実写ドラマ版『ラスアス』配信開始
全世界で600万本以上のセールスを記録したノーティードッグの人気ゲーム『The Last of Us』(2013)を実写ドラマ化した『THE LAST OF US』が2023年1月16日(月)よりU-NEXTで配信を開始した。日本でも『ラスアス』の愛称で親しまれるこのシリーズは、パンデミックから20年後の荒廃したアメリカを舞台に、主人公ジョエルとエリーの旅を描く。
ジョエル役を演じるのはドラマ『マンダロリアン』(2019-) での主演で知られるペドロ・パスカル。エリー役を『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011-2019)のリアナ・モーモント役で知られるベラ・ラムジーが演じる。2月13日(月)より配信を開始する日本語吹き替え版では、原作ゲームと同じくジョエル役の山寺宏一やエリー役の潘めぐみらが続投する。
ドラマ『ラスアス』は、日本では毎週月曜日の午前11時にU-NEXTで配信され、全9話の配信を予定している。第1話ではどこまで描かれたのか、原作ゲームとも比較しながら解説していこう。なお、以下の内容はドラマ版第1話のネタバレを含むので、必ずU-NEXTで本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『THE LAST OF US』第1話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
第1話「闇の中にいる時こそ…」ネタバレ解説&あらすじ
現実を超える脅威
80分=1時間20分という長尺でスタートしたドラマ『THE LAST OF US』第1話のタイトルは「闇の中にいる時こそ…」。原作ゲームでも登場するこのセリフは、ドラマ版ではどのように使用されたのだろうか。
第1話は、1968年に「インフルエンザに似たウイルス」について議論するテレビ番組の収録現場からスタート。これはゲームにないシーンで、ウイルスによるパンデミックの危険性を唱える学者に対し、疫学者のニューマン博士はウイルスとの戦いであれば犠牲を払ってでも勝利できるとした上で、“菌類”の危険性を提唱する。
ウイルスや細菌とは違い、菌類は他の生物を乗っ取り、宿主を生かしながら操作することができる、人間の精神を変えてしまえるというのだ。今のところ菌類は34度以上の温度に対応できず、高温に適応する理由もない。だが、気温上昇などで高温に適応するために遺伝子変異が起き、人間が乗っ取られれば治療不可能とニューマン博士は言い切る。
ゲーム発売から10年が経過するが、現実世界の私たちはすでに巨大なパンデミックを経験してしまった。ドラマ版では、それを超える脅威を最初に提示し、気候変動がその原因になり得ると訴えかける。「現実がSFに追いついた」と言われるようになった近年だが、SFの想像力はまだ健在だ。なお、ニューマン博士が気温上昇について語るときはカメラ目線で視聴者に直接語りかけるような演出になっている点が印象的である。
人類の敗北の可能性を示唆して、ドラマ『THE LAST OF US』はオープニングに入る。オープニング映像では、まさにその菌類が根を張って繁殖していく様子が描かれている。原作ゲームでも見慣れた描写だ。
ゲームとの違いは?
そして舞台は2003年に。ここからは原作ゲームの序盤に則った展開だが、より詳細の部分を描いていく。ゲーム『The Last of Us』は夜遅くからスタートするが、ドラマ版では事件が起きる日の1日を朝の段階から描いていく。
ジョエルの娘のサラを演じるのはニコ・パーカー。実写版『ダンボ』(2019)や映画『レミニセンス』(2021)に出演している。ペドロ・パスカルが演じるジョエルも20年前の36歳の姿で登場。この後20年後の56歳の姿も演じるわけだが、ペドロ・パスカルはドラマ『ラスアス』配信開始時点で47歳である。
ジョエルとサラは父子家庭。サラは十代半ばに見えるので、ジョエルが20代前半の時にサラが生まれたのだろう。冒頭がジョエルの誕生日という設定は原作ゲームと同じだ。サラにケアをしてもらっているジョエルだが、無理に「宿題はしたか?」と“父親っぽい姿”を見せようとしている。
そして登場したのはジョエルの弟のトミー。若い頃のトミーはジョエルに依存していて頼りなく、仕事もちゃんとできていない様子だ。二人は原作ゲームと同じく共に建築の仕事をしている。ちなみにゲームではジョエルの家の棚に建築関係の書籍が置かれている。
トミーを演じるのは、ドラマ『エージェント・オブ・シールド』(2013-2020) でゴースト・ライダーことロビー・レイエスを演じたガブリエル・ルナ。兄弟役を演じることになったペドロ・パスカルはチリ生まれのアメリカ人、ガブリエル・ルナはメキシコ系アメリカ人である。
誕生日とはいえ稼ぎを得るために夜9時まで残業することを決めたジョエル。テーブルから立つ前に左手首を叩いているが、これは腕時計がないことを示している。ゲーム版でも腕時計はジョエルにとって重要な要素になる。ここでサラはジョエルの服が裏返しであることを指摘し、ジョエルのことをよく見ていることも示唆されている。腕時計がないことにも気づいているはずだ。
ドラマ版『ラスアス』第1話の特徴は、このサラの物語が拡張されている点である。ドラマ版のサラは、ジョエルの部屋の棚で馬が彫られたナイフを見つけたり、ジョエルの壊れた時計を直すために時計とお金を持ち出したり、隣の老夫婦とコミュニケーションを取る姿を見せている。
ジョエルがビスケットを断るシーンで名前を挙げている「アトキンス」は、プロテインバーのことである。
三人が乗り込む車の内部はゲーム版でも乗り込むものと同じ作りになっており、この後の展開が示唆されている。なお、この車には退役軍人のステッカーが貼られている。ステッカーに書かれている「砂漠の嵐作戦」とは1991年1月の湾岸戦争における作戦名で、トミーかジョエルは12年と8ヶ月前の23歳頃に派兵されていたことが明かされている。
これにより、ゲーム版では根拠が不明だったトミーかジョエルの高いコンバット能力とサバイバル能力が軍隊仕込みのものであったという理由づけがなされている。
ブッシュ元大統領との繋がり
そして、舞台がテキサス州オースティンであること、この日が9月26日であることがテロップで示される。ジョエルの誕生日が9月26日というのは、ゲームを制作したノーティードッグのマーク・リチャード・デイヴィスのツイートで明かされており、これを踏襲した形になっている。
Happy birthday Joel #outbreakday
— Mark Richard Davies (@Ninjafr4me) September 26, 2013
サラの学校には、2003年当時の大統領であるジョージ・W・ブッシュの写真が飾られている。2003年の9月といえば、その半年前からイラク戦争が始まっている。ジョエルが派兵された湾岸戦争は父のジョージ・H・W・ブッシュの戦争であり、ジョエルは今、戦時中に娘と弟を食べさせていくために仕事に励んでいる。
また、『ラスアス』はここからパンデミックが広がっていくため、ジョージ・W・ブッシュが政策でパンデミックを抑えられなかったということでもある。パンデミックは誰であれ抑えられなかったのかもしれないが、ジョージ・W・ブッシュは温室効果ガスの削減を掲げる京都議定書への署名を拒否したことで知られる。気候変動問題に無関心で、親子で戦争を進めたブッシュは、気候変動を原因とする作中のパンデミックに無関係ではないはずだ。
時計は修理してもらったものの、急いで家に帰るよう言われるサラ。信心深い隣人は世間で起きていることに無関心だ。サラが最初に手に取っている棚のDVDは『ピンクパンサー』。後ろでは老人が感染している様子が映し出されている。戦闘機が飛ぶ異様な風景の中、家に帰ったサラは、夜になりジョエルに修理した時計をプレゼントする。
この時、時計が入っている箱は原作ゲームを再現したものになっている。また、ジョエルが「動いてないぞ?」というジョークでサラを焦らせるのもゲームを踏襲している。お金の出所については、サラはゲームでは「トラックを売った」と言っていたが、ドラマ版では「ドラッグを売った」と言っている。その後、サラは正直に棚からお金を持ち出したことを伝えており、ゲームでは示されたなかった本当のお金の出所が示されている。
ゲームでは言わなかったジョエルの「ありがとう」の一言も入っており、ドラマ版のジョエルはより優しい雰囲気がある。サラが借りてきたDVDにも子どものように喜んでいる。なお、このDVDのタイトルは『CURTIS VIPER 2』となっているが、これはゲーム版続編の『The Last of Us Part II』でエリーがディーナとの会話で、ジョエルが好きな映画として挙げているタイトルである。
ゲームの完全再現へ
早くも『2』の要素が登場したドラマ版『ラスアス』第1話。ゲームと同じく、サラが寝落ちした後から物語は大きく動き出す。原作と同じように、サラが起きた時にはジョエルの姿はなく、サラはテレビで街が緊急事態にあることを知る。
隣家のアドラー家は、老婆が発症しゾンビ化していた。これは第1感染段階の“ランナー”だろう。寄生菌が感染者の運動機能を乗っ取った状態で、座りっぱなしだった老婆も機敏な動きができるようになっている。口から触手を伸ばす描写が印象的だ。
トミーと共に到着したジョエルは、スパナを使ってゲーム顔負けのキルを見せると、サラを連れて車で走り出す。71号線に向かう場面は、車内からの視点のカメラもパトカーが去っていくところもゲームの絵が完全再現されている。燃える家やサラが感染について心配しだす場面、助けを求める子連れの人々、大渋滞に直面するシーンも同じで、冒頭の展開から一転してゲーム準拠の場面が続く。
ジャンボジェット機が上空を飛んでいくダイナミックなオリジナルシーンもありながら、ゲームと同じようにカメラは車内で固定された緊迫の映像となっている。また、ゲームでは横からトラックがぶつかって車が横転するが、ドラマ版では飛行機が落下し、飛んできた部品がぶつかって車がクラッシュしている。
ジョエルはゲームと同じく足を怪我したサラを抱えて走り出すが、感染して身体能力が強化された“ランナー”に追われる。原作と同じく軍人に助けられるが、感染が疑われる二人への射殺命令が下るとサラは腹部を撃たれてしまう。ジョエルは間一髪でトミーに助けられたが、ジョエルは最愛の娘を失ってしまったのだった。
ゲームと同じ展開ではあるが、実写ではやはり俳優陣の演技が光る。『マンダロリアン』ではグローグーの良き父を演じるペドロ・パスカルの“喪失”の演技には心が痛む。そして物語は20年後の2023年へと進んでいく。ゲームでは2033年が舞台となっているが、ドラマでは設定が10年前倒しになっている。
ジョエル、56歳
20年間で世界はすっかり荒廃し、ボストンの隔離地域に行き着いた子どもは“FEDRA(連邦災害対応管理庁)”のバッジを持たされている。FEDRAはゲーム版にも登場する政府機関で、感染者やならずものを取り締まり、武装して隔離地域を守っている。こう書くとFEDRAも良い人たちのような感じがするが、そこには自由のない監視社会が広がっている。
隔離地域に逃げてきた子どもは陽性が確認され、注射で安楽死させられてしまう。56歳になったジョエルは気にせずその遺体を焼却するのだった。娘を失った過去を忘れようとするジョエルの心理が『ラスアス』のポイントの一つである。また、一転して初老の男性を演じるペドロ・パスカルの演技も見事だ。
夜間の外出禁止令が敷かれる貧しいボストンで、日雇い労働者として生きるジョエル。壁に描かれた“ファイアフライ”の紋章はペンキで消されている。規則の違反者が公開処刑される中、ジョエルは配給カードとタバコと引き換えに兵士に薬物を渡す。
加えて車の手配を依頼しているが、バッテリーがないという。原作ゲームにも、肝心なところでバッテリーがないという描写が含まれている。ファイアフライに兵が2人やられたという情報得たジョエル。壁に描かれている「闇の中にいる時こそ光を探せ」は第1話のタイトルの元ネタだが、これはゲームでもファイアフライが標語としている言葉である。
なお、ファイアフライとは英語でホタルのことだ。ゲーム版『ラスアス』のオープニングは、「闇の中にいる時こそ光を探してください。それがファイアフライです」というスピーチから始まる。
テス&エリー登場
そして登場したのはテス。ゲーム版のメインキャラクターの一人で、原作と同じくロバートの部下の若い二人から暴力を受けたがようだが、ロバートの方がジョエルにバレることをビビり散らかしている。テスはこの場をおさめるために「知らないやつにやられたと言う」としているが、ゲーム版ではこのシーンは描かれず、テスが傷を負って帰ってきたところから描かれる。ドラマ版では、テスはファイアフライと軍の銃撃戦のなかで軍に拘束されてしまう。
テスを演じているのはドラマ『FRINGE/フリンジ』(2008-2013)での主演で知られる43歳のアナ・トーヴ。ドラマ版はジョエルの年齢が10歳ほど上がっているため、テスの方も歳を重ねた演出になっている。
続いてベラ・ラムジー演じるエリーが初登場。ヴェロニカと名乗っているが、ファイアフライから感染の確認を受けている。感染の見分け方は発話と発音が曖昧かどうかであるため、ゆっくり数を数えるよう指示されている。壁に血で書かれたファイアフライの標語は「闇の中にいる時こそ」で終わっている。
原作ゲームでは、エリーは突如としてジョエルとテスに押し付けられるが、ドラマではテスもエリーもジョエルと合流する少し前から描かれている。ゲームはジョエル=プレイヤーであるため、基本的にはジョエルの視点で進む。ドラマはそうである必要はなく、さまざまなキャラクターの視点が描かれている。
ジョエルの方はというと、帰ってこない弟のトミーからの連絡を待っていた。トミーを追ってワイオミング州にあるコーディ・タワーを目指すことにしたジョエル。部屋に帰ると旅の準備を始める。家具を押すのは原作オマージュだろう。床下から取り出したアイテムは、パールや地図といった原作ゲームにも登場するものが並ぶ。
地図を見ながら酒をあおったジョエルの腕には壊れた腕時計がある。ゲームと同じく、サラが誕生日プレゼントに用意してくれた時計をずっと身につけているのだ。原作ゲームでは、この段階ではトミーについての展開はないが、ここでジョエルがトミーの身の危険を案じることで、ジョエルはまたも家族を失う恐怖に直面することになる。
目が覚めたジョエルは軍から釈放されたテスと再会。ゲーム版の「20年後」はここからスタートするのだから、実写版では大幅にシーンが追加されている。また、原作ゲームではロバートと薬の取引をしていたテスだったが、ドラマではロバートが車のバッテリーの取引で不正をしたということになっている。これに、ジョエルがトミーを助けるために車のバッテリーを必要としているという背景が生きてくる。二人の目的は、ロバートを追い詰めてバッテリーを取り戻すことだ。
ジョエルの動機
そして、ファイアフライのリーダーであるマーリーンが登場。演じているのはドラマ俳優として活躍するマール・ダンドリッジで、実は原作ゲームでもマーリーンの声優を務めている。実写版で再度マール・ダンドリッジによって演じられるマーリーンは、軍事独裁に対抗する作戦として、監禁しているエリーを連れて隔離地区を離れると説明する。エリーに何かがあることを知らされた部下のキムは、作戦を疑問視していた態度を一変させるのだった。
マーリーンはエリーの錠をとると、軍の訓練学校から逃げてきたエリーの過去に触れる。ファイアフライを「テロリスト」と呼ぶエリーに対し、マーリーンは「ライリーもテロリスト?」と聞いて黙らせる。ゲーム版では、軍の学校にいたライリーとエリーの物語は、2014年に配信され、PS4版には最初から収録されている追加エピソード「Left Behind ‐残されたもの‐」で描かれている。マーリーンは重要な任務のためにエリーを連れ出すことを告げ、ある秘密を明かすのだった。
ロバートがバッテリーを運ぼうとしていることを知ったジョエルとテスは、地下道で感染者の遺体を見つける。ゲーム版では感染者が襲ってくる前兆だ。バッテリーはロバートとその部下たちの遺体とともに見つかるが、使えないものだった。
そこにエリーが襲いかかるが、ジョエルは容赦ないコンバットで対処。ロバートからバッテリーを買おうとしたのはマーリーン率いるファイアフライだった。エリーに銃を向けると途端に焦るマーリーンたち。トミー捜しより重要な目的があると言うが、ジョエルはファイアフライのせいでトミーが自分のもとを離れたと指摘する。原作ゲームでもトミーはファイアフライに入ってジョエルのもとを離れている。
怪我を負ったマーリーンとキムは、ジョエルとテスの腕を見込んで、エリーを州議事堂の仲間のもとへ届けるよう依頼する。これで再びストーリーが原作ゲームと重なり始める。運び屋の仕事を達成すれば報酬としてバッテリー、車、銃を渡すとオファーされたジョエルとテスは、トミーを助けるために前払いという条件でこの仕事を受けるのだった。
ゲーム版では大量の武器という報酬を見返りにエリーを運ぶことを承諾するが、ドラマ版ではトミーとの再会がジョエルにとって大きなテーマの一つになるようだ。ジョエルは回り道をしてビルとフランクのところに寄り、物資を補給することを提案する。原作ゲームにも登場したビルとフランク、そして“物資の補給”が描かれることが示唆されている。
ラジオの曲の意味は?
エリーは歴代ヒットソング集の本に挟まっていたメモの「60-仕入れなし、70-入荷、80-×」という記述を見つける。これはドラマ版『ラスアス』第1話ラストの伏線になっている。
エリーがジョエルの時計が壊れていることを指摘する場面も原作準拠だ。隔離地域から出たことがないエリーの不安を感じ取りつつ、ジョエルはワム!の「ウェイクミー・アップ・ビフォア・ユー・ゴーゴー」が流れたと聞かされて焦りを見せる。この曲は1984年にリリースされた曲で、先ほどのメモに従うと「×」ということになる。だが、これはエリーの罠。80’sの曲が流れれば問題発生という暗号を解くスマートさを見せるのだった。
隠し通路から壁の外に出た三人は、ゲームさながらの緊張感で州議事堂を目指す。原作と同じく兵士に見つかってしまうが、その相手はドラマオリジナル要素であるジョエルが取引をしていた相手だった。ゲームと同じく感染確認をされる際にエリーは兵士の足を刺すが、ここからが実写版の異なる点で、ジョエルは自分が抵抗しなかった結果撃たれたサラのことを思い出し、兵士にタックルして自らの手で始末する。
検査機がエリーの陽性反応を示すが、通常は1日で発症するにもかかわらず、3週間前に噛まれたが発症していないと主張するエリー。軍が迫る中、三人は「汚染地域」と書かれた地域へと逃げ出すのだった。
そしてラジオから流れ出すのはデペッシュ・モードの「Never Let Me Down Again」(1987)。そう、80年代の曲が流れれば「問題発生」だ。第1話のエンディングにもなったこの曲の歌詞は、「ベストフレンドと一緒にいる。彼は私を再びガッカリさせないって願ってる。彼は私をどこに連れて行くか分かってる」と、エリー視点と捉えられる歌詞が並んでいる。
また、「私を再びガッカリさせないで」という意味のタイトルは「私をもう一度死なせないで」と訳すこともでき、メタ的にサラとエリーの存在が重ね合わせられている。一度娘を死なせてしまったジョエルにとっては、エリーが銃を向けられた時に「また死なせないで」という声が聞こえたのかもしれない。
ドラマ『ラスアス』第1話感想
実写ドラマ版『ラスアス』の第1話は流石の出来。出来の良いゲームを実写化するにはそれだけハードルも上がるが、むしろキャラクターの背景を肉付けして更に重厚な物語を描くことに成功している。
ゲームの場合は、プレイヤーは自らキャラクターを操作するため集中して物語に入り込むがが、映像を観るだけのドラマにおいては視聴者の注意を引きつけ続ける必要がある。第1話で視聴者が振り落とされてしまわないように、ゲームで描かれていなかった人間模様や、ダイナミックな描写(落下するジャンボジェットなど)を盛り込むことで、80分の長さも難なく観れる工夫がなされていた。
また、主人公ジョエルの視点で進むゲーム版では、サラがその日に何をしていたか、ロバートとテスの間で何があったか、マーリーンとエリーはどこで合流したのかなどが示されないまま物語が進行していく。ドラマ版では、視聴者を置いてけぼりにしないように、それぞれのキャラクターのそれまでの行動が描かれ、根幹のミステリーは残した上でなるべく混乱が生じないよう配慮がなされている。
第1話は非常にバランスのよい作りで、原作ファンにとっても各キャラクターの深掘りした情報が知れる楽しい作品に仕上がっていた。全9話で描かれるドラマ『THE LAST OF US』は、第2話ではどんな物語が描かれるのだろうか。次の配信を楽しみに待とう。
なお、実写ドラマ版『ラスアス』を指揮したゲーム版クリエイティブ・ディレクターのニール・ドラックマンは、今後の展開について「ゲームの実写化以上のことはやらない」と明言している。詳しくはこちらから。
ドラマ『THE LAST OF US』は2023年1月16日(月)よりU-NEXTで独占配信。
原作のゲーム『The Last of Us』はPS5リメイク版が発売中。
『The Last of Us』と続編『The Last of Us II』はPS4でも発売中。
ドラマ『THE LAST OF US』第2話のネタバレ解説はこちらから。
ペドロ・パスカルが主演を務める『マンダロリアン』はシーズン3が3月1日(水)より配信開始。