『シー・ハルク』第5話はどうなった?
『シー・ハルク:ザ・アトーニー』はMCUドラマ最新作。Disney+配信のMCUドラマは全6話構成が続いていたが、『シー・ハルク』は第1弾の『ワンダヴィジョン』以来となる全9話で構成される。そして2022年9月15日、全9話のちょうど折り返しに当たる第5話の配信がスタート。MCUドラマでは折り返しのエピソードが大きな転換点になってきたが、『シー・ハルク』第5話ではどんな展開が待っていたのだろうか。
今回はドラマ『シー・ハルク』第5話の各シーンを徹底解説していく。以下の内容はネタバレを含むため、必ずDisney+で本編を視聴してから読むようにして頂きたい。
以下の内容は、ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』第5話の内容に関するネタバレを含みます。
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ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』第5話「ノリノリ、緑、デニムの着こなしバッチリ」ネタバレあらすじ&解説
シー・ハルクの商標権は?
従兄のブルース・バナーの血が体内に入ったジェニファー・ウォルターは、ハルクの力を手に入れてしまい、世間から「シー・ハルク」と呼ばれるようになっていた。ジェニファーはその呼ばれ方を嫌がっていたが、第4話ではマッチングアプリでその名前を使用してしまう。第4話ラストでは、第1話ラストでシー・ハルクが戦ったタイタニアから「シー・ハルク」の商標侵害のかどで訴訟するという訴状がジェニファーに届いたのだった。
冒頭で流れるのはタイタニアの「シー・ハルク」CM。どうやらタイタニアは美容&健康品ブランドとして「タイタニアのシー・ハルク (SHE HULK by Titania)」を立ち上げたらしい。早速製品を作ってCMを流すという仕事の速さ。力ではなくビジネスで主人公に嫌がらせをする新しいヴィラン像だ。
フリーウェイの看板には「タイタニアのシー・ハルク」の広告があり、LAの観光スポットでもあるショッピングセンターの「ザ・グローブ」にポップアップストアを出店するという内容になっている。「詳細は TITANIA をフォロー」という字も見られ、タイタニアがインフルエンサー個人を起点としたインフルエンサー・ビジネスを展開していることが分かる。
その看板に驚くジェニファーが車中で聞いているのは「ロー360 (Law360)」のポッドキャスト。Law360とはm米国のサブスクリプションベースの法律ニュースサービスだ。毎日リーガルサービスを届けてくれるLaw360をジェニファーも利用しているようだが、なんとタイタニアがこのポッドキャストのスポンサーになっている。ジェニファーが弁護士でLaw360を利用していると知った上での嫌がらせだろう。
会社に所属して日々の労働があるジェニファーに対して、合同会社を持って手早くビジネスを展開していくタイタニア。精神的にも疲弊させられるパターンだ。そこに現れたのはいとこのチェド。「商標ってのは最初に登録したもん勝ち」と正論をぶつけてジェニファーを苦悶させるのだった。第5話は『シー・ハルク』のタイトルロゴまでタイタニアに乗っ取られている。
アイアンマン・スリーズ再登場
タイタニアのポップアップストアに乗り込んだジェニファーは、「ヘビ毒入り リップグロス」を見て「ヘビ油みたいなインチキ商品」と批判する。過去に薬用としてスネークオイルを販売した会社が実際にはスネークオイルを使っておらず、薬としての効果もなかったことから、英語では「スネークオイル」は「インチキ」の代名詞になっている。
ファンにサインするタイタニアに商品の販売中止を求めるジェニファーだったが門前払いの扱いを受ける。ニッキには「シー・ハルク」という名前を嫌っていたと突っ込まれるが、ジェニファーは「美しい髪、二日酔いはなし、夜にヘッドホンをしても警戒せず歩ける」とシー・ハルクになってからの良いところも挙げている。これらにニッキは「すべての女性の夢」と応答するのだった。
そのニッキに話しかけたパグは、スニーカーのアイアンマン・スリーズ (The Iron Man Threes) を買うのに一緒に列に並んでほしいと頼む。アイアンマン・スリーズは、第2話でジェニファーが見ていたサイトにも広告が掲載されていた。アイアンマンこそ亡き後もその名前はしっかり商業利用されているようだ。
アロンゾという名のブローカーからレアなスニーカーを仕入れているというパグの話を聞き、ニッキはシー・ハルク用の洋服を仕立ててもらうことを思いつく。逆にニッキを手伝うことになったパグはニッキに「ズルいニック (Slick Nick)」と呼んでいるが、これは往年のラッパーのスリック・リック(Slick Rick)をもじっているのだろう。
ジェニファーのデスクのモニターに映るタイタニアは、ファンにお礼を言い続けている。ファンへの感謝の表明はインフルエンサー・ビジネスの基本でもある。シー・ハルクと呼ばれたかったわけではないけれど、勝手に使われるのは腹が立つ。そんな微妙な状況で第5話は進んでいく。
マロニーの弁護
パグがニッキを連れてきた場所はタピオカ店を装ったスーパーヒーローの洋服屋。スーパーヒーロービジネスも幅広くなってきたようだ。ニッキは中国語も話せる語学力を見せている。タピオカ店の店主が、店舗の裏で見せたのはキャプテン・アメリカの盾にソーのハンマー。しかしこれはどう見てもオモチャだし、Tシャツのロゴも「Avongers」「Avingers」となっている。
なお、縦とハンマーで遊ぶパグの姿は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) におけるサノス戦でのキャプテン・アメリカの装備の再現になっている。結局、パグとニッキは本物のコスチューム職人とのアポイントメントを取ることに成功。この人物は「アベンジャーズの中心メンバーの依頼」ということで仕事を受けるようだが、先日、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギは、現在組織としてのアベンジャーズは存在していないと発言している。
ジェニファーの上司であるGLK&Hのホリウェイは、シー・ハルクが商標権の侵害で訴訟になっていることにご立腹の様子。第4話で登場した同僚のマロリー・ブックがジェニファーの弁護にあたることに。原作コミックでは、タイタニアがヴィランとしてシー・ハルクの宿敵になるのに対し、。マロリーは弁護士としてジェニファーのライバルになる存在だ。
ジェニファーは商標登録をしなかったことへの言い訳として、「ドクター・ストレンジはした? ソーは?」と尋ねるが、マロリーは「どちらも本名を使ってる」と言い返す。これで本名ではないアイアンマンの名前がスニーカーの商標として使われていることの伏線が回収された。
マロニーは、タイタニアの商標登録日より前にシー・ハルクの名前を使っていたと主張して逆に提訴することを提案。原告として法廷に立ったジェニファーは、タイタニアから「シュレック」と声をかけられる。シー・ハルクと同じく緑の肌を持つシュレックは、ドリーム・ワークスが複数のディズニー作品をパロディにした作品である。
マロニーはジェニファーがハルクの姿で登場して以降「シー・ハルク」という名前が使われ始めたとして、報道記録を提出するなど見事な弁護を見せる。一方、タイタニアの弁護士も、ジェニファーがシー・ハルクの名前を人気商品に使われるまで興味を示していなかったとして、「私の名前じゃない」と語る動画を流すが、これに対してもマロニーはジェニファーが「仕方がなく私は永遠にシー・ハルク」と語る映像を流すのだった。
マロニーは、ジェニファーがシー・ハルクという名前を使っていた更なる証拠を提出すると宣言して休廷に。ジェニファーはこの宣言に驚き、思わずカメラ目線になっている。ジェニファーはシー・ハルクの名前を使ったのは、第4話でのマッチングアプリの登録名だけだ。
シー・ハルクのスーツ
シー・ハルクのスーツを作りにきたニッキとジェニファーは、ルークという人物と面会。マーベルでルークといえばルーク・ケイジだが、別人のようだ。ニッキはシー・ハルクはまだアベンジャーズに入っていないが、いずれ大スターになるとルークを口説く。ジェニファーは普段の姿とシー・ハルクの姿の両方に対応したスーツを依頼。伸縮性のあるウールでシー・ハルクのコスチュームが作られるようだ。
フェーズ4に入ってからのマーベルヒーローのコスチュームは、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) や『ホークアイ』(2021)、『ミズ・マーベル』(2022) ではクライマックスに向けて形になっていくというスタイルがとられていた。『シー・ハルク』においては、早い段階でのコスチュームがお披露目にされることになる。
第4話で会ったトッドとの再会を機に、ジェニファーはマッチングアプリで出会ったクズ男たちを利用することを思いつく。マロニーは第5話のタイトルである「ノリノリ、緑、デニムの着こなしバッチリ」というプロフィールとシー・ハルクの名前で、デート相手を募集していたことを法廷で取り上げ、次々に第4話で登場した男性たちが証言台に立つ。
第4話でジェニファーが最後にデートした相手は、ジェニファーには興味がないが、シー・ハルクに魅力を感じたと証言。哀しい言葉だが、裁判には有利に働く。結果、ジェニファーがこの裁判に勝利し、タイタニアは“シー・ハルク”使用の即時中止と製品回収を命じられることに。ヒーロー名の商標利用に関する判決が初めて下った重要なシーンだ。
これでスーパーヒーローたちは、その名前が勝手に商標登録されても、それ以前から自分のアイデンティティとして名前を使用していれば権利を主張できるという判例ができた。「世間がつけるスーパーヒーローの名前は公共性がある」といった判断にはならなかった。ドラマ『ホークアイ』では、「サノスは正しかった (Thanos was right.)」コップも登場したが、サノスが訴訟を起こせば制作者に勝てるだろう。
最後に待っていたサプライズ
勝利したマロニーは、ジェニファーに「もっとふさわしい人がいる」と助言すると、ジェニファーはマロニーに一杯奢ることに。シー・ハルクほどの能力があってもネットで集まる男たちは上から目線、「私たちよく耐えてるよね」と二人は意気投合するも、ジェニファーの「友達になれてよかった」という発言で微妙な空気になってしまう。職場ではプロとしてライバルでもある二人。微妙な緊張関係があるのだ。
依頼していたコスチュームについて思い出したジェニファーは、ルークのもとへ行き服を受け取る。着用した姿は第5話ではお預けとなったが、ジェニファーが受け取っていたのは紫のスーツのようだ。ジュアン・ボビーロが描いたようなコミックのシー・ハルクの姿になるか、2022年3月に発売されたばかりの『She-Hulk #2』の表紙にジェン・バーテルが描いたような姿になるのだろうか。
さらに追加の特別コスチュームを受け取ったジェニファー。着る機会がなさそうと言っているが、こちらはコミック版ではお馴染みのレオタードだろうか。そうだとすれば確かに着る機会はなさそうだが……。
そして第5話最大のサプライズは、ルークが「出しっぱなしだ」と移動させるある人物のコスチューム。アシスタントのティンズリーに「お客様の秘密は守れ」と注意するその“秘密”とは、デアデビルのヘルメットだった。それも、予告編でも見られた黄色いヘルメットである。
『シー・ハルク』で登場するデアデビルの姿は、原作コミックでの初登場をイメージした黄色と赤の配色になっている。ABC制作のドラマ『デアデビル』(2015-2018) では、マット・マードックはメルヴィン・ポッターという人物からコスチュームを入手するが、今度のマードックはルークからコスチュームを仕入れるようだ。
MCUフェーズ4のデアデビルは、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で弁護士としてのマット・マードックが登場。過去のドラマと同じく俳優のチャーリー・コックスが演じたことで大きな話題を呼んだ。また、MCUフェーズ5では、ドラマ『デアデビル ボーン・アゲイン(原題)』が2024年春にDisney+で配信されることが決まっている。そして、同じ弁護士主人公の作品である『シー・ハルク』で一足先にコスチューム姿が初披露されることになる。
第5話のエンディングで流れる曲はTove Styrke「Say My Name」(2017)。「私の近くにいて、私の名前を言って」と歌う曲で、シー・ハルクという呼び名を嫌ってきたジェニファーが、それを自分のアイデンティティとして受け止め始めていることを示唆する曲だ。世間からのレッテルを逆手にとって自ら名乗り、自分のものとして奪い取ることも抵抗の一つの形である。
なお、エンディングのコンセプトアートでは、アイアンマン・スリーズのスニーカーを手に取るパグの姿が確認できる。また、第5話は定番になっていたミッドクレジットシーンは無しとなっている。
ドラマ『シー・ハルク』第5話ネタバレ感想&考察
商標問題に決着
『シー・ハルク』第5話はアクションシーンなしの落ち着いた展開に。ヴィランのタイタニアとも法廷での対決のみ描かれ、既に触れた通り、スーパーヒーローの商標の問題に一つの結論が示された。ドラマ『ミズ・マーベル』では、カマラ・カーンが訪れたアベンジャー・コンで様々なヒーローグッズが発売されていた。アントマンのヘルメットやキャプテン・マーベルのキャップも売られており、ハルクはアトラクションにもなっていた。これらの商標は誰が管理しているのだろうか。
もしかすると、スーパーヒーローの商標に関する判例がなかったため、こうしたビジネスは野放しの状態になっていたのかもしれない。ドラマ『ザ・ボーイズ』(2019-) ではないが、ヒーロービジネスの裏側で誰が稼いでいるのかは気になるところだ。それにしても今後登場するスーパーヒーローたちは商標のことも気にしなければならないとは……。ダメージコントロール局が規制を強化したり、アベンジャーズが不在だったり、新世代は気の毒な感じがする。
仕立て屋とデアデビルの謎
第5話のクレジットを見ると、仕立て屋のルークの名前はルーク・ジェイコブソンとなっている。原作コミックでは『ダコタ・ノース Vol.1』(1986) に登場したファッションデザイナーのキャラクターのようだ。ダコタ・ノースはコミックの「デアデビル」や「ルーク・ケイジ」作品にも登場している。デアデビルとルーク・ジェイコブソンの繋がりは、ダコタ・ノースやルーク・ケイジの存在も感じさせる演出になっている。
それにしても、マット・マードックはドラマ『デアデビル』と同じくニューヨークのヘルズキッチンを拠点にしているかに思われたが、ジェニファーと同じくロサンゼルスを拠点にしているのだろうか。『シー・ハルク』でのデアデビル登場の段取りは、ジェニファーが東海岸に立ち寄るか、マードックがコスチュームを持って西海岸に立ち寄るパターンが考えられたが、コスチュームを受け取るということは、それなりの期間をロサンゼルスで過ごしているとも考えられる。
もしくは、マードックはどうしてもルーク・ジェイコブソンにコスチューム制作を依頼したくてニューヨークから発注をかけ、ロサンゼルスには受け取りに訪れるのだろうか。ルークは特別な客からの仕事しか受けないという態度を見せていた。ルークはマードックの正体を知っていて、仕事を受けたということだろうか。だとすれば、デアデビルは既に世間的に名前が知られているということなのかもしれない。
なお、デアデビルを再演するチャーリー・コックスは新コスチュームと過去の『デアデビル』との繋がりについて語っている。詳しくはこちらから。
それにしても第3話ラストで登場したレッキングクルーの伏線が回収されないままである。あの「ボス」とは誰のことで、なぜシー・ハルクを狙っていたのだろうか。もしかするとデアデビルはこの「ボス」を追って西海岸まで出張しているのかもしれない。
マット・マードックとデアデビルはどのような形で登場することになるのか。『シー・ハルク』の後半戦も目が離せない。
ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』はDisney+で独占配信中。
シー・ハルクのコミック作品は、『シーハルク:シングル・グリーン・フィメール』ケン・U・クニタによる日本語訳が発売中。
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