第3話ネタバレ解説&感想 ドラマ『THE LAST OF US』名作誕生、曲に込められた意味とは あらすじ・考察【ラスアス実写版】 | VG+ (バゴプラ)

第3話ネタバレ解説&感想 ドラマ『THE LAST OF US』名作誕生、曲に込められた意味とは あらすじ・考察【ラスアス実写版】

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実写ドラマ版『ラスアス』第3話はどうなった?

世界的なヒットを生んだゲーム『The Last of Us』(2013) を実写ドラマ化した『THE LAST OF US』が2023年1月16日(月) よりU-NEXTで配信中。第3話の配信前にはシーズン2への更新が公式発表され、一層期待が高まっている。

ドラマ『THE LAST OF US』は菌類の感染症が広まり、人々が隔離地域で暮らしている2033年が舞台。菌類に乗っ取られた感染者、軍、無法者が蔓延るアメリカで、主人公のジョエルとエリーが旅に出る。

シーズン2では2020年に発売されたゲーム『The Last of Us II』の実写化が見込まれているが、シーズン1はどのような着地を見せるのだろうか。今回はシーズン1第3話の各シーンをネタバレ有りで解説していく。必ず本編をU-NEXTで視聴してから読んで頂きたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『THE LAST OF US』第3話の内容に関するネタバレを含みます。

第3話「長い間」ネタバレ解説&あらすじ

ゲームとの違いが続々

ドラマ『THE LAST OF US』シーズン1第3話は75分と長尺に。第1話は80分、第2話は52分となっており、まさにゲームのように各話に必要な長さを設けている印象を受ける。一方で、第3話はオープニング前のイントロはなし。初めてオープニングクレジットから幕を開ける。

第2話のラストは感染したテスが囮となり、大量の感染者もろとも自爆する展開に。ジョエルは第1話ラストで兵士を殴打した右手の傷を見つめながら、川辺に石を積み重ねている。テスと兵士の墓だろうか。兵士もジョエルと取引のあった人間だ。ジョエルは、第1話と第2話のラストで失った命を弔っているのだ。

第2話では、エリーがジョエルに「人間を殺すこと」の倫理について尋ねるシーンがあった。これは原作ゲームにはないもので、ジョエルがそれに答える前にテスが合流して有耶無耶になっていた。感染者と立場の違う人間の両方と対峙し、時に他者の犠牲によってジョエルとエリーは生かされる。ゲーム中では多くが語られなかったコンセプトを実写ドラマ版で深掘りしていくことになるのだろうか。

ジョエルとエリーがいるのはボストンから16キロ(10マイル)西に行った場所。まだまだマサチューセッツ州内だ。ジョエルはテスを失ったことで意気消沈していたが、それでも上着と食べ物をエリーに渡している。口を閉ざすジョエルだったがエリーにここまでの道のりがジョエル自身の選択であることを告げられると、それを素直に受け入れている。

娘のサラもテスも失ったが、ドラマ版のゲーム版との違いは、ジョエルの目的の一つは弟を見つけることにあるという点だ。エリーについてはまだ運び屋の仕事として行動を共にしているという認識だろう。ジョエルは目標のために歩を進めていく。

ゲームとの違いについては、テスの死後にジョエルがエリーに、①テスの話をしない、②症状について話さない、③指示されたらその通りに動く、というルールを約束させるシーンがドラマ版では後回しにされている。また、軍から逃げる地下鉄ステージもここではカットされている。

『モータルコンバット2』登場

二人はカンバーランド・ファームズに立ち寄り物資を調達する。カンバーランド・ファームズとは実在するコンビニチェーンで、マサチューセッツ州を拠点に主に米国の東側に店舗を展開している。ご当地コンビニというやつで、『ラスアス』の舞台となった地域のファンへのサービスになっている。

コンビニの中でエリーが見つけたのは『モータルコンバット2』(1993) のアーケード筐体。実はゲーム『The Last of Us』の追加エピソード「Left Behind ‐残されたもの‐」のPS5リメイク版では、壁に『モータルコンバット2』のポスターが貼られている場面がおり、エンドクレジットにもきちんと権利表記が掲載されている。また、エリーが「友達は達人だった」と話すのは、「Left Behind ‐残されたもの‐」の一場面を想起させる。

追記:米モータルコンバット公式Twitterアカウントは、エリーが劇中で説明していたミレーナの動画を公開した。

床下の部屋を見つけたエリーは、そこで生理用品を手に入れる。ジョエルが気にかけてやれていなかった実存の問題だ。感染者をナイフキルしたエリーは、タンポンを手に「収穫あったよ」とジョエルに言っているが、英語では「picked over my ass.」と言っており、生理用品を手に入れたことと自分の面倒は自分で見た(感染者を倒した)ということのダブルミーニングになっている。

ジョエルは、弾が入手困難だからと兵士から手に入れたアサルトライフルをここに置いていくことに。ゲームの最終盤で手に入る武器が序盤から手に入っていたことは気になっていたが、ここで現実的な理由をつけて手放すことになった。確かに軍の弾薬はそこら辺には転がっていないだろう。

パンデミックの起源

道中で墜落した飛行機を見たジョエルは「席は狭いし、食事は割高で」と、過去の思い出を語る。英語では「サンドイッチが12ドル」と言っており、私たちはジョエルの気持ちは痛いほど分かるが、エリーはパンデミック後に生まれた世代だ。「空が飛べた」ということ自体が信じがたいことなのだ。

しかし、ジョエルは菌類も飛行機で拡散したことに触れる。新型コロナウイルス感染症と同じで、パンデミックはヒトやモノが飛行機で自由に移動できるようになった時代の宿命だったとも言える。そして、エリーはどうやって崩壊が始まったのかを聞き、ジョエルはその経緯を語り出す。

「パンデミックの起源」とは、どんなパンデミックにおいても気になる話題だ。エリーは「政府の失態について軍の学校が教えるわけがない」と、学校で教わっていないと主張する。エリーのこのセリフは重要で、今の軍が20年前当時の政権を批判する内容を流布していないとすれば、当時の共和党政権と連続性を持った権力機関ということになる。

実写ドラマ版『ラスアス』では、2003年9月にパンデミックが始まっており、第1話では当時のブッシュ大統領の写真が映り込む場面もあった。やはり感染症が拡がったのはイラク戦争に熱中していたブッシュ政権の失策ということのようだ。

ジョエルは、仮説としながらも突然変異した冬虫夏草が小麦粉などの食品の原材料に入り込み、世界中に流通したと話す。第1話冒頭で語られた通り、突然変異の原因は気温上昇であり、第2話冒頭で語られた通り、初期段階の拡散は製粉工場から始まったのだろう。

汚染食品を食べれば感染するという新情報を語るジョエル。ヒトからヒトへの感染ではなく、食料から感染する菌が登場したらと考えるとゾッとする。ジョエルは2003年9月25日の木曜日に食品が流通し、9月26日の金曜日の午後から夕方にかけて人々の具合が悪くなったと語るが、これは第1話で描かれた実体験をなぞっていく話である。

「月曜には崩壊していた」と語るジョエルに、サル起源説しか知らなかったエリーはお礼を言う。陰謀論的な噂話に飛びつくのではなく、その時代を生きた人の言葉に耳を傾けるということが大切だ。

「新世界秩序」の意味

エリーが道中で目にしたのは、白骨化した遺体の数々。発生から1週間後、隔離地域に入りきらなかった人々は感染していなくても軍が殺したとジョエルは説明する。「死者は感染しない」という極端な理論による行動だ。確かに、テロに怯え、でっち上げた戦争を戦っていた2003年当時のアメリカ政府ならやりかねない。

そして、骸骨の一つについていた布にクローズアップする流れで過去編が始まる。舞台は2003年9月30日の火曜日。ジョエルが「崩壊していた」と話した月曜日の翌日である。最初に映る赤ん坊を巻くブランケットにはレインボーマークが見られる。

実写ドラマ版『ラスアス』第3話の監督であるピーター・ホアーはドラマ『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』(2020) でクィアの若者達を描いたことで知られ、自身もゲイである。コロナ禍でHIVについてのメッセージを発して『IT’S A SIN』は英国で高い評価を受け、クィアの俳優と制作スタッフを起用することの重要性についても発信が行われた。『ラスアス』の原作ゲームをプレイした方はお分かりだろうが、第3話はゲイコミュニティにとって重要な回になっている。

軍が強制移住を進める中、地下に隠れるビルは「そうはいくか、新世界秩序の軍人どもめ」と口にする。「新世界秩序 (New World Order)」とは、ジョージ・H・W・ブッシュ(パパブッシュ)が1990年9月11日の湾岸戦争前に行ったスピーチで使用した言葉だ。ブッシュは冷戦後の世界に「強者が弱者を守る」新たな秩序の世界がやってくると宣言した。

ドラマ『THE LAST OF US』の世界では、2003年にその息子のブッシュが半年前に戦争を起こし、さらにパンデミックに際して軍隊を動員している。現実においても20年前はLGBTQライツに対する考えが、今と比べてまだまだ浸透していない時代(ドラマ世界では2015年にオバマ政権下で同性婚が合法になる史実もなくなったのだろう)。セクシュアルマイノリティであるビルが政府の強制的な対処に抵抗するのも頷ける。

自由に生きるビル

先ほどジョエルとエリーが見た布と同じ柄の服を着た人物は軍のトラックで去っていく。ここで軍と共に街を去った人々は始末されたということだ。大量の銃に硫酸も準備して自衛するビルは、軍が去った後に誰もいなくなった街のアナーキー状態を楽しむ。

流れる音楽はフリートウッド・マック「I’m Coming Home To Stay」(1968)。「家に帰るから待っててくれ、ドアの外で」「君と家に帰ったらもう離れることはない」と歌われている。

ビルは、全米どこにでもある米ホームセンター大手のHOME DEPOTで資材を拝借し、ガス工場とワイナリーにも押し入る。名前が映る“ケイマス・ヴィンヤーズ”はナパ・ヴァレーの歴史あるワイン。ゲーム版で見覚えの発電機も登場している。木も切り倒してDIYを進め、家畜もゲットしたビル。ゲーム版で描かれなかったビルの籠城のための準備がしっかり描かれている。

さらに、感染者を罠にかける仕掛けもゲームの中から再現されている。ゲームではジョエルはビルを変人扱いしていたが、こうして一から見ると逞しく、かつ自由に生きている印象を受ける。なお、ドラマ版『ラスアス』でビルを演じるのはニック・オファーマン。シットコム『パークス・アンド・レクリエーション』(2009-2015) などへの出演で知られる。

フランクとの出会い

そして舞台は4年後の2007年に。流れる曲はクリーム「White Room」(1968)。映画『ジョーカー』(2019) のラストでも使用された曲だ。軍の圧政からは逃れて自由に生きるビルだが、この曲では「いるのは疲れたムクドリだけ」「私は哀しい時代に足を踏み入れた」と歌われており、ビルの孤独が表現されているように思える。

そのビルの前に現れたのはボルティモアからやって来たというフランク。演じるのは俳優のマレー・バートレットで、HBOドラマで日本ではU-NEXTで配信されているドラマ『The White ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル』(2021-) での主演で知られる。2020年には自身がゲイであることをインタビューで語っている。

食料を乞うフランクに対し、ビルは「うちはアービーズじゃない」と答える。アービーズはハンバーガーチェーン店である。助けてもらったことは誰にも話さないと約束するフランクを招き入れたビルは、久しぶりにシャワーを浴びて感謝の言葉を口にするフランクに複雑な表情を見せる。ビルが孤独に過ごした4年という歳月は、私たちが経験したパンデミックよりはるかに長い。無愛想だがフランクにきちんとした料理を出してもてなすビルも可愛いし、フランクの料理に喜ぶ笑顔も眩しい。

曲に込められた意味

フランクはビルの母のピアノを見つけると、リンダ・ロンシュタット「ロング・ロング・タイム」(1970) を弾いて歌い始める。この曲には重要なメッセージが込められている。「この歌だけは」と止めに入ったビルだが、フランクに勧められたビルは、フランクとは違う繊細な演奏を聴かせる。

この曲の歌詞は「愛は忍耐である」「いいアドバイスだけど、私の隣には誰もいない」「恋愛の傷は時間と共に癒えると言われたけれど、私にはその意味が分からない」「あなたを手に入れようと全てを試した」「人生はヒビ割れだらけ」「誰がその原因を知ってるの?」と歌われている。おそらく、同性愛者であるビルとフランクはこれらの歌詞に共感していたのだろう。

ビルの実感のこもった歌声を聴いたフランクは、ビルが待っていたのが女性ではないことを確かめ、「分かっていたよ」と告げて口づけを交わすのだった。“初めて”のビルをフランクがリードする。ビルは、大昔に女性とは経験があると話しているが、第3話の監督のピーター・ホアーも、自分がゲイだと気づいたのは22歳の時だったと米Channel4のインタビューで語っている。

自身もゲイであるマレー・バートレットが演じるフランクが、初めてのビルをリードする形でベッドシーンが描かれている。前述の通り、『IT’S A SIN』では当事者の俳優とスタッフによる番組作りの重要性について議論される機会が生まれたが、ドラマ『ラスアス』第3話においても、ゲイの俳優と監督によって、ゲイカップルのリアルなラブシーンが描き出されている。

プレッパーとは

しかし、3年後にはビルとフランクは口論をしている。フランクの「君の世界では9.11は陰謀で政府はナチスだった」という皮肉に対するビルの「政府はナチスだろ!!」というツッコミは笑ってしまった。

フランクは芝刈りをしてペンキを塗りたいのだが、ビルはリソースを気にしている。手入れをすることは愛情表現だと話すフランクだが、いずれワインショップに家具屋、ブティックも直したいと言い出す。フランクは人を呼ぼうとしているのだ。だが、ようやく愛する人を見つけたビルには二人以外誰も必要なかった。フランクはこれみよがしに「ラジオで女性と知り合った」と言い捨ててビルを怒らせるのだった。

フランクが見つけた“友人”とは、テスとジョエルのことだった。ビルが一人で過ごしたのが4年、ビルとフランクが共に過ごしたのが3年で、パンデミック発生から7年が経過している。この時点でジョエルとエリーが出会う13年前であり、テスとジョエルは13年以上行動を共にしていたということになる。ジョエルにとっては娘のサラと同じくらいの月日になり、ジョエルが失ったものの大きさを窺わせる。

ここでアナ・トーヴ演じる若い頃のテスが登場する。ゲーム版ではテスの造形はPS3・PS4版とPS5リメイク版で異なっており、後者の方がリアルに年齢を重ねた姿になっている。ドラマ版も後者に近いメイクだったが、ここでリメイク前のテスに近い姿を見せている。

警告を無視してテスと仲良くするフランクにご立腹のビル。二人きりになったジョエルとビルは実務的に協調路線を取ることに合意し、ジョエルはビルに「プレッパーか?」と聞く。“プレッパー”とは、思想を持って平時から非常事態や災厄の襲来に備えている人のことで、「Prep=準備する」という単語が元になっている。

プレッパーはインフレが止まったり、政府が敵に回っても政府に頼らずに生き延びられるように準備をしている。銃を常備するなど、元は保守思想の人々に多かったが、トランプ政権以降はリベラル思想の人々の間でも広がりを見せた。「サバイバリスト」という呼び方もするのだが、ビルがそちらの呼び方を好んでいるのは、おそらく伝統的な保守派のプレッパーと自分を区別したいからだろう。

干渉して欲しくないと話すビルに、ジョエルはフェンスが腐食していると指摘し、一生保つ高張力線を手に入れられると告げる。第1話で示された通り、ジョエルは建築関係の仕事をしていたのだ。リソースに目がないビルはこれを受け入れた様子だ。ゲーム版では、ビルはジョエルに借りがあることが示されていたが、長年サバイブできるようにフェンスを強化してやったことが借りだったのかもしれない。

フランクとテスは80年代の曲をかけたら「危険」という暗号を決めている。フランクは気の合う女友達ができて嬉しそうだ。ジョエルはビルに、軍でも感染者でもない、略奪者という『ラスアス』における第三の敵がやって来ることを警告する。秩序の崩壊から7年が経過し、治安は悪化していっているのだろう。

二人の意外な最後

時は更に3年後の2013年。現在編の10年前だ。6年来のパートナーとなったビルとフランクは幸せそうな生活を続けている。銃と引き換えに種を手に入れ、イチゴを実らせたフランク。世界は滅びゆく最中だが、イチゴを分け合う二人は最高の時間を過ごしていた。ビルは、「君が来る前は何も怖くなかった」と先に老いていくことを恐れている。愛を知り、失うことの怖さを知ったのだ。

しかし、かつてのジョエルの警告通り、二人のもとに略奪者たちが忍び寄る。ライフルで応戦するビルだったが腹部を撃たれて重傷を負ってしまう。その時、ビルがフランクに告げたのは、ジョエルの助けを借りることだった。大切な人を託そうとするという、ビルからジョエルへの信頼が描かれるシーンだ。

そして舞台は10年後の現在へ。ビルは「先に老いる」と言っていたが、意外にも車椅子に乗っているのはフランクの方だった。だが、ビルは20年もの間、自分の城を守り、16年もの間、フランクと共に暮らし続けたのだ。フランクの老老介護をするビル。寝室にはフランクが描いたであろうビルの絵が飾られている。

弱りきったフランクは、朝になって「人生最後の日」だと言い出す。フランクは以前から病気にかかっていたのだ。「パンデミック前から治療法はなかった」と話しており、HIVのことも想起させる展開になっている。第3話のピーター・ホアー監督はドラマ『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』でHIVの流行に翻弄される若者たちの姿を描き、同作第1話の放送および配信後には、英国内のHIV検査数が4倍に達する社会現象を起こしている。

「辛い日も多かった」が、「君とは誰よりもいい日々を過ごした」と話すフランク。ビルに最後の1日を一緒に過ごしてほしいと話し、「結婚しよう」とプロポーズする。前述のように2015年に現実で起きた米国での同性婚の合法化は、ほぼ無政府状態にある『ラスアス』の世界では起きていないと考えられる。それでも、愛し合うフランクとビルは二人で生き方と死に方を決めるのだった。

ビルの腕の中で死にたいと言うフランクに「できない」と言うビルだったが、愛するフランクのために、フランクの望み通りに最後の一日を過ごす。映像からは、フランクが最初に落ちた落とし穴がそのまま残されていることも分かる。

ブティックで正装に身を包んだ二人は、ビルの母のピアノの前で指輪を交換して二人だけの結婚式を執り行う。出会った日にピアノの前で交わした口づけを再現し、ビルはあの日と同じように料理を出す。二人が「私の隣には誰もいない」と歌ったあの日との違いは、ビルがフランクの隣に座っていることだ。

ビルがフランク望み通りにグラスのワインに薬を入れると、フランクはそれを一口で飲み干すが、ビルがボトルにも薬を入れいてたことを見抜く。ビルは「君が人生の目的だった」と、一人で生きていても仕方ないと考えて行動に移したことを説明する。フランクは怒りを抑えながら、「ロマンチックだ」と自身もまたビルの選択を受け入れるのだった。

ゲーム経験者にとっては意外な展開を迎えた実写ドラマ版『THE LAST OF US』第3話。ゲームではジョエルとエリーはビルと合流し、感染者たちを退けるが、フランクは感染して首を吊った状態で発見される。ゲーム内ではフランクがビルに嫌気がさして出て行ったことを示唆する手紙を見つけることができる。また、ゲームではビルは生き延びて一人で町に残る。ビルとフランクは、ゲームでは実現しなかった最後を遂げることができたと言える。

ビルがジョエルに遺した言葉

ジョエルとエリーがビルの家に着いた時には二人の姿はなく、ジョエルへの手紙と車のキーが残されていた。2023年8月29日に書き残されていた手紙には、「寝室には入るな」というメッセージと共に、「何でも持っていけ」という気前の良いビルの言葉が書かれていた。この気前の良さはゲーム版と同じだ。

ビルはジョエルを“ほぼ友達”で、尊敬していると記していた。ビルは、世の中が嫌いで皆の死を喜んだが、一人だけ救う価値のある男がいて、その男の命を救い、守ってやったと記す。「俺やお前のような人間はそのためにいる」と、ジョエルにも大事な人を守るよう進言するが、そこに書かれていたのは「テスを危険から守ってやれ」というメッセージだった。

ジョエルは娘のサラも、パートナーのテスも守ることはできなかった。一方のビルは、共にその生涯を終えるまでフランクを守りきった。第2話ラストの「救える人を救って」というテスからの言葉に加え、ジョエルはまたも去る人からの言葉を受け取った。そしてジョエルとエリーだけが残され、二人はまた“The Last of Us=残された私たち”になる。

ジョエルは車を見つけるが、バッテリーがないことに気が付く。これはゲームと同じ展開だが、ドラマ版ではジョエルはビルが20年も保存してあった硫酸を利用して発電することに成功する。念願の車を手に入れたジョエルは、本来の目的であるワイオミングにいる弟のトミーを探しにいくことに。トミーは元ファイアフライであり、エリーを送り届けるべき場所である研究所の場所がわかるかもしれないのだ。

バッテリーを充電している間にジョエルはエリーに、テスのことは禁句、症状のことは隠す、指示には従う、という三つのルールを告げる。内容はゲーム版と同じで、約束をエリーに繰り返させるのもゲームと同じだが、ゲーム版はテスの死のすぐ後に言うセリフであり、ドラマ版ではビルの言葉を受けて決心したという演出になっている。

エリーは女性ものの服を見つけて着替えるが、これはゲーム原作でエリーが着ている服と同じデザインのものだ。また、エリーは銃を見つけてこっそりバッグに忍ばせている。リフレッシュした二人は車でワイオミングへ。初めて車に乗るエリーは「宇宙船みたい」と言うが、ゲーム版ではエリーが宇宙に関心があることが示される。

車に入っていたテープから流れてきた曲はリンダ・ロンシュタット「ロング・ロング・タイム」。ビルが大事に持っていたのだろう。ゲーム版ではハンク・ウィリアムスザ・ドリフティング・カウボーイズの「生きてこの世は出られない」(1952) が流れるのだが、実写ドラマ版ではビルとフランクへのトリビュートを捧げて幕を閉じる。

ドラマ『ラスアス』第3話感想

音楽に注目

第1話ではサラが死に、第2話ではテスが死に、第3話ではビルが死に、ジョエルとエリーが残された。一方で、第2話同様、第3話でも去る者がジョエルに言葉を託し、“残された者の使命”が強調される作りになっている。

第1話でも効果的に用いられた音楽は、第3話ではビルとフランクをつなぐ重要な要素として登場した。また、第1話で曲に合わせた暗号として「60年代は仕入れなし、70年代は入荷、80年代は問題発生」というルールが紹介された。ビルが一人だった頃に流れるフリートウッド・マック「I’m Coming Home To Stay」とクリーム「White Room」は共に1968年発表の曲で、この暗号と照らし合わせると「仕入れなし」、フランクが訪れて弾き始めるリンダ・ロンシュタット「ロング・ロング・タイム」は1970年発表の曲で、「入荷」ということになる。

これはあくまで演出としてだが、ビルが十分にリソースを持っていても「仕入れなし」の音楽が流れ、フランクと出会った時に「入荷」が流れたということは、ビルが本当に求めていたものは“他者”であったと捉えることができる。最後にはジョエルとエリーが訪れた地下で自動的に80年代の曲が流されていたが、ビルとフランクは「問題発生」の音楽を聴かずに生涯を終えたことになる。第3話の監督のピーター・ホアーが手がけたドラマ『It’s a Sin』では80年代UKの曲がふんだんに使用されていたのとは対照的だ。

名作誕生

そして、ドラマ『THE LAST OF US』第3話は、実質的にビルとフランクを主人公にしたショートムービーという仕上がりだった。世界の終末を共に過ごす中高年カップルの姿を描く良作で、その中で、ゲイとして生きてきたビルの寂しさと喜びを描き出していた。

第2話は原作ゲームを手がけたニール・ドラックマンのホラー監督としての手腕が十二分に発揮されていたが、第3話はピーター・ホアー監督のロマンスを描く手腕が見事に発揮された。『It’s a Sin』では若者たちの物語を描いていただけに、『ラスアス』では老いたゲイカップルの物語を見事に描く幅の広さを見せつけている。一方で、エリーが生理用品を必要としていることや、ビルの家でトイレットペーパーを大量に仕入れる場面も描かれており、終末世界を舞台にきめ細やかに各キャラクターのリアルを描いていたことも印象的だった。

なお、この第3話は配信後すぐに英語圏で高い評価を受けており、メディアでは絶賛が相次いでいる。これまでの展開と比べると、ゲーム原作にかなり改変を加えた仕上がりになっていたが、むしろ原作で描かれなかった部分を丁寧に描いており、多様な人々を代表(レペゼン)するキャラクターと真摯さに向き合ったことが伝わる内容になっていた。75分という尺も気にならないクオリティであり、1月にして様々な賞レースに名を連ねることが予想されるエピソードが登場したと言える。

ピーター・ホアー監督が第3話について語った内容はこちらの記事にまとめている。ビルのバックグラウンドについても紹介されているのでぜひチェックしていただきたい。

原作ゲーム通りに順調にいけば、次回はあの二人が登場する頃だろうか。あるいは順番を入れ替えてトミー探しの続きを先に描くのだろうか。そして、ドラマ版では、それはどんな描き方になるのか。ビルとフランクが過ごした終末の日々に思いを馳せながら、第4話の配信を楽しみに待とう。

ドラマ『THE LAST OF US』は2023年1月16日(月)よりU-NEXTで独占配信。

原作のゲーム『The Last of Us』はPS5リメイク版が発売中。

『The Last of Us』と続編『The Last of Us II』はPS4でも発売中。

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公式からは第3話のイチゴのシーンが公開されている。キャストとプロデューサーが語った背景と合わせてこちらの記事で紹介している。

ドラマ『THE LAST OF US』第4話のネタバレ解説はこちらから。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

シーズン2決定の情報はこちらから。

シーズン2について製作陣が語った内容はこちらの記事で。

ジョエル役のペドロ・パスカルが主演を務める『マンダロリアン』はシーズン3が3月1日(水)より配信開始。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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