シーズン3第6話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』イマジンとアフガンと道徳と あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

シーズン3第6話ネタバレ解説『ザ・ボーイズ』イマジンとアフガンと道徳と あらすじ&考察

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『ザ・ボーイズ』第6話はどうなった?

Amazonプライムビデオ屈指の人気SFドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-) は、一般人による腐敗したスーパーヒーローへの復讐を描く物語。ガース・エニスとダリック・ロバートソンによるコミックシリーズを実写ドラマ化した作品だ。

シーズン4への更新も決定した本作だが、シーズン3はあっという間に第6話の配信を迎える。シーズン3もこれまでの2シーズンと同じく全8話で構成されるため、気付けばシーズンフィナーレは目前に。第6話ではどのような物語が描かれたのだろうか。今回も各シーンを解説していく。

以下の内容はシーズン3第6話のネタバレを含むため、必ずAmazonプライムビデオで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。また、本作は視聴対象が18歳以上の成人向けコンテンツになっている。また、露骨な残虐描写と性描写が含まれるので苦手な方は注意していただきたい。

『ザ・ボーイズ』第6話「ヒーローガズム」ネタバレ解説

最初の英文の意味

シーズン3第6話は、以前から予告されていた「ヒーローガズム」の回。原作コミックの中でも特に露骨な表現が続くエピソードだ。そのため、冒頭にはこれまでになかった注意書きが表示されているが、残念ながら日本語字幕がない。訳文は以下のようになる。

ある人々には相応しくない、いや、ほとんどの人々、正直に言うと誰にも相応しくないシーンが含まれます。しかし、表現されているものは同意の上での関係であり、人間であれ、動物であれ、スーパーヒーローであれ、その他の存在であれ、現実のものではなく、誰にも危害を加えていないのでご安心ください。実際のところ、ビジュアルエフェクトにとてつもない費用がかかっています。

ユーモアを交えながらも、相当に不快な表現が挿入されていることが予告されている。

クメイル・ナンジアニがカメオ出演

冒頭、スーパーヴィラン(ソルジャー・ボーイ)の登場に、ディープは結束を呼びかける。画面右上には「『Deeper』を購入 $4.99+税」と表示されている。在庫が余っているのだろう、かなり値下げされている。

そして、ジョン・レノンの「イマジン」(1971) をリレーで歌うのだが、これは「ワンダー・ウーマン」で知られる俳優のガル・ガドットが2020年3月に投稿した動画のパロディ。コロナ禍に突入していく中で、人々を勇気づけようとしたガル・ガドットの案で製作され、ナタリー・ポートマンやマーク・ラファロら24名のセレブと共に「イマジン」をリレーで歌った。

しかし、生活に困ることはなさそうなセレブだけで構成されたこの動画には多くの批判が集まり、パロディ動画も登場した。「所有しないことを想像してみて」という歌詞も登場するこの曲をセレブだけで歌うという企画は、ロックダウンが迫るピリついた状況の中では逆効果だった。

『ザ・ボーイズ』版の「イマジン」リレーには、MCU映画『エターナルズ』(2021) のキンゴ役、「スター・ウォーズ」ドラマ『オビ=ワン・ケノービ』(2022) のハジャ役などで引っ張りだこのクメイル・ナンジアニも加わっている。

なお、クメイル・ナンジアニは本作のスピンオフアニメ『ザ・ボーイズ ダイアボリカル』(2022) の第4話「3D号室のボイド」に声優として出演している。ヴォートの科学者で主人公に活性化クリームを渡すヴィクというキャラを演じた。

「隠蔽」を選ぶ指揮官

第5話でディープが一人を残して従業員を全てクビにした犯罪分析室では、クリムゾン・カウンテス襲撃の件についてホームランダー、アシュリー、ブラック・ノワールとディープが調査していた。人手不足が露呈している。

アシュリーが「CGIの意味分かってる?」と聞くところは、ディープは日本語では「死んじまいな」とうまく返しているが、英語では「blow me(しゃぶって)」と言っている。アシュリーからは「CGI stands for」と、CGIがそれぞれ何の頭文字か聞かれているのだが、答えが頭文字に全く対応していない上に、頭文字3文字に対して2単語しか示さないという狂気っぷりを発揮している。

アシュリーはコントロールしつつ情報を発表しようとするが、ホームランダーは、かつてヴォートの象徴だったヒーローがヴィランとして登場することを必要以上に怯えている。そして、考えうる最悪の選択肢である「隠蔽」を選ぶのだった。日本も普通に政府が不都合な事実を隠蔽をしてしまう国だが、隠蔽に走る指示系統と現場のメカニズムがよく示されている。

ホームランダーは全ての証拠を消すよう指示。自らソルジャー・ボーイを叩くという。自分の時ばかり「アンフェアだ」と憤っているが、エドガーはずっとこうした内外の問題に対処してきたのだろう。

また、ホームランダーがブラック・ノワールに全幅の信頼を置いている様子も再び描かれる。ノワールは元ペイバックのメンバーということで意見を聞くが、ホームランダーは何も答えないノワールに感謝を述べている。実際のところ、人の意見はいらないのだろう。なお、アニメ『ザ・ボーイズ ダイアボリカル』の最終話ではホームランダーとブラック・ノワールの出会いが描かれている。詳しくはこちらの記事で紹介している。

エレベーターに乗り込むと、自分の手首を切り開き、何かを取り出すブラック・ノワール。発信器だろうか。それをエレベーターに居合わせた人に渡してノワールは去っていく。怖すぎる。

チョップソッキーとアンフェタミン

時効性のVを摂取したブッチャーとヒューイはソルジャー・ボーイと手を組んでいる。ヒューイが体調に異変を感じる中、ソルジャー・ボーイは「チョップソッキー・オリエンタルソースはないのか」と聞き、ヒューイは「色んな理由」でなくなったと返答する。

チョップソッキーというのは「カンフー映画」を指すスラング。いわば「カンフー・オリエンタルソース」のような商品名で、流石にそこまで過度にオリエンタリズムを強調する商品は生き残っていない。それを生きてきた時代も思想も違うソルジャー・ボーイに説明してもしょうがないので、ヒューイは「色んな理由」と濁しているのだ。

酒よりもアンフェタミンに喜ぶソルジャー・ボーイ。アンフェタミンは米国の戦争において政府から兵士に支給されてきた歴史がある。覚醒作用があり、日本では覚醒剤に指定されている。米国では依存性が高いことから厳しく制限されているものの医療用途にも用いられている。

ヒューイはソルジャー・ボーイの盾を持ち上げようとしているが、持ち上がらない。マーベルの「ソー」のハンマー、ムジョルニアを思わせるが、単にソルジャー・ボーイはVを摂取したヒューイとも比較にならないくらい桁違いの怪力なのだろう。

ヒューイはGPSやブルートゥースの存在を挙げて、現代では自分たちの助けが必要不可欠であることを主張し、ソルジャー・ボーイとディールする。裏切られたと感じているソルジャー・ボーイのために残りのペイバックメンバーを探すのを手伝えば、ホームランダーをリストに加えると約束し、正式なチームアップが実現。それにしてもジェンセン・アクレス演じるソルジャー・ボーイはホームランダーとは違うワイルドな魅力を放っている。

アイスキャンディーの意味

第5話で能力が消えたことが発覚したキミコは、フレンチーがリトル・ニーナに連行されたのを知らない。戻ってこないフレンチーにかける言葉に悩みながらも、次は『雨に唄えば』(1952) を見ようとテキストしている。前回二人が歌って踊った「I Got Rhythm」のメイキングはこちらの記事で紹介している。

なお、二人の直前のテキストのやり取りは、フレンチーの「サプライズがあるよ」という言葉から始まり、「どんなサプライズ?」「教えたらサプライズじゃなくなるよ」「OK :)」という非常に微笑ましい内容になっている。二人に幸せが訪れますように……。

キミコは「勇敢なメイヴのレインボー・ポップス」というアイスキャンディーを食べている。棒には「Q:なぜ写真は監獄へ?」と書いているが、これはアメリカで有名なジョーク/なぞなぞで、答えは「It was framed.(はめられたから)」である。「Framed」には「額に入れられる」という意味と「はめられる」という意味がある。直後にナニーの一味がキミコを襲うが、キミコには以前のスーパーパワーはなく捕らえられてしまう。

道徳的であれ

ブッチャーとヒューイに裏切られたスターライトとMMは作戦会議中。第3話の回想で登場したTNTツインズがいるというバーモンド州はアメリカ北東部に位置し、ザ・ボーイズとセブンの拠点であるニューヨークから比較的近い。

スターライトは怒るMMに落ち着くよう助言するが、MMは「白人が怒るのは良くて、俺には大人しくしてろと?」と更に怒る。「言いたいことは分かるが言葉を選んで」など、加害者やマジョリティはさて置かれ、被害者や攻撃された側、マイノリティだけが道徳的であるよう求められる光景はあるあるだ。そういう言葉は言いやすい相手を狙って放たれるものである。

「倫理的に正しいことをする」ことを「take the high road」と言うのだが、MMは「F○ck the high road」と言い切っている。一方のスターライトもアレックス(スーパーソニック)を失い、フレンチーもメイヴも消息を絶ち、全てが自分たちにかかっていると責任を感じていた。

ブラック・ノワール ショック

アシュリーが見ているAトレインの新番組『Aトレイン アフリカへ』のCMデモには、画像代理店の「gettyimages™️」のパロディで「voughtimages™️」という透かしが入っている。そのAトレインは第5話でブルー・ホークが起こした暴行に怒っていた。ここでも「暴行」を「事故(アクシデント)」と言い換え、非武装の相手に「危険を感じた」と言う、ヘイトクライムの典型的なフレーズが用いられている。

ブルー・ホークに12週間の再教育を行うというアシュリーに対し、Aトレインはブルー・ホークを告訴すると主張する。しかし、アシュリーはシーズン2より前の時点で下っ端としてAトレインの3件の殺人を揉み消したことを挙げ、自分の身に降りかかって初めて正義を求めるようになったAトレインを非難するのだった。

一方、ディープはブラック・ノワールがチップを外して行方不明になったとホームランダーに報告する。全幅の信頼を置いていたノワールの逃走に、ホームランダーは「あいつに限って逃げるなんて」と動揺を隠せない。

ディープはソルジャー・ボーイがペイバックメンバーを狙っていることを掴み、ニューヨークから最も近いTNTツインズの元へ向かうことに。警備担当としてなかなかいい働きを見せているが、妻のカサンドラの力も大きいのだろう。

ホームランダーは、ブラック・ノワールまで消えたことで不安を募らせていた。ホームランダーの弱い側面が表出し、「もしエドガーが正しかったら」「器じゃないのは明白」と弱音を吐く。ホームランダーは自信家なのではなく、本当は自分の弱さをよく分かっているのだ。

しかし、もう一人の自分がその弱い自分を叱責し、再び立ち上がらせようとする。「愛されたい」と本音を漏らす一方で、マデリン、メイヴ、ストームフロント、ライアンから愛してもらえず、同じ過ちを繰り返していることを指摘される。

泣きそうな顔を見せるホームランダーは珍しく、その表情の豊かさによって、演じるアントニー・スターの演技力が最大限発揮されている。もう一人のホームランダーは、自分に人間らしさが残っていること、貧弱な部分が承認や愛を求めていることを指摘し、それを取り除けば本当の自分になれると助言する。自分との対話は暴走に歯止めをかける最後の機会でもあったが、うまくいかなさそうだ。

アフガンを巡る痛烈な皮肉

TNTツインズと共演するかつてのソルジャー・ボーイの映像は、1979年から1989年まで続いたアフガニスタン紛争が舞台と思われる。ソルジャー・ボーイが失踪する1984年以前のものだろう。「アフガンは我らのもの」と言うソ連兵に対して、ソルジャー・ボーイは「(アフガンは)自由な国だ」「ムジャヒディンと共に最後まで戦う」と反論する。

このセリフをわざわざ言わせているのは、アメリカ政府がかつてCIAを通してムジャヒディン(「イスラム戦士による民兵組織」を意味する)に武器の提供を行なっていたから。タリバンもアメリカが“育てた”組織で、支援を受けて紛争を戦っていたウサマ・ビン・ラディンらが立ち上げたのが9.11テロを実行したアルカイダだ。

そして、アフガンは「自由な国」のはずだが、アメリカは9.11テロの後にアフガンに介入することになる(2021年の米軍撤退後、タリバンが政権を掌握)。アメリカがムジャヒディンと「共に最後まで戦う」ことはなかった。痛烈な皮肉だが、現代のソルジャー・ボーイはまだアフガンのゲリラ組織をアメリカの味方だと思っている。

ビル・コスビーがしたこと

ヒューイはソルジャー・ボーイの放射線を浴び続けている。スターライト印のおむつのCMを見たソルジャー・ボーイは、コメディアンのビル・コスビーを例に挙げて「あんな格好はしない」と笑う。ヒューイは「実は色々あって……」と切り出そうとするが、ソルジャー・ボーイは「コスビーこそ男だ」と話を遮る。

ビル・コスビーは1937年生まれの著名なコメディアンで、ヒューイが言おうとしたのは、ビル・コスビーが2014年以降に性暴力の告発を受けていることだろう。最終的には60名以上の女性たちが過去にビル・コスビーから性的嫌がらせまたは性暴力を受けたと証言した。

しかし、ほとんどのケースが50年以上前の出来事で時効扱いとなり、立件された2004年のケースも有罪判決後に審理の不手際を指摘されて有罪判決は破棄されている。2004年の一件は女性にドラッグを服用させて暴行に及んでおり、ソルジャー・ボーイの「酒をたくさん飲まされた」という言葉に、ヒューイは「マジか」と呟いている。

アフガンからの撤退について触れるソルジャー・ボーイは自分が離れた時は圧勝していたと、まさかアメリカが侵略側に回っていることには想像も及ばない。ノルマンディーではナチ相手に戦ったとも言うが、今はアメリカ国内でネオ・ナチが台頭する時代だ。国のために戦ったその結果、忘れられた、と呟くソルジャー・ボーイは、「国のため」と戦ったアメリカの兵士たちを代弁しているとも言える。

一方で、ニューヨークでの暴走の原因が分からないまま。10分ほど記憶を失っていたというが、おそらく第5話の描写から見るに、ソ連での実験中にラジオから流れていたミハイル・シュフティンスキー「Escape」(1982) がきっかけだろう。

ニューマンの取引

一足早くTNTツインズに会いに行ったディープは、二人がパーティを開いていることを知る。ヒーローガズムだ。シーズン3第6話のタイトルになった「ヒーローガズム」は、「ヒーロー」と「オーガズム」を組み合わせた言葉で、原作コミックの第3巻に収録されている。

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原作では、スーパーヒーロー達が協力して危機に挑むクロスオーバーイベントの時は、実際にはヒーローがどんちゃん騒ぎのパーティをしているという設定になっている。極秘裏に開催されているが、ホームランダーも楽しみにしている大規模なパーティであり、ドラマ版のプライベートなパーティとは少し設定が異なる。コミック版ではヴォートの重役や副大統領ら大物も現れる。

ニュースに出演するホームランダーはストレスのせいか顔が軽く痙攣している。ブラック・ノワールを失い、スターライトにすがるホームランダーだったが、ニューマン議員への質問を遮り、ブチギレてスタジオを後にする。先の自分からの助言を遂行しているようだ。

司会者は「この後はチャックがレイチェル・レイとエンパナーダを作ります」と言っているが、エンパナーダはスペイン発祥の料理。レイチェル・レイはアメリカで料理番組が人気のニューヨークの料理研究家で、自身の名前を冠した調理器具も発売されている。

スターライトと話す機会を作ったニューマンは、能力者だとバレていることを知っていると明かす。スターライトは議会で頭を吹き飛ばしたことを非難するが、ニューマンは「自分とビン・ラディンのフェイクポルノが出回っていた」と反論。MMとの会話で、一方だけが品行方正であることを求められるという話をしていたからか、スターライトは耳を傾けることに。

ニューマンは「#ホームライト」を強要されていることや、ディープの復帰、メイヴの失踪について畳み掛け、スターライトに協力を要請。スターライトは強大な力を持つSNSでニューマンを支持し、ニューマンはスターライトに保護を与えることで協力し合うことを提案するが、スターライトはこれを固辞する。

もう人から利用されるのはウンザリと話すスターライトは、ホームランダーとは違った形でギアが一段上がったように見える。一方、ニューマンはいつでも殺せると言わんばかりにスターライトに鼻血を出させて去っていくのだった。

リトル・ニーナに捕らえられたキミコの隣にいるのは、第3話にも登場したシェリー。ニーナはフレンチーの身体の傷について説明していくが、その中でフレンチーが父から虐待を受けていたことにも触れられている。”親”のような存在の命令に背くことができない背景には、悲痛な過去があったようだ。

ニーナは非道にもキミコかシェリーかを選ぶよう迫るが、キミコは先程のアイスキャンディーの棒(今度はなぞなぞの答えの面が見えている)を使って手錠を外すと、執拗に腹パンをしてくる敵を釘でメッタ刺しにする。倍返しだ。

ラブ・ソーセージ登場

TNTツインズのところに向かうMMは、ソルジャー・ボーイに家族を殺された時の話をスターライトにしている。自分が祖父を起こしたせいで犠牲になったと自責の念にかられるMMは、以降、強迫性障害に悩まされることになる。「そうしなければソルジャー・ボーイが戻ってきて家族を殺される」という強迫観念に囚われているのだという。シーズン3第6話はフレンチーと共に、MMの過去も明らかになる重要な回だ。

TNTツインズの家で二人を出迎えたのは、シーズン2第6話で登場したラブ・ソーセージ。巨大な男性器でMMを苦しめたが、今話ではMMが「このラブ・ソーセージをどけろ」と言ったことで、MMが命名したということになっている。ちなみにヒーローガズムは70周年記念らしい。

そして描かれたヒーローガズムの現場。MMは女性の裸を目で追い、スターライトは男性の裸を目で追う“フェア”な演出となっている。MMは、ヒーローガズムを「C級ヒーローの集まり」と説明しており、やはり原作コミックよりも矮小な会になっていることを示唆する。

ちなみに日本語では字幕・吹き替え共に「普通の娼婦も参加して傷を負うこともある」となっているMMのセリフは、英語では「娼婦」ではなくきちんと「セックスワーカー (sex-woker)」と言っている。字幕的にも吹き替え的にもワードが入り切らなかったのだと想像するが、職業差別をしないMMの倫理観が示されていることは触れておきたい。

そして、シーズン3第1話でブッチャーに確保されながらも、その後釈放されたとニューマンが言っていたターマイトも登場。第1話では尿道に入り男性を爆発させてしまったが、今回も懲りずに女性器の中から登場し、濡れたままMMに触れてブチギレさせている。その後、MMは白濁液を全身に浴びており、ラブ・ソーセージに絡まれたシーズン2に続き、今回も踏んだり蹴ったりである。

なお、スターライトはブリの刺身を勧められているが、「ブリ」の英語である「Yellowtail」は、「性に積極的なアジア系の女性」という意味のスラングでもある。もちろん差別的な意味合いもあり、ヒーローガズムの主催者の破綻した倫理観をよく表している。

初めての謝罪

一方のソルジャー・ボーイとヒューイ&ブッチャーもヒーローガズムに到着。ソルジャー・ボーイは1952年にリバティと共にヒーローガズムを創設したことを明かしている。リバティはストームフロントの当時の名前だ。

ヒーローガズムに参加していたブルー・ホークは、ソルジャー・ボーイが迫っているというスターライトからの忠告にも「メディアが恐怖を煽ってる」というホームランダーの言葉を信じて疑わない。ホームランダーはテレビで「外に出て楽しめ」とも言っており、新型コロナを軽視してメディア不信を煽ったトランプ前大統領とその支持者の姿と重なる。

ヒューイがテレポート能力で潜入に成功すると共に、スターライトはタコと性行するディープと合流。さらにブルー・ホークを追ってきたAトレインも加わる。ヒューイが出くわしたAトレインに、シーズン1第1話でAトレインがロビンをひき殺したことについて謝罪を求めると、Aトレインは初めて謝る。

愛する者が能力者に傷つけられるという事態が自分の身にも降りかかったことで、初めて謝る気になったのだ。ただ謝れるようになるまで22話かかるとは……。怒りがおさまらないヒューイと、ヒューイがVを摂取していると知らないAトレインの間で喧嘩が起こりそうになるが、これを止めたのはスターライト。ディープからホームランダーが向かっていると聞き、人々を避難させようとしているようだ。

テレポートで無理矢理スターライトを逃したヒューイは、スターライトの“強さ”をずっと気にしていたことを告白する。スターライトの「Vの影響かと思ったけど、これがあなた」という言葉は、第5話でブッチャーが言っていた「Vは本当の自分を晒すもの」という言葉と重なる。「気にしない」と言いながら心のどこかで気にしていたヒューイ。「男性性」の呪いは根深い。

ソルジャー・ボーイvsホームランダー

シャワーを浴びたMMは「THE TNT SMILE-TIME HOUR!」と書かれたTシャツを着ている。かつてのTNTの冠番組のTシャツだろう。MMはソルジャー・ボーイと出くわすが、麻酔剤のハロタンが効かない。「家族を殺された」と迫るが、ソルジャー・ボーイは「どの家族だ?」と、覚えてもいないという態度を見せる。ブッチャーの介入でソルジャー・ボーイはTNTツインズの方へ向かうが、逆にブッチャーvsMMの戦いが幕を開ける。

TNTツインズを見つけたソルジャー・ボーイはテレビに映し出された肛門の映像を「リンカーントンネル」と喩えているが、これはニュージャージーとニューヨークを結ぶ水底トンネルのこと。ちなみにアメリカの高速道路は無料だが、このトンネルは1,500円ほどの通行料を払わされる。

TNTツインズは「ノワールが全て企んだ」と主張するが、ソルジャー・ボーイはヴォートの命令以外でノワールは何もしないと話す。ノワールはペイバックでもセブンでもリーダーの信頼を得てきたようだ。

そして、ミハイル・シュフティンスキー「Escape」が流れると、ソルジャー・ボーイは実験時の映像がフラッシュバックして暴走。この曲、流行っているのだろうか。家の半分が焼き切られる中、Aトレインは逃げ出してきたブルー・ホークを引きずり回して惨殺する。もうこうなると冒頭の「相応しくないシーン」というのがどれのことだか分からなくなってくる。もう全力で走れないとされていたAトレインは、ここで死んでしまったのだろうか。

更にターマイトはホームランダーに踏み潰されて殺されてしまう。確かにターマイトが釈放されたのは「ヴォートが利用したいと考えている」という理由だったが、それはエドガー政権下での話だ。ホームランダーは利用価値がないと考えていたのだろう。

ソルジャー・ボーイはやはり暴走した時の記憶を失っている。そこに現れたのはホームランダー。よく考えればホームランダーとブッチャーはシーズン3第1話で全てを破壊した後にどちらかが生き残る賭けに出るという話をしていた。裏切られたと感じたホームランダーはブッチャーにビームを放つが、Vを摂取していることを知らないので本気で殺そうとしたはずだ。

ソルジャー・ボーイに憧れていたというホームランダーに、ソルジャー・ボーイはマントが付いたコスチュームを揶揄し、最強のヒーロー同士の戦いが始まる。

MMはなおもソルジャー・ボーイを倒そうとするが、スターライトは「みんなを助けるのが私たちの役目」とMMを説得。MMは元衛生兵なので医療の知識と技術がある。スターライトは「He doesn’t control you(彼に支配されないで)」と、復讐に執着することもまたソルジャー・ボーイに支配されていることだと話し、MMを納得させるのだった。

ソルジャー・ボーイvsホームランダーはホームランダーが優勢だったが、ブッチャーとヒューイが加勢してホームランダーの敗北。ホームランダーは間一髪のところで逃げることに成功するが、あのホームランダーも無敵ではないことが示された。

アニーへ

一方、キミコの治療をするフレンチーは、Vが本当の自分をさらけ出したと言うキミコに、ブッチャーやスターライトとは逆に「そんな人じゃない」と言い切る。キミコはまたも戦い続けるのが自分の本当の姿なのではないかと思うようになっていたのだ。

フレンチーも「過去の人生が追いかけてくる」と苦しむが、キミコは、リトル・ニーナが「痛めつけられて喜んでいる」と言っていたことについて、「あなたはそんな人ではない」と庇う。ザ・ボーイズがバラバラになっていく中にあっても、二人は支え合うことができている。

ヒーローガズムでの事件の後、スターライトはインスタライブで事実を告発する。ソルジャー・ボーイが復活して事件を起こしていること、多くのヒーローはアメリカを守ることに無関心であること、ホームランダーがクイーン・メイヴに何かをして消息を絶っていることを告げる。

「多くのヒーローはあなたたちより自分のイメージを気にしている」の箇所で多くの“いいね”がついている。視聴者が2,000万人を超えたところで、スターライトはアニー・ジャニュアリーに戻ることを宣言。スーパーヒーローをやめると言い、シーズン3第6話は幕を閉じる。

『ザ・ボーイズ』シーズン3第6話まとめ

ホームランダーが初の敗北。ラストでは再び鏡の中の自分を見つめていたが、畳み掛けるようにスターライトからの告発もあった。ブラック・ノワールにスターライトと、頼りにしていると言った相手が次々いなくなる状況で、ホームランダーが本格的に暴走し始めてもおかしくない。

一方で、自分の限界を目の当たりにして、エドガーに再び主導権を握らせることなるならホームランダーは再び手強くなるかもしれない。姿を消したブラック・ノワールの再登場はなかったが、ソルジャー・ボーイがノワールはヴォートが言っとことしかやらないと言っていたように、盟友のエドガーから何らかの指示を受けたのかもしれない。ホームランダーが弱っているところにエドガーがノワールとメイヴと共に戻ってきて主導権を握るとすれば熱い展開になる。

ヒューイとブッチャーはスーパーパワーを手に入れたことがヴォートに知られた今、二人とソルジャー・ボーイは本格的に「スーパーヴィラン」として認識されることになるだろう。そして今回はホームランダーを殺すことはできなかったが、キミコの能力を奪ったソルジャー・ボーイの力も忘れてはいけない。力を失ったホームランダーの姿も見てみたいものだ。

このところ影が薄かったニューマン議員も第6話で再登場。エドガーを退場させる役割は果たしたものの、それ以上の活躍にも期待したいところ。ソルジャー・ボーイを倒すとすればニューマンになるか。

また、スターライトはヒューイがホームランダー打倒を実現すると信じ、これまで「#ホームライト」を受け入れてホームランダーに従うフリをしてきた。しかし、ヒューイとの決裂によって、スターライトは誰にも頼らず真実を世間に公表することを選んだ。“アニー”に戻り、次はどこへ向かうのか。残り二話の行く末に注目しよう。

ドラマ『ザ・ボーイズ』シーズン3はAmazonプライムビデオで独占配信。

原作コミックの日本語版は、G-NOVELSから発売中。

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シーズン3第6話のベースになった「ヒーローガズム」は3巻に収録されている。

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第5話の解説はこちらから。

第1話の解説はこちらから。

第2話の解説はこちらから。

第3話の解説はこちらから。

第4話の解説はこちらから。

シーズン3までの経緯とスピンオフ番組の内容、アニメ版の注目エピソードはこちらの記事で。

 

『ザ・ボーイズ』はシーズン4の製作も発表されている。

シーズン2最終話のネタバレ解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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