第7話ネタバレ解説&感想 ドラマ『THE LAST OF US』遂にあの名作が実写化 あらすじ・考察【ラスアス実写版】 | VG+ (バゴプラ)

第7話ネタバレ解説&感想 ドラマ『THE LAST OF US』遂にあの名作が実写化 あらすじ・考察【ラスアス実写版】

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ドラマ『ラスアス』第7話はどうなった?

人気ゲーム『The Last of Us』(2013) を実写ドラマ化した『THE LAST OF US』は、2023年1月に配信を開始。全9話で綴られる物語は、第7話からいよいよラスト3話に突入する。

ドラマ版『ラスアス』は、原作ゲームの内容をなぞりながらも、必要に応じて寄り道をしながら物語を肉付けしていくのがその特徴だ。第7話ではどんな工夫が見られたのか、今回も各シーンをゲーム原作と比較しながら解説していく。なお、以下の内容は本編のネタバレを含むため、必ずU-NEXTで本編を鑑賞したから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『THE LAST OF US』第7話の内容に関するネタバレを含みます。

第7話「残されたもの」ネタバレ解説&あらすじ

あの名作が実写化

ドラマ『ラスアス』シーズン1第7話のタイトル「残されたもの」の英題は「Left Behind」。原作ゲームをプレイした方はお気づきだろうが、これは2014年に配信されたゲーム『ラスアス』の追加エピソード「Left Behind -残されたもの-」と同じタイトルだ。ドラマ『ラスアス』第7話は、DLCの内容を丸々実写化するという前代未聞の内容になる。

第7話の監督を務めたのはリサ・ジョンソン。Netflix『デッド・トゥ・ミー 〜さようならの裏に〜』(2019-) やApple TV+『フィジカル』(2021-) でエピソード監督を務めている。リサ・ジョンソンは「Left Behind」をどのように実写化したのだろうか。

第6話で遂にお互いの意思で一緒にいることを決めたジョエルとエリーだったが、ラストでは大学で襲われてジョエルが重傷を負ってしまった。第7話では通ってきた道に血痕を残して、エリーはジョエルを小屋で看病している。

瀕死のジョエルはトミーのところへ戻るようエリーに告げるが、エリーはこれを無視してジョエルの顔を見つめる。そして、階段を登り、回想が始まる。原作ゲームでは、「Left Behind」はジョエルが大学でならず者に襲われて重傷を負った後にエリーが薬を手に入れるためにモールに忍び込むパートと、ライリーとの回想パートを交互にプレイすることになる。ドラマ版『ラスアス』第7話では、その後者のみを実写化する形をとっている。

エリーのウォークマン

FEDRAの訓練生として訓練を受けているかつてのエリー。腰には今回のキーアイテムになるソニーのウォークマンが見える。原作ゲームの機種はソニーのプレイステーション3〜5だし、ドラマ『ラスアス』の制作を手掛けているのはソニー・ピクチャーズ テレビジョンなのでソニーのアイテムが出てきても無理はない。原作ゲームでもエリーの持ち物にはウォークマンが含まれており、実写版で登場したものと同じ機種になっている。

なお、ドラマ『ラスアス』の世界は、2003年からパンデミックで社会が崩壊したことになっている。CDでもMDでもiPodでもなく、カセットテープが生き延びているというのは興味深い。

そのウォークマンでエリーが聴いているのはパール・ジャム「All or None」(2002)。「希望のない状況、そして私は信じ始めた。この希望のない状況が、私が目指していたものだと」と歌われており、今の状況に失望しているエリーの心情が表現されている。

エリーはベサニーという同級生から「友人はもういない」と言われて、殴ってしまう。FEDRAのクワン大尉と面談したエリーは、「ここ数週間荒れている」と言われるが、エリーのリーダーとしての素質を見抜いたクワン大尉は態度を改めてキャリア組になる道を提示する。

個室のベッドに美味い食事というより良い条件を提示されたエリーは、「我々が街の秩序を守っている」というFEDRAとしての自負と大義を聞かされた上、自分の素質についても認められると、クワン大尉の提案を飲む。それでも、ウォークマンを返してもらうことは忘れない。

荒れていたエリーだったが、かつては現実的な道を進もうとしていた。FEDRA幹部という全く逆の道を歩む可能性もあったエリー。諦観と共に“大人の階段”を登ろうとした矢先に事件は起きる。

エリーの部屋

ドラマ版ではエリーの部屋の様子が詳細に映し出され、壁には恐竜の絵が飾られている。ゲーム続編の『ラスアス2』では恐竜博物館を探索することができる。また、第4話から登場しているダジャレの本に、第5話でエリーのお気に入りとして紹介されたコミック『サベッジ・スターライト』も。『サベッジ・スターライト』はゲームのコレクション要素でもある。

空いているベッドに目をやったエリーは、消灯時間が来て眠ることに。机の上に置かれているウォークマンのカセットテープはエタ・ジェイムスA-ha。エタ・ジェイムスは「Tell Mama」(1968) などで知られるR&Bシンガーで、映画『キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語』(2008) ではビヨンセがエタ・ジェイムス役を演じた。A-haは「Take on Me」(1984) などで知られるシンセポップバンドだ。

そして、壁にはゲーム『モータルコンバット2』(1993) のポスターも。第3話でエリーがコンビニの中で遊んでいたゲームであり、ゲーム版の「Left Behind」でも小ネタとしてエリーの部屋の壁には同作のポスターが貼られている。その他にも、宇宙に憧れるエリーらしく、月や宇宙飛行士のポスターなどが見られる。

そして、ゲーム版の回想はこのエリーが寝ているシーンから始まる。やはりドラマ版は、ゲーム版で描かれた場面までの背景を付け加えるというやり方を続けている。ここに入ってきたのは3週間前に脱走したライリー。エリーがナイフで反撃するのは原作通りだ。

実写版でライリーを演じたのはストーム・リード。映画『ドント・レット・ゴー -過去からの叫び-』(2019) でアシュリー役、映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021) でブラッドスポートの娘のタイラ役を演じたことで知られる。

二人の微妙な関係

そして、ライリーは脱走してファイアフライに入ったことを明かす。ドラマ版の特徴は、FEDRAの士官としての将来を約束されたエリーが、ライリーのファイアフライ入りについて拒否反応を示す点だ。ゲーム版ではエリーはライリーがファイアフライに入ったことについてはあまり深刻に考えておらず、詳しい経緯を聞いた後に「私もファイアフライ入ろうかな」と呟いている。

ドラマ版におけるこの二人の価値観の違いは、二人の間に別種の情念をもたらしている。将来と世界の話を介して牽制し合いながら、二人は互いの存在を確かめ合っていくのだ。エリーが「私ってバカ」と言いながら「最高の夜」を過ごすためにライリーについていくのは原作通り。ドラマ版では、ライリーを意識しているエリーは着替える時に向こうを見るように告げるが、ライリーは「気にしすぎ」と言い、エリーの気持ちに気づいていないようだ。

道中でライリーが「何が大事か選ばないと」と言い、エリーが「ファイアフライ大学で学んだ?」と揶揄するシーンは、今後描かれるであろうファイアフライの方針を示唆するものでもある。また、懐中電灯を巡ってエリーが「反逆者チームに1点」と言うシーンは、英語では「アナキスト(無政府主義者)」と言っており、ライリーは「自由の戦士 (freedom fighter)」と訂正している。

仲良く建物を登って行った二人は一体の死体を目にする。その人物はクスリを酒で飲んだらしく、二人は残された酒を飲むことに。ゲーム版では、ウィンストンという名のエリーに乗馬を教えた軍人が遺した酒を二人で飲むシーンがある。ゲームでは二人とも咳き込んでいるが、ドラマ版では強がっているのか、二人はぐびぐび飲んでいる。

ライリーはエリーを信頼して銃を触らせると話題はファイアフライに。エリーが「ファイアフライの彼氏でもできた?」と聞き、ライリーに「女が現れた」と言われると「同年代?」と気にする様子は、ライリーに思いを寄せているエリーのティーネイジャーの微妙な心情がうまく表現されている。ベラ・ラムジーも流石の演技である。

ライリーは脱走スキルを買われてファイアフライのマーリーンにスカウトされ、入ることにしたと話すが、エリーは「全てを捨てて?」と聞く。この「全て」には、もちろんエリーが含まれるのだが、エリーは「軍を秩序を守ってる」と聞いたばかりのクワン大尉の言葉を引用する。

二人は屋根から屋根を飛び移り、奇妙な青春を謳歌するが、結局はファイアフライとFEDRAの批判合戦になってしまう。互いに「プロパガンダ」と言い合う二人が一緒にいられなくなったのは、社会のせいなのだろうか。

廃墟のモールが出現

そして二人がたどり着いたのは、「Left Behind」のメインの舞台になったモールだ。軍が住宅を増やしたことでここにも電気がつながったのだという。ライリーはエリーにモールの四不思議を案内することを企画していた。意外にも自由な時間があったようで、ライリーが準備したスポットを案内していくことになる。

ここで流れる曲は、エリーがカセットテープを持っていたa-haの「Take On Me」。1984年発表の楽曲で、ドラマ『ラスアス』の“ルール”的には「80年代は問題あり」だが、ここでは二人は自由を謳歌する。初めてのエスカレーターにはしゃぐエリーが愛らしい。

モールの中には架空の映画『DAWN OF THE WOLF part 2』のポスターが見られる。これはゲーム『ラスアス』にも、続編の『ラスアス2』にも登場したポスターだ。それにしてもこのモールは再現度がかなり高い。百貨店のメイシーズ、ファッションブランドのエスプリギャップ、靴屋のフットロッカー、中華料理ファストフードのパンダ・エクスプレス、コスメ店のザ・ボディショップなどが並ぶ。“ジ・アメリカのモール”という感じだ。

二人はその店舗の一つであるヴィクトリアズ・シークレットの前で立ち止まると、ライリーは際どい下着をエリーが着ているのを想像したと言って吹き出す。それに対し、エリーはライリーのことを意識して、こっそりそのショーウィンドウで髪型を整えるのだった。

ライリーがサプライズのためにエリーの手を引くシーンでは、手を繋いだエリーの表情からは嬉しさが溢れでている。この辺りのカメラワークも素晴らしく、二人の距離が徐々に縮まっていく様子が見事に表現されている。

メリーゴーランド

ライリーが用意していたのはメリーゴーランド。原作でもライリーがエリーのためにメリーゴーランドを用意していた。ここで二人は一緒にメリーゴーランドに乗るのだが、ゲーム版ではエリーが先に乗り、ライリーが遅れて乗った途端にメリーゴーランドは止まってしまっている。だが、ドラマ版では二人は共にメリーゴーランドに乗り、酒を飲み交わす。ゲームで実現できなかった光景をドラマで実現する優しい演出だ。

ライリーの横顔を見つめるエリーは、メリーゴーランドが止まると再びライリーにファイアフライで街を解放するのかと問い始める。軍で街をよくすればいいと語るエリーは、ライリーに戻ってきてほしいのだ。だが、ライリーは軍で評価されておらず、17歳になった時に下水班になるよう指示を受けていた。軍では未来がなく、スキルを認められたファイアフライで生きる道を選んだライリーの選択は至極現実的なものだった。

一方で、ライリーはエリーのことを「唯一の未練」と話す。これにはエリーもニヤニヤが止まらない。ベラ・ラムジー、演技がうますぎる。なお、原作ゲームではここでライリーからエリーにジョークブックが渡されるのだが、ドラマ版では後送りになっている。

そして、ライリーが次に用意していたのはプリクラだ。ゲームを再現したビジュアルとなっており、ゲーム版ではプレイヤーの操作でポーズを決めることができる。必要以上にくっついてくるライリーへ、エリーは期待の眼差しを向けている。なお、ゲーム版では写真は印刷できなかったが、ドラマ版ではプリントできている。メリーゴーランドに続いて、エリーとライリーが出来なかったことが実現されている。

『モータルコンバット2』

次にライリーが案内したのは、ゲーム内にも登場したゲームセンターのRaja’s Arcade。ここでも、ゲーム版では壊れていたアーケード筐体が遊べるようになっている。ゲーム版では目を瞑って想像の中でゲームをプレイしていたが、ドラマ版では二人は『モータルコンバット2』で実際に対戦することができている。

なお、このゲームセンターにはピンボールゲームの『ATTACK FROM MARS』(1995) や、セガのレースゲーム『デイトナUSA』(1994) など、懐かしいゲームが数多く置かれている。確かに2003年にパンデミックが起きたとして、田舎町のモールに90年代の筐体が設置されていると言うのは自然な話である。

エリーのためにライリーは両替機をこじ開けており、二人はゲームを楽しむ。『モータルコンバット2』でエリーはライデンを、ライリーはミレーナを使用。第3話でエリーがジョエルに「友達は達人だった」と言い、ミレーナの能力について語った場面はこの思い出がベースにあったのだ。

ミレーナで勝利したライリーがコマンドを入力して相手を食べ、骨にして吐き出す演出は、「モータルコンバット」シリーズ独自のシステム。うまくコマンドを入力すると発動するもので、ライリーが言うように“フェイタリティ”と呼ばれている。

エリーの心、ライリーの言葉

二人がゲームで遊び続ける一方で、モールには感染者の姿があった。エリーもフェイタリティを発動して盛り上がり良い雰囲気になるも、最後の一線を越えない状況に、エリーの意識は現実に戻り始める。次の日のことを心配するエリーに、ライリーが見せたのはジョークブックの第2巻。エリーがジョエルに読み聞かせていたジョークブックは、ライリーから貰ったものだったのだ。

ジョークブックで笑い合う二人。おそらくエリーはライリーとジョエルとしか、ジョークブックで一緒に笑うという経験をしていない。だからこそ、今、ジョエルを助けたいという思いを強く持っていることが想像できる。

しかし、エリーはライリーが用意していた爆弾を見つけてしまう。それは兵士を殺すための武器であり、エリーにも向けられる殺意でもある。エリーにとってはそれ以上に、自分のためにモールの準備を進めてくれていたと思っていたライリーが、ファイアフライの任務のためにモールに潜伏していたことがショックだったのだろう。

怒って帰ろうとするエリーに、ライリーは翌日街を出ることを明かす。エリーを誘っていいか聞いたがダメたと言われたという話は、ゲーム版ではエリーが「私も入ろうかな」と言った時にカジュアルに話されていたが、ドラマ版ではライリーの努力の痕跡として提示されている。アトランタに行く前のボストンでの最後の夜をエリーと過ごそうとしていたライリー。エリーは「会いたかった」の次の言葉を待つが、それは「さよなら」だった。

切ない。切なすぎる。ゲーム版ではエリーは「この場所に来たワケ」を聞き、ライリーは「分かんない」と答える。ゲームではドラマより年齢が低めに設定されているため、この辺りの会話にも変化を加えたのだろう。

「I Got You Babe」

エリーは寮に引き返そうとするが、思い直して途中で踵を返すと、叫び声を耳にする。だが、それはハロウィンショップのギミックだった。アメリカではハロウィンの時期が近づくと、期間限定でハロウィングッズの専門店がオープンする。パンデミックが起きたのは2003年の9月なので、その時にハロウィンショップが設置されていたと考えられる。

ゲーム版でも登場するハロウィンショップだが、順番を入れ替え、ゲーム版ラストのオーディオショップの役割を果たすことになる。突然消えて、突然戻ってきて最高の夜を与え、また消えようと非難するエリーに、ライリーは家族がいたことがあり、居場所が欲しい、ファイアフライは自分を選んでくれた、必要としてくれたと正直な気持ちを吐露する。

一方で、ライリーが消えた後のエリーにとっては、その「自分を選んでくれた」存在がFEDRAだったはずだ。それでも、エリーは先に自分がライリーを必要としていたと伝えつつも、街を去ることに固い意志を見せるライリーのことを受け入れるのだった。

受け入れられたライリーはエリーに最後のサプライズを披露する。自分はピエロの覆面を、エリーには狼の覆面を渡すのだが、この覆面は原作ゲームのものを完全に再現している。そして、原作と同じくウォークマンをオーディオに繋ぐと、二人はゲームと同じくエタ・ジェイムス「I Got You Babe」(1967) で踊り出す。

「I Got You Babe」では、「皆は私たちがまだ若くてよく分かってないと言うけれど、あなたには私がいて、私にはあなたがいる」「不安になってもあなたがいる」と歌われており、エリーとライリーの二人の心情が表現されている。また、「私が哀しくなっても、あなたが道化でいてくれる」という歌詞もあり、エリーにとってはピエロの覆面を被っているライリーの姿と重なる。

互いに歌詞を通して「私にはあなたがいる」と言い合った二人は覆面を取ると、エリーは「行かないで」と言い、ライリーは「分かった」とそれを受け入れる。エリーがライリーの口にキスをすると、謝るエリーにライリーは「なんで?」と返し、二人はようやく互いの思いを確認できたのだった。第3話ではビルとフランクの出会いから二人が結ばれるまでを丁寧に描いていたが、第7話もエリーとライリーの二人が結ばれるまでを原作に倣い、じっくりと描いていった。

ライリーが遺した言葉

だが、ここで終わらないのが『THE LAST OF US』だ。そこに現れた感染者をなんとか倒した二人だったが、エリーの右腕とライリーの左手には噛まれた跡があった。エリーはこの時に噛まれたのだ。ちなみに噛まれた直後にジョエルを看病するエリーのシーンに戻るのもゲームと同じ演出だ。

ようやく互いの気持ちを知った直後の悲劇。残酷すぎる現実。だが、ライリーは「一緒におかしくなろう」と言い、「一緒にいるために諦めない。それが2分でも、2日でも」と、ゲームと同じセリフを残す。ドラマ版のライリーはゲーム版よりも取り乱しており、涙を流して動揺を隠さない。二人は涙しながらも互いを抱きしめ合い、最後の時を過ごすのだった。

この時の記憶が蘇ったエリーは、ジョエルの治療に使える道具を探して、キッチンの引き出しを片っ端から開けていた。これはゲームでもあったシーンだ。そして、縫合の道具を見つけたエリーは、ジョエルの傷を縫い合わせていく。「諦めない」というライリーが遺した言葉を追いかけるように。

エンディングで流れている曲はグスタボ・サンタオラージャが作曲した「Left Behind」。ゲーム版の「Left Behind」と同じエンディング曲が流れてドラマ『ラスアス』第7話は幕を閉じる。

ドラマ『ラスアス』第7話感想

ゲームでも高い評価

今回も非常に質の高い回だった。ゲーム原作のクリエイティブ・ディレクターでドラマ版も手掛けているニール・ドラックマンはエリーがレズビアンという設定で原作を手がけており、ドラマ版ではビルとフランクの物語に続いて上質な“ふたりの物語”が描かれた。

ゲーム「Left Behind -残されたもの-」が配信された際には、「ゲーム界における新たなブレイクスルー」とも言われ、ゴールデンジョイスティックアワードでベストストーリーテリング賞とベストゲーミングモーメント賞を、全米脚本家組合賞で最優秀ビデオゲームライティング賞を受賞するなど、高い評価を受けた。ドラマ版でも、そのレズビアンカップルの物語が魅力を削ぐことなく再現されていた。

ドラマでは、ライリーとエリーを17歳と14歳くらいに設定することで、ゲーム版よりも少し大人になった二人の物語が描かれた。それにより、将来の選択という現実的な問題に直面する二人の葛藤がよりリアルに感じられたのではないだろうか。

また、エリーとライリーの二人がメリーゴーランドで遊ぶ、アーケードゲームを一緒にする、プリクラをプリントする、といったゲームで実現できなかったことをクリアしていく展開は、ゲーム版の二人への贖罪のようでもあった。

トラウマとの向き合い方

一方で、今回はジョエルはお休み回ではあるのだが、ドラマ版では第6話からの流れで、ジョエルとエリーの動きが対比になっていたようにも思える。第6話ではジョエルは娘のサラを失ったトラウマから、エリーが危険に晒されても助けるどころか動けなくなってしまうことが明かされた。

第7話では、エリーは愛する人が目の前で感染者に噛まれたというトラウマを抱えながら、それを糧に今目の前の大切な人を守ろうとする。「救える人を救って」とはテスからジョエルに送られた言葉だが、それを地でいくのがエリーだ。過去のトラウマに向き合えなくなったジョエルと、過去のトラウマから同じことを繰り返すまいと行動できるエリー。この生き方の違いは後の二人の関係にも影響を及ぼしていくことになるだろう。

あっという間にドラマ『ラスアス』も残り2話。第8話と最終回の第9話は共にアリ・アッバシ監督が手がけることになっている。第4話と第5話は両話ともにカンザスシティを舞台にしており、ジェレミー・ウェッブ監督が一人で手がけた。そのため、第8話と第9話も二話でワンセットになっている可能性がある。

第6話・第7話はゲーム準拠の流れが続いたが、ここから先はどうなっていくのだろうか。最後までしっかり見届けよう。

ドラマ『THE LAST OF US』は2023年1月16日(月)よりU-NEXTで独占配信。

原作ゲームの『The Last of Us』はPS5リメイク版が発売中。

『The Last of Us』と続編『The Last of Us II』はPS4でも発売中。

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ドラマ『THE LAST OF US』第8話のネタバレ解説はこちらから。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

第3話について監督が話した裏側はこちらの記事で。

公式からは第3話のイチゴのシーンが公開されている。キャストとプロデューサーが語った背景と合わせてこちらの記事で紹介している。

第4話のネタバレ解説はこちらから。

第5話のネタバレ解説はこちらから。

第6話のネタバレ解説はこちらから。

 

シーズン2決定の情報はこちらから。

シーズン2について製作陣が語った内容はこちらの記事で。

ジョエル役のペドロ・パスカルが主演を務める『マンダロリアン』はシーズン3が3月1日(水)より配信開始。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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