第3話ネタバレ解説『ミズ・マーベル』流れた音楽は? MCUの重要要素も あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

第3話ネタバレ解説『ミズ・マーベル』流れた音楽は? MCUの重要要素も あらすじ&考察

© 2022 Marvel

『ミズ・マーベル』第3話はどうなった?

MCUドラマ『ミズ・マーベル』は、ジャージーシティに住む16歳のカマラ・カーンを主人公に据えた作品で、現代の若者がヒーローに憧れる心情や複雑で多様なムスリムコミュニティの姿を丁寧に描いている。フェーズ4における「スパイダーマン」との呼び声も高い『ミズ・マーベル』は、高評価を受けながら全6話の中盤戦に入っていく。

現代アメリカを生きるマイノリティの若者を主人公に設定した『ミズ・マーベル』は、アメリカ社会のコンテキスト(文脈)を理解していないと読み解くのが難しい作品でもある。今回は折り返しになる第3話の各シーンを詳しく解説していこう。以下の内容には『ミズ・マーベル』第3話のネタバレを含むため、必ずDisney+で本編を鑑賞した後に読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ミズ・マーベル』第3話の内容に関するネタバレを含みます。

『ミズ・マーベル』第3話「宿命」ネタバレ解説

イギリス占領下のインド

前回の『ミズ・マーベル』は、バングルによって目覚めた主人公カマラ・カーンの力の鍵が曾祖母のアイシャにあることが示唆された。前回までの振り返りでは、兄アーミルの「ジン(魔神)がまだ怖いのか?」というセリフも挿入され、キーワードになることを示唆している。

『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』(2021) で登場したダメージ・コントロール局のクレイアリー連邦捜査官が「ナイトライト」と呼ばれているカマラを見つける。そんなカマラを助けたのは転校生のカムランで、カマラがビジョンの中で見ていた女性がカムランの母だったことを知った。

そして『ミズ・マーベル』第3話の物語は、イギリス占領下のインドから始まる。1942年は第二次世界大戦の只中であり、第2話で触れられたインド・パキスタン分離独立の5年前にあたる。この場面の「イギリス占領下のインド」というのは、後のパキスタンということであり、カマラ達のルーツということでもある。第3話も引き続き監督はインド系のミーラ・メノンが務めている。

ファリハ、サリームという人物と共に瓦礫の中からバングルを見つけたのはカムランの母だ。前話のクレジットで「ナジマ」という名前であることが明らかになっている。バングルがついていたのは切られた青い腕。ドラマ『ムーンナイト』(2022) のヘカの司祭を思い出すが、ロナンらクリー人も青色の肌をしている。

そこに現れたのは若き日のアイシャ。カマラの曾祖母だ。「寺院から来た男」はバングルが二つ必要だと言っていたとアイシャは話す。どうやらバングルはもう一つあるらしい。アイシャはイギリス軍が略奪したと推測し、「一つでやるしかない」と言う。

外から聞こえる「女王陛下の命令だ」というセリフで、イギリス兵が迫っていることが示されている。また、アイシャは「帰るには一つでやってみるしかない」と、今いる場所が本来いるべき場所ではないということを示唆している。

テン・リングスとの繋がりが

このシーンでこの遺跡のような場所が頭上から俯瞰で映し出されるのだが、足元にテン・リングスの紋章があることが分かる。テン・リングスは『アイアンマン』(2008) でトニー・スタークを拉致したテロ組織で、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) では1,000年以上テン・リングスを率いてきたウェン・ウーが登場した。その歴史はこちらの記事に詳しい。

そもそもバングルに力が宿っているという設定は、“輪っか”に力が宿っているという『シャン・チー』の設定に近いということはかねてから指摘されていた。結局テン・リングスの力の源は明らかになっていないままだが、バングルとテン・リングスのルーツは同じなのかもしれない。

また、アジアで勢力を広めていたテン・リングスが第二次世界大戦中にインドまで手中に収めていたとして、この場所にバングルがあった理由とは何なのだろうか。「寺院から来た男」とは、もしかしてウェン・ウーのことなのだろうか。

このシーンの映画『シャン・チー』との繋がりと『ザ・マーベルズ』への接続については、こちらの記事で詳しく考察している。

バングルを付けたアイシャは、「今の見た?」と、第1話でカマラがバングルをつけた時と同じリアクションを見せる。この時、アイシャの目は紫に光っており、カマラが紫のオーラと共に見た別空間の大衆を見たことを示唆している。

ヌール・ディメンション

二手に分かれたアイシャとは二度と再会することはなかったと話すのは現代のナジマ。ファリハ、サリームも先ほどと同じ姿のままで登場している。ナジマは、アイシャも含めて自分たちは「別の次元」から来たと説明する。「次元」は「ユニバース」ではなく「ディメンション (Dimension)」と表現されている。ディメンションは、パラレルワールドの意味合いが強いマルチバースとは違い、同じユニバース内の別世界を指しているイメージだ。

MCUの「ディメンション」といえば、ミラー・ディメンションダーク・ディメンションアストラル・ディメンションなど、「ドクター・ストレンジ」シリーズで登場してきた印象が強い。アントマンが迷い込む量子世界もマイクロ・ディメンションと呼ばれている。また、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021) で登場したター・ローの村とダーク・ゲートもディメンションよりの概念だろう。

一方で、ナジマたちは元にいた世界を追放されたと話す。バングルが元の世界に帰るキーアイテムだったが、分離独立の時期と重なり、アイシャとはぐれてしまったのだという。後から出てきたアーダムは、100年地球にいるが変なことばかり覚えると揶揄されているが、『エターナルズ』(2021) で7,000年以上生きているが好奇心がなくならなかったセルシを思い出す。決して悪いことではない。

ナジマと一対一で話す機会を得たカマラは、バングルがヌール (Noor) =光を発してナジマらがそれを感知したことを知る。ここでもカマラは「ヌール・ガール?」と自分のヒーロー名を考えている。カマラはナジマらと違い、この世界で生まれたためこの世界でもヌールの力を操ることができるという。

第2話でブルーノが言っていたカマラ自身に宿った力というのは、アイシャから引き継いだヌールの力だったということだろう。ナジマはカマラが「偉大な力 (greatness)」を引き継いでいると言う。主人公がキーアイテムを手に入れ、それの使い方について大人と相談する様子は『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) の展開を想起させる。

ナジマは、アイシャの願いは仲間を故郷に帰らせることだったと言い、故郷の呼び名を“ヌール・ディメンション”、種族の呼び名を“クランデスティン”と明かす。「クランデスティン」はマーベルの原作コミックのヒーロー一族。1994年と2008年に単独コミックが刊行されている。

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クランデスティンの英語表記はClanDestineで、「秘密」を意味する「Clandestine」という単語を、「Clan(一族)/Distine(運命づける)」に切り分ける言葉遊びになっている。メンバーがジンという設定は『ミズ・マーベル』でナジマが語った内容と一致するが、リーダーのアダム・デスティンはじめ、原作コミックのメンバーの名前が一人も登場していないのは気になるところだ。

ナジマが挙げている別名は「アジュナビー(Ajnabi, アラビア語で「よそ者」)」「マジヌーン(Majnoon, アラビア語で「狂っている」)」「アンシーン(Unseen, 英語で「未知」)」で、クランデスティン以外はいずれも異端という印象を持たせる呼び名となっている。しかし、最も広く呼ばれている呼び名は「ジン」だという。第1話の解説で触れた通り、ジンはアラブ系の文化における魔人/妖精で、「アラジン」のジーニーの元ネタになっている。

セルヴィグ博士の研究

「私はジン」と告白したカマラにブルーノは「お酒の?」と聞き返しているが、それは「Gin」で、カマラが言っているのは「Djin」だ。アスガーディアンでもエイリアンでもなくジンだったことに割とショックを受けているカマラだったが、気を取り直してブルーノにジン達を元の次元に戻すための「異次元空間トラベル」について聞く。

英語でインターディメンショナル・トラベルと表記されるこの言葉を聴いて思い出すのは、スリング・リングを使ったドクター・ストレンジの魔法や、ユニバース間を移動できるアメリカ・チャベスの力だ。だがブルーノは「マイティ・ソー」シリーズのエリック・セルヴィグ博士の論文で読んだ記憶があるという。

セルヴィグ博士は天文物理学者で、アベンジャーズを助けていたこともある。ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021) では、セルヴィグと行動を共にしていたダーシー・ルイスが天文物理学者になっていたことが明らかになったが、『ミズ・マーベル』では意外な名前に触れられることになった。

アスガルドの人々が地球に向かうために使う架け橋ビフレストを「異次元空間トラベル」と考えて研究していたのだろうか。なお、7月8日(金)公開の映画『ソー:ラブ&サンダー』では、ソーはストームブレイカーを使ってビフレストを作ることができるようになっている。

リサーチはブルーノに任せ、カマラは「メヘンディの準備がある」と言っているが、メヘンディはインドのインド亜大陸のボディーアートのことで、植物のヘナを使って肌に模様を描くこと。この後の家族の集まりのシーンで女性達が手や足に絵を描いているのがメヘンディだ。

ムスリムへの狙い撃ち捜査

カマラのヒーロー活動がトレンドに入る中、ダメージ・コントロール局のサディ・ディーヴァー捜査官達はモスクに捜査に入る。イマーム(指導者)のシークが対応するが、ナキアは令状がなければ私有地に入る権限がないことを捜査官に告げる。法律の知識は学校ではなくテレビドラマで学んだと言っているが、英語では「『ロー&オーダー』の再放送で」と言っている。エンタメが教養と知識を授けるというドラマ製作陣の自負が感じられるセリフだ。

モスクだから特別視しているのではないかと畳み掛けるナキアを前に、ディーヴァー捜査官達は一旦出直すことに。去り際には、欧米のルールで文字通り“土足で”乗り込んできた捜査官達へシークが「次は靴を脱いでください」と注意する。

9.11以降、欧米ではムスリムを狙い撃ちした差別的な捜査が横行している。イギリスからやってきた俳優のリズ・アーメッドは差別的な職務質問も受け、一時は「自分にはハリウッドにはいけない」と思い悩んだという。一方でこれを対岸の火事と言うことはできない。2010年には日本でも公安が日本在住のムスリムの人々を狙い撃ち捜査していたことが明らかになっている。

例えば「テロ関係者が使うモスクのコックモスクの警備員」という“容疑”で何の罪もないムスリムの人々を捜査対象にリストアップし、その家族や子どもの個人情報も収集していたのだ。こんなリストアップの仕方をするのなら、「テロ関係者が使うコンビニの店員」や「テロ関係者が使う市役所の受付」も容疑者にならなければおかしい。また、都内のモスク7箇所を監視対象としていたことも明らかになっている。

この事実は、ファイル共有ソフトを通して捜査資料と個人情報が流出したことで発覚し、「公安テロ情報流出事件」として広く知られることになる。裁判の結果、2016年に情報流出に対する賠償命令は出たが、最高裁はムスリムを狙い撃ちした情報収集の違法性は認めなかった。近年も日本で警察によるムスリムの人々への違法職質が問題になっている。繰り返しになるが、ナキアもベッドに突っ伏したくなるこの現実は、決して対岸の火事ではない。

“ナイトライト”の登場で考案に目をつけられたイラつきをカマラに共有するナキア。「悪いムスリムがいるなら差し出せってこと」という箇所は、英語では「ムスリムを互いに監視させあうつもり」と言っている。

そしてナキアは会話の流れでモスクの理事に当選したことを明かす。問題は山積みだが、ナキアは現実を変えようと頑張っている。

ブルーノの憂鬱

兄アーミルの結婚式を控えてメヘンディをしてもらうカマラは、母ムニーバが祖母のサナを腐す会話を聞く。ムニーバはカマラは大丈夫と言うが、話題にのぼった“ナイトライト”を「母親は恥じるべき」と言う。ムスリムコミュニティからも“トラブルを持ち込んでいる”という視線を向けられ、カマラはシークに相談することに。

シークは、助けてもらった男の子の視点で考えること、善は存在するものではなく行いであるということを伝える。自分がヒーローかどうかはその力や素質によるものではなく、行動で示すほかないのだ。そしてブルーノが残していった箱の中には、原作コミックと同じ青色のマスクが入っていた。

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なお、このシーンでアーミルは靴がなくなったと怒っているが、少し前に両手いっぱいに靴を抱えた少年が階段を降りてきている。第2話でもカマラに助けられた少年がナキアのものと思われる靴を履いており、少年の間で靴泥棒が流行っていることが示唆されている。

また、このシーンで流れている曲はボリウッド映画『Hum Aapke Hain Koun..!』(1994) の挿入歌「Joote De Do Paise Le Lo」。この曲のダンスシーンはYouTubeで7,000万回超の再生数を誇る。

ブルーノのサークルQにはカマラの父ユスフが来店。リサーチしていたジンについてのウルドゥー語の資料を見つけると、①故郷を追放されたジンの一族がこの世界に捕らえられており②故郷に帰るためのキーを探している③古代のバリアを破るためには原始的なパワーが必要、という伝説を読みあげる。そのままカマラを助けたナジマらに当てはまる内容だ。

心配事が尽きないブルーノは、次元間の移動についても太陽レベルのエネルギーが必要なこと、失敗する可能性があることをカマラに伝える。「スーパーヒーローには慣れないけど、私のやるべき善の行いかも」と言うカマラには、やはり『ファー・フロム・ホーム』でトニーから託されたEDITHの扱いに戸惑うピーターの姿が重なる。

そして、ブルーノはこのタイミングでカリフォルニア工科大学のプログラムに合格したことを伝える。カマラを助けたいが、自分のできることには限界があることを素直に伝えるのだった。友人として、カマラがキャロル・ダンヴァース=キャプテン・マーベルのように無謀では困ると語りかける等身大のサイドキックだ。

ここまでで、ナキアはムスリムコミュニティの理事となり、ブルーノはカリフォルニア工科大学に合格しており、カマラの二人の親友は順調にステップアップしている。その中で、カマラ自身の選択が問われることになる。

ムニーバにとっての家族

カマラは戦いの中でケガをした膝を診てもらいながら、次は母に助言を仰ぐ。力を手に入れても良いことばかりではないという現実を、ムニーバはアメリカに移民してきた時に経験していた。経済的にも、子育てでも、言語でも壁にぶつかったムニーバだったが、救ってくれたのはモスクのコミュニティだったという。

これまでのムニーバは、カマラが外の世界を志向することに対しては過保護で、ムスリムコミュニティの中で同調圧力もある閉塞的な付き合いに終始しているようにも見えた。だが、その歴史を紐解けば、人生で最も孤立していた時に助けてくれたコミュニティと家族を大事にしていたということが分かる。

「どんな山でも一人で登る必要はない」というムニーバの言葉は、今後、カマラの支えになっていくことだろう。

そして迎えたアーミルとタイシャのニカー。ニカーはイスラム法に基づいた結婚のこと。アーミルは貯金が732ドル、つまり7万円ほどしかないことにナーバスになっているが、ユスフは「大学院を出ればなんとかなる」と声をかける。ユスフが言う「サルワール・カミーズ」とはパキスタンを含む南アジアの民族衣装のこと。イスラム法に基づいて結婚の契約を交わせば、アーミルは今日を境に信仰と家族のために生きることになる。

「家族を選べば孤独とは無縁」とは、ユスフの経験から出る言葉だろう。アメリカのコンテンツの家族第一主義には時折ウンザリしてしまうこともあるが、こうして個々が大切にしているもの、その歴史を丁寧に見せられると、皆が幸せになることを願うほかなくなる。

なお、タイシャはアメリカ黒人のようだが、ムスリムコミュニティの慣習を謙虚に、そして楽しげに学ぶ姿が随時挿入されている。一方で、アメリカ黒人とイスラム教の歴史は長く、黒人解放運動指導者のマルコムXが所属していたネーション・オブ・イスラムの登場以降、アメリカ黒人が宗教としてイスラム教を選ぶことは自然な選択肢となっている。ラキムやルーペ・フィアスなど、ムスリムの黒人ラッパーも少なくない。

結婚式の音楽は?

結婚式で流れている曲はA.R. Rahman「Tere Bina Khanvict Remix」(2022)。「あなたがいなければ私は迷子になってしまう」という歌詞がサンプリングされている。

一方、ナジマは時間が必要と言うカマラをかばうカムランに凄んでいた。「もうお願いはしない」と、いよいよ本性を現し始める。

そんな中で結婚式のショーが始まる。ボリウッドスターだったキンゴが映画『エターナルズ』(2021) で見せたプロフェッショナルなダンスとは一味違う、コミュニティに根付いた誰でも参加できるダンスで盛り上がる。まず、ムニーバらが中心になって踊る曲はAsha Bhosle「Yeh Mera Dil Yaar Ka Diwana」(1978)。

カマラが中心になるのはPritam & DJ Hot Americano「Hadippa」。

歌を披露するのは「ブラウン・ジョヴィ」。白人のボン・ジョヴィをもじった、肌が茶色(ブラウン)の人々で構成されたバンドだ。

カマラとブルーノが一緒に踊りかけたブラウン・ジョヴィの曲はボン・ジョヴィの「ベッド・オブ・ローゼズ」(1993)。「真実は、私にはあなたが必要だってこと」というロマンチックな歌詞が歌われている。

そこに現れたのはカムラン。ナジマが迫る中、「逃げないと殺される」とまで言い切っており、ナジマが相当なヴィランであることが示唆される。カマラはとっさに火災報知器を鳴らして人々を避難させる。貯金が7万円しかないアーミルは祝儀を鷲掴みにして逃げている。

このシーンで流れる曲はボン・ジョヴィの「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」(1986)。第2話でムニーバとユスフの馴れ初めになった曲として紹介されていたもので、アーミルとタイシャの結婚式のダンスで使用すると言っていた曲だ。しかし、退避シーンのBGMに使われることになってしまった。

カラチの意味

カムランはナジマとカマラの間に入っているが、ヴィランの母と息子の関係性が描かれるのはMCUでは珍しい。カマラはジン達との4対1の厨房バトルを繰り広げるが、バングルのヌールの力で応戦できている。

避難した人々からは「カマラが火災報知器を鳴らしていた」という証言が出ており、「本当に見たのか怪しいものだ」と言っているが、英語では「DMVが彼女の運転免許を取り上げたって知ってる? (You know the DMV revoked ther driver’s license?)」と言っている。DMVは米国で運転免許を発行する組織だが、カマラは試験に落ちただけで免許を取り消されたわけではない。

ナジマから「バングルはあなたには不相応」と言われたカマラは、武器を取り出した4人の前に防戦一方。しかし、そこに助けにきたブルーノに危害が及ぶと、遂に第1話で見せた腕の巨大化を攻撃に転用して戦う。カムランも加勢して大人達に挑むが、ブルーノは手負いで人数のハンデも大きい。

三人は追い詰められ、ナジマがカマラのバングルをつかむと、二人の目の前に現れたのは列車のビジョンだった。この列車の前面には「KARACHI」という文字が記されている。カラチはパキスタン最大の都市であり、第2話ではカマラの両親はカラチからアメリカへ移民してきたと話していた。また、祖母のサナは駅で迷子になったが星を辿って父のもとに追いついたとも言っていた。この列車はサナの経験と関係があるのだろうか。

この戦いに決着をつけたのは意外にもサディ・ディーヴァー捜査官率いるダメージ・コントロール局だった。カムランを含むジン達を一網打尽にする能力の高さを見せる。ある程度のヴィランならスーパーヒーローがいなくても対処できそうだ。なんとかその場を逃れたカマラだったが、能力を使う場面をナキアに見られてしまう。スパイダーマンよりかなり早く三人組内で秘密を共有することになった。

家に帰ったカマラは、結婚式が台無しになり落ち込む兄アーミルを前に両親から事情を聞かれるが話せない。家族の力を信じる両親と、より大きな力と正義の前に答えを出せないカマラは、第1話以来となる決裂。

しかし、そこに電話をかけてきたのは祖母のサナだった。列車を見たことを知っていたサナは、自分も列車を見たという。ムニーバと共にカラチへ来るよう言われたカマラは途方に暮れるが、切れたビデオ通話の後に目に入ったのは待ち受けのキャプテン・マーベルの姿だった。ブルーノに「キャロル・ダンヴァースなら待たない」と言っていたのはカマラ自身だ。

第3話のエンディングで流れる曲はMEMBA feat. EVAN GIIA & Nooran Sisters「For Aisha」(2019)。英語とパンジャーブ語半々で歌われている曲で、タイトル通り、歌詞では「アイシャ、聞いてる?」と語りかける。この曲はMEMBAのメンバーの一人が妹を病気で亡くしたことで作られた曲。その妹の名前がアイシャなのだ。

言わずもがなだが、アイシャはヌール・ディメンションから来たカマラの曾祖母の名前と一致する。第3話はアイシャで始まりアイシャで幕を閉じる。

『ミズ・マーベル』第3話考察

『ミズ・マーベル』第3話には、いくつか今後のMCU全体に影響するような要素が登場した。まずはテン・リングスの紋章。映画『シャン・チー』は続編製作が決定しており、南アジアにルーツを持つミズ・マーベル東アジアにルーツを持つシャン・チーの物語が繋がり、二人がMCUフェーズ4の中心に立つ展開に期待したい。願わくば、若い頃(?)のウェン・ウーも見たいところ。

また、カマラのルーツが種族としてはクランデスティンで、場所はヌール・ディメンションであることが明かされた。だが真っ直ぐに受け止めづらいのがMCUの悩ましいところ。ミステリオやラルフ・ボーナー(ニセトロ)のようなフェイクを経験してきた私たちは、登場人物の言葉だけで信用してはいけないということを知っている。

それでも、第1話でカマラが見たビジョンの内容から、ここではないどこかに故郷があることは少なくとも事実のはずだ。同時に、カマラが追放された民の末裔ということであれば、先方からはどのように受け入れられるのか、あるいは受け入れられないのか、ルーツとの距離の取り方、向き合い方にも注目したい。

そして、仲間が現れたかに見えた第2話ラストから一転、第3話ではカマラの敵対勢力はクランデスティンとダメージ・コントロール局の二つになってしまった。今回は潰し合ってくれたが、二つの勢力を相手にするのはルーキーのミズ・マーベルには厳しいところ。というか、今後東海岸の全てのヒーローはヴィランを相手しながらダメージ・コントロール局の介入を心配しなければいけないのだろうか。

身近なポイントで言うと、ブルーノとナキアが順調にステップアップしている様子は気になる。「スパイダーマン」の三人組がああなってしまったが、この三人組もじきに解散ということになるのだろうか。それでも、カマラがスーパーヒーローに、ナキアが政治家に、ブルーノがテック会社の社長になってくれれば、今後のMCUはしばらく安泰だ。

なお、ブルーノのカマラへの感情については製作陣と演じたマット・リンツがマーベル公式で背景を明かしている。詳細はこちらの記事で。

やはり一番の問題は家族との関係性。ピーター・パーカーのように家族にバレる展開があった方がカマラも楽になりそうだ。なお、「どんな山でも一人で登る必要はない」というムニーバの助言は、三人の“マーベル”が集う映画『ザ・マーベルズ(原題)』にも生かされることになりそう。

全6話の『ミズ・マーベル』は、あっという間に後半へと入っていく。カマラはムニーバと共にカラチへ向かうことになるのだろうか。カマラがあの衣装を見にまとい、遂に“ミズ・マーベル”へと変身するのはパキスタンで、ということになるのかもしれない。

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コミック『Ms.マーベル:もしかしてこれって…恋?』にはロキも登場する。

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ドラマ『ミズ・マーベル』は2022年6月8日(水) より、Disney+で独占配信。

『ミズ・マーベル』(Disney+)

第4話のネタバレ解説はこちらから。

第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

『ミズ・マーベル』第1話では、キャプテン・マーベルが東京を訪れていたことが小ネタとして挿入されている。この件についての考察はこちらの記事で。

撮影中にドラマ『ワンダヴィジョン』を観た主演のイマン・ヴェラーニをケヴィン・ファイギが注意した理由はこちらから。

 

『梨泰院クラス』のパク・セロイ役で知られるパク・ソジュンの『ザ・マーベルズ』出演に関するコメントはこちらから。

2代目キャプテン・マーベルになることが予想されるモニカ・ランボー役のテヨナ・パリスが『ザ・マーベルズ』について語った内容はこちらから。

 

7月8日(金)公開『ソー・ラブ&サンダー』本予告の解説&考察はこちらから。

8月10日(水)配信開始の『アイ・アム・グルート』についてはこちらから。

8月17日(水)配信『シー・ハルク』予告編の解説&考察はこちらの記事で。

 

ドラマ『ムーンナイト』最終話のネタバレ解説&考察はこちらから。

『ムーンナイト』最終話で残された9つの謎はこちらから。

2023年の配信が発表されたドラマ『エコー』の情報はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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