめたことでテンポも良く、映像表現の工夫によって反復している感じもなく、とにかく面白い作品に仕上がっている。この辺りは、本作から単独で脚本を担当したジェレミー・スレイターの力に拠るところも大きいのだろう。
家族と民を背負うキタナのストーリーは泣けた一方で、贅沢を言うなら、ジョニー・ケイジのバックストーリーはもっと観たかったが、次回作で描かれることに期待したい。
ジョニー・ケイジが「顔がいいだけ」を連呼するのは、演じたカール・アーバンのキャラと合わせて笑えたし、クン・ラオが蘇った瞬間に「俺は蘇った」と言ったり、喉をやられたライデンさんが思いのほか喋り続けたりするのは真面目なのか狙っているのか分からないが笑ってしまった。
とにかく笑えて泣けるアクション大作という感想で、ここまで五角形のパラメーターが大きい、バランスの取れた映画は久しぶりと言ってもいい。
光ったキャスト陣
新キャストの方では、キタナを演じたアデライン・ルドルフと、ジョニー・ケイジ役のカール・アーバンがアッパレ。香港生まれのアデライン・ルドルフとニュージーランド生まれのカール・アーバンが、父および民を背負ったキタナと自分と向き合うことを求められるジョニー・ケイジをそれぞれ演じ、ダブル主人公として上手く機能していたことはなんだか勝手に感慨深い。シャオ・カーンを演じたボディビルダー出身のマーティン・フォードも圧倒的な存在感を見せていた。
続投組では、ルディ・リン演じるリュウ・カンが存在感を大きく増していた。ルディ・リンといえば映画『パワーレンジャー』(2017) のブラックレンジャー役でも知られるが、本作でもところどころでケレン味のある所作が良い味を出していた。より現実的なキャラのジョニー・ケイジとの対比としても良かった。
ジェシカ・マクミナー演じるソニア・ブレイド、ジョシュ・ローソン演じるカノウらも安定の“良さ”を醸し出していた一方、真田広之&浅野忠信の二人も一層渋さが増していて見事だった。スコーピオンを再演した真田広之は、前作に続いて死してなおクライマックスの良いところを持っていってしまうし、ライデン役の浅野忠信はリュウ・カンやコール・ヤングらアジア系キャラの父/師としてさらに貫禄が増した姿を見せてくれた。
惜しいのは、これだけ日系のキャラが多いゲームが原作でありながら、若手キャストの中に日本出身のキャストがいないということだ。次回作が作られるなら、真田広之&浅野忠信に続くスターの登場にも期待したい。
カール・アーバンを見て思ったこと
ジョニー・ケイジを演じたカール・アーバンについては、7年間ビリー・ブッチャーを演じてきたドラマ『ザ・ボーイズ』がシリーズフィナーレを迎えた翌週に、『モータルコンバット/ネクストラウンド』が日本で公開されることになった。結果的に、『ザ・ボーイズ』ロスのファンの心を埋めるかのように本作では元気な姿を見せてくれた。
中指を立てながらサングラスを直す仕草は原作ゲームからそのまま採用されたポージングだが、それ以外にもたまにブッチャーを思わせる破天荒さをチラつかせつつ、ハリウッドスターという設定に見合ったスラリとした佇まいを見せていた。
ジョニー・ケイジがバーで飲んだくれて腐っている姿を見ると、『ザ・ボーイズ』のブッチャーはホームランダーという的に向かって突き進む矢のような存在で、それが魅力だったのだなと思い至った。全く分からない人もいると思うので、『ザ・ボーイズ』の話はこれくらいにしておこう。カール・アーバン、二重の意味でハリウッドスターに舞い戻ってくれて良かった。
続編はどうなる?
気になるのは、映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』に続編、つまり第3作目があるのかという点だ。そもそも映画「モータルコンバット」シリーズは三部作として構想されており、前作が公開された2021年の時点で、共同脚本家のグレッグ・ルッソは第3作目をトーナメント後の物語にする予定だと、米Colliderに語っていた。
『モータルコンバット/ネクストラウンド』のラストでは、力で死んだ人間もクァン・チーの蘇らせることができるという設定が採用されたため、既に退場したキャラも復活する可能性が出てきた。仮に頭が潰れたコール・ヤングが復活できるとすれば、同じく頭を切り刻まれたシャオ・カーンの復活もあり得るだろう。
原作ゲームのストーリーとしては、ジョニー・ケイジの娘が絡む展開は描き甲斐があるのではないだろうか。ソニアを生かしてくれたので、ジョニーとソニアを中心とするストーリー展開に期待したいところだ。
続編制作の基準になるのは興行収入だと思われるが、前作『モータルコンバット』は5,500万ドルとされた製作費に対して興行収入約は8,440万ドルだった。ただし、2021年の公開当時はコロナ禍の真っ只中で、米国では劇場公開と同時にHBO Maxでも配信され、同サービスでの配信初週で史上最も視聴された映画になった。
HBO Maxでは、いわゆる「会員は見放題」という形での配信であったため、単純に売り上げを計算することは難しいが、『モータルコンバット』は配信時に380万世帯で視聴されたという。これを映画代に換算してしまえば、数千万ドルの利益が上乗せされることになる。
本作『モータルコンバット/ネクストラウンド』の製作費は8,000万ドルとされており、日本公開時点の世界興収は1億2,680万ドルに達している。これだけのキャストを擁していながら製作費が安いのは、ロケ地誘致に力を入れているオーストラリアを主なロケ地として撮影されているからだろうか。キャストも非米国系の出演者がメインになっており、近年のハリウッド映画では珍しい作りの作品であることは確かだ。
日本公開で興行収入がどれだけ積み重ねられるかという点にも注目だが、米国では早くも6月9日からデジタル販売がスタートする。ゲーム原作なので配信との相性が良いという線も考えられるので、トータルで見て、第3作目の制作にGoが出るかどうかを見守りたいところだ。
【追記】続編およびスピンオフについての詳しい情報はこちらの記事にまとめた。
映画『モータルコンバット/ネクストラウンド』は2026年6月5日(金) より全国公開。
前作『モータルコンバット』は4K ULTRA HD&ブルーレイセットが発売中。
【ネタバレ注意】カール・アーバン主演のドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン5の解説&考察はこちらから。
【ネタバレ注意】『マンダロリアン・アンド・グローグー』ラストの解説&感想はこちらから。
