『シー・ハルク:ザ・アトーニー』配信開始!
MCUドラマの第7弾『シー・ハルク:ザ・アトーニー』が2022年8月18日(木) より配信を開始。MCU作品としては初の木曜配信の作品となり、MCUドラマ第1弾の『ワンダヴィジョン』(2021) 以来となる全9話の構成で配信される。
『シー・ハルク:ザ・アトーニー』は、弁護士のジェニファー・ウォルターズを主人公に据えた作品。ハルクことブルース・バナーを従兄弟に持つジェニファーが、ある日ハルクの力を手に入れてしまい弁護士としての仕事とスーパーヒーローとしての使命の間で板挟みにされてしまう。
法廷ドラマであり、コメディ作品であり、様々なマーベルキャラのカメオ出演が予告されているドラマ『シー・ハルク』。MCUにどんな新しい風を吹かせてくれるのだろうか。今回は、ドラマ『シー・ハルク』第1話の各シーンを解説していく。重大なネタバレを含むので、必ずDisney+で本編を観てから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』第1話「普通レベルの怒り」ネタバレあらすじ&解説
法廷ドラマが開幕
前週に配信された短編アニメシリーズ『アイ・アム・グルート』に続き、2022年6作目のMCUタイトルとなった『シー・ハルク:ザ・アトーニー』。冒頭のマーベル・スタジオのロゴタイトルにはジェーン・フォスターのソーやミズ・マーベルの姿も確認できる。
第1話が始まるやいなや、主人公のジェニファー・ウォルターズがカメラ目線で「力を持つ者の責任とは?」と問いかける展開。かねてより『シー・ハルク』は、“カメラの向こう”を意味する“第四の壁”を破る作品として期待されている。しかし、この場面はジェニファーが陪審員への最終弁論のスピーチを練習しているところだ。
日本では、市民が裁判員として裁判に参加する陪審員制度は、地方裁判所で行われる刑事事件のみが対象になる。アメリカでは連邦規模でも州規模でも刑事・民事ともに陪審員制が活用されており、裁判では陪審員が有罪・無罪を判断し、裁判官が量刑を判断する。
ジェニファーは「顔が怖い」と指摘されているが、一般人である陪審員への“印象”は重要だ。しかも、ジェニファーはスーパーパワーを持つ人物に不利なスピーチの練習をしている。スーパーパワーを持つ人から被害を受けた人の弁護をしていることが窺える。
この場面でジェニファーは「大きな力を持つ者には、大きな責任がある」と、「スパイダーマン」シリーズでお馴染みの「大いなる力には大いなる責任が伴う」を想起させる言葉を言っているが、英語では前者は「with the most power have the most to answer for.」で後者は「With great power comes great responsibility.」なので、それほど似ているわけではない。
ジェニファーの弁護士仲間のデニスは「弁護士よりもパラリーガルの言うことを聞くのか?」と言っているが、「パラリーガル」とは弁護士の補助を行うアシスタントのこと。資格は不要であることが多く、将来法務の仕事に就くために実務経験を積みたい人がなる場合が多い。
整理しておくと、ジェニファーは弁護士で、ジェニファーの親友であるニッキ・ラモスはパラリーガル、ニッキとジェニファーは仲がいいので互いに肩を持っているという構図だ。ニッキはジェニファーのことを愛称の「ジェン」で呼んでいる。
ニッキは、大手法律事務所のGLK&Hとの対決に挑むジェニファーを鼓舞する。GLK&Hは原作コミックにも登場する事務所で、「グッドマン、リーバー、カーツバーグ・アンド・ホリウェイ」の頭文字をとったもの。アメリカでよくある創設者達のイニシャルを会社名にするパターンの名前だ。
語られる歴史
ニックが“ハルク”について触れると、ジェニファーは今度こそカメラ越しに視聴者へ向けて「今の話だけど…」と話しかけてくる。第四の壁を破る歴史的な瞬間だ。ジェニファーはこの時点で既にハルクになっており、視聴者に経緯を説明するという形で物語は数ヶ月前に戻るのだった。
ジェニファーと旅行をするハルクことブルース・バナーは、「右手が治り始めた」と話す。映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) に登場した際には右腕を固定していたが、それほど遠くない時期なのだろう。ブルースは「人間の姿を保てる維持できる装置を作ったおかげ」と、腕が治癒し始めた理由を話している。ブルースが『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) の指パッチンで大怪我を負ったのはハルクフォームの時だったが、人間フォームの方が治癒力は高いのだろうか。
ブルースは何気なく、チェドという名のスマートな親戚がいることに触れている。この人もいつかハルクチームに加わるかもしれない。ジェニファーは箸でチートス(スナック)を食べる技を自慢している。日本では一般的な知恵だが、アメリカでは一般の家庭にお箸がないことも多いのでそれほど知られていないのだろう。
そして、ジェニファーはキャプテン・アメリカことスティーブ・ロジャースがヴァージンだったという自説を述べ始める。ペギー・カーターの存在は世間に知られていないらしい。それに、ジェニファーが知っている話は全てブルースが教えたことの受け売りだという。逃亡中にスティーブと行動を共にしていたナターシャのことは話していないのだろうか。ブルースとナターシャは、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) で再会した時には気まずい空気が流れていた。
ドラマ『ミズ・マーベル』では、アントマンことスコット・ラングが様々なインタビューでアベンジャーズの戦いについて明かしていることが示唆されていた。今回も、アベンジャーズの生き残りであるブルースの口から歴史が語り継がれていることが示されているが、やはり語り部によって歴史は修正されていくことになりそうだ。
血を警戒するハルク
そんな二人の車の前に現れたのは、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017) に登場した宇宙船コモドールと同じモデルの機体。ジェニファーはこれを咄嗟に避けると、車はガードレールを突破して転落してしまう。そして二人は共に流血する傷を負い、ブルースの血がジェニファーの傷口に触れるとジェニファーはハルクの力を手に入れたのだった。
ジェニファーがハルクの力を手に入れた理由は、いわゆる“輸血”ではなく、少量の血が傷口に触れたという程度のことだった。ブルースは「血がつくぞ!」とジェニファーに警告しているが、これは思い返せば『インクレディブル・ハルク』(2008) の時と同じ反応だ。同作では、冒頭のブラジルの工場のシーンで血を垂らしてしまったブルースは血相を変えてラインを止めさせ、その血を拭き取りに行っていた。
この時、血のついたジュースのビンがアメリカに出荷されてしまい、スタン・リー演じるミルウォーキーに住む人物がジュースを口にしてガンマ汚染されている。ブルースは実験でガンマ線を浴びたことでハルクの力を手に入れたからだ。それから15年ほどが経過した今でも、ブルースは自身の血が他者に与える影響について心配しているようだ。
だが、ブルースと同じDNAを持つジェニファーは、ブルースの血を体内に入れたことでハルクと同様の力を手に入れた。これは、DNAの条件さえ揃えば比較的簡単にハルクの力を手に入れられるということであり、コミックで新ハルクになった韓国系アメリカ人のアマデウス・チョらが今後登場することも期待できる。
トニーとの絆
シー・ハルクとして暴走したのち、意識を取り戻したジェニファーは、アイディアル・スポーツバーに入る。トイレの近くの壁に見えるQRコードのポスターは、読み込むと1980年に発表されたコミック『Savage She-Hulk』のリンクになっている。なお、第1話の冒頭で、ニッキはジェニファーに「キメ顔」をするよう求めているが、英語では「Savage Jen Walters」と表現されており、1980年にコミックでシー・ハルクが初登場した時のタイトルを踏襲している。
ジェニファーが入ったトイレの壁には、ミズ・マーベルのマークやアベンジャーズのロゴマークなどの落書きが見られる。ジェニファーはトイレに入ってきた女性達によって助けられるが、ブルースの迎えを待っている間に男性達にナンパされ、シー・ハルクに変身するが、次に目を覚ました時には穏やかな環境になっている。
ジェニファーに用意されていた着替えは、レッド・ツェッペリンのTシャツ。レッド・ツェッペリンといえば、ハルクが活躍を見せた『マイティ・ソー バトルロイヤル』では「移民の歌」が起用されており、このシャツを用意した人物がブルースであることを示唆している。
リゾート地のようなこの場所のリビングには、アイアンマンの頭部パーツの残骸が。ジェニファーがこれに触れる時、アベンジャーズのテーマの一節が流れている。地下の研究室にいたのは、理性を持ったままの状態でハルクになったブルース=スマートハルクの姿があった。
「スマートハルク」という名前について、「こういう名前については選択肢はないんだ (You never have a choice with these names.)」と、自ら選べるわけではないと説く。最近ではカマラ・カーンがミズ・マーベルの名前を自分で選んだばかりだが……。
ブルースは、ここはメキシコで、『インフィニティ・ウォー』から『エンドゲーム』の間にこのラボでハルクとブルースの自我を融合していたことを明かす。ブルースは『エンドゲーム』で突然ハルクの姿のままスムーズなコミュニケーションが取れるようになっていたが、5年間ここで実験を重ねていたようだ。
このラボはトニーが作ってくれたものらしく、「いつか取り返しに来る」と言ったまま、トニーは死んでしまった。トニーとブルースは天才同士、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) などで共同作業をすることもあった。ブルースは出資者であり友人でもあったトニーを偲んでアイアンマンのヘルメットを置いていたのだろう。
そして、トニーもまた『エンドゲーム』の5年後の世界では家族を優先する生活を過ごすようになっていたが、ブルースにラボを提供するなど、自分にできることには取り組んでいたように思われる。『シー・ハルク』第1話では、ブルースを通していきなり様々な事実が明らかになっている。
ブルースは、二人の前に現れた宇宙船が惑星サカールからの使いだったと説明する。『バトルロイヤル』では、ソーとハルクらはこの宇宙船と同じモデルのコモドールをグランドマスターから盗み出して脱出に成功している。かつてバトルロイヤルのチャンピオンとして活躍したブルースをグランドマスターが追っているのだろうか。
15年の付き合い
ブルースは、ジェニファーに自分の血が入ったことを、致死量のガンマ線を浴びたようなものと説明するが、二人の遺伝子の組み合わせは特異であるらしく、ガンマ線を合成することができるという。ブルースはこれを利用して自身の腕を完治させたといい、ジェニファーに優れた適応能力があることが示唆されている。
ジェニファーはスマートハルク (Smart Hulk) をうぬぼれハルク (Smug Hulk) と言い換えてバカにしているが、ブルースは新ハルク誕生の危険性について心配していた。ジェニファーの血液サンプルが誰かの手に渡れば、『インクレディブル・ハルク』でサディアス・“サンダーボルト”・ロスが企んでいたように“兵器”としてのハルクが造られかねないのだ。
元に戻りたがるジェニファーだが、ブルースは融合するならできるが、以前の自分にはもう戻れないと言い渡す。もう一人の自分との共存に向かって進んでいくドラマ『ムーンナイト』(2022) を思わせる展開である。
ブルースは、せっかく弁護士になったジェニファーに対し「仕事には戻れない」と言い放つと、自身が記録してきた“ハルクの教科書”を取り出す。続けてジェニファーがハルクを受け入れるまでに15年を要すると説明するが、ハルク初登場の『インクレディブル・ハルク』の舞台は2010年〜2011年とされている。『シー・ハルク』の舞台が多くのフェーズ4作品の舞台である2023年〜2025年ごろだとすれば、ブルースはハルクとは15年近い付き合いになるのだ。
「存在しているだけで」
変身を制御する訓練を始める二人だったが、感情の変化をチェックしたいとうブルースに、ジェニファーは「ピクサーの映画を見せて」「ビンボンが……」と言い出す。これは映画『インサイド・ヘッド』(2015) のことで、ライリーという少女の頭の中にある“感情”がそれぞれキャラクターになって奮闘する様が描かれる。ビンボンはライリーのイマジナリーフレンドとして登場するゾウのようなキャラクターだ。
ちなみに『インサイド・ヘッド』は第88回アカデミー長編アニメーション賞受賞、脚本賞ノミネートを果たすなど、米国での評価は非常に高い。筆者個人としても、大学で感情マネジメントの教材として使用されている例を知っている。
「トリガーは怒りと恐怖だ」と言うブルースに対し、ジェニファーは「それは女なら生きてるだけで基本」と言い返す。スポーツバーで男達に絡まれたシーンを想起させる。「生きているだけで」の部分は、英語では「existing(存在しているだけで)」となっており、ただ存在しているだけで恐怖にさらされ、怒らざると向き合わざるを得ない女性の立場を主張している。
強引な実験を強制されたジェニファーはシー・ハルクに変身。日本ではあまり馴染みがないが、ブルースはカウボーイが暴れ馬にやるようにジェニファーをなだめようとしている。ところが、ジェニファーの中には別の人格は存在せず、シー・ハルクの姿のまま理性を保っている。
まだ自分の意思で変身する力を身につけなければいけないと話すハルクは、自身が元の姿に戻った例の一つとして、「ナターシャが子守唄でなだめてくれた」と、『エイジ・オブ・ウルトロン』での描写に触れる。これについては詳しく話そうとしないブルースだったが、『バトルロイヤル』の時期を指して2年ずっとハルクだった時期があると話している。
ブルースは、力を得ることの責任を説くだけでなく、それを暴走させれば人々からはずっと「モンスター」として見られるとジェニファーに忠告する。『バトルロイヤル』では、地球の人々に嫌われたと嘆くハルクの姿も描かれている。
トレーニング開始!
鬼気迫るブルースの説得に、ハルクの扱い方を教えてもらうことにしたジェニファー。ブルースはヨガを「スピリチュアル」と言われて「スピリチュアルではなくクリニカル」と、ありがちな言い回しで反論している。
翌朝、ジェニファーはエアホーンで起こされ、ハルク姿に変身させられると、「怒りはゼロ?」と聞かれ「普通に怒ってる!」と切り返す。この台詞の英語がそのまま第1話のタイトル「普通レベルの怒り (A Normal Amount of Rage)」の元になっている。
天井の高さは3m、クローゼットは二つ、変身した時のために伸びる素材のスパンデックスの服を着ることなど、ハルクとして生きていく基本を説明するブルース。『インクレディブル・ハルク』では、ブルースは変身後に放浪し、南米で伸びる素材のパンツを探すシーンがあった。
二人がヨガや技の練習をする場面で流れている曲はSaweetie「Fast (Motion)」(2021)。SaweetieはInstagramの動画からスター街道を駆け上がったカリフォルニア出身のラッパーだ。映画『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』(2020) でも楽曲を提供している。「Fast (Motion)」は「私は早い、飛ばしてる」と歌われており、驚異的なスピードで技を習得していくジェニファーの姿を重ね合わせることができる。
ジェニファーは地面を叩き割るハルクスマッシュを披露(ブルースは「グラウンドスマッシュ」と呼んでいるが)。ブルースに崖から突き落とされるシーンは、ホークアイの『アベンジャーズ』(2012) での落下シーンを想起させるが、ジェニファーは弓を引くのではなく中指を立てながら落ちていく。
二人は、酒を飲んでも酔い潰れないというハルクの利点を活かして飲み明かすと、ブルースはトニーが酔うといつもスティーブの愚痴をこぼしていたことを明かす。トニーとブルースがDIYしたバーには二人のイニシャルが彫られている。ここには、「厳しい時代の楽しいひととき (Good time during hard time)」の思い出が詰まっているようだ。
キャットコールとマンスプレイニング
次の日、ブルースはカリフォルニア州旗風のデザインのTシャツを、ジェニファーは「アイ・ラブ・メキシコ」のTシャツを着ている。ジェニファーはスーパーヒーローになるつもりはなく、長年築いてきたキャリアに戻りたい、学生ローンもあると主張するが、ブルースは相変わらず怒りをコントロールできるようにならなければと言い続ける。
流石にジェニファーは、女性として受ける「キャットコール(路上ですれ違いざまに受けるセクハラ野次)」や男性からの「マンスプレイニング(男性が相手が無知だという前提で得意げに解説しようとすること)」について話し始める。それらに怒ったとしても当然だが、怒りを見せれば「ヒステリック」「気難しい」とレッテルを貼られる。「もしかしたら殺される」という台詞は英語では「literary(文字通り)get murdered.(殺される)」と言っており、比喩表現ではないことを強調している。
これに対し、ブルースも「未知の領域 (completely new territory)」と、口出しする資格がないことを一旦は認めた様子。だが、LAに帰ろうとするジェニファーに、ハルクはなおも「誰が世界を守る?」と問いかける。初代アベンジャーズらしい価値観と頑固さだ。政府の秘密組織に入って人生を捧げる気はないと反論するジェニファーは、弁護士らしい論破力を見せ、「どうやって人を救うかは自分で決める」と言い放っている。
それでも食い下がるブルースを、ジェニファーはジープではねると、ハルクvsシー・ハルクの戦いが始まる。ブルースが見せたのは『インクレディブル・ハルク』のアボミネーション戦で披露したサンダークラップ。同作では火を消すために使ったが、今回はジェニファーを吹き飛ばしている。ジェニファーはこの技を応用して習得。連続して使うことで『インクレディブル・ハルク』でハルクが浴びた超音波砲のようにブルースにダメージを与えることができている。
戦いの末、トニーとの思い出のバーが壊れてしまい、二人は一緒に直すことに。今度はジェニファーのイニシャルを彫っている。ブルースはジェニファーの意見を尊重し、家に帰してやることに。口調は落ち着いているが、ジェニファーを「うぬぼれ」「もじゃっ子 (fuzzball=毛玉)」と呼んでいる。
ジェニファーは弁護士
そして舞台は数ヶ月後に戻る。それ以来変身していないと言うジェニファーだったが、法廷での最終弁論に挑む場面で、壁を破って入ってきたのはタイタニア。原作コミックではシー・ハルクの宿敵であり、第1話からの登場も納得できる。
ニッキの「市民の義務」という言葉でジェニファーの決心がついたのは、そこにいる陪審員たちも招集を受け、生活や仕事を一旦横に置いて市民の義務を果たしているからだろう。ヒールを脱ぎ、ついにシー・ハルクに変身したジェニファーはタイタニアを圧倒。元の姿にもどると破れたスーツのままヒールを履き、「最終弁論を続けます」と宣言するのだった。
エンディングで流れる曲はイヴ「Who’s That Girl?」(2001)。「あの女の子は誰?」と歌いつつ、スワッグ(強気な態度)を見せるこの曲は、「私は生まれつきのハスラー女、私が通ってきた道をチェックしな」等と歌われている。
そして、ミッドクレジットシーンではジェニファーはブルースのもとに戻り、スティーブ・ロジャースのヴァージンについて議論している。酔ったふりをして、スティーブがヴァージンだと主張し続けていたジェニファーの目的は、ブルースからスティーブがヴァージンではないという証言を引き出すことだった。
ブルースは秘密を守りたかっただろうが、事実ではないことを繰り返し確信して言われると、知っていることを喋りたくなるもの。弁護士としての見事なムーブを見せ、ジェニファーはスティーブが1943年の慰問の際に女性と関係を持ったという証言をブルースから引き出したのだった。なお、1943年はスティーブがキャプテン・アメリカになった年である。
ドラマ『シー・ハルク』第1話ネタバレ感想&考察
おじさんになったハルク
ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』第1話は、ハルクことブルースとの対話とトレーニングを中心に進んでいった。マーベルキャラクターのゲスト出演が続くと言われている『シー・ハルク』だが、第1話はハルク回ということなのだろうか。ブルース自身の知られざるエピソードやトニーとの関係など、MCUファンにはたまらない情報が散りばめられていた。
また、ブルースもすっかり“親戚のおじさん”感が出てきた。映画『インクレディブル・ハルク』でエドワード・ノートンが演じた時はまだ青春のにおいが漂っていたが、今では次世代を支えるメンターの一人になった。初代アベンジャーズで残っているメンバーはホークアイとハルクだけだが、二人とも第一線からは退き、若いヒーローたちを育てていくのだろう。
一方のジェニファーはヒーローになることを望んでいない。「世界を救うためにヒーローになる」という考えは持ち合わせていないのだ。ジェニファーがローンに触れていた通り、高等教育にかかる学費が高額なアメリカでは、ロースクールにまで行って弁護士になるまでには、様々な意味での先行投資があったはずだ。
ラストで裁判所に乱入したタイタニアを倒した後、ジェニファーがスーツとハイヒールに戻って弁護士としての仕事を続行しようとするのは、「自分の仕事を果たすためにヒーローになる」というハルクの使い道を示唆しているともいえる。
ブルースが教えられないこと
『シー・ハルク』は全体的にはコメディ作品として進行していく一方で、映画『キャプテン・マーベル』(2019) でも題材になった「女性はヒステリック」というレッテルや、マンスプレイニングにも触れるシリアスな場面も登場した。第1話タイトルの「普通レベルの怒り」というのも、「怒って当然」の状況でも怒りを抑えざるを得ないという女性への抑圧も示唆していると考えられる。「文字通り殺される」と、歩いているだけで生存を脅かされる現実について語ったジェニファーに、ブルースが教えられない側面があることも認められた。
また、ブルースは思い出や過去の教訓を話すことが多かったのに対し、30代のジェニファーは今の現実をどう生きるかについて話していた。この二人の視点の違いが、お互いにどのような変化をもたらすことになるのだろうか。
ハルクは一時は世間の嫌われ者だったが、第二のハルクになるジェニファーは、世間からどのような目を向けられるのかという点にも注目したい。また、予告編ではジェニファーは超人法部門の弁護士としての仕事を依頼されるが、ドラマ『ミズ・マーベル』に登場した超人収容のためのダメージ・コントロール局の刑務所と同じ施設が『シー・ハルク』にも登場することになっている。『ミズ・マーベル』とのつながりにも注目だ。
また、タイタニアはなぜ乱入したのか、登場が発表されているデアデビルの回はいつになるのか、という点も気になるところ。デアデビルについては東海岸のニューヨークが拠点であり、第1話ではジェニファーの家が西海岸のロサンゼルスであることが明かされた。ジェニファーはデアデビルは出張してくるのか、それともニューヨークの隣州であるニュージャージー州に近いダメージ・コントロール局の刑務所にジェニファーが出向く回がデアデビルの登場回になるのだろうか。
コメディとしても、MCUドラマとしても今後に期待させてくれるスタートを切ったドラマ『シー・ハルク』。ここから第9話まで、引き続きチェックしていこう。
ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』は2022年8月18日(木) よりDisney+で独占配信中。
シー・ハルクのコミック作品は、『シーハルク:シングル・グリーン・フィメール』ケン・U・クニタによる日本語訳が発売中。
キャプテン・アメリカのくだりについて主演のタチアナ・マスラニーが語った内容はこちらから。
『シー・ハルク』第2話の解説はこちらの記事で。
MCU版“超人法”についての解説と考察はこちらの記事で。
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