『ゴジラxコング 新たなる帝国』の続編と敵怪獣について考察&解説
「ゴジラ」シリーズ70周年と、モンスター・ヴァース10周年を記念したアダム・ウィンガード監督作『ゴジラxコング 新たなる帝国』が2024年4月26日(金)に全国公開された。日本では公開されたばかりだが、『ゴジラxコング 新たなる帝国』は本国であるアメリカでは2024年3月29日(金)に公開されている。そのため、既に続編制作とそこに登場する敵怪獣の考察がファンの間で盛んに繰り広げられている。その最中、米The Hollywood Reporterが『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)の脚本家である デヴィッド・キャラハムが続編の脚本を執筆中であることを報じた。
『ゴジラxコング 新たなる帝国』の監督であるアダム・ウィンガードはA24でオリジナル映画『オンスロート(原題:Onslaught)』に取り組んでおり、脚本は進んでいるが、監督は交代することが米The Hollywood Reporterが報じた『ゴジラxコング 新たなる帝国』の続編。本記事では『ゴジラxコング 新たなる帝国』の続編制作と続編で登場すると思われる敵怪獣について考察と解説を述べていこう。なお、本記事は『ゴジラxコング 新たなる帝国』のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。
以下の内容は、映画『ゴジラxコング 新たなる帝国』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『ゴジラxコング 新たなる帝国』の続編制作はあり得る?
順調な興行成績
『ゴジラxコング 新たなる帝国』の全世界興行収入はアメリカを含めた公開日の2024年3月29日(金)から3日間で、1 億 9,510 万ドル(約306億円)を記録したことを米Screen Dailyが報じた。これは前作の『ゴジラvsコング』(2021)よりも好調な出だしである。更に、そこに拍車をかけるのが中国での売り上げだ。
中国では「ウルトラマン」シリーズや「仮面ライダー」シリーズといった日本の特撮作品は人気コンテンツとなっている。それは「ゴジラ」シリーズも例外ではなく、2024年4月21日(日)の時点で累計1億2,100万ドル(8億6,200万人民元)を記録していることを米Varietyが報じている。
このように興行収入の面では申し分ない記録を出している『ゴジラxコング 新たなる帝国』だが、続編制作にアダム・ウィンガード監督が意欲的になっているとされる理由は興行収入だけではない。それはアダム・ウィンガード監督の考える『ゴジラvsコング』を第1章、『ゴジラxコング 新たなる帝国』を第2章とする三部作構成の映画にするという案だ。
『ゴジラvsコング』三部作構成案
スタジオ側はまだ続編制作に関してコメントを出してはいないが、アダム・ウィンガード監督は、『ゴジラxコング 新たなる帝国』を『ゴジラvsコング』から続く三部作にしたいと考えているのだ。米Discussingfilmでのインタビューで、アダム・ウィンガード監督は『ゴジラxコング 新たなる帝国』について、以下のように熱く語っている。
2本の映画を撮ったのならば、3本目を撮ったほうが良いという考え方もあります。私は間違いなく、この映画にはもっと物語があると思います。ただ、『ゴジラxコング 新たなる帝国』の出来と展開次第ですね。デタラメな外交的な答えに聞こえるかもしれませんが。でも、正直に言えば、この怪獣たちを使ってもっと語りたいストーリーがありますし、その方向性もわかっています。もしうまくいったら、また次の作品を制作できることをとても楽しみにしていますよ!
『ゴジラxコング 新たなる帝国』続編の敵怪獣は?
キーワードは「人類の負の側面」
それらを後押しするように、デヴィッド・キャラハムが続編の脚本を執筆中であることが報じられたが、『ゴジラxコング 新たなる帝国』の続編制作で大事になってくるのは敵怪獣の存在だ。スカーキングは知略を巡らせ、コングを苦しめる典型的な悪の独裁者であり、アダム・ウィンガード監督の言葉を借りるならば「人類の負の側面」だった。続編ではそれを越える敵怪獣が必要になってくることが考察できる。そして、そこで鍵を握るのが「人類の負の側面」という言葉であると考察することができる。
『ゴジラvsコング』では「人類の負の側面」として、人類が怪獣を支配しようとメカゴジラを製作するという暴挙に至った。その結果、ゴジラは縄張りを侵されたと激怒し、エイペックス・サイバネティクスのメカゴジラ製造拠点を次々と破壊した。それによって『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)で築かれた友好的とも取れるゴジラと人類の関係性は破壊されかけた。
アダム・ウィンガード監督は昭和後期の「ゴジラ」シリーズのファンである。昭和後期の「ゴジラ」シリーズでは、ゴジラは人類の味方であり、正義のヒーローとして描かれることが多かった。それは『ゴジラxコング 新たなる帝国』でも共通しており、アイリーン・アンドリュース博士の口から明確に「ゴジラは人間の味方に戻った」ことが解説されている。米Total Filmのインタビューでアダム・ウィンガード監督は以下のように語った。
私は全シリーズの大ファンで、昭和後期をいつもとても楽しんでいます。大きなアイデアがたくさんあり、大物キャラクターを使った壮大な楽しみがあります。『ゴジラxコング 新たな帝国』では、その壮大な伝統に敬意を表し、筋金入りのファンのためにイースター・エッグをいくつか用意しました。
完全生命体デストロイア
モンスター・ヴァースにおける「人類の負の側面」という点に注目すると、とある怪獣の登場の可能性が考察できる。それが一度、『ゴジラvsデストロイア』(1995)においてゴジラを追い詰めた完全生命体デストロイアである。
完全生命体ことデストロイアは、元来は25億年前の先カンブリア時代に生息していたとされる甲殻類に似た微小生命体であった。しかし、初代ゴジラを倒すために用いられたオキシジェン・デストロイヤーによって先カンブリア時代の多くの生物にとって毒であった酸素を克服し、現代の大気組成に適応するために異常進化を繰り返して怪獣化した生物だ。
デストロイアは肉眼で目に見えないほど小さな微小体、微小体が集合して目視できるサイズになったクロール体、カニやクモに似た幼体、幼体が巨大化した集合体、飛行能力を獲得した爬虫類に似た飛翔体、そして西洋の竜を想起させる完全体の6つの姿を持つ。モンスター・ヴァースではゴジラは人類の味方の東洋の龍、ギドラが人類の敵の西洋の竜の原型になったと解説されており、西洋の竜を想起させるデストロイア完全体は続編に申し分ない怪獣だと考察できる。
また、デストロイアが登場するための要素がモンスター・ヴァースでは整っている。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でアメリカ軍が極秘に開発していた兵器として、『ゴジラ』(1954)でゴジラの命を奪ったオキシジェン・デストロイヤーが登場している。オキシジェン・デストロイヤーはギドラには通じなかったものの、ゴジラを再起不能に追い込み、使用された海やその一帯の空の生物を白骨化させて死に追いやった。このオキシジェン・デストロイヤーの使用場面は「人類の負の側面」と捉えられる演出がなされている。
また、アダム・ウィンガード監督は70年続く「ゴジラ」シリーズの中で、最も好きな作品に『ゴジラvsデストロイア』を挙げている。そして米Discussingfilmのインタビューにて、ゴジラとデストロイアの戦いに関して以下のように熱く語った。
これだけは言っておきますが、私のトップゴジラ映画のひとつは『ゴジラvsデストロイア』です。これが私のお気に入りの映画の一つである理由は、おそらく『ゴジラ-1.0』(2023)と 1954 年のオリジナル版を除けば、これほど感情の高揚をもたらしたゴジラ映画は他にないと思うからです。ゴジラジュニアが死に、その後ゴジラが溶けて死ぬというあの映画の結末はとても感動的であり、またそのやり方が美しいのです。初めて見たとき、涙が出てきました。そしてその一部は、そのシーンで流れる伊福部昭のグランドスコアのおかげです。
このオキシジェン・デストロイヤーによって完全生命体デストロイアが誕生するという流れは「人類の負の側面」を描くとすれば、この上ない題材だと言えるだろう。また、モナークは怪獣に関して人類を守ってくれる怪獣たちをプロテクター、破壊を狙う怪獣たちをデストロイヤーと定義づけている。
このことからモンスター・ヴァースにおいて地上最強の怪獣であり、地上の怪獣の王であるゴジラを死ぬ寸前まで追いつめ、『ゴジラvsデストロイア』のキャッチコピーで「ゴジラ死す」とまで言わせた完全生命体デストロイアが地上最強のデストロイヤーとして登場することが期待できる。
サイボーグ怪獣ガイガン
モンスター・ヴァースにおける「人類の負の側面」といえば、宇宙怪獣の存在も挙げられるだろう。『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では、エマ・ラッセル博士が怪獣と人類の共存を主張し、エコテロリストのアラン・ジョナ元大佐と協力し、氷漬けにされて封印されていたギドラを復活させた。ギドラは宇宙怪獣であり、ゴジラと異なり偽の怪獣の王である。そのため、怪獣たちは自然の調和を無視して暴れまわり、人類は滅亡の危機に瀕した。
『ゴジラvsコング』でもその余波は残っており、ギドラの左首の残骸から得られた頭蓋骨を使ったDNAコンピューターで操作するメカゴジラが生み出された。ゴジラは縄張りを侵されたと考え、メカゴジラを建造したエイペックス・サイバネティクスを攻撃している。この宇宙怪獣を使ったロボット怪獣の存在も「人類の負の側面」だと考察できる。
それを踏まえ、宇宙怪獣とロボット怪獣の要素を持つ存在であるサイボーグ怪獣ガイガンが敵怪獣として登場することが考察できる。サイボーグ怪獣ガイガンは『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(1972)で初登場する怪獣で、ゴーグル状の単眼と両手の鎌、腹部の丸鋸が特徴的なM宇宙ハンター星雲人が宇宙恐竜をサイボーグへ改造した怪獣である。その後、M宇宙ハンター星人の刺客として登場し、『ゴジラ対メガロ』(1973)でも海底王国シートピアの助っ人として派遣された。
『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』ではキングギドラと共闘しているサイボーグ怪獣ガイガン。『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』ではゴジラは正義の怪獣とされており、「宇宙のわるもの怪獣をやっつけろ! ゴジラがんばれ地球をまもれ!」というキャッチコピーが付けられている。そのため、正義の怪獣にしてプロテクターとしてゴジラを描く近年のモンスター・ヴァースの流れに適した敵怪獣だと考察できる。
実はサイボーグ怪獣ガイガンはモンスター・ヴァースに登場している。それは『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のコンセプトアートでゴジラにひれ伏す怪獣の1体としての登場だ。このコンセプトアートは他会社の怪獣であるガメラも描かれているため、イースター・エッグの要素が強いがサイボーグ怪獣ガイガンの登場の下準備は整えられていると考察できる。そのことからもギドラに続く宇宙からのデストロイヤーとしてサイボーグ怪獣ガイガンが登場する可能性はあり得る。
宇宙凶悪戦闘獣スペースゴジラ
スカーキングと古代怪獣シーモを越える怪獣で、ゴジラとの戦いに相応しい怪獣として最後に挙げるのが『ゴジラvsスペースゴジラ』(1994)で初登場した宇宙凶悪戦闘獣スペースゴジラだ。スペースゴジラは宇宙に飛び散ったゴジラ細胞がブラックホールに吸い込まれ、ホワイトホールから出る過程で凄まじいエネルギーを浴びて誕生した怪獣だ。もしかすれば、ギドラ関連で人類がゴジラ細胞を宇宙に放出してしまうという「人類の負の側面」が描かれるのかもしれな。
宇宙凶悪戦闘獣スペースゴジラの最大の特徴が結晶体を生じさせ、周囲を自分に優位な空間に変えることである。地下空洞の世界には結晶体が溢れており、その結晶体が宇宙凶悪戦闘獣スペースゴジラによるものだと考察できる。それを裏付けるようにイーウィス族はゴジラ族のことを星を食う怪獣と称していた。そのため、サイボーグ怪獣ガイガンと同じく、宇宙から宇宙凶悪戦闘獣スペースゴジラが襲来し、星を捕食しようとするのをゴジラとコングが止めるという物語も考察できる。
『ゴジラvsスペースゴジラ』ではリトルゴジラの窮地にゴジラが現われるという展開が存在している。モンスター・ヴァースではミニコングことスーコが登場したため、宇宙凶悪戦闘獣スペースゴジラによるスーコの窮地にコングが現われるという展開が行なわれると考察することも出来る。
スタジオ側のコメントにも注目
世界興行収入も順調な『ゴジラxコング 新たなる帝国』は、監督を務めたアダム・ウィンガード監督も続編制作に乗り気であるため、スタジオ側が『ゴジラxコング 新たなる帝国』の続編制作やスピンオフ制作に関するコメントを出すのも時間の問題だと考察できる。そこでは「人類の負の側面」であるスカーキングと氷河期をもたらした古代怪獣シーモの2体を越える敵怪獣の登場が期待される。
本記事では敵怪獣に関して『ゴジラvsデストロイア』で初登場した完全生命体デストロイヤの可能性と、『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』で初登場したサイボーグ怪獣ガイガン、『ゴジラvsスペースゴジラ』で初登場したスペースゴジラが敵怪獣として登場する可能性考察してきた。次にゴジラとコングの2体と戦う怪獣は地球の怪獣なのか、それとも宇宙怪獣なのだろうか。アダム・ウィンガード監督のコメントだけではなく、スタジオ側のコメントと合わせて注目していきたいところだ。
『ゴジラxコング 新たなる帝国』は2024年4月26日(金)より全国公開。
『ゴジラxコング 新たなる帝国』のサウンドトラックは発売中。
『ゴジラvsコング』の完全数量限定生産4枚組Blu-rayも発売中。
Source
The Hollywood Reporter 1/The Hollywood Reporter 2/Screen Daily/Variety/Discussingfilm/Discussingfilm/Total Film
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