最終話第6話ネタバレ解説『ミズ・マーベル』ブルーノの言葉の意味は? MCUに大きな転機 あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

最終話第6話ネタバレ解説『ミズ・マーベル』ブルーノの言葉の意味は? MCUに大きな転機 あらすじ&考察

© 2022 Marvel

『ミズ・マーベル』最終回はどうなった?

ドラマ『ミズ・マーベル』最終話となる第6話が2022年7月13日(水) に配信を開始。6月8日(水) にスタートしたこの新シリーズも、遂に最終回を迎える。MCUのシリーズとしては、7月8日(金) に映画『ソー:ラブ&サンダー』が劇場公開されたばかり。ドラマ『ホークアイ』(2021) の最終回と『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) ではちょっとしたクロスオーバーも用意されていたが、果たして。

今回は、『ミズ・マーベル』最終話の第6話の各シーンをネタバレありで解説していく。以下の内容は、必ず本編をDisney+で鑑賞してから読むようにしていただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ミズ・マーベル』最終話第6話の内容に関するネタバレを含みます。

『ミズ・マーベル』最終話 第6話「ノーノーマル」ネタバレ解説

「Wrong people」の意図

『ミズ・マーベル』最終回のタイトルは「ノーノーマル」。この言葉を聴いて思い出すのはパンデミック後に広く浸透した「ニューノーマル」という言葉だろう。ニューノーマルは本来、景気後退後の金融市場の状態を示す言葉。いずれにせよ大きなショックの後に訪れる新しい状態を示しているが、「ノーノーマル」は何を意味するのだろうか。

なお、カマラ・カーンが主人公になったコミック『Ms.マーベル』第1巻のサブタイトルは「No Normal」である。日本語版ではサブタイトルは「もうフツーじゃないの」になっている。

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アベンジャー・コンでバングルから力を得たカマラ・カーンは、パキスタンに渡った後、曾祖母のアイシャによって分離独立が進む過去のパキスタンに召喚され、幼い頃の祖母を救ったのだった。バングルを奪ってヌール・ディメンションに帰ろうとしていたクランデスティンのナジマは、自らを犠牲にしてヌールのヴェールを閉じるが、息子のカムランにその力を引き継いでいた。

第3話以来のアメリカ回となる第6話の冒頭では、ダメージ・コントロール局のディーヴァー捜査官が登場。「間違った人々 (wrong people) が力を持った」と呟くと、部下のバリー捜査官が「間違った人々とは?」と意図を確認する。モスクへの立ち入り捜査も含め、ムスリム=危険という偏見を示唆する言葉だからだ。ディーヴァーは「子どものこと」と答えるが、アメリカではこういう時に誤解を招くような言い方を避けるのが普通で、言い逃れができる建前を置きながら、“誤解”してもらえる卑怯な言い回しになっている。

マーベルのロゴタイトルで流れる曲はパキスタン系のアーティストであるJanoobi Khargoshの「Cpt. Space」(2018)。メンバーのワリード・アーメドの弟が8歳の時に一緒に作った曲だという。

コミュニティと家族に支持されるヒーロー

アメリカの家に戻ったムニーバとカマラ。パキスタンからのお土産で盛り上がる中、カマラは遂に家族に自分の力について説明するが、家族はすでに知っていた模様。ゴシップが伝聞されていくカーン家の風習を、兄のアーミルは「クラシック・カーン・ゴシップ・トレイン (classic Khan gossip train)」とコミカルに表現している。

若い主人公がスーパーパワーを持っていることを家族みんなに知らせ、好意的に受け取られる展開はMCUでも珍しい。スーパーパワーはないが『ホークアイ』のケイトも家族とは対立する方向に進んでいた。やはりカマラの物語の流れはスパイダーマンことピーター・パーカーのそれと重なる。もっとも、現代社会において未成年が家族に内緒で人知れず戦うという設定には厳しい部分もあるのだろう。

質問責めにされるカマラに対し、ユスフは「これは素晴らしいこと」と、カマラが力を持つことを肯定する。優しい世界だ。それはムスリムコミュニティの中で女性が力を持つことや、ヒーローになることを肯定することにもつながる。ユスフは第2話で、理事選に挑むナキアに「私たちの未来を奪いませんよね? 女性たちが命がけで戦ってきた夢を奪わないで」と説得されている。

一方で、「自らトラブルに身を投じることはない」と心配するユスフに、カマラは「困ってる人を助けろ」という父の助言を持ち出して説得する。カマラは、英語では「人を助けられる状況でも座って何もするな、と教えて私を育てたわけじゃないでしょ (Abbu, I don’t think you raised me to sit by and do nothing when I can help people.)」と言っており、ムニーバもこれを支持してくれるのだった。

ついにコスチュームが

カマラは、第3話ラストで秘密を黙っていたことをバレて疎遠となっていたナキアからブルーノの件を聞く。急いで出かけようとするムニーバがカマラに渡した箱はトフィーの箱。トフィーは第4話でムニーバとサナの会話に登場したお菓子。ムニーバが小さい頃に好きだったからと、サナはムニーバが帰ってきた時のためにトフィーを買い置きしており、家はトフィーの箱であふれていた。

おそらくムニーバはこの一つを持って帰ってきたのだろう。サナからムニーバ、そしてカマラへと渡されるトフィーの箱には、ミズ・マーベルのコスチュームが入っていた。カマラがこれまで貰い受けてきた素材を使ったものなのだろうか。ムニーバは原作コミックのミズ・マーベルのトレードマークである赤いスカーフをカマラに巻いてやるのだった。

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母からもらったコスチュームを身にまとったカマラがニュージャージーの街の空を“歩く”シーンで流れている曲はCHAII「Lightswitch」(2020)。CHAIIはイランにルーツを持つニュージャージーのフィメールラッパー。サウンドエンジニアとミュージックビデオ・クリエイターとして働いていたところから一躍新世代のスターとなったラッパーで、カマラの状況と重なる人選になっている。曲の歌詞は「スイッチのないライト(光)が見たい」「私はアクションガール」と歌われている。

リンカーンの言葉

ダメージ・コントロールから逃げているブルーノとカマランは、モスクでナキアと合流。「聖域だから」と逃げてきたブルーノだが、ナキアは「ここはアメリカのモスク」と、安全な場所ではないと反論するのだった。第3話の解説でも書いた通り、日米においてはモスクはむしろ公安に監視されており、狙い撃ち捜査が行われてきた歴史があるからだ。

ダメージ・コントロール局がモスクの捜査に入り、ディーヴァー捜査官はシークと押し問答を繰り広げる。「神が私のそばにいなくても、私が神のそばに。神はいつでも正しいのだから」というリンカーン元大統領の言葉を引用するが、ディーヴァーはコーランの引用だと思い込んで一本取られている。

これは白人アメリカ人であるディーヴァーのムスリムへの偏見と共に、自国の歴史に対する知識の浅さを表している。なお、イスラム教の教えでは、キリスト教もユダヤ教もイスラム教も同じ一つの神を信奉しているとされ、伝道師としてのキリストの存在も認めている。一方で、リンカーンは自身の宗教を公開しなかった数少ない米国大統領の一人としても知られる。

ナキアは偽の彼氏をでっち上げて時間稼ぎに成功。彼氏という設定に喜ぶ偽カレは「ボディ・カメラついてる? 映像ほしいんだけど」と言っている。アメリカでは2021年9月より、FBIなどの連邦機関の職員が今回の立ち入り捜査のような法の執行を行う時にボディ・カメラを身体に装着する取り組みが始まっている。もちろん捜査員による不正や暴力を抑止するための取り組みで、マイノリティ保護の意味合いを持つ。ボディ・カメラは捜査を行う職員にとっては横暴を抑止する“枷”となるもので、意外とこの偽カレは皮肉が効いたナイスガイなのだ。

シークは「誰かに敵とみなされても、相手が敵とは限らない」という名言と共に、ブルーノとカムランに「ハラム」と「ハラル」と書かれたキャップを渡す。イスラム教で、ハラムは「禁じられているもの」で、ハラルは「許されていること」を意味する。ブルーノにハラム、カムランにハラルを渡しているのが笑える。

This is the plan.

ブルーノとカムランはカマラと合流。するとカマラのヌールが影響したのか、カムランにナジマの囁きが聞こえ、カムランはエネルギーを放出する。カマラは、第5話で「何かあればいつでも呼んで」と言っていたレッド・ダガーことカリームの力を借りることに。一旦学校へ逃げてからカリームが知人を手配した港へ向かうことにする。

学校ではナキアと合流。カマラはナキアがスーパーヒーローを嫌っているから伝えられなかったと弁明する。確かに第2話ではナキアは「またスーパーヒーローの災難が起きた」と発言していた。隣の州で活動するスパイダーマンの件や、同じ州で起きたワンダ事変を経験した世代なのだ。

カムランとカマラはナキアとブルーノに逃げるよう言うが、ナキアはモスクを荒らされ、ブルーノはドローンに家を爆破されたというダメージ・コントロール局と戦う動機がある。さらに第1話で助けてもらった恩を返そうとするゾーイも合流。TikTok用の照明を使って助けてくれるという。

カマラは、第1話と同じく「This is the plan.」の掛け声で得意の絵を使った作戦説明を行う。この最終話第6話は、第1話と同じくアディル・エル・アルビ&ビラル・ファラー監督が指揮をとっている。両監督が生み出したカマラの“定番”は、アベンジャーズなどのチームでも披露してほしい。

学校OBのアーミルも合流し、カマラは「スーパーヒーローにチャペロンはいらない!」と言っているが、「学校行事の引率」を意味する「chaperone」はアメリカ英語である。カマラとブルーノが薬品調合するシーンは、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のワンシーンを想起させる。学校の理科室が好きになる子どもも増えそうだ。

ダメージ・コントロール局のディーヴァー捜査官は、『ノー・ウェイ・ホーム』でもおなじみのクレイアリー捜査官に高校突入の承諾を得ようとする。しかし、クレイアリーは意外と常識人で、世間体を気にして高校への突入を却下する。この時、クレイアリーは何かの資料を受け取っており、何か情報が入ったことを示唆している。結局、ディーヴァーはクレイアリーの「今すぐ引き揚げろ」という指示を無視して突入の指示を出すのだった。

ブルーノが流した思い出の曲

カマラはブルーノにカラチでの出来事を共有し、ナジマが亡くなったことはカムランに黙っておくことに。アーミルはカムランに「妹は私が知っている中で最も賢い人間の一人だ」と話し、妹への愛を炸裂させている。「彼女が救われる資格がある人しか助けない」とも話している。

そこにダメージ・コントロール局が突入。高校のパーカーに消火器、ソフトボールを駆使した学校版「ホームアローン」な作戦が展開される。爆弾に見せかけたスピーカーから流れる曲は、パキスタンの歌手アフマド・ラシュディの「Ko Ko Korina」(1966)。カラチを舞台にした映画『Armaan』(1966) の挿入歌で、南アジア最初のポップソングと言われている。アフマド・ラシュディも1954年の分離独立でカラチへ移り住んだアーティストだ。

次にカムランが突入部隊を挑発するシーンで流れている曲はスウェットショップ・ボーイズ「Anthem」(2017)。第2話でカムランが車の中で流して、カマラと共通の話題として盛り上がっていた曲である。ダメージ・コントロールが一同を追うシーンで「私はパッキー・チェン、パッキ・ロビンソンでパック・ニコルソン」「パック・ダニエルズでありパッキー・オナシス」と、「ジャック/ジャッキー (Jack/Jackie)」を「パキスタン」の省略形である「パキ/パック (Paki/Pak)」で“ジャック”する歌詞が強調されるのが最高にクールだ。

カマラとカムランが良い感じになる部屋は、第1話でカマラがウィルソン先生に現実を見るよう助言された部屋。スーパーヒーローになることがカマラにとっての現実だったという回帰を見せている。そんなカマラに片思いしていたブルーノが、おとりになる時にスマホから流す曲はPritam & DJ Hot Americano「Hadippa」。アーミルの結婚式でカマラと踊った思い出の曲だ。

市民に支持されるヒーローへ

カムランは何十年も戦っている相手だというレッド・ダガーズに助けられることに不安を持っている。シークの「誰かに敵とみなされても、相手が敵とは限らない」という言葉が思い出される。突入部隊に攻撃するカムランを止めたカマラは、ついにパキスタンで何が起きたかを話し出すが、カムランは母が死んだことのショックを突入部隊にぶつけるのだった。

ゾーイはSNSの影響力を利用してダメージ・コントロール局が高校に突入していることを世界に発信。ゾーイの呼びかけで外に集まった大衆は皆スマホを掲げている。狙い通り市民による監視が機能していたが、そこに登場したカムランに注目が集まる。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) でジョン・ウォーカーの凶行が世界に晒されたシーンを思い出す展開だ。

ダメージ・コントロール局がカムランに一斉射撃を加える中、それを食い止めたのはカマラだった。カマラは対能力者兵器で追い込まれるも、光を使ってハルク並みの巨大化に成功。手足が伸びて拡張する原作コミックを彷彿とさせるスタイルを見せる。

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ダメージ・コントロールの部隊がカマラを「ミズ・ナイトライト」と呼び、カマラがその呼び名を拒否したことで、「ミズ・マーベル」の下地が出来上がる。カムランが吹き飛ばした車両から人々を守ったことで、カマラは改めてヒーローとして受け入れられる。市民から支持されるヒーローになりそうだ。

「ノーノーマル」の意味

力を暴走させたカムランをカマラは“領域展開”で阻止するが、カムランは「俺たちは受け入れてもらえない。ここは故郷じゃない」と、米国における移民差別の問題と重なる叫びを吐露する。しかし、カマラはカムランに「彼女(ナジマ)はあなたを選んだ」と、母がその「大いなる力」を託したことを伝えて説得する。「どうすれば普通になれる?」と戸惑うカムランに、カマラは「普通なんてない (There is no normal)」と、第6話のタイトルになっている言葉をかけるのだった。

「大切なのは与えられた力をどう使うか」というカマラのセリフは、英語で「ただ私たちがいて、与えられた力をどう使うかだけ (There’s just us and what we do with what we’ve been given.)」と言っている。この世界には「普通」などなく、本来、マイノリティであってもただ存在しているだけ。それを許してくれない社会になっていることは事実だが、与えられた力をどう使うかということは選択できる。カマラはその力を、カムランを倒すためではなく、逃すために使うのだった。

カマラを捕まえようとするダメージ・コントロール局に対し、民衆が味方する。警察もカマラを守る防衛線を張っている。ダメージ・コントロール局は州を跨いで活動しているため、おそらく連邦(Federal/国)の配下にある。この警察は右肩のバッジに「Jersey City」と書いているため、自治体警察であり、その上層部は州警察になる。連邦警察のトップは大統領であり、自治体警察のトップは州知事であるため、アメリカではこうした警察や軍同士の対立は歴史的に起きてきた光景だ。このシーンは、ある意味、より大きな力に対してニュージャージーの誇りを見せる演出となっている。

人々が「彼女は私たちを救った」と擁護する中、カマラは空を駆けて去っていく。民衆の歓声が気持ち良い。MCUで歓声を浴びるヒーローの姿を見たのはいつ以来だろうか。激おこのクレイアリー捜査官はディーヴァー捜査官を任務から解任するのだった。

ミズ・マーベル誕生

全てが一件落着し、TikTokに興じる人々。シークもアカウントを持っている上に1万4千件以上も“いいね”されている。エフェクトでホットドックに変身する場面も。ジョーダン・ファーストマン演じるウィルソン先生も「@GWWNotTheBridge」というアカウント名で登場。グレイブ・ウィルソンのイニシャルである「GW」とニュージャージ州とニューヨーク州を繋ぐGW(ジョージ・ワシントン)ブリッジをかけて「橋じゃないよ」という名前にしている。今回の件をきっかけにナキアはゾーイとも打ち解けた様子だ。

第2話でカマラが助けた少年の好物である「アイスクリーム・ピザ」も振る舞われるというイベントは、シークの「私たち自身のスーパーヒーローを祝おう (Celebrate our own superhero.)」という呼びかけ通り、ムスリムコミュニティに自分たちのヒーローが誕生したことを祝うもの。MCUが始まって13年、ムスリムの人々が初めて自分たちのヒーローと呼べる存在が登場したのだ。

カマラは第1話と同じく自室の鏡の前に立つ。今度はキャプテン・マーベルのコスプレではなく、自分自身のコスチュームを身にまとって。この時流れている曲は、バングラディシュ生まれ、ニューヨーク育ちのアーティストJai Wolfの「Indian Summer」(2015)。バングラディシュもまた1971年に東パキスタンから独立した元イギリス領インド帝国の国である。

スーパーヒーローになったカマラに、ユスフは名前を聞く。ユスフは、カマラの誕生自体が「求めればやってくる」の結果だったと明かし、「カマラ」という名前の意味がウルドゥー語で「ワンダー(奇跡)」や「マーベル(感嘆)」であることを告げる。ユスフは、カマラに「生まれた時から私たちのミズ・マーベルだよ」と語り、ついにミズ・マーベルが誕生する。父から名前を与えられた感じにはなったが、ヒーローになろうとする娘にサポーティブに振舞うユスフの姿は、ムスリムコミュニティの父親たちにとっても模範になるはずだ。

ユスフが話すバックで各人のその後が描かれているが、ブルーノは合格したカリフォルニア工科大のパーカーを着ており、旅立ちが近いことが示されている。ナキアは新たな理事としてモスクで女性たちが使う場所の修理を指示している。パキスタンに渡ったカムランはレッド・ダガーことカリームと合流した。ついに最終話でコスチュームと名前が揃ったミズ・マーベル は、ジャージー・シティの街灯の上から大都市ニューヨークを見つめるのだった。

カマラはミュータント?

その一週間後、カムランが置いて行った車で登場したブルーノは、カマラの遺伝子が突然変異であることを伝える。兄のアーミルにはない力がカマラにはあったようだ。この「突然変異」という言葉は英語で「mutation(ミューテーション)」となっている。そう、突然変異で生まれた者の呼び名は「ミュータント」だ。そして、このシーンではアニメシリーズ『X-メン』(1992-1997) のテーマ曲「X-Men ’97 Theme」のワンフレーズが流れている。

これは、ミュータントの集団である「X-MEN」シリーズへの布石だと考えられる。MCUの世界にミュータントが存在することは、映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) でプロフェッサーXが登場したことで認められていた。ただし、それは別ユニバースであるアース838でのこと。カマラが住むアース616では、MCU本編でのミュータントの存在は認められていなかった。なお、『マルチバース・オブ・マッドネス』でのプロフェッサーXの登場シーンでも「X-Men ’97 Theme」の一節が流れている。

しかし、カマラがヌール・ディメンションの人間の末裔で、なおかつ突然変異を起こしたと考えると、MCU版ミュータントはFOX版の「X-MEN」シリーズで描かれたように長い歴史を持つ種族ではないのかもしれない。MCUの世界では、指パッチン後の時代からミュータント、延いてはX-MENの歴史が始まるとするならば、それはそれで面白そうだ。

なお、カマラ・カーンは原作コミックではインヒューマンズの末裔ということになっている。インヒューマンズはABC製作でドラマ『インヒューマンズ』(2017) が放送され、アンソン・マウント演じる王のブラックボルトが『マルチバース・オブ・マッドネス』にも同名キャラで登場した。ドラマ『エージェント・オブ・シールド』(2013-2020) でもインヒューマンズは登場しているが、MCUではカマラとインヒューマンズとの関係は描かれるのだろうか。

カマラは「あだ名が増えるね」と言っているが、英語では「また別のラベルができるね (it’s just gonna be another label.)」と言っている。このラベルとは「ミュータント」を指しているのだろう。

この件について、製作陣がその裏側を明かしている。カマラ=ミュータントという展開は原作でも実現したかった設定という話も出ている。詳しくはこちらの記事にまとめているので、今後の考察と合わせてチェックしていただきたい。

最後に運転するナキアにカマラが助言するシーンは、英語ではハンドルの握り方を「10 and 4」と言っている。日本ではハンドルを時計に見立てて、手の位置を「10時10分」と言うが、アメリカでは時計の盤上の数字を指して「10 and 2」と言う。カマラは左手を左上に、右手を右下に構える「10 and 4」が正しいと思っているようだ。

エンディング曲はインドのシンガーソングライターRitvizの「Aavegi」(2022)。『ミズ・マーベル』のサントラの「Vol.2」に収録されている曲で、Ritvizの曲は第2話でも使われている。エンディングの映像は、パキスタンが舞台だった第4話と第5話からニュージャージーに戻っている。

ポストクレジットシーンは…

お待ちかねのポストクレジット(ミッドクレジット)シーン。科学の宿題をすると言ったもののベッドに倒れ込んだカマラは、「それが科学の宿題の音?」とムニーバにツッコまれている。するとカマラのバングルが反応し始め、カマラは絡めとられた糸のようになってクローゼットの奥に消えてしまう。そこから出てきたのは、ブリー・ラーソン演じるキャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースだった。

カマラと同じように、キャロルの指先は紫色の光をまとっている。バングルなどを着けている様子はないが、髪型とユニフォームは『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) の時のものとは異なる。特にユニフォームは赤と青の配色が上下逆になっている。自分のグッズで彩られた部屋を見たキャプテン・マーベルが発したセリフは「Oh, no, no, no.」のみ。キャロルが走り出したところでドラマ『ミズ・マーベル』は幕を閉じる。

そして、「ミズ・マーベルは『ザ・マーベルズ』で帰ってくる」という言葉が表示され、映画『ザ・マーベルズ』でのカムバックが約束されるのだった。

なお、エンドクレジットには、コミック『Ms. マーベル』(2014) の作者でヒューゴー賞を受賞したSF作家のG・ウィロー・ウィルソンの名前がキャストとしてもクレジットされている。第1話ではコールズ・アカデミック高校のプレートに名前があったが、最終話ではカメオ出演していたようだ。

G・ウィロー・ウィルソンの小説では、世界幻想文学大賞を受賞した『無限の書』が鍛治靖子による翻訳で東京創元社から刊行されている。また、G・ウィロー・ウィルソンが新たに手がけるDCコミックスの『ポイズン・アイビー(原題)』の新シリーズが2022年7月7日(木) に発売されたばかりだ。

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ドラマ『ミズ・マーベル』最終回 第6話考察

『ザ・マーベルズ』に期待

ドラマ『ミズ・マーベル』は、全6話をきっちり使い切って新ヒーロー、ミズ・マーベルを誕生させた。それに、ブリー・ラーソン演じるキャプテン・マーベルのカメオ出演という多くのファンが期待したであろう締め括り方を見せてくれた。キャロルとカマラ入れ替わって幕を閉じるというのも、二人の出会いをお楽しみとして置いておく巧い展開だ。

ミッドクレジットシーンでは、カマラは特に何かをしていたわけではないので、キャプテン・マーベルの側で何かが起きていたと考えるのが理に適っているだろう。キャロルは戦いの最中で誰かと入れ替わるような装置の影響を受け、ジャージー・シティの高校生と入れ替わってしまったので焦っているというところだろうか。だが、まずバングルが光り、キャロルの指先がヌールの光を宿していたことにも理由があるはずだ。

2023年7月米公開の映画『ザ・マーベルズ』では、キャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースと、ミズ・マーベルことカマラ・カーン、そして、ドラマ『ワンダヴィジョン』で能力を手に入れたモニカ・ランボーが中心に据えられることになる。『ワンダヴィジョン』では、モニカはキャロルに複雑な思いを抱いていることが示唆されている。キャロルに憧れるカマラと対照的な状況にあることが予想され、この三人がどのような絡みを見せるのか注目したい。

モニカはおそらくニック・フューリーの召集を受けて宇宙にいると思われ、カマラもキャロルと入れ替わったのならば宇宙にいる可能性が高い。キャロルは簡単に宇宙に行けるため、『ザ・マーベルズ』は宇宙が舞台になる可能性もあるだろう。

「X-MEN」の展開に注目

同時にカマラ・カーンがミュータントである可能性を示唆したこともMCUにとっては大きな事件だった。マーベル・スタジオの親会社であるディズニーに「X-MEN」シリーズ映像化の権利が渡ったことで、次の「X-MEN」シリーズはMCU作品として製作される見込みとなっている。手始めにアニメ『X-Men ’97』が2023年にDsiney+で配信されることも決まっている。

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』と『ミズ・マーベル』で立て続けに旧アニメ版『X-メン』の曲が使用されたことは、アニメ『X-Men ’97』の重要性を示す演出でもある。また、2022年7月22日(金)から24日(日)に米サンディエゴで開催されるコミコンでは、MCUから何らかの発表があると見られる。2019年には同イベントでフェーズ4の計画が発表されているため、こちらも要注目だ。

個人とコミュニティと歴史

『ミズ・マーベル』という作品については、言語化の難しいモヤモヤを抱えていたティーネイジャーのカマラ・カーンが、自らのルーツを追い、自分が特別であることを知る物語だった。カムランは自分が特別であることの重圧を感じてしまったが、カマラはそもそも「普通」なんてものはないと言い放ってこの危機を乗り越えた。

また、主人公をコミュニティが支えてくれる展開は新しく、MCUでは孤独に描かれがちな女性主人公がコミュニティのヒーローになっていく展開は良かった。『ブラックパンサー』(2019) のティ・チャラはもちろんコミュニティからの支持はあるが王という立場だったし、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のサムも黒人コミュニティからの支持が描かれたのは、アベンジャーズとして名を馳せた後のことだった。

それに『ミズ・マーベル』はインド・パキスタン分離独立という歴史をベースに描かれた作品でもあった。全6話という構成をうまく利用し、インド系の監督とパキスタン出身の監督を各エピソードで起用するという手法からも、歴史に丁寧に向き合うという姿勢が窺い知れた。

VFXについて

そして、触れておかなければならないのは、マーベル作品のCG処理を担当するVFXアーティストがネット上でマーベル・スタジオの仕事の過酷さを告発した件だ。米The Gamerが7月10日(日) にこれらのネット掲示板の書き込みをまとめた記事を公開すると、ファンからはVFXに関わるマーベル・スタジオの労働環境への批判が相次いだ。

ドラマ『ムーンナイト』では、第2話でMr.ナイトが戦うジャッカルが完全に透明になる演出が見られた。これはCGで描かれるジャッカルのVFX処理の手間を省くための演出と見られる。『ミズ・マーベル』第5話でもカマラが足場を使って二階に移動するシーンで、カマラの姿は描かれず、ムニーバとサナの視線が上へ上がっていく様子にカマラが光を出す時の音を被せて、画面外での“移動”を表現していた。

コロナ禍での休止期間を経て、MCU作品は続々と公開されるようになっている。もちろん、これまでのMCUは偏った属性のヒーローしか登場してこなかった歴史があり、多様なキャラクターを早く、多く描きたいという姿勢は支持したい。だが、VFX担当に過度なしわ寄せが行っているのならば、このハイペースなスタイルは考え直す必要があるだろう。

第6話もカムランとカマラの能力バトルシーンのVFXは凄かった。だが、労働問題が明るみになった以上、観ている方も「これは大変そう……」という目で観ざるを得ない。誰もが心配なく楽しめるよう、VFXの労働環境が改善されることを願う。

なお、8月配信のドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』については、予告編でのシー・ハルクのCGについて、一部ファンから批判が起き、その後クオリティが改善されている。これもVFXの処理が間に合っていないと見ることができる。だが同時に、公開ペースもCGのクオリティも、観る側がある程度妥協することも必要だろう。特に配信作品は『ワンダヴィジョン』のポストクレジットシーンで実行されたように、後からCGを差し替えることもできるのだから。

今後はどうなる?

カリフォルニアに行くブルーノに、パキスタンに渡ったカムランと、それを受け入れたカリーム。気がつけばカマラを取り巻く男子が皆ニュージャージーからいなくなってしまった。今後どのシリーズで再登場を果たすのか注目したい。レッド・ダガーを演じたカリームは、『ミズ・マーベル』にシーズン2があるならばカムバックするとインタビューで語っている。

MCUとしては、8月10日(水)に短編シリーズの『アイ・アム・グルート』がDisney+で配信される。まだ生まれたばかりの時期のベビー・グルートが主人公に据えられる。詳細はこちらから。

翌週の8月17日(水) からはドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』の配信が始まる。こちらはハルクの登場が決定しており、『シャン・チー』に登場したキャプテン・マーベルとハルクが『ミズ・マーベル』と『シー・ハルク』で連続登場することになる。

また、『シー・ハルク』では『ミズ・マーベル』第4話で登場したダメージ・コントロール局の刑務所も登場すると見られる。予告編の解説はこちらから。

そして、劇場では映画『ソー:ラブ&サンダー』が7月8日(金) より公開中。ソーの新たな冒険を楽しんだ方は、こちらのネタバレ解説記事も読んでいただきたい。

また、こちらの記事では『ミズ・マーベル』と『ソー:ラブ&サンダー』を含めたMCUフェーズ4の時系列を整理している。

『ミズ・マーベル』サントラはVol.1とVol.2が発売中。

『ミズ・マーベル』の原作コミック日本語版は、ヴィレッジブックスから発売中。

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ドラマ『ミズ・マーベル』は全6話がDisney+で独占配信中。

『ミズ・マーベル』(Disney+)

第5話のネタバレ解説はこちらから。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

『ミズ・マーベル』第1話では、キャプテン・マーベルが東京を訪れていたことが小ネタとして挿入されている。この件についての考察はこちらの記事で。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第3話のネタバレ解説はこちらから。

第3話で描かれた『シャン・チー』との繋がりについての解説と考察はこちらの記事で。

第4話のネタバレ解説はこちらから。

マーベル公式が明かしたブルーノとカマラの関係についてはこちらから。

撮影中にドラマ『ワンダヴィジョン』を観た主演のイマン・ヴェラーニをケヴィン・ファイギが注意した理由はこちらから。

 

『梨泰院クラス』のパク・セロイ役で知られるパク・ソジュンの『ザ・マーベルズ』出演に関するコメントはこちらから。

2代目キャプテン・マーベルになることが予想されるモニカ・ランボー役のテヨナ・パリスが『ザ・マーベルズ』について語った内容はこちらから。

 

映画『ソー:ラブ&サンダー』ラストのあの人についての秘話はこちらの記事で。

『ソー:ラブ&サンダー』ミッドクレジットシーンの裏側はこちらの記事で。

 

ドラマ『ムーンナイト』最終話のネタバレ解説&考察はこちらから。

『ムーンナイト』最終話で残された9つの謎はこちらから。

2023年の配信が発表されたドラマ『エコー』の情報はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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