ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』の魅力――“何者でもない人間”から“何者か”へ | VG+ (バゴプラ)

ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』の魅力――“何者でもない人間”から“何者か”へ

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人気ドラマ『GOTHAM/ゴッサム』の魅力に迫る

シーズン5でいよいよフィナーレへ

ドラマシリーズ『GOTHAM/ゴッサム』(2014)が、いよいよフィナーレを迎える。2019年1月、ファイナルシーズンとなるシーズン5がアメリカで公開された。シーズン5は全12話の構成になるが、これまで1シーズン22話というボリュームでありながら、視聴者を惹きつけて離さない魅力を持っていたのが『GOTHAM/ゴッサム』という作品だ。今回は、シーズンのフィナーレを記念して、その独特な魅力を振り返ろう。

シーズン5でいよいよフィナーレへ

『GOTHAM/ゴッサム』の最大の魅力は、何と言ってもそのキャラクター達だろう。権力構造が狂い始める前のまだ平穏なゴッサムから、次々とスーパーヴィランが生まれる。「バットマン」シリーズでおなじみの悪役たちのオリジンストーリーを楽しめるのが、同作の魅力の一つなのだ。

作品に通底するあるテーマ

そして、そのヴィランたちの元の姿は、大抵がただの“ゴロツキ”である。目を凝らして『GOTHAM/ゴッサム』を観ていると、1エピソードにしか登場しない犯人でも、後の大物ヴィランであるということも。後のペンギンことオズワルド・コブルポットのような小悪党が、シーズンを経るにつれて成り上がっていく様は痛快ですらある。そして、そんなヴィランたちの”サクセスストーリー”には、あるテーマが存在している。

“何者でもない人間”から”何者か”へ

名もなき者達の成り上がりの物語

『GOTHAM/ゴッサム』のストーリーに通底しているものは、「”何者でもない人間”から”何者か”へ」というテーマである。英語で言うならば、「NobodyからSomebodyへ」ということだ。フィッシュ・ムーニーの”傘持ち”だったイジメられっ子のコブルポットは、政治家としての才覚を発揮し、やがてゴッサムの脅威へと上り詰める。フィッシュがコブルポットを”ペンギン”に変えたように、権力を手にしたペンギンもまた、ただの”クイズオタク”だったエドワード・ニグマを”リドラー”へと変貌させる。主人公ジム・ゴードンさえも、新米刑事として登場するが、ゴッサムが混沌に陥る中で市民のヒーローへと成長していくのだ。

失うものを持たない強さ

この物語の魅力的な点は、自分が”何者でもない人間”だと理解しているキャラクターほど、強さを秘めているということだ。ペンギン、キャット、ブロックなど、失うものを持たない登場人物達にとっては、ゴッサムの街に訪れる混乱が彼らを成長させる契機となる。ゴッサムという街が、登場人物たちを”何者か”に変えていくのだ。

中心に立つ、生まれつき特別な存在

有力者の御曹司

だが、そんなゴッサムの街にも、生まれつき特別な”somebody”として登場する人物が存在する。経済界から街を治めてきたウェイン家の御曹司、後のバットマンとなるブルース・ウェインだ。『GOTHAM/ゴッサム』のストーリーは、ウェイン家に降りかかった不幸からスタートする。表社会の有力者を失ったゴッサムは裏社会との均衡が崩れ始め、経済格差に苦しんできた”nobody”たちによる権力闘争が始まるのだ。

克明に描き出される、それぞれの立場

病んだ街で割りを食ったゴッサムのゴロツキたちは、”何者でもない”が故に成り上がりを目指してスーパーヴィランへと変貌していった。一方、ブルース・ウェインは”何者か”であるが故に、ウェイン産業の罪を背負い、街を救うダークナイトへと生まれ変わるのだ。ヴィランがバットマンを作っているようで、ウェイン家がヴィランが生まれる街を作り出したという事実をありありと描いている。社会的背景を紐解き、それぞれの立場を描き出すこと、それが、『GOTHAM/ゴッサム』という作品の最大の魅力なのだ。

もう一人の”somebody”

実はアノ人も…

こうした『GOTHAM/ゴッサム』の魅力に惹かれている方は、実はもう一人、この物語に”何者か”が紛れ込んでいることに気づくだろう。その人物は、ウェイン家に仕える執事・アルフレッドだ。ゴッサムという街の”良心”に思えていた彼も、徐々にその素性が明らかになっていく。シーズン1の第17話では、軍人としての血にまみれた過去が明らかになり、アルフレッドが抱える心の闇を垣間見せる。

アルフレッドの言動に注目

シーズン1の第3話では、悪党への私刑を行ったバルーンマンの逮捕に、アルフレッドは「悪党はゆっくり眠れますね」と、彼を擁護するような発言を行う。同第8話では、まだ少年のブルースに級友への復讐をけしかけ、シーズン2の第13話では、ブルースが復讐を誓う相手について、「裁きが必要なのは分かります。(中略) 見つけたら私が殺します」と、自ら私刑を行うことを認めている。ブルースに格闘術を叩き込み、後にバットマンの掟となっていく様々な哲学を教え込むのも、アルフレッドの役目なのだ。

その過去には何が…?

アルフレッドという人物が、両親なきブルース・ウェインにとっての一番身近な大人として、彼が”バットマン”へと姿を変えていくその過程を支えていることは明らかだ。ブルースを”戦場”に駆り立てたアルフレッドの哲学に、そしてウェイン家に対する異常なまでの忠誠心の裏には、何があるのか――。

アルフレッドを“何者か”にした彼の過去は、『GOTHAM/ゴッサム』の製作総指揮が手がけるドラマ『ペニーワース (原題: Pennyworth)』で語られる。こちらも『GOTHAM/ゴッサム』に劣らず魅力的な作品になりそうだ。

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