ネタバレ解説『オーメン:ザ・ファースト』ラストの意味は? 権力に切り込む意欲作、過去作と繋がりを考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『オーメン:ザ・ファースト』ラストの意味は? 権力に切り込む意欲作、過去作と繋がりを考察

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映画『オーメン:ザ・ファースト』公開

オカルト・ホラーの名作シリーズ「オーメン」の最新作『オーメン:ザ・ファースト』が2024年4月5日(金) より日米で同時公開された。『オーメン:ザ・ファースト』は、『オーメン』(1976) の前日譚。のちに世界を揺るがすことになる“悪魔の子”ダミアンの誕生が描かれる。

『オーメン:ザ・ファースト』の指揮を執ったのは、本作が長編初監督となるアルカシャ・スティーヴンソン。主人公マーガレットを『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011-2019) のミアセラ・バラシオン役で知られるネル・タイガー・フリー、第1作目にも登場したブレナン神父役を同じく『ゲーム・オブ・スローンズ』のダグマー役などで知られるラルフ・アイネソンが演じる。

今回は、『オーメン:ザ・ファースト』のラストと、過去作との繋がりをネタバレありで解説していこう。以下の内容は本編の結末についての重大なネタバレを含むので、必ず劇場で本作を鑑賞してから読んでいただきたい。

また、本作には児童虐待、性的虐待、性暴力、流産・死産の描写が含まれ、記事内でもそれに言及しているので注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『オーメン:ザ・ファースト』の結末に関するネタバレを含みます。
注意
以下の内容は、児童虐待性的虐待性暴力流産・死産に言及しています。

『オーメン:ザ・ファースト』ラスト ネタバレ解説

『オーメン:ザ・ファースト』の教会批判

『オーメン:ザ・ファースト』の舞台は1971年のローマ。司祭のローレンスに呼ばれてアメリカからローマの教会にやってきたマーガレットは、教会に住む少女カルリータと、教会の陰謀を追うブレナン神父との出会いを通して教会と自分自身の真実を知ることになる。

ブレナン神父は、1976年公開の第1作目『オーメン』で“悪魔の子”ダミアンを養子に迎えた主人公ロバート・ソーンに繰り返し警告を与えた神父。『オーメン:ザ・ファースト』では、ダミアンの誕生前からローマで教会の闇を追っていたことが明かされている。

ブレナン神父曰く、教会には虐待や性暴力を容認する人々がいるという。『オーメン:ザ・ファースト』では教会を含む権威に抵抗する若者たちのデモが描かれており、権力機構としての教会が描かれている点がその特徴だ。

『オーメン』ではダミアンは権力の近くに現れるとされており、それは米国大統領の友人で外交官のロバートの元だった。『オーメン2/ダミアン』(1978) では、ダミアンはロバートの弟の実業家リチャードの元に引き取られている。『オーメン:ザ・ファースト』では、過去作で取り上げられた政治資本に加え、宗教/教会というもう一つの権力を修道女の視点から描いたという点でシリーズでも画期的な作品になっている。

なお、現実でもローマ・カトリック教会による児童への性的虐待は2000年代から明るみになった。『オーメン:ザ・ファースト』の舞台になっている1970年代も含め、長きにわたって虐待が繰り返されていたことが明らかになり、事件が繰り返し隠蔽されていたことも分かっている。

ダミアン誕生の背景

ブレナンはすでに教会を破門されており、教会は信用が失墜しつつある教会に人々の信仰心を向けるためにあえて恐怖の対象となる「反キリスト」を生み出そうとしていると語る。反キリストとは、キリスト教における人を惑わす者の呼称で、悪魔が実体化したものとも考えられる。宗教改革の指導者たちはローマ教皇を反キリストだと批判したこともある。

反キリスト=悪魔の子の誕生により社会に混乱がもたらされ、再び神への信仰心が復活すること——それが教会の一部グループの狙いであり、ダミアンが生み出された計画の背後にある狙いであった。しかし、ダミアンはその計画によってすんなり生まれたわけではなかった。

ブレナンとマーガレット、そして閉じ込められていたマーガレットを助けたガブリエル神父は、教会の隠し部屋にあった計画の資料を入手。教会では女性たちが“獣”から強制的に受胎させられ、「スキアーナ」というコードネームをつけられた子ども達が生まれていたこと、そのほとんどが死産や流産だったことが判明する。

冒頭でマーガレットが見た妊婦たちは「政府から受け入れを受託している父のいない妊婦たち」とされていたが、スキアーナ計画の一部だったようだ。マーガレットが気絶してしまった(日本特有の大量モザイク)出産シーンでは獣のような生き物が産まれてきていたが、あれは幻覚ではなく、反キリストが人間の姿で生まれてこなかった失敗パターンだったのだろう。

ブレナン神父、痛恨のミス

この計画は少なくとも十数年前から行われており、その中で無事に生まれてきたのがカルリータだった。だが、マーガレットはブレナンが持っていた赤ん坊の写真を見て、聖書の“獣の数字”である「666」のアザが頭についていることに気づく。カルリータは口の中にそのアザがあり、生存者は二人いたということに思いが至らなかったブレナンの痛恨のミスが明らかになる。

この時、マーガレットはクラブで知り合ったパオロが死ぬ直前に「アザを見つけろ」と言い頭を指さしていたことを思い出し、自分の頭のアザの存在を知って、自らも“スキアーナ”であったことを知る。つまり、マーガレットはカルリータと同じく“獣”の血を宿す姉妹だったのだ。

なお、第1作目の映画『オーメン』では、ダミアンも頭に「666」のアザがある。また、ダミアンの母の墓には「マリア・スキアーナ」という名前が刻まれている。墓の中には犬の骨が埋められており、「スキアーナ」という名前をのぞいてこの墓はダミーであったことが分かる。

ルスの策略

そしてマーガレットには、ルームメイトのルスと共にクラブに行った夜の記憶も蘇る。初めてお酒を飲んでハメを外し、記憶をなくしたあの夜の出来事は、教会の従順な修道女だったルスの策略であった。

路上で再会したパオロがマーガレットの頭のアザのことを知っていた理由は、あの夜一緒に踊っていたマーガレットがウィンプル(修道女の頭巾)をつけずに髪をかきあげていたから。あの後マーガレットは教会の地下に連れて行かれたようで、パオロもその場に立ち会わされている。ここでマーガレットは獣に孕ませられたのだ。

獣は教会の性加害者の比喩だろう。神職でありながら悪魔のような行いをしてきた教会関係者への痛烈な批判と受け取ることができる。マーガレットは小さい頃から“幻覚”が見えて拘束されていたといい、ローレンス枢機卿からそれは全て妄想だと教えてもらい気が楽になったと話していた。虐待の被害者は虐待を受けた記憶を抑圧することがある。カルリータも同じ境遇であり、明言されなかったが、二人とも教会関係者から性的虐待を受けていたことを窺わせている。

また、カルリータがシスターと描いていた絵は、マーガレットが男児を妊娠したことを予知していたものであることがここで明らかになっている。

誕生の時

ブレナン神父らはこの事実を公にしようとするも、車を横から衝突させる強攻策で足止めされ、マーガレットのお腹は急激に膨らんでいく。“悪魔の子”を宿すネル・タイガー・フリーの怪演もみどころだ。途中で時計の音がなり、日付がダミアンの誕生日である1971年6月6日に変わったことが分かる。マーガレットはローレンス枢機卿らに教会に連れて行かれ、そこで出産の時を迎えることになる。

マーガレットの出産シーンも実に気味の悪い演出(褒めてる)で、教会のメンバー一同が見守る中、ついに出産のときを迎える。しかし、意外なことにマーガレットが産んだのは二人の赤ちゃん、双子だったのである。一方は女児で、もう一方は反キリストとなる男児だ。

マーガレットは生まれた男の子を抱き寄せる時にローレンス枢機卿の首にメスを刺して復讐を果たす。『オーメン』ではダミアンを殺すために短剣を首に刺そうとする場面が描かれた。その方法について、ダミアンは「人ではない」から躊躇するべきでないとも言われている。つまり、マーガレットは人の姿をした悪魔たるローレンス枢機卿を「悪魔の殺し方」で殺したのだ。

ダミアンを手中に収めたマーガレットだったが、不意をついてマーガレットを刺したのは信じていた友人のルスだった。教会の人々は生まれた男児を連れ去り、マーガレットと残された女児を建物ごと焼き払うよう指示する。ここでも第1作目『オーメン』との繋がりが見える。

映画『オーメン』でも、主人公ロバートがダミアンの出生の秘密を探るためにローマの産院を訪れた。しかし、ダミアンが生まれた当時の記録は全て火事で失われたと語られていた。『オーメン:ザ・ファースト』では、この火事は偶然の事故ではなく、ダミアン誕生の秘密を隠蔽するために神父たちが放火したことが原因だったことが明らかになっている。

枝分かれする二つのラストシーン

『オーメン』へ続く道

そして、注目の二つのラストシーン。一つは明確に『オーメン』へとつながっていくもの、もう一つは「オーメン」フランチャイズの新たな道筋を示すものだ。

神父はファイルから一枚の写真を取り出し、シスターに渡す。この写真は『オーメン』でグレゴリー・ペックが演じたロバート・ソーンの写真だ。俳優のグレゴリー・ペックは2003年に87歳で逝去しており、意外な形でのカメオ登場となった。

神父は在ローマ米国大使のロバートを生まれた男児の新しい父に指名。現在ロバートの妻が妊娠している子どもは死に、ロバートは養子をとることになるだろうと話す。『オーメン』の冒頭は、ロバートの妻アンが死産してロバートがそれを隠して養子をとる場面から幕をあける。同作では出産シーンなどは描かれていないが、『オーメン:ザ・ファースト』のラストでは亡くなった赤ん坊とダミアンが取り替えられるシーンが描かれている。

『オーメン』では、ロバートの子どもは人為的に殺されていたことが明かされている。全ては教会の策略だったということだ。神父はこの子どもが権力を手にすると宣言。後のシリーズでダミアンは経営者になり、大統領の顧問も務めるようになる。

この後の「オーメン」三部作はダミアンを中心とした物語が展開されていく。今みても色褪せない名作なので、未視聴の方はぜひチェックしていただきたい。

新たな「オーメン」へ続く道

そして、もう一つのエンディングは「オーメン」過去作になかった要素が描かれる。放火によって全ては闇に葬られるかに思われたが、マーガレットを助けたのは本当の意味での“シスター”であるカルリータだった。マーガレットとカルリータ、そして双子の片割れである女児はこの火事を生き延びたのだ。

このとき、マーガレットは教会が閉じ込めていた“獣”が炎に包まれている姿を目にしている。もう二度と計画が繰り返されることはないと示されているようでもあるが、この獣のそもそもの出自はが明らかにならなかった。別の個体が存在しているか、教会に獣を生み出すノウハウがあるのならば同じ悲劇は繰り返されうるだろう。人間の方が変わらない限りは……。

マーガレットとカルリータ、マーガレットの娘は、人里離れた場所で三人で平和に暮らしていた。そこに現れたのは神出鬼没のブレナン神父だ。神父に立ち去るよう告げるマーガレットに対し、ブレナンはマーガレットの娘が特別な力を持っていることを伝える。しかし、それによって教会側が彼女らを追っているとも。

そして、ブレナンは去り際にマーガレットに連れ去られた息子の名前を教える。その名はもちろん、「ダミアン」である。『オーメン』で一番頑張って危機を伝えようとしていたブレナン神父による「ダミアン」の一言で幕を下ろし、おどろおどろしいテーマ曲が流れる演出は素晴らしかった。

ちなみに、マーガレットの娘の大きさを見るに、このラストシーンは『オーメン』と同じ時期が舞台だと考えられる。『オーメン』ではダミアンの5歳の誕生日から物語が動き始めるので、『オーメン:ザ・ファースト』の5年後が舞台なのだ。

ダミアンの物語とは別に、マーガレットと妹のカルリータ、そしてマーガレットの娘/ダミアンの双子の姉妹の物語が展開されていく可能性を示唆して、『オーメン:ザ・ファースト』は幕を閉じる。ここからは、第1作『オーメン』とのつながりと、今後の「オーメン」フランチャイズの展開の可能性について考察していこう。

『オーメン:ザ・ファースト』ネタバレ考察

『オーメン』との矛盾は?

『オーメン:ザ・ファースト』と『オーメン』には、いくつか矛盾する内容も見られた。例えば、ダミアンの養父ロバートの前に警告に現れるブレナン神父(頑張りすぎでは……)は、『オーメン』ではダミアンの「母を見た」と話しているが、その正体を「山犬だ」と話している。ロバートが見に行ったダミアンの母の墓地にも犬の白骨遺体が埋められていた。また、ブレナン神父は「出産に立ち会った」とまで発言しているのだ。

『オーメン:ザ・ファースト』でブレナン神父が最後までマーゴットを気にかけていたことを鑑みるに、『オーメン』のブレナンはマーゴットたちの生存を隠すために嘘をついていたと考察できる。一方で『オーメン』ではダミアンは犬に守られていた。ダミアンの父である“獣”も巨大な犬のような見た目をしており、ブレナン神父はそこから着想を得て「山犬」と話したのだろうか。

また、ダミアンの双子の姉妹の存在もこれまでの「オーメン」シリーズでは触れられることはなかった。これについては、教会側が証拠隠滅を図ったことと、ブレナン神父が偽の情報を流布していたことが功を奏したと考えることができる。

続編はある? どうなる「オーメン」シリーズ

一方で『オーメン:ザ・ファースト』は明確にシリーズの更なる発展を目指した終わり方になっていた。というのも、マーガレットの娘が特別な力を持っていること、追手が迫っていることにわざわざ言及しているからだ。

これは明確に次作のメインキャラクターと敵の存在を示唆しており、いわば“ダークサイド”を描いたダミアン三部作とは異なる“vs教会”の新たなストーリーラインが生まれる可能性がある。ダミアンと違い、ダミアンの姉妹には母マーガレットと叔母カルリータの存在がある。教会の陰謀を知っており、同じ出自を持つ二人ならこの子を正しい道へと導けるかもしれない。

もちろん続編制作は興行収入次第ということになるだろうが、『オーメン:ザ・ファースト』の製作費は約3,000万ドル(約45億円)で、製作費が高騰しているハリウッドにあっては低予算の部類に入る。脇はベテランの名俳優で固めながらも、メインキャストを若手に委ね、CGもほとんど使わずに演技と演出に賭けた戦略が功を奏していると言える。

日本では相変わらず洋画が元気がないが、世界規模で見れば続編製作に十分な額の興行成績を収める可能性は十分にある。シリーズ誕生から48年の時を経て教会権力の闇に切り込んだ『オーメン:ザ・ファースト』。今だからこそ描ける新たな続編に期待しよう。

映画『オーメン:ザ・ファースト』は2024年4月5日(金)より全国の劇場で公開。

『オーメン:ザ・ファースト』公式サイト

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【オススメ!】『流転の地球 -太陽系脱出計画-』ラストのネタバレ解説はこちらから。

『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』のネタバレ解説はこちらから。

『オッペンハイマー』ラストのネタバレ解説はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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