シーズン3第5話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』スパイダーマンへのアンサー、オルタナ右翼の言葉 あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン3第5話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』スパイダーマンへのアンサー、オルタナ右翼の言葉 あらすじ&考察

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『ザ・ボーイズ』第5話はどうなった?

Amazonプライムビデオで独占配信されているドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-) はシーズン3を迎え、あっという間にシーズン4への更新も決定。衰えない勢いのままシーズン3も全8話の後半戦へと突入していく。

シーズン4への更新にあたって、Amazonのグローバルテレビジョン部門トップのバーノン・サンダースは本作の「容赦のないエンターテインメントと非常に実際的な社会風刺」を高く評価するコメントを発表した。快進撃を続ける『ザ・ボーイズ』、第5話ではどのような物語が描かれたのだろうか。

今回は『ザ・ボーイズ』シーズン3第5話の各シーンを解説していく。以下の内容は第5話のネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。なお、本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっている。また、露骨な残虐描写と性描写が含まれるので苦手な方は注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3第5話の内容に関するネタバレを含みます。

『ザ・ボーイズ』シーズン3第5話「嘘まみれの世界にさようなら」ネタバレ解説

ヒューイのブレーキ

ニューマン議員はホームランダーから娘分のVを手に入れる為にエドガーを告発。ブッチャーとヒューイはBLCレッドを手に入れる為にVを摂取。謀反を企むスターライトらへの見せしめとしてホームランダーはスーパーソニックを惨殺とめちゃくちゃな展開が続く。各々が自分の正義のために暴走する中、『ザ・ボーイズ』シーズン3第5話は幕を開ける。

冒頭のMMが見ている映像の日付は1986年7月8日になっている。チェルノブイリ原発事故から2ヶ月と少しが経過したタイミングだ。次のシーンでは1990年7月に。ソ連の加盟国が独立を宣言していく時期である。動画の中のソルジャー・ボーイは人体実験を受けている。

強い放射線を発しているというソルジャー・ボーイについて、ブッチャーは「チョルノービリ並み」と話しているが、日本の外務省は2022年4月1日より、「チェルノブイリ」をウクライナ語の発音である「チョルノービリ」に変更している。

一方、そのソルジャー・ボーイに重傷を負わされたキミコはまだ回復していない。第4話のラストでMMに「もう面倒を見切れない」と言われたブッチャーはキミコを気に掛ける素振りを見せているが、MMはもう信用していない。スーパーパワーをなくすことが目的だったのに、と怒るMMに、ブッチャーは現実的になれと食い下がるのだった。

ブッチャーはVの副作用で嘔吐するヒューイを見て、シーズン2で言及された亡き弟のレニーの姿を重ね合わせる。シーズン2ではレニーがそうだったように、ヒューイがブッチャーにブレーキをかける“カナリア”になることが求められていた。しかし、シーズン3ではヒューイがブッチャーと共にVを摂取してしまい、共にアクセルを踏んでしまっている。

新体制のヴォート

ヴォートでは、取締役会アシュリーがエドガーに代わって新CEOに就任していた。シーズン1では広報だったアシュリーはシーズン2では死んだマデリンに代わって副社長に、そしてシーズン3ではCEOの座に就く出世ぶりだ。

このシーンでホームランダーは「山に動いてもらった気分だ」と言っているが、英語では「the mountain to Muhammad」となっている。ムハンマドが山に自分の方へ来るよう呼び掛けたが山は動かず、自ら山へ向かっていったという訓話の引用だ。

その訓話では山は動いておらず、“山には自分の足で向かわないといけない”という教訓になっているのだが、ホームランダーは勘違いしているのかジョークなのか、山は動いたというテイで話している。

ホームランダーは初めて取締役会に出席したというが、メンバーは白人ばかり。黒人であるエドガーを追い出したことを称賛する声には人種差別的な空気も漂う。イエスマンばかりの取締役会でモーリーンという取締役が「利払い前・税引き前・減価償却前の利益」を指すEBITDAの低下について収支報告でどのように記載するかホームランダーに質問するが、ホームランダーは自分でハンドルできない問題を突きつけられたことに苛つきを隠せない。

ホームランダーにとっては、現実の問題にどう対応するかよりも自分がどう扱われるかの方が大事。モーリーンは会議を退席させられ、ホームランダーの顔色を伺うようになったヴォートの経営には不安しかない。

また、シーズン2で登場したヴォートの犯罪分析室を指揮してきた非白人女性の責任者バーバラも首をすげ替えられる。新たに就任したのは性犯罪者のディープだった。責任者が男性になったことにわざとらしく触れるディープ。それだけではなく、スーパーヒーローが業務を行う現場の責任者になり、業績評価(パフォーマンス・レビュー)を取り入れるという。

パフォーマンス・レビューは上司が従業員の業務を評価して待遇を判断する米国では一般的な評価方法。しかし、同僚によるピア・レビューと違い、上司の評価を気にせざるを得ないこの方式の前では、スーパーヒーローの犯罪を追うようなディープの心証を悪くする業務に取り組むことはできないだろう。

世界を相手に

テレビではスーパーソニックの葬儀のニュースが流れているが、死因はドラッグの過剰摂取(オーバードーズ)と報道されている。『ザ・ボーイズ』のスピンオフ番組『Seven on 7』では、スーパーソニックが過去の薬物依存を克服して復帰したというストーリーに触れられていたが、真実の隠蔽のために利用されるとは。世間の人々は「やっぱり」と思ったことだろう。

セブン加入直後のスーパーソニックの死は、レン・バイアスの死に重ね合わせて報道されている。レン・バイアスは1986年にNBAボストン・セルティックスにドラフト1巡目全体2位で指名されたが、コカインの過剰摂取でドラフトの2日後に死亡した。ビッグリーグで活躍する姿を見せられないままこの世を去ったスターとして紹介されているのだ。

プライベートジェットでアメリカに戻ってきたザ・ボーイズ。傷心のアニーにヒューイはチャールストンチューやアーモンドジョイ、ビット・オー・ハニーといったお菓子を用意している。ホワイト・クローは、アメリカで人気の炭酸アルコール飲料だ。

折れていたはずの腕が治っていたことからアニーはヒューイを疑い、ヒューイはソルジャー・ボーイの逃亡と時効性コンパウンドを摂取したことを明かす。ヒューイは第1話と第2話で開けられなかった瓶の蓋も開けられるようになっている。まだ力が残っているようだ。

ヒューイは力を得て人を救ったことに昂っていたが、アニーがヒューイまで失えないと不安を覗かせると、ヒューイはもうVはやらないと約束。今後については一緒に考えていくことにする。この時の「世界を相手に」というセリフは英語で「You and me against the world」となっており、ヘレン・レディが1974年に発表したヒット曲の引用になっている。

大いなる力には——

ブッチャーは解放されたソルジャー・ボーイは「ロシアの問題」と放置したが、そのソルジャー・ボーイが向かっていたのは空港だった。一方のブッチャーは、かつてベッカからもらい、シーズン2最終話でライアンにあげたネックレスを見つめている。このネックレスは旅のお守りとして一般的な聖クリストファーのネックレス

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ブッチャーは「お守りだ」と言ってライアンに渡していたが、シーズン3第3話で喧嘩別れした時にライアンはこのネックレスを引きちぎって地面に叩きつけていた。

そんなブッチャーの前に現れたのはクイーン・メイヴ。ブッチャーは再び相当量の時効性Vを仕入れていた。対ホームランダーで行き詰まる二人だったが、ブッチャーはVについて意外と冷静な考えを持っていた。いわく、Vは本当の自分を晒すものだと。

「人は偉大な力を得ると本物のクズに変わる」と言っているが、これは「スパイダーマン」シリーズでも有名な「大いなる力には、大いなる責任が伴う (With great power comes great responsibility.)」という格言へのアンサー。英語では「大いなる力は、人を本物のクズに変える (With great power comes the absolute certainty that you’ll turn into a right cunt.)」と言っており、最初の「With great power comes-」の部分が全く同じ言い回しになっている。

「スーパーパワー」は「権力」や「能力」に置き換えることができる。マーベルなどの正統派ヒーローものは、力を得た主人公の“責任”を伝えることで現実でも人々が力をより良い方向に使うよう勇気づけてくれる。一方、『ザ・ボーイズ』の哲学は、実際に力を手に入れれば人間は腐敗するというもの。だから能力のない一般人がヒーローを追い込んでいくことが醍醐味だった。

だが、シーズン3ではブッチャーとヒューイが一時的とはいえ力を手に入れたことで、その信念が揺らぎかねない。故にブッチャーは「スーパーヒーローは最後の一人まで例外なく死ぬべき」と、あえてより強い言葉で表明するのだった。

ホームランダーを倒すために禁欲生活をしていたメイヴだったが、4ヶ月ぶりの酒を飲み、ブッチャーと交わる。ヴォートはメイヴがレズビアンと喧伝しているが実際にはバイセクシャルだ。このシーンで流れている曲はザ・キンクス「You Really Got Me」(1964)。「あなたは私を虜にした。私はもう何をしているのか分からない」と歌われている。

リトル・ニーナはブッチャーに手を貸したことで損害が生じたとして、フレンチーに暗殺任務を通して尻拭いをするよう指示する。一方、意識を取り戻したキミコは、傷が完治しておらず、能力がなくなったことに喜んでいた。ソルジャー・ボーイが放った光は能力を奪うものだったのだろうか。能力を与えるV-24と能力を消すソルジャー・ボーイの能力、面白い組み合わせだ。

「キャンセル・カルチャー」と言いたい人たち

スターライトはスーパーソニックの死についてAトレインを非難する。アシュリーには「グラム上院議員」からの花が届いているが、共和党のベテラン議員リンゼー・グラムのことだ。2020年の大統領選挙で民主党のバイデン勝利を見越した発言をしてトランプ前大統領に批判されると、今度は選挙に不正があったと主張、議事堂襲撃事件後にはバイデン当選は合法と述べるもトランプの断行裁判では無罪に投票するなど、政治家らしい風見鶏ぶりを見せている。

ここでもアシュリーがヴォートの新CEOに就任したことで花を送っているが、そうした経緯からアシュリーからは「ゴマすり野郎」と切り捨てられている。ちなみにアシュリーが持っているグラム議員からのレターに書かれているサインは、流石に本物とは違う表記になっている。

Aトレインはホームランダーに密告した見返りに、ブルー・ホークとの面会をさせてもらえることに。Aトレインがスーパーソニックを売った狙いは第4話で却下されたこの件にあったようだ。ブルー・ホークはブリンクというコーチから威圧するよう研修を受けたと主張するが、Aトレインは黒人地区だけで威圧していると主張する。

ブルー・ホークは、「人種差別」と言う奴の方が人種のことを気にしているレイシストだと、レイシスト御用達のセリフを吐くと「契約解除になるのか?」とアシュリーに聞く。字幕と吹き替えは「契約解除」「消そうとしてる?」と言っているが、英語では「キャンセル」という言葉を使っており、英語字幕でも「a “cancel” thing? Am I being canceled?」と「cancel」が強調されている。

これは第2話の解説でも触れた通り、これまで立場が弱く声をあげられなかった人々が被害を告発できるようになってきた流れをオルタナ右翼が「キャンセル・カルチャー」と呼んでいることをイジる演出だ。

「キャンセル・カルチャー」は、性被害の告発を封じ込めようとする流れの中から生まれた言葉。米国では保守派メディアやネオナチ、オルタナ右翼らが好んで使用するため、一般の人は使用を避けることが多い。第2話のホームランダー同様、「キャンセル」という言葉を好んで使うブルー・ホークがどのような思想の人物なのかということが端的に示されている。

結局、ブルー・ホークは謝罪することになるが、反省の言葉もなく、表面的な“業務”でしかなさそうだ。

ソルジャー・ボーイは早くもニューヨークに到着していた。飛行機代やパスポート、入国審査はどうしたのだろうか。至るところにセブンメンバーの広告が踊り、人種が異なるゲイカップルが街を歩く40年ぶりのアメリカの姿を目にする。第1話でエドガーと話していたロバート・シンガーは「より強いアメリカ (A Stronger America)」という標語で選挙活動を行なっている。

ソルジャー・ボーイは、街のラジオから流れるロシアの歌手ミハイル・シュフティンスキーの「Escape」(1982) という曲を聴いて発作が起きる。自身がソ連に拐われた1982年に発表された曲で、冒頭のMMが見ていたソルジャー・ボーイの人体実験動画で流れていた曲だ。研究室のラジオから流れていたのだろう。当時の記憶がフラッシュバックすると、ソルジャー・ボーイは民間人にビームを放ってしまう。

テレビでは「キャンセル・カルチャーに抗うホームランダー」という見出しで、第2話のホームランダーの演説が放送されている。この見出しをつけているのは一般のメディアではなく、ヴォート社が運営する「ヴォート・ニュース」。繰り返しになるが、「キャンセル・カルチャー」という言葉を使うのはオルタナ右翼のメディアの特徴だ。

白人男性が「私は君らより上だ! (I am better!)」と叫ぶ姿を、黒人少女のジャニーヌ(MMの娘)の目に入る状況にしているトッドは罪深い。そしてそのトッドが社会科のプリントの丸付けをしていて、社会の先生をしていることも示されている。恐ろしい。

しかも、トッドは「彼女のためになる」と、あえてホームランダーの動画を見せているようだ。抗議するMMに「Facebookで友達だったっけ? 資料を送るよ」と、いかにも“勉強”をした陰謀論者の態度を見せる。

ソルジャー・ボーイの暴走

そんな中、MMらが解放してしまったソルジャー・ボーイがマンハッタンで爆発を起こして19名を殺害したとのニュースが入る。MMの脳裏には、ソルジャー・ボーイに家族を殺された時の映像がフラッシュバックし、ジャニーヌのもとを離れる。

ソルジャー・ボーイは、世間的には「スーパーヴィランの登場」ということで報道されている。久しくなかった事態にホームランダーは意思決定を迫られるが、経営者としてはまだまだルーキー。どこかの国の首相がオリンピック招致のために原発の汚染水について見栄を切ったように、「アンダーコントロール(管理下にある)」とメディアに発信するのだった。

ホームランダーがあてにならない中、スターライトはソルジャー・ボーイの捜索にあたり、ヒューイとブッチャーは能力者管理局の権限を使って現場入り。100ミリシーベルトの放射線が検出される。一般に人体の健康に影響を及ぼす放射線量は100ミリシーベルト以上とされている。

MMも現場に到着するが、ブッチャーはヒューイと共にVを摂取していることから、「俺たちの助けがいる」とMMに告げる。Vを摂取した二人とMMの間で力関係が出来つつある。MMとブッチャーはソルジャー・ボーイが「レジェンド」に会いに行ったと目星をつけているが、レジェンドは原作コミックにも登場する人物だ。

スターライトはヴォートの犯罪分析室でソルジャー・ボーイを探すことにしたが、ディープがトップに立ったこの部署では一人を残して従業員がクビになっていた。理由は「ホームランダーを批判したから」というもので、ホームランダーの独裁と、中間管理職としてのディープの無能さが際立つ。不都合なことを言う人材を切った結果、いざというときに必要なリソースを失ってしまったのだ。

「オール・ライブズ・マター」の意味

Aトレインは黒人地区でブルー・ホークに謝罪の機会を作っていた。しかしブルー・ホークは原稿を早口で読み上げるだけ。それも「誤解を招いた」「私には黒人の友達もいます」という悪い謝罪のテンプレのような内容で、たった1万ドル(約100万円)の寄付を発表して足早にその場をさろうとする。

しかし、コミュニティにとっては、一人ひとりの被害者に名前があり、人生がある。抗議する市民にブルー・ホークは「黒人地区に犯罪が多いのは私の責任ではない」と本性を表す。ブルー・ホークの黒人へのバイアスを披露する結果にもなっているし、一部の地域に犯罪が集まっているとすれば、それは社会全体の問題であることは言わずもがなだ。

また、「ブラック・ライブズ・マター」に対して「オール・ライブズ・マター」と返すのも典型的なレイシスト/オルタナ右翼のスタンスだ。この「オール・ライブズ・マター」は民主党の白人政治家ナンシー・ペロシも発した言葉で、真剣に人種差別の問題に取り組む人々を落胆させるセリフになっている。黒人の命が危機にさらされている状況で「全員の命が大切」と主張することは、相手の口を塞ぐ意外に何の意味も持たない。

ついには奴隷貿易で「連行した」という史実を修正して黒人市民たちを「移民」と呼び出し、暴力を振るうブルー・ホーク。黒人地区の犯罪数の多さは数字で出ていると主張するが、2015年の調査では、アメリカ合衆国で警察に殺された人の割合は、黒人が100万人あたり7.2人、白人が100万人あたり2.9人である。

ブルー・ホークが大暴れした結果、Aトレインの兄ネイサンが負傷してしまう。Aトレインの表面上だけの中途半端な対応が悲劇を生んだのだ。

レジェンド登場

ザ・ボーイズはレジェンドを訪問。MMとは旧知の仲で借りもあるようだ。レジェンドは原作コミックでセブンのコミックブックを手掛けていた人物。実写版はベテラン俳優のポール・ライザーが演じている。

名だたるスターと写真に収まっているレジェンド。ヒューイが言及するロイ・シャイダーは映画『ジョーズ』(1975) のマーティン・ブロディ役で知られる。マーロン・ブランドは映画『ゴッファーザー』(1972) のドン・コルレオーネ役などで知られる。

レジェンドはシーズン1でヴォート副社長だったマデリン・スティルウェルの前任だったという。しかし、ドラマ『ファルコン・クレスト』(1981-1990) の半分のキャストとヤッただのと、誰とヤったという話ばかりしたがる。名前があがっているシャノン・トゥイードは「プレイボーイ」誌でプレイメイト・オブ・ザ・イヤーに選ばれたこともある。

ソルジャー・ボーイが来たことを隠したがるレジェンド。相性の悪いブッチャーと喧嘩になりそうになるが、ソルジャー・ボーイに家族を殺されたMMが「一つ正しいことを」と求めると、レジェンドは話し始める。

ソルジャー・ボーイはストーム・フロントと同じく歳を取らないという。フィービー・ケイツに疑われたというが、フィービー・ケイツは「グレムリン」シリーズのケイト・ベリンジャー役などで知られる。1963年生まれのフィービー・ケイツが19歳の時にソルジャー・ボーイは63歳だったといい、ソルジャー・ボーイが失踪した1982年時点で63歳だったことが明かされている。

逆算するとソルジャー・ボーイは1919年生まれということになる。ストームフロントも約100歳とされていた為、二人のオリジンが同じという可能性もある。ソルジャー・ボーイはレジェンドのもとにスーツを取りに来たという。そして向かったのは第2話でフレンチーとキミコが対峙したクリムゾン・カウンテスのもとだった。

線を引けるか

ホームランダーはキャメロン・コールマン・アワーでソルジャー・ボーイが起こした事件の収束を図っていた。ストームフロントの信者たちは「エドガーの企みだ」と陰謀論を展開し、ホームランダーもこれを否定しない。市長がニューヨークには夜間外出禁止令を敷く一方で、ホームランダーは積極的に外出するよう呼びかける。コロナ禍の要素まで取り入れられている……。

メイヴと会ったホームランダーは、「ブッチャーの匂いがする」と“元カノ”に突っかかるが、メイヴは「初めから嫌いだった」「それ以上に哀れだった」と引き下がらない。スターライトは作戦としてホームランダーの機嫌をとっていたが、メイヴだけは態度を変えない。カッコいい。しかし、ホームランダーはシーズン2でスターライトにやったのと同じように、ブラック・ノワールにメイヴを襲わせるのだった。

フレンチーとキミコを欠く中、ブッチャーはメイヴから手に入れたVを見せる。MMは「どこかに線を引かないと立ち位置を見失う」と、ルール無用のホームランダーたちと同類になってはいけないと主張するが、Vに魅せられたブッチャーとヒューイは摂取することを選ぶ。やはりシーズン2と違い、ヒューイがブレーキになっていない。

アシュリーは、メイヴが薬物依存の治療に入ったというストーリーを作っていた。スターライトはホームランダーが暴走していると訴え、いつ自分たちに矛先が向けられるか分からないとアシュリーに説得する。

アシュリーは「私には力がない」と答えるが、ナチスのアイヒマンが示した通り、虐殺に加担するのは“普通の人々”だ。「力はいらない。ただ人の心を」というスターライトの名言にアシュリーは一瞬心が動くが、立場を変えるには至らなかった。

「ANTIFA」のせいにしたい人

Aトレインの兄ネイサンは歩行不可能の重症を負う一方、ブルー・ホークはインタビューに答えていた。字幕表記は「ブルー・ホーク 反ファシズムに抗議」となっているが、英語では「反ファシズム」の部分は「ANTIFA」となっている。ANTIFAは反ファシズムを掲げる左派運動の総称で、具体的な組織を指す言葉ではない。

ドナルド・トランプ前大統領はANTIFAをテロ組織に指定すると表明して批判を浴びた経緯がある。左派の運動を「ANTIFA」と指定してしまえばいつでも取り締まることが可能になるからだ。自分に意見する者を「ANTIFA」と指定して口を塞ごうとするのは、典型的なオルタナ右翼と陰謀論者のやり方である。ここでもブルー・ホークは、一般市民による正当な抗議を「左翼」だとレッテルを貼って自己弁護をしているのだ。

ネイサンが入院する病院の別室では、キミコとフレンチーがジュディ・ガーランド 「I Got Rhythm」(1943) を聴いている。「一日中元気で幸せいっぱい」「リズムも音楽もあって、彼もいて、これ以上必要なものってある?」と歌われており、能力から“解放”されたキミコの心情が表現されている。

これまで喋れなかったキミコは「アイガットリズム」と、この曲の歌詞を口にすると、映画『ラ・ラ・ランド』(2016) 顔負けのミュージカルショーが始まる。シーズン3第5話はここまで音楽要素は少なめだったが、ダンスを伴う大きな見せ場が待っていた。キミコ役の福原かれんも、フレンチー役のトメア・カポンも見事なパフォーマンスを見せている。

このミュージカルシーンはYouTubeでメイキング映像が公開され、福原かれんはアジア系の俳優がミュージカルの中心に立つことの意義を、トメア・カポンは福原かれんへの感謝を語っている。詳しくはこちらの記事で。

しかし、これは第1話の歌のシーンに続いてキミコの妄想だった。実際には発声できていなかったようだ。それでも幸せを掴んだかのように見えた二人だが、ニーナからの暗殺指令と電話をブッチしていたフレンチーは、ニーナに捕まってしまう。

ブッチャーとヒューイの選択

その頃クリムゾン・カウンテスは、開演間近の“チンパンジーの国”で有料のプライベート配信をしている。スピンオフ番組では、クリムゾン・カウンテスはチャリティーを行いチンパンジーの保護区をオープンすると報じられていた。映画『アウトブレイク』(1995) の猿がやってくると話しているが、これは映画のジャケットにも起用されているオマキザルのこと。この映画では一匹のサルを通して感染症が広がっていく。

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ちなみにクリムゾン・カウンテスとのプライベートビデオ通話は1分で19.50ドル(約2,000円)と表記されている。すでに18分話しており、ここまでで36,000円の課金になっている。

ここに乱入したのはブッチャーとMM。先回りに成功したようだ。クリムゾン・カウンテスはソルジャー・ボーイがロシアで生きていたことを知っていた様子。確かに第3話でソルジャー・ボーイが殺されたと証言したのはクリムゾン・カウンテスであり、その“最後”を見ていたはずだ。

MMはラボのビデオからハロタン(吸入麻酔薬)がソルジャー・ボーイに効くことを学んでいた。ソルジャー・ボーイを眠らせる作戦をとるというが、そこに現れたのはMMに呼ばれたスターライト。ヒューイはスターライトとの約束を破ってVを摂取したことを明かすが、スターライトは再び「I don’t need you to save me, I need you.(守ってもらう必要はない、必要なのはあなた)」と名言を残す。

一方のブッチャーは、ソルジャー・ボーイ到着の直前にブレーキになるMMを眠らせると、フルコスチュームで髭と髪も整えたソルジャー・ボーイに組むことを提案し、「誠意の証」としてクリムゾン・カウンテスを差し出す。クリムゾン・カウンテスは、かつてロシアにソルジャー・ボーイを差し出していたのだった。

ホームランダーと同じように「愛していた」と語りかけるソルジャー・ボーイに、クリムゾン・カウンテスはクイーン・メイヴと同じように「嫌いだった」と返答する。愛しているのは力を持った一方だけ。相手は仕方なく従っていたに過ぎないが、力を持って認知が歪んだ人間には気づくことはできない。

ソルジャー・ボーイは胸部からのビームでクリムゾン・カウンテスを焼き払う。実はヒューイもブッチャーとグルで、ホームランダーとニューマンに挑むためにソルジャー・ボーイを味方につけようとしていた。ブッチャーはMMに、ヒューイはスターライトに背を向けてでも目的を遂行しようとしていたのだ。

別の場所でスターライトに隠し事を明かしていたのも、ソルジャー・ボーイとブッチャーからスターライトを引き離すため。「君を守るため」と、先ほどスターライトに否定された言葉をNGワードを放つと、冒頭と同じく「You and me against the world.」を引用する。ヒューイはブッチャーとスターライトの間で選択を迫られるが、ヒューイはブッチャーについていく道を選んだのだった。

『ザ・ボーイズ』シーズン3第5話まとめ

「#ホームライト」にスーパーソニックの死、ヒューイの離反と、3話連続でスターライトに厳しいエンディングに。ここまでスターライトの精神に負荷がかかると、ダークサイドに落ちる可能性も心配してしまう。クイーン・メイヴは消息不明で、キミコは幸せになったもののスーパーパワーは失われた。シーズン2のラストで共闘した三人は、もうスターライトしか残っていない。

一方で、追加のVを手に入れたブッチャーはソルジャー・ボーイと同盟を組むことに成功。対ホームランダーの最終兵器を手中に収めた。一方で、ホームランダーはソルジャー・ボーイ登場の危機にも、統率が取れていることを示すために、組織内の意見する人間を切り捨て、メディアで発言することを選んだ。

実際の問題に取り組むよりパフォーマンスや権威を示すことに終始してしまうボスの姿は既視感がある。エドガーの忠告通り、周囲がイエスマンばかりになったホームランダーには最大の危機が迫りつつある。

ソルジャー・ボーイがホームランダーを始末するとすれば、再び自分がヒーロー界でトップに立つという目的のためだろうか。ホームランダーとソルジャー・ボーイの間で交渉の余地があるのかどうかも気になるところ。

それに、ソルジャー・ボーイが再びトップに立ったとして、Vを摂取したブッチャーらでも歯が立たない最強の敵が誕生するだけだ。また、元同僚のブラック・ノワールがホームランダーとソルジャー・ボーイの間に立たされた時の動きにも注目だ。

シーズン3の“落とし所”は気になるが、ソルジャー・ボーイの攻撃を受けて能力を失ったキミコの存在にも注目したい。キミコがこのまま能力を失ったままとは考えにくく、ソルジャー・ボーイの能力奪取の効果は一時的である可能性もある。ソルジャー・ボーイの能力の謎を解く鍵はキミコにあるのかもしれない。

後半戦に入り、事態が複雑さを増す『ザ・ボーイズ』シーズン3。シーズン4の製作も発表されたばかりだが、まずはシーズン3を引き続き見守っていこう。

ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3はAmazonプライムビデオで独占配信。

原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。

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第6話の解説はこちらから。

第1話の解説はこちらから。

第2話の解説はこちらから。

第3話の解説はこちらから。

第4話の解説はこちらから。

シーズン3までの経緯とスピンオフ番組の内容、アニメ版の注目エピソードはこちらの記事で。

 

シーズン4の発表についてはこちらの記事で。

シーズン3の新キャストを含む詳細情報はこちらから。

シーズン2最終話のネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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