第4話ネタバレ解説『シー・ハルク』魔法に判決はくだるのか? 流れた音楽は? あらすじ&考察 | VG+ (バゴプラ)

第4話ネタバレ解説『シー・ハルク』魔法に判決はくだるのか? 流れた音楽は? あらすじ&考察

© 2022 Marvel

『シー・ハルク』第4話はどうなった?

2022年8月18日(木) より配信を開始したMCUドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』は、早くも中盤戦に入っていく。全9話で構成される本作の第4話が9月8日にDisney+で配信を開始した。

『シー・ハルク』は第3話まで毎週MCUでお馴染みのキャラクターがゲスト出演し、ストーリーを盛り上げている。シー・ハルクになったジェニファー・ウォルターズは時にブルース・バナーと対立し、時にエミル・ブロンスキーを弁護しながら、弁護士としての自分とハルクとしての自分を両立していく。

第3話では一つの事件の一件落着を見た『シー・ハルク』だが、今回はジェニファーのもとにどんな事件が舞い込むのか。今回もネタバレありで各シーンを解説していく。以下の内容を読む前に必ずDisney+で『シー・ハルク』第4話を鑑賞していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』第4話の内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』第4話「本物のマジックとは?」ネタバレあらすじ&解説

スリング・リングを使う者

ドラマ『シー・ハルク』第4話の冒頭では、前回までの振り返りとして、アボミネーションことエミル・ブロンスキーから繋がったウォンの登場と、第3話ラストのレッキングクルーによる襲撃に焦点が当てられている。

一転してLAの劇場で明らかに仕掛けがあるマジックを披露するドニー・ブレイズという人物が登場。原作コミックには登場しないドラマオリジナルのキャラクターと思われる。ブレイズはウィリアム・シェイクスピアのことを「シェークス」と呼び、「バラはどんな名前で呼んでよい香りがする」という『ロミオとジュリエット』の一節を引用している。

盛り上がりがイマイチな状況に、ドニー・ブレイズが取り出したのはスリング・リング。訓練を積めばワープするための輪っか(ポータル)を作り出すことができる。『ドクター・ストレンジ』(2016) ではドクター・ストレンジが、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) ではアメリカ・チャベスが習得のために訓練を積んでいる。

一方で、このスリング・リングを訓練なしに使えるようになったのが『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021) におけるネッドだ。ドニー・ブレイズはそのネッドと同じくらいの危うさでなんとか輪っかを作り出し、ショーは一定の盛り上がりを見せるのだった。

スリング・リングの“適性”については一定の議論がある。「ドクター・ストレンジ」シリーズでは一貫して訓練を積まなければ使えるようにならなかった。一方でネッドは「魔術師の家系である」という前置きはあるものの、訓練を経ずにスリング・リングを(ある程度)使えるようになっている。ドニー・ブレイズの場合はどうなのだろうか。

別のディメンション

その頃、ネパールはカトマンズでチルしていたのはウォン。ここに先ほどのマジックショーに協力したマディスンが心臓を持って空から降ってくる。この時、ウォンの部屋のテレビの画面を見ると、ドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』(1999-2007) のシーズン5第12話「引鉄」を途中まで観ていたことが分かる。実は『ザ・ソプラノズ』はドラマ『ホークアイ』(2021) でも第5話でジャージ・マフィアのメンバーが同作の名前を挙げている。

「どこから来た?」と問われたマディソンは、「フォートローダーデール」というフロリダ州の街で育ち、父はアリゾナ州のフェニックスで再建したからたまに遊びに行くと話す。先ほどのドニー・ブレイズには異なるディメンションに飛ばされ、6滴の血と引き換えにしゃべるヤギにマグマ池から助けられたのだという。

マグマの池があり、しゃべるヤギがおり、ゴブリンがいると思われるマディスンが飛ばされた場所は、別のユニバースではなく、このユニバース(アース616)内の別のディメンションということだ。実際に、ドクター・ストレンジはスリング・リングを使って、人間社会のディメンションとミラー・ディメンションを自在に行き来している。

ちなみにマディスンは「別の次元=different dimension」を「dif dimensh」とかなり省略して発音しているのがファニーなポイントの一つだ。さらに、ウォンは『ザ・ソプラノズ』シーズン5第12話のネタバレをされてしまうのだが、画面を見るとウォンは第12話の残りの三分の一を観るところだったようだ。

「高次の力」

ウォンの登場に「Twitterは一週間は盛り上がる」とコメントするジェニファーは、第3話ラストで暴漢に襲われた件について警察に相談するよう言われる。しかし、ジェニファーは、検察官だったから警察は動かないと知っていると言い返す。あくまで作品全体に通じる明るいトーンを保ったままだが、「女性が襲われても警察は動かない」という現実を告発している。

ジェニファーが眺める大量の「今日やることリスト」は身に覚えがある人も多いだろう。中央には「ウォンに直接連絡できる連絡先を見つける」と書かれている。だがその中には「午後5時半からパグとニッキとコーヒーデート」「デートアプリの登録」など、ほんわかした内容も。ジェニファーは“matcher”という名のデートアプリに登録するのだった。

そこに現れたのはウォン。第4話のクライアントはウォンになるようだ。「マジシャン」を懲らしめたいというウォンは、「“ ”」を意味するクオテーションマークのジェスチャーをして「これの意味わかる?」と聞いているところがお茶目だ。ウォンはアメリカのカルチャーを吸収している。

ウォンは、ドニー・ブレイズがかつて1週間だけカマー・タージに修行に来ていたことを明かす。酔っ払って“カイドッグ”を呼び寄せ、クビになったのだとか。カイドッグについて、英語ではウォンは「(ドニー・ブレイズの)同業者の兄弟」と言っている。

「修行もせず魔術を使えば人々を危険に晒し、物質界とアストラル界の繋がりがほどける」と怒るウォンは、魔術の“許可性”を求めている様子。しかし、秘密保持契約や修行時の契約がないことにジェニファーは困惑する。数百年にわたってソーサラー・スプリームだったエンシェント・ワンの時代にはなかったトラブルだ。

なお、アストラル界は『ドクター・ストレンジ』でエンシェント・ワンに初めて触れられたストレンジが見た「肉体を離れた魂が存在する世界」のこと。「アストラル」には「霊体」という意味があり、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』では、ピーター・パーカーがストレンジに触れられてアストラル体になっている。

ウォンは、自分達が従う「高次の力」について、「時空連続体の現実を超えた法則」と説明している。これは、『ロキ』(2021-) のタイムキーパー/在り続ける者の存在を想起させる。大きな時空の流れを歪めず、分岐させないという大義を持っていたのが在り続ける者だった。

「文書に従わないと裁判官は認めない」と話すジェニファーに、ウォンは「ヴィシャンティの書か」と、映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』で「どんな敵も倒せる」という触れ込みで登場した書物の名前を挙げている。だがもちろん、ジェニファーらが従うのはアメリカの法律書だ。

連絡先を聞かれたウォンは、名刺にいかにも魔術師というフォントの文字を浮かび上がらせる。この時、名刺には「ウォン ソーサラー・スプリーム」という文字の下に「マスター・オブ・ミスティック・アーツ」と書かれている。マスターズ・オブ・ミスティック・アーツは、カマー・タージで訓練を積み、闇の勢力と戦う魔術師の団体を指す。

インカージョンの危険性

飲食店でウォンの書類とブロンスキーの書類を片付けるジェニファーを親友のニッキがサポート。慣れた手つきでマッチングアプリを操作していくが、「異性愛だとキツいね」と漏らす。英語では「ヘテロの人生は厳しいね (Hetero life is grim.)」と皮肉っぽく言っており、ニッキがより恋愛対象の範囲が広いバイセクシュアルであることが示唆されている。米DigitalSpayの取材では、ニッキ役のジンジャー・ゴンザーガが、ニッキはバイセクシュアルであると話したという。

コーネリアス・P・ウィローズの魔術の城 事務所に出向いたジェニファーとウォンは、魔術の使用停止を求める警告書を提出。ドニー・ブレイズ側は「マジックは所有できない」「精神は商標登録できない」と反論してくるが、双方は法廷で決着をつけることになる。一方でジェニファーはうまくいかないマッチングアプリでのデートに取り組んでおり、第3話でデニスとアボミネーションの件が同時進行したのと同じ流れを作り出している。

裁判では、ジェニファーは被告に重過失があったとして予備的差し止め命令を求めている。ひとまず差し止め命令で興行におけるスリング・リングの使用をやめさせようとしているようだ。ドニー・ブレイズに重過失があったことを証言する証人として、ウォンは序盤に別のディメンションに飛ばされたマディスン・キングを召喚。宗教的倫理観の違う相手を頼ったからか、ウォンは観音様 (Guanyin) に許しを請うている。

マディスンはドニー・ブレイズに火の国に送られたことを証言。ジェイクという名のデーモンと取引して戻ってきたと話すが、ブレイズ側の弁護士は証人が楽しんでいたこと、マジックに著作権はないことを主張して乗り切ろうとする。これに対し、ウォンは一人が波紋を投じればあらゆる次元に影響する、その影響は銀河全体に及び、未知の世界すら滅ぼす力があると主張。これは『ドクター・ストレンジ:マルチバース・オブ・マッドネス』で紹介された“インカージョン”のことだろう。

インカージョンとは、二つのユニバースが侵食しあうことで、最終的に一方のユニバースの消滅を招く。『マルチバース・オブ・マッドネス』では別のユニバースのドクター・ストレンジがインカージョンを起こしたことが明かされたが、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のラストでもインカージョンが起きそうな気配があった。ドクター・ストレンジに近いウォンはその危険性をよく知っているのだろう。

結局、判決がくだるまでドニー・ブレイズは魔術の使用を認められることに。これウォンはブレイズをミラー・ディメンションに送るという実力行使を提案する。『ノー・ウェイ・ホーム』では、ドクター・ストレンジがミラー・ディメンションに12時間も閉じ込められたこともあった。

マッチングアプリと時間外勤務

金曜の夜も仕事に取り組むジェニファーだが、matcherには新規のマッチングなし。ついにスターであるシー・ハルクとしてプロフィールを登録すると、次々とマッチングの通知を受け取る。このシーンで流れている曲はJessi「ZOOM」(2022)。Jessiは韓国を拠点に活動する韓国系アメリカ人のラッパーで、この曲のリリックも英語と韓国語で書かれており、「セルフィーを撮れば輝く」と歌われている。

しかし、ジェニファーがマッチングしたのはやばい相手ばかり。諦め気味のジェニファーは医療関係で働いているという相手に「アデロールでも売ってる?」と聞いているが、アデロールとは覚醒作用のある薬だ。アメリカではADHDの治療薬と指定使われているが、日本では禁止されている。しかし、その相手はまともそうな小児ガンの専門医。ジェニファーは、“お持ち帰り”を決意するのだった。

一方のドニー・ブレイズは火の国から大量のデーモンを召喚してしまう。ドラマを見ていたウォンは呼び出され、デート相手といい感じになっていたジェニファーもデーモン退治に駆り出される。ジェニファーとウォンは協力してデーモンを雪山に追い払うと、ドニー・ブレイズらに停止通告書に同意するよう迫って一件落着に。厳密には脅迫にあたる可能性もあるが、そこはご愛嬌。

ジェニファーが部屋に戻ると、デート相手はロクサーヌ・ゲイの『バッド・フェミニスト』(2014) を読んでいる。それぞれのやり方で、多様な形でフェミニズムと付き合っていけばいいと説いた書籍で、本書は日本でも野中モモの翻訳で亜紀書房より2017年に刊行されている。

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タイタニアの訴状

デート相手と一夜を過ごしたジェニファー。ご機嫌な翌朝に流れている曲はベリンダ・カーライル「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」(1987)。「天国は地球上にある。その価値がわかる?」というイントロ部分が流れたところで、ジェニファーはニッキから第1話に登場したタイタニアの出現を知らされる。タイタニアは無罪放免となり釈放されてしまったらしい。

一方、ジェニファーの本当の姿を見たデート相手は足早に立ち去ってしまう。ワンナイトラブの終焉を迎えたところでタイタニアの“タイタニア・ワールドワイド合同会社”から訴状が届く。同社が「シー・ハルク」を商標登録しているというのだ。この時の書面の名前はタイタニアの本名であるマリー・マクファーレンとなっている。

全9話の折り返しにあたる第5話で、いよいよジェニファーが原作の宿敵であるタイタニアと衝突することを予告して、第4話は幕を閉じる。エンディングのコンセプトアートには、マディスンがしゃべるヤギのジェイクと契約を交わす場面や、ウォンがドニー・ブレイズをミラー・ディメンションに閉じ込める場面も。

ミッドクレジットシーンにはマディスンとウォンが登場。二人仲良くポップコーンを食べながらドラマを観ている。マディスンはウォンに飲んだことのあるお酒を聴きまくり、ウォンはブルー・キュラソーに関心を示している。ウォンは『ドクター・ストレンジ』でもストレンジがウォンの知らないビヨンセの名前を出した後にビヨンセの曲を聴いて勉強していた。好奇心が旺盛なのだ。

ジン・トニックが好きと答えたウォンに、マディスンはジン・トニックの飲み放題があるか調べてみようと提案。優しい。日本語で「ウォンちゃん」となっているマディスンのセリフは、英語で「Wang」に「er」を付けた「Wanger(ウォンガー)」となっている。今後、MCUで「ウォンガー」という呼び方が登場するのかにも注目したい。ちなみにマディスン役の日本語吹き替えは、声優の石田嘉代の演技が良いのでそちらも要チェックだ。

ドラマ『シー・ハルク』第4話ネタバレ感想&考察

判決は出ず、しかし…

第3話ではブロンスキーの仮釈放とシェイプシフターによる“なりすまし”について司法の判断が下った。しかし、今回はいわば示談という形でウォン vs ドニー・ブレイズの一件は幕を閉じた。つまり、また魔術師のかつての弟子や練習生が同じようなことをしても、判例を根拠にそれをやめさせることはできないということである。

同時に、ドニー・ブレイズがスリング・リングを使った魔術は「仕事のため」という理由で予備差し止めも却下されてしまった。これでは、重過失がなければ一般人でもスリング・リングを使ってよいということになりかねない。『ノー・ウェイ・ホーム』ではネッドがスリング・リングを使ったが、今後もネッドが魔法を使う機会が訪れるかもしれない。

第4話では、地球上の物質では傷つけられない肌を持つシー・ハルクに対抗できる相手として、別のディメンションのクリーチャーを利用した点も新たな工夫だった。これまで、MCUのドラマシリーズはワンダを除いてはそれほど強力な力を持たないストリート・レベルのキャラクターがメインになってきた。『シー・ハルク』もお話自体は地に足のついた日常的なコメディだが、シー・ハルク自身の力は強大なものであり、敵役の設定はなかなか難しい。第3話ではレッキング・クルーに対して圧勝したが、第4話はデーモンの登場で、それなりに派手なアクションシーンを入れることに成功している。

この点においても期待が高まるのはタイタニアの登場である。第5話では法廷で争うことになりそうだが、シー・ハルクの好敵手としてどんな活躍を見せるのかに注目したい。また、勝手につけられることの多いヒーロー名の商標登録はどのように扱われるのかヒーローたちが受ける不当なスラップ訴訟にどのような保護が与えられるのか、それとも与えられないのか、気になる点はたくさんある。

早くも折り返しを迎えるドラマ『シー・ハルク』。引き続き注目していこう。

ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』は2022年8月18日(木) よりDisney+で独占配信中。

『シー・ハルク:ザ・アトーニー』

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コミコン2022で発表された映画『サンダーボルツ』、ドラマ『デアデビル ボーン・アゲイン』を含むMCUフェーズ5全作品のまとめはこちらから。

 

『シー・ハルク』第5話の解説はこちらの記事で。

第3話の解説はこちらの記事で。

第3話で明かされたウォンの過去について、脚本家が語った内容はこちらから。

第3話配信後にブロンスキー役のティム・ロスが示唆したアボミネーション再登場の可能性についてはこちらから。

第2話の解説はこちらの記事で。

第1話の解説はこちらの記事で。

第1話のキャプテン・アメリカのくだりについて主演のタチアナ・マスラニーが語った内容はこちらから。

 

ドラマ『ミズ・マーベル』最終話のネタバレ解説はこちらから。

『ムーンナイト』最終話で回収されなかった9つの謎はこちらから。

 

9月9日からは『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が追加映像と共に再上映される。詳しくはこちらの記事で。

11月11日公開の映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』特報の解説&考察はこちらから。

 

2025年5月公開が発表された『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ』についてはこちらから。

2025年11月公開が発表された『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ』についてはこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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