『シー・ハルク:ザ・アトーニー』配信中
弁護士のジェニファー・ウォルターを主人公に据えたMCUドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』がDisney+で好評配信中だ。弁護士として活躍するジェニファーは、交通事故をきっかけに従兄のブルース・バナーと同じハルクの力を手に入れてしまう。原作コミックと同じく“第4の壁”を破って視聴者に語りかけるスタイルや、毎週過去のMCU作品に登場したキャラクターによるカメオも話題になっている。
今回は、予告編で明かされていたベネディクト・ウォン演じるウォンの登場に注目したい。ウォン登場時の演出について、脚本家が語った内容から意外な事実が発覚している。なお、以下の内容は『シー・ハルク』第3話のネタバレを含むため、注意していただきたい。
以下の内容は、ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』第3話の内容に関するネタバレを含みます。
ウォンの過去
ドラマ『シー・ハルク』第3話では、アボミネーションことエミル・ブロンスキーの証人としてウォンが登場。ブロンスキーが『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) において地下闘技場にいた件について、自らの意志ではなくウォンに強いられて牢を抜け出したのだと証言させるため、ジェニファーはウォンに連絡を取ろうとする。
ジェニファーの親友でありアシスタントであるニッキは、すぐにウォンについてネットで検索。そして、ビジネスSNSのLinkedIn風の画面が表示され、ウォンが現在はソーサラー・スプリーム(至高の魔術師)であること、その前は11年間カマー・タージの司書であったこと、更にその前には米大手ディスカウントスーパー “ターゲット” のカマー・タージ支店で販売員として働いていたことが明らかになっている。
Being a Target Sales Associate is a foot in door role to being Sorcerer Supreme #shehulk @Marvel @SheHulkOfficial pic.twitter.com/s89HrjCqRb
— Target (@Target) September 1, 2022
これにはターゲットのTwitter公式も反応。「ターゲットの販売員になることは、ソーサラー・スプリームになるための足がかりです」と、該当シーンの写真を添えてツイートしている。
ターゲットはアメリカの多くの街に見られるスーパーであり、ウォンがそこで正社員として9年間も働いていたというのは驚きの事実である。魔術師としてエリート街道を歩んで来たわけではないが、11年間もカマー・タージの司書を任された背景には、スーパーの店員として9年間勤め上げた過去に対する評価があったのかもしれない。
このシーンの意図は?
ほんの小ネタに見えるウォンの経歴について、ドラマ『シー・ハルク』の脚本を手がけたジェシカ・ガオがその背景を明かしている。米The Directのインタビューでこう語っている。
実は、これはグラフィックチームの功績なんです。もしかしたら違うかもしれませんが、オルニー・アトウェルが思いついたのでしょう。これはどういうことかと言うと、私たちのグラフィックチームは、細部にも気を配り、小さなジョークや小ネタをたくさん仕込んでいるということです。本当に素晴らしいですよね。
それにしても、そもそもウォンがLinkedInのプロフィールを持っていて、更に職歴を書いているところを想像して皆で大笑いしたんです。「ソーサラー・スプリーム」で終わる職歴なんて、どうしたって素晴らしいものになりますよね。ウォンがアメリカのポップカルチャーを発見して探究している、私は今の時代が大好きです。
LinkedIn(リンクトイン)はカリフォルニア州シリコンバレー発のビジネスSNS。2016年にはマイクロソフトの傘下に入っている。ウォンは、現在の拠点を「ニューヨーク」としているが、『シー・ハルク』を見てもカマー・タージにつきっきりの様子。それでもアメリカのサービスを愛用しているウォンの姿が描かれたことで、「アメリカの大衆文化好き」というウォンのキャラクターが強化されることになった。
そう考えれば、ウォンがかつてカマー・タージのターゲットで働いていた理由も、アメリカの文化に対する憧れがあったからかもしれない。ターゲットの本社は米ミネソタ州。メジャーリーグのミネソタ・ツインズが本拠地にしている球場は、2010年の完成時にターゲットが命名権を獲得して“ターゲット・フィールド”と名付けられている。
ターゲットには、ターゲット限定盤も含むDVDやBlu-ray、マーベルを含むアメコミやハリウッド映画の玩具が次々入荷される。ウォンはそんなターゲットで働きたかったのか、あるいはターゲットでの勤務を通してアメリカのポップカルチャーを好きになっていったのだろう。いずれにせよLinkedInのプロフィールにわざわざ書いているということは、ターゲットでの職歴を相当大事に思っているはずだ。
ウォンのポップカルチャー好き描写
振り返れば、ウォンがアメリカのポップカルチャーが好きだという伏線はこれまでの作品にも見られた。そもそもウォンはネパールに住んでいたが英語を自在に喋ることができる。生まれた場所は出身は定かではないが、それもアメリカのポップカルチャーの影響かもしれない。それは、過去の作品からも読み取れる。
ウォンが初めてMCUに登場した映画『ドクター・ストレンジ』(2016) では、ウォンはドクター・ストレンジが会話の中であげた歌手のビヨンセのことが分からなかった。しかし、その後のドクター・ストレンジが書庫から本を拝借するシーンで、ウォンはビヨンセの「シングル・レディース(プット・ア・リング・オン・イット)」(2008) を聴いている。好奇心が旺盛なのだ。
また、映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) では、ウォンはシャン・チーとケイティと共にカラオケでイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」(1977) を歌うなど、貪欲にアメリカ文化を吸収しているように見える。
『シー・ハルク』では、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) と映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) に続く登場となったウォン。フェーズ4では大忙しのウォンだが、『シー・ハルク』ではまだウォンのキャラクターが深掘りされることに期待したい。
ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』はDisney+で独占配信中。
シー・ハルクのコミック作品は、『シーハルク:シングル・グリーン・フィメール』ケン・U・クニタによる日本語訳が発売中。
Source
The Direct
ウォンの証言に助けられたアボミネーションは本当に更生したのか、演じたティム・ロスの意味深発言はこちらから。
『シー・ハルク』第3話の解説はこちらの記事で。
第2話の解説はこちらの記事で。
第1話の解説はこちらの記事で。
第1話のキャプテン・アメリカのくだりについて主演のタチアナ・マスラニーが語った内容はこちらから。
11月11日公開の映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』特報の解説&考察はこちらから。
9月9日からは『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が追加映像と共に再上映される。詳しくはこちらの記事で。