第4話ネタバレ解説&感想 ドラマ『THE LAST OF US』ジョエルの笑顔、そして謝罪 あらすじ・考察【ラスアス実写版】 | VG+ (バゴプラ)

第4話ネタバレ解説&感想 ドラマ『THE LAST OF US』ジョエルの笑顔、そして謝罪 あらすじ・考察【ラスアス実写版】

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実写ドラマ版『ラスアス』第4話はどうなった?

U-NEXTで配信されているHBOドラマ『THE LAST OF US』は、2023年1月16日(月) よりシーズン1の配信をスタート。第3話の配信前にシーズン2への更新が発表されると、1月31日(月) に配信された第3話は早くも「2023年のベストエピソード」と称される高い評価を受けて大きな話題になった。

『ラスアス』第3話には「歴代ベスト」の声もあがるなど、興奮冷めやらぬ状況で第4話が配信される。原作ゲームから大きく逸脱する形で名作を生み出した前話に続く第4話では、どんな展開が待っていたのだろうか。今回もネタバレありで各シーンを解説していくので、必ずU-NEXTで本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『THE LAST OF US』第4話の内容に関するネタバレを含みます。

第4話「この手につかまって」ネタバレ解説&あらすじ

第4話の監督は?

実写ドラマ版『ラスアス』シーズン1第4話のタイトルは「この手につかまって」。時間は45分とこれまでで最短。前話が75分だったので、前話と比べると30分も短いエピソードになる。というか、ビル&フランク回がいかに尺をとって作られたかという話なのだが。

第4話の監督を務めるのは、ドラマ『アンブレラ・アカデミー』(2019-) などで知られるジェレミー・ウェッブ。『アンブレラ・アカデミー』ではシーズン2最終話とシーズン3第1話の監督を務めている。なお、同作のシーズン1第1話と最終話の監督を務めたのは、他でもない『ラスアス』第3話を手がけたピーター・ホアーだ。

『アンブレラ・アカデミー』はシーズン4の撮影がスタートしたばかり。こちらにはどんな監督が参加するのかにも注目したい。

なお、ジェレミー・ウェッブはドラマ『ラスアス』シーズン1の第4話と第5話を続けて監督する。そのため、連続性のある物語になると予想されるが果たして。

あの本が登場

第4話の冒頭は、第3話で手に入れた銃を手に取るエリーの姿からスタートする。子どもが銃を扱うというのは、銃乱射事件が頻発し、銃規制の議論が続く米国では特にセンシティブな描写になる。ゲーム版ではドラマ版第4話のあたりでエリーが初めて銃を持つことになるが、ドラマ『ラスアス』ではどのように描かれるのかに注目だ。

エリーは、第3話で動けなくなった感染者の肌をナイフで切り、その後容赦なく始末する姿も見せていた。まだまだ子どもであるエリーの中には、もちろんピュアな残虐さもあるだろう。終末世界で一般的な教育を受けていないエリーは、サバイバルの中で何を学んでいくのだろうか。

ジョエルの方はというと、放置された車からガソリンを取り出している。これは原作ゲームの描写を回収する演出だ。ゲームではジョエルたちがビルの街を去るときに、ビルがジョエルに給油用のホースを手渡す。ぶっきらぼうなビルが「ガソリンが入った車は結構残ってる」と優しさを見せるシーンだ。

しかし、ゲームの方ではそのホースを使う場面は描かれなかった。実写ドラマ版ではジョエルがビルと会うことはなかったが、ゲーム版でビルからもらったはずのホースを使う描写を入れることで、ビルへのトリビュートを表しているのだろう。

ジョエルは“サイホン(サイフォン)の原理”を利用してガソリンを回収しているが、エリーがそれを知らないことも、教育を十分に受ける機会がなかったことを示している。一方のジョエルもその原理をうまく説明できるわけではなく“実践の人”であることが示されている。ジョエルパパに教育は務まるのだろうか……。

ジョエルに「うろつくな」と言われたエリーは、カバンから銃を取り出す……と思いきや、意外にもジョークの本を取り出す。このジョークブックの出所は、ゲーム『The Last of Us』の追加エピソード「Left Behind ‐残されたもの‐」で明かされる。

第1話ではエリーがマーリーンに「ライリーもテロリスト?」と聞き、第2話では、エリーはモールで噛まれたと話し、第3話でもゲーム『モータル・コンバット2』についてエリーが「友達が達人だった」と話す。これらは全て「Left Behind」の要素であり、各話にその要素を散りばめていることが分かる。実写ドラマ版でも「Left Behind」が描かれることになりそうだ。

流れる音楽は?

ジョエルは軍の戦車やヘリがじきに見られると話すが、これらを「間違った敵のために作られた物」と非難する。実写ドラマ版『ラスアス』では、菌類によるパンデミックが起きたのは、ジョージ・W・ブッシュがイラク戦争を開戦した半年後になっており、存在しない大量破壊兵器を理由に侵略を進めた政権への反感が読み取れる。

第1話の20年前のシーンではブッシュ元大統領の写真が登場し、第3話では現政権もパンデミック時の政府の失策を隠蔽していることが明かされている。20年経った今もブッシュ政権と連続性を持った政府がアメリカを仕切っており、彼らの戦車やヘリが今度は市民に向けられているのだから、ひとこと言いたくもなるだろう。

そしてエリーが車の中で見つけたのは、ハンク・ウィリアムスの「生きてこの世は出られない」(1952) のカセット。これは原作ゲームにも登場したシーンだ。第3話ラストでは、ビルとフランクにとって大事な曲だったリンダ・ロンシュタット「ロング・ロング・タイム」(1970) を流す演出に取って替えられたかに思われたが、第4話にずらすことにしたようだ。

「懐かしい?」「俺より前の世代だ。だがいい歌手だ。たまらん」というゲームのやり取りまで完全に再現されている。この曲の歌詞はタイトル通り、「私はどう足掻いても、この世を生きて出られない」と、何をしてもうまくいかない人物の心情が描かれている。終末世界にはぴったりの選曲だ。

また、ビルのものと思われる成人誌をエリーが見つけ、ジョエルが困惑するシーンも原作ゲーム通り。ゲームと違って晴れてはいるが、雑誌を捨てるシーンもゲームと同じアングルで撮影されている。なお、第3話の監督を務めたピーター・ホアーは、原作ゲームにおいてはビルがゲイであるという描写が希薄だったため、この成人誌のシーンでようやく気づいたと語っている。

また、男性の裸体が写る雑誌を捨て去るこのシーンでは、エリーの性的指向も示唆されていると考えることもできる。

「生きてこの世は出られない」をBGMに、放棄されたアメリカ合衆国が映し出されていく。蔦が絡んだローラーコースターが見えるが、これは遊園地チェーンのシックス・フラッグスだろうか。シックス・フラッグスは北米各地にある中規模の遊園地で、二人がいるマサチューセッツ州にはSix Flags New Englandがある。ボストンからかなり西の方に進んできたようだ。

アメリカのフリーウェイが草だらけになり、看板や鉄道など、見慣れた光景の全てがディストピア世界になっている。CGはどれもリアルで精巧に作り込まれており、米国を見たことがある人にとってはショッキングな映像だ。

ジョエルの笑顔

道中でキャンプをすることになったジョエルとエリー。焚き火がしたいと言うエリーをジョエルが制した理由は、感染者ではなく感染していない人間の方だった。ゲーム『ラスアス』では、感染者と軍人、そして無法者たちがジョエルとエリーの敵になる。プレイヤーとしては容赦なく始末して進むしかないのだが、ドラマ版ではかねてより人を殺めることの倫理について問いかけを行おうとしている雰囲気がある。

その証拠に、第1話で兵士を殺めてしまったジョエルは、そのことを引きずっているように見えるし、第2話でテスが自爆に巻き込むはずだった軍人たちは感染者に置き換えられていた。第3話では、ジョエルではなく、もともと人間社会に愛着がなくフランクを是が非でも守りたいビルが無法者たちを倒す演出になっていた。まだ子どものエリーと旅をするジョエルが、どんな決断を下していくのかは注目ポイントの一つだ。

寝袋が「いい匂いがする」と言うエリーに、「じゃあフランクのだろう」と言うジョエル。ドラマオリジナルのフランク像を踏襲したやり取りであり、エピソードを跨いだフランクへの愛が感じられる。監督は毎話担当が決まっているが、脚本は全てクレイグ・メイジンがニール・ドラックマンと共に手がけている。

寝る時になり、エリーの「なぜカカシは落第した?」というジョークブックからの出題に「ずっと立たされていたから」と正解を叩き出すジョエル。思わず笑ってしまい、それを隠すために寝返りを打っているのが可愛い。字幕版では字幕でジョエルの顔が隠れてしまうのが残念だが、2月13日(月) からは日本語吹き替え版が毎週1話ずつ配信されるので、こちらも楽しみに待とう。

「誰にも見つからないよね?」と不安がるエリーに対し、「誰にも見つからないさ」と安心させる言葉を吐いたものの、ジョエルは夜通し銃を持って見張りを行っていた。原作ゲームでも、車でエリーが寝ている間、ジョエルは起きて運転し続けている。

コーヒー好きのジョエル

翌朝、ジョエルが作っているコーヒーを見て驚くエリーに、ジョエルは「コーヒー好きじゃないのか?」と不思議そうな表情を浮かべている。原作ゲームでも、ビルの街を離れた後のステージで、廃墟と化したカフェで、ジョエルがかつてカフェでよくコーヒーを飲んでいたことを明かしている。また、その後に訪れる廃墟になったホテルではコーヒーメイカーの前でボタンを押すと、ジョエルの感情のこもった「コーヒーが飲みたい」というセリフが聞ける。

一方、「焦げたウンチみたいなニオイ」というコーヒーへのエリーの評価は、ゲーム続編の『The Last of US II』(2020) に登場する。エリーがある人物との会話で「ジョエル、コーヒー好きだったよね?」と問われ、「めちゃくちゃ」と肯定した後、その人物の「焦げたウンチの味なのに」という言葉に「だよね」と同意するのだ。

今はティーネイジャーもスターバックスに通う時代だが、2003年にパンデミックが起きた世界では、コーヒーを知らない世代がコーヒーに忌避感を持っていても仕方ない。

地図の地名を読み上げるエリーが「チーエン」と呼んでジョエルが訂正した「シャイアン (Cheyenne)」はワイオミング州最大の都市。アメリカ先住民のシャイアン族からその名前が付けられている。地理の勉強も含むなんでもないやり取りを経て、血のつながりのない父と娘のロードムービー感が増してくる。

ウルヴァリンと少女の旅を描いた映画『LOGAN/ローガン』(2017) の雰囲気にも重なるが、『ローガン』はゲーム『ラスアス』よりも後に公開された作品で、ゲームからの影響を受けているという声もある。

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トミーの過去

そして、ジョエルは弟のトミーについて語り出す。原作ゲームで詳しく描かれなかったトミーのバックグラウンドだ。トミーにはヒーロー願望があり、高校卒業後にすぐ米軍に入隊。“砂漠の嵐作戦”に送られたという。第1話の20年前のシーンでは、トラックに「砂漠の嵐作戦」のステッカーが貼られており、ジョエルが退役軍人であることが示されたかに思われていた。

しかし、実際に湾岸戦争の砂漠の嵐作戦に出兵していたのはトミーの方だったようだ。ジョエルが退役軍人ではないと決まったわけでもないが、高いコンバット能力や銃火器の扱い方はパンデミック後にトミーから教わったものかもしれない。

パンデミック後にボストンに移住し、テスと出会ったジョエルとトミーは、皆でうまくやっていたという。第3話では、パンデミックから7年が経過した時期にジョエルとテスがビルとフランクに会いに行ってく場面が描かれた。トミーはついてきていなかっただけという可能性もあるが、13年前の時点でトミーはジョエルから離れていたのだろうか。

ジョエルによると、マーリーンがトミーをファイアフライに巻き込んだという。「世界を救う」という高校生の頃の思いに火がつき、ファイアフライに加入したトミー。現在トミーはファイアフライを抜けて単独で行動しているというが、ジョエルは弟もファイアフライも「甘い夢を見ている」と手厳しい。

一方で、エリーは「世界に絶望してるならなぜ進むの?」とジョエルに問いかける。世界に絶望してフランクと幸せに生きる道を選んだビルの手紙を読んだ後では、エリーの感じ方は違うのかもしれない。ジョエルは「ただ家族のため」と回答し、エリーは家族ではないが、家族同然のテスとエリーを守ることを約束したと話す。

第3話のラストでは「テスの話をしない」とジョエルがエリーに約束させたはずだが、この場面ではジョエルの口から、テスから引き継いだ使命に触れている。

ゲームとは違うリアルさ

助手席のエリーが眠ってしまい、ジョエルが異変に気付いたところで起きるという展開も原作と同じアングルで実写化されている。道路にはゲームで見覚えのある“後ろから中に入れそうな救急車”も見える。カンザス・シティまで来たジョエルとエリーだが、高架の前で道は塞がれており、回り道をすることに。だがGoogleマップもないこの世界で二人は迷子になってしまう。

軍がいない隔離地域の入り口に登場したのはケガをした人物。ゲームと同じくこれは罠で、ゲーム版では二人は“ハンター”と呼ばれる集団に取り囲まれることになる。ゲームでは銃撃戦になるのでプレイヤーは敵を全滅させて進んでいくことになるが、実写ドラマ版ではジョエルが応戦しながらエリーを逃す展開に。

ジョエルはまたもエリーを助けるために人を殺めることになるのだが、実写版がリアルなのは、仲間を撃たれた敵がひどく動揺している点だ。ゲームではモブキャラでも、ここまで20年間のパンデミックをサバイブしてきた仲間を失った一人の人間だ。

追い込まれたジョエルを助けたのはエリー。ゲームではこの後のホテルステージで、落ちていた銃を拾ってジョエルを殺そうとしていた敵にヘッドショットを喰らわせる。ドラマ版『ラスアス』では、既に第2話でホテルステージが終わっており、早めにエリーが銃を撃つ展開が登場した。

ドラマでは、エリーはビルの家で見つけた銃を撃ったものの敵を殺してはおらず、相手はブライアンという名前を名乗って命乞いをしている。ここでもやはり、モブではないリアルな人間の姿を描こうとしているようだ。

キャスリン登場

そして登場したのは第4話以降のキーになるドラマオリジナルキャラクターのキャスリン。原作ゲームでは描かれなかったが、このステージの兵隊を率いるリーダーのようだ。キャスリンはベルグクエスト一家、マーク・A・ハルピン、キャリー・シュライバー、チャン一家、ヘンリー・バレルと名前を挙げて老人を詰問している。

壁には「拘束中の権利:弁護士、医療、家族との面会、食事、衣服」と書かれたFEDRAの看板があり、軍が去った後の施設をキャスリン達が占拠していることが分かる。老人は軍の在留中に隣人を密告していたようで、ヘンリーという人物の密告により、キャスリンの兄はFEDRAに殴り殺されたらしい。そして老人はヘンリーの居場所を知っているようだ。

ゲームをプレイした人なら、ヘンリーがあのヘンリーだということに気づくだろう。詰問に対して「もうやめるんだ」と言う老人に、キャスリンは「今やめろと? 前はオーケーだったのに?」と論破。「銃で脅されてた」という言い訳には銃を向けて「これがあなたが喋る条件?」と言い放つ。強い。

老人は黙秘を続けるが、医者という貴重な人材を撃つことをキャスリンはためらっている。と、そこにジョエルが殺した三人の遺体が運ばれてくる。ゲームでは敵を倒してどんどん進んでいくのがセオリーだが、ドラマ版第4話では“やられた側”の様子を描く方針をとっている。原作ゲームをプレイした人にとっては新鮮な展開だが、いつでもそこには“やられた側”が存在しているというのは真理である。

ジョエルの謝罪

キャスリンは、ヘンリーが傭兵を呼び込んだと考え、さらに医者にも救えない命を目の当たりにして医者の老人を始末する。そして、これをヘンリーによる仕業と断定し、人々に犯人抹殺の指示を下すのだった。この街は民兵を組織した自治区であり、裏切りへの復讐心と他者への不信感からジョエルとエリーを狩り出す動きが始まる。ゲームではただ略奪のために追われることになっていたが、相手の立場も丁寧に描写している印象だ。

一方で、犯人を炙り出そうとするキャスリンの兵士たちは軍と見紛う統制と強引さで捜査を進めている。権力と武器を手中におさめた人間の行く末は同じ、ということだろうか。ジョエルは、これらの人々を軍でもファイアフライでもない、“人 (People)”だと言い、”ハンター”と呼んでいたゲーム版とは異なるスタンスを見せている。

身を潜めるジョエルは、先ほどの出来事について「不意を突かれたせいで」と自分を責める。エリーに人に向けて銃を撃たせてしまったことを悔いているのだ。ゲーム版ではジョエルが礼も言わずにエリーを叱責することで二人は口論になってしまう。ジョエルは後にエリーのおかげで助かったことを認めて銃を託すのだが、実写版ではジョエルは「すまなかった」と謝罪の言葉を口にする。

それに対して涙を流すエリー。子どもに銃を撃たせてしまったことの申し訳なさと、人を撃ってしまったことの動揺が、ゲームよりもリアルに描写されている。ゲームではどちらかというとサバサバした二人が互いを認め合うかどうかに焦点が当てられていたが、ドラマ版では二人が自分の弱さや辛さを認め合う方向で描かれている。

そしてジョエルは、エリーに正しい銃の持ち方を教える。アポカリプスもの/ディストピアSFならではの光景にも思えるが、米国では安全と防犯のために、親が子に銃の持ち方と撃ち方を教える家庭もある。ある種の親子的な教育がなされた場面でもあるのだ。

ここでジョエルはエリーに銃を携行することを認める。これはゲーム版でもエリーがプレイヤーを背後からサポートしてくれるようになるので、大きな転換点になる。加えて、ジョエルがエリーの一人前の人間と認め、背中を任せるほどの信頼を寄せるようになったことの表れでもある。

一方のキャスリンはヘンリーの捜索を続けていた。ヘンリーが潜伏していたと思われる屋根裏部屋には、スーパーマンが二人で手を繋いで飛んでいる絵が飾られている。ドラマ版『ラスアス』を北米で放送/配信するHBOは、スーパーマンの権利を持つDCと同じくワーナー・ブラザースの子会社である。そしてスーパーマンが二人描かれていることから、ヘンリーの近くには原作ゲームにも登場したヘンリーの弟のサムがいることが示唆されている。

地下には巨大な何かがいることが示唆された後、ジョエルとエリーはある建物へと入っていく。小窓から建物に入って内側からドアを開け、「私がいないとダメだね」と言うエリーに「いなきゃワイオミングに着いてる」と切り返したり、「42階分のぼるの?」という質問に地下3階を合わせた「45階分だ」と切り返したり、ジョエルは丁寧にツッコミを入れている。

ジョエルは、エリーになぜ街に入った時に助けを求めてきたことが罠だと分かったのか、と聞かれ、大昔に生き延びるために同じことをしたと明かす。テスやトミーも一緒に。ゲーム原作でもエリーは移動中に同じことを聞いてくるのだが、ゲーム版では、ジョエルは「なんとも言えない」と言葉を濁し、エリーの「罪のない人をたくさん殺したの?」という問いには「好きなように思ってろ」と突き放す。

第4話は全編を通じてうっすらと、生き延びるために誰かを犠牲にすること、立場が変われば被害者にも加害者にもなりうるということが示されているように思う。ジョエルとトミー、ヘンリーとサム、そしてキャスリンと殺された兄という立場の異なる兄弟/兄妹が描かれていく。

ジョエルは寝る前に、エリーの「以前人を傷つけたことがある」という発言について聞いてみるが、エリーは答えたがらない。これもゲーム版追加エピソードの「Left Behind」での出来事かと思われる。それでもジョエルはこの年でそのような経験をするのは理不尽だと言う。

そして、ここでジョエルが銃を撃ち続けていた影響で右耳が遠いことが明かされる。右耳を下にして寝ようとするジョエルに、エリーは再びジョークを言ってやり、ジョエルは思わず笑ってしまうのだった。初めて二人が笑いながら会話を交わした瞬間ではないだろうか。

エンディングで流れる曲は?

第4話は幸せな光景で幕を閉じるかと思いきや、二人は銃を突きつけられた状態で目を覚まして第4話は幕を閉じる。エンディングで流れる曲はLotte Kestner「True Faith」(2011)。1987年にNew Orderが発表した曲をカバーしたもので、ゲーム続編の『The Last of Us II』でエリーが歌う曲である。

エリーの歌はLotte Kestnerのカバーバージョンにインスパイアを受けたものだったが、ゲームにはクレジットがなされず、後にゲーム制作者でドラマ版も手がけるニール・ドラックマンがツイートで謝罪した。クレジットも後に修正されている。今回、ドラマ版にも起用することで再びスポットライトを当てる意図があったのだろう。

曲の歌詞は「こんな日が来るなんて思わなかった」「あの光を信じていれば大丈夫だと思ってた」「小さな少女だった私に別の小さな少女が教えてくれた」「二人は大きくなって見える世界に怯えてる」と歌われており、ゲーム続編の内容との親和性が高いものになっている。

今後のネタバレになるので詳細は控えるが、確かに第4話は続編と関連がある「Left Behind」の要素が小出しにされていた。また、キャスリンによる“復讐”という続編のテーマにも通じる展開もあった。第3話配信前にシーズン2への更新が発表されたドラマ『ラスアス』。ゲーム続編の実写化になると予想されるシーズン2にも期待しよう。

ドラマ『ラスアス』第4話感想

ヘンリーは良いやつ?

第3話からは一変し、シビアな状況が続いた第4話。ジョエルとエリーの心温まる描写は少し増えたが、ビルのジョエルへの手紙の効果だろうか。第4話ラストで登場したのは原作ゲームのヘンリーとサムだと思われる。原作でもヘンリーは追われている様子だったが、ドラマ『ラスアス』ではその背景から描くことにしたようだ。

一方で、ジョエルとエリーはヘンリーとキャスリンの事情を知らない。ヘンリーにも何らかの事情があったのかもしれないが、ゲーム版でもプレイヤーはヘンリーの背景を詳しく知らないまま行動することになる。ゲームではジョエルは立場を選ぼうにも情報がなかった印象だが、ドラマ版ではどこまでヘンリーのことを掘り下げて描くのだろうか。

ジョエルがかつて生きるために“罠”をやったと告白したように、ヘンリーも生きるために密告をしたという展開が待っていそうだ。しかし、「それぞれに立場があり、戦って生き延びるだけ」という結論では、弱肉強食の自然界のような状態が肯定されてしまいそうだ。それでも人間性を信じるような展開に期待したい。

また、キャスリンの兵隊が“罠”をやっていたり、キャスリン自身は兄の存在を原動力に動いているなど、キャスリンはジョエルと考えが似たキャラクターでもある。ジョエルが弟のトミーを早々に殺されていたとしたら、ジョエルは終末世界を復讐に生きる立場に立ったのではないだろうか。キャスリンというオリジナルキャラクターの描き方と、その存在を反射させたジョエルの描き方にも注目だ。

打ち解ける二人

また、原作ゲームよりもそっけない態度だったジョエルと、原作ゲームよりも生意気だったエリーが徐々に打ち解け合っていく姿は微笑ましい。ドラマ序盤は「大丈夫かこの二人」と思うこともなくはなかったが、ビルとフランクの物語をクッションにして、自然な形で距離を縮めているように感じる。

ドラマ『マンダロリアン』(2019-) のマンドー役も含め、すっかり“パパキャラ”が染み付いてきたジョエル役のペドロ・パスカル。最近はトーク番組への出演などでも話題をかっさらっているが、『マンダロリアン』シーズン3の配信が始まり、『THE LAST OF US』の配信と重なる3月はペドロ・パスカルフィーバーが起きることになりそうだ。

そして、ジェレミー・ウェッブ監督が続けて指揮を執る第4話と第5話は、やはり連続した物語になるようだ。第4話の尺は45分と短めだったが、2話合わせて1本の映画並みのボリュームになりそうだ。ジョエル&エリーと“人 (People)”との衝突をどう描くのか、次回も楽しみだ。

追記:第5話はいつもより2日早い土曜日配信となるのでご注意を。詳しくはこちらから。

ドラマ『THE LAST OF US』は2023年1月16日(月)よりU-NEXTで独占配信。

原作ゲームの『The Last of Us』はPS5リメイク版が発売中。

『The Last of Us』と続編『The Last of Us II』はPS4でも発売中。

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ドラマ『THE LAST OF US』第5話のネタバレ解説はこちらから。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

シーズン2決定の情報はこちらから。

シーズン2について製作陣が語った内容はこちらの記事で。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

第3話について監督が話した裏側はこちらの記事で。

公式からは第3話のイチゴのシーンが公開されている。キャストとプロデューサーが語った背景と合わせてこちらの記事で紹介している。

 

ジョエル役のペドロ・パスカルが主演を務める『マンダロリアン』はシーズン3が3月1日(水)より配信開始。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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