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ドラマ『ホークアイ』第5話はどうなった?
Disney+で配信されている『ホークアイ』は2021年11月24日(水)から配信を開始したMCUドラマ最新作。全6話で構成される本作は、12月15日(水) の配信で最終話目前の第5話を迎える。『マイティ・ソー』(2011) 以来、10年間MCUで活躍を見せてきたクリント・バートンは、ヒーローに憧れるケイト・ビショップとの出会いを通して、自らの過去と向き合う。
ドラマ『ロキ』(2021) と同じくサスペンス要素も含む『ホークアイ』は、数多くの謎が残されたまま進んでいく。“おじさん”や“ロレックス”など謎は尽きないが、第5話ではどの謎のベールが剥がされるのだろうか。今回もネタバレありで各シーンを解説していこう。
以下の内容は、ドラマ『ホークアイ』第5話の内容に関するネタバレを含みます。
第5話「ローニン」のネタバレあらすじ&解説
『ブラック・ウィドウ』のその後
ズバリ「ローニン」という題が冠されたドラマ『ホークアイ』第5話。だが意外にもその冒頭は映画『ブラック・ウィドウ』の台詞から始まる。
「合成ガス、化学的洗脳の反作用剤」と、ドレイコフによって洗脳されたレッドルームのウィドウ達を解放するためのガスについて説明しているのはエレーナの声。「世界中のウィドウのデータ。もう自由だと伝えて」とは、『ブラック・ウィドウ』のラストでナターシャがエレーナに託したミッションだ。そして、口笛の音は、エレーナとナターシャだけが知る二人の合図。だが、口笛は一方の音だけで、返事が返ってくることはない。
時は遡って2018年。『ホークアイ』の舞台から6〜7年前になる。エレーナは『ブラック・ウィドウ』の時と同じユニフォームを着て、ウィドウの一人であるソーニャを連れてある屋敷に侵入している。アンナという名のウィドウの洗脳を解期にきたのだ。
なお、英語のアンナのクレジットは「Ana(アナ)」となっている。原作コミックにはナターシャの隣人という設定で「アナ」という名の女性が登場する。彼女は夫からDVを受けており、見かねたナターシャはアナの夫を襲撃することを決める。また、アンナ・ロマノフという名のブラック・ウィドウも存在する。アンナはナターシャの娘だが、MCUではウィドウは全員強制不妊手術を受けたため、登場することはないと見られる。
エレーナとソーニャは解除剤で洗脳をとくが、2万ドル(約200万円)の絨毯を汚したことに文句を言われてしまう。アンナは暗殺を生業として自立していたのだ。それでも、エレーナは多くのウィドウを助けてきたことをアンナに話す。まだ自分の人生のことは後回しにしているようだ。
将来はナターシャとはニューヨークで合流してドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』(1998-) の世界のような生活をするのかと聞かれ、エレーナはトイレに立つ。なお『セックス・アンド・ザ・シティ』の舞台は『ホークアイ』と同じくニューヨークで、原作になったエッセイは『セックスとニューヨーク』(1997) というタイトルである。
エレーナが顔を洗おうとしたその時、エレーナは灰になってしまう。2018年5月に起きたサノスの指パッチンだ。しかし、次の瞬間にはエレーナは元に戻る。MCUで初めて指パッチンで消えて戻った人物の視点がリアルタイムで描かれた瞬間だ。
『ブラック・ウィドウ』の舞台は2016年。8〜9年後を舞台にした『ホークアイ』でもエレーナの見た目はそれほど変わっていなかったが、それはエレーナがサノスのデシメーションで5年間消えていたからだったのだ。
高級感溢れるアンナの家のつくりはすっかりファミリータイプに変わってしまっていた。アンナはこの5年の間で夫と結婚し、養子も迎えていた。パニックになったエレーナは腕のウィドウ・バイト(電流を射出する武器)を構えているが、こちらの記事でも触れた通り、エレーナはレッドルーム時代の武器を継続して使っているようだ。
そしてテロップでは「5年後」と表示されるが、これは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) 冒頭の「5年後」というテロップを思わせる。『エンドゲーム』では5年間で何も進まなかったことの絶望感が表現されていたが、『ホークアイ』では消えて戻ってきた側の喪失感が表現されている。
アンナはソーニャも同じく消えたが状況を理解していると言い、デシメーションからの復活には時間差があることが示されている。優しいアンナはエレーナに暗殺の仕事(請負業務=contract work)をオファーし、好きなだけこの家にいていいと声をかける。だが、エレーナは5秒で5年が消えたことでパニックになっている。それでもエレーナが最初に考えたことは、姉のナターシャを見つけることだった。
なお、このシーンで描かれた指パッチンからの“復帰者”の複雑な立場についてはこちらの記事で考察している。
ケイトとエレーナの出会い
マーベル・スタジオのタイトルロゴの後、流れた前回までのあらすじは、スローン有限会社のCEOであるジャックの存在、クリントがローニンであったこと、マヤを止めるようカジを説得したこと、ブラック・ウィドウの登場、そしてクリントがケイトを突き放したシーンだった。この後現れる『ホークアイ』のタイトルロゴは、「O」に刺さる二本の矢がなくなっている。これはマヤを中心に描いた第3話以来のことで、これはクリントとケイトが離れ離れになったことを示しているのだろう。
実家に帰ったケイトは、涙を流しながらエレノアに起きたことを話す。クリントもケイトも自分をスーパーヒーローとは思っていないと話しながらも、ケイトは幼い頃に弓を持ったことで「なんでもできると思った」と回想する。エレノアは「歩き続けるしかない」と的確な助言を与える一方で、娘の可能性を制限する過保護な親としての振る舞いを続けている。
クリントと戦えなくなったことで、ケイトはエレノアにパートナーであるジャックがアーマンド・デュケイン殺しの犯人であるという推理を伝える。スローン有限会社の存在についても話し、警備会社の社長であるエレノアに調査するよう伝えるが、ケイトはまさか自分の母が黒幕という可能性は考えていないようだ。
クリント、ケイト、エレーナと交戦したマヤは流石に傷だらけになっており、カジが手当てをしている。エレーナの登場で、マヤもクリントと同様「大きな何か」が動いていることに気づいたようだ。カジは第4話でのクリントの忠告を無視し、マヤにローニンを殺したらそれっきりで前に進むよう助言する。
実家に引っ越すために焼け落ちた自宅アパートに戻ったケイトは、そこでエレーナの待ち伏せを受ける。だがこのエレーナは普段着で、髪もといている。エレーナの普段着が描かれるのは、『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーン以来となる。エレーナはずっと戦ってきたのだ。
遅いから自分でマカロニを作っていたというエレーナは、どこか末っ子っぽい雰囲気が残る。これまでエレーナの会話シーンのほとんどが“家族”とのものだったので、他人と話すエレーナの姿は新鮮だ。人見知りしない性格のようで、エレーナは早速ケイトをケイト・ビショップの頭文字を取って「KB」と呼び、その後は音が気に入ったのかフルネームで呼び続けている。
一方、あれだけ人懐っこかったケイトは暗殺者の意外な素顔に警戒を隠せない。二代目ブラック・ウィドウと二代目ホークアイの初めての会話は、余裕な前者と警戒する後者がコミカルに描写されている。なお、エレノアが「こんなのカトラリーじゃない」とプラスチックのフォークに文句を言っているが、「カトラリー」とはナイフやフォーク、スプーンなどの食器の総称である。
エレーナはケイトとのバトルを「安全確保の上排除しただけ」と、危害を加える気はなかったと弁明。確かにエレーナはケイトにワイヤーを装着してから放り投げており、プロの技を見せている。「身構えないで (Stop being defensive.)」とケイトの警戒をとき、対話を始める。
炸裂するエレーナ節
エレーナは、ケイトにマカロニを勧める際にはレッド・ガーディアンことアレクセイのことを指して「私の父もまず食えと」と発言。皆が「偽物だ」と言った“家族”を、唯一「本物だった」と涙を見せたエレーナらしい一言だ。
ケイトとマカロニを食べるエレーナは妙にテンションが高い。奇妙な動きをして「ニューヨークに来たのは初めて」と嬉しそうにしている。観光したいというエレーナは「新しい自由の女神」が見たいと言うが、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告編では自由の女神の工事が進んでいる様子が映っていた。映像では、自由の女神にキャプテン・アメリカの盾を持たせようとしているように見える。
一方、スパイダーマンの戦いの中で巨大な盾が落下するシーンも捉えられている。『ホークアイ』の舞台は『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』から1〜2年後と考えられるため、その後、改めて工事が進んだのだろう。
日本語では単に「新しくなった自由の女神」となっているが、英語では「the new and improved Statue of Liberty(新しくて改良された自由の女神)」と言っている。「改良された」ということは、単に新しくなっただけでなく、何か思想的な意味合いが付け加えられたと考えて良いだろう。しかもエレーナが「改良された」と言うのだから、アメリカ人にとってだけでなく、多くの人々にとって受け入れやすいものになっているはずだ(エレーナの皮肉でなければだが)。
完全に観光客のエレーナに対し、地元民のケイトは「巨大ツリーは見るべき」とローカル民らしいオススメを紹介。「アメリカのクリスマスは大好き」と興奮するエレーナだが、こうしてエレーナが観光やクリスマスを楽しもうとする背景には、幼い頃に“家族”とアメリカで過ごした3年間と、洗脳されてレッドルームで生きてきた約20年間と、ウィドウ達を助けるために活動していた2年間、そしてデシメーションで失った5年間の存在がある。人並みの楽しみを享受したいのだ。
なお、この場面でエレーナが言う「鼻が光るトナカイのルドルフ」とは、童謡「赤い花のトナカイ」(1949) の元ネタになった童話『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』(1939) を指している。また、直後にトナカイを食べる話をしているが、エレーナの出身地であるロシアの一部ではトナカイ料理を作る地域もある。
立場の違い
しかし、愉快に見えるエレーナも、ケイトのことはしっかりファイリング済み。「犬を助けたのは好印象」と言っているが、これはエレーナも『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンで登場した“ファニー”という名の犬を飼っているからだろう。ケイトについてなんでも知っているエレーナは、当然クリントの過去についても調査済みという印象を与える。
クリントを殺しにニューヨークに来たというエレーナは、ケイトに「なぜクリントのために命をかけるのか」と問いかける。「なぜ誰もが彼の過去を許すのか」と。「世界を救った」と答えるケイトに対し、エレーナは「世界を救ったのは私の姉」と、“ナターシャ・ロマノフ”をロシア語のイントネーションで発音して訴える。
ナターシャの存在の軽視は、MCUファンの間でも主張されていたことだ。ナターシャはトニー・スタークと同じく命を捧げて世界を救ったが、その死は葬式まで開かれたトニーへの追悼の影に追いやられていた。そんなナターシャへの追悼を『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンで一人でやったのがエレーナだったのだ。
ナターシャの妹という事実に興奮するケイトだが、“クリント観”の違いがエレーナと衝突する。ケイトからすれば、クリントは幼い頃に自分の命を守ってくれた存在。エレーナからすれば、姉を死に追いやり、ローニンとしての過去を隠している人物だ。ケイトにとっては特別な「アベンジャーズ」という言葉も、エレーナにとっては意味を持たない。
ケイトの「正義のために戦えば巻き添えもある」とは、安全のために発生するコストはやむを得ないと考えるトニー・スタークに近い発想といえる。しかし、その“巻き添え”の対象が、世界で唯一理解し合えた、共に闘った自分の姉だとしたらどうだろうか。
しかし、ナターシャの死の責任がクリントにあるということは、どこから出てきた情報なのだろうか。ケイトも「彼が死なせたわけじゃない」と言うが、あの場所で何があったのかはクリントとケイト、そしてレッドスカルしか知らない。クリントの口から何があったかを伝えた相手はアベンジャーズメンバーと妻のローラくらいだろう。
感情的になったエレーナは、自分が暗殺依頼を引き受けてクリントを狙っていることを漏らしてしまう。ケイトは直前にエレーナのことを「自警団(ビジランテ)」と言っていたので、雇われているとは思っていなかったそぶりを見せている。しかし、クリントは第4話ラストで「誰かがブラック・ウィドウを雇った」と言っていたが、ケイトはそれを確認するためにエレーナを誘導したのだろうか。
思わぬミスで一本取られたエレーナ。ケイトは暗殺者だったクリントの暗殺を依頼した人物は信頼に足るのかと問いかけるのだった。だが、エレーナは「逃れられない真理」として、「何をやったか」が重要だと言い放つ。世間による大きな正義も、個人の小さな正義を覆すことはできない。
クリントをかばうケイトを、エレーナは拷問も暗殺もせずに、「ガールズトーク」のお礼だけを言って去っていく。孤独な人生を歩んできたエレーナにとって、久しぶりの楽しい時間だったのだろう。
クリントはNYCラーパースのメンバーで、第2話でローニンのコスチュームを盗んだグリルスを頼っていた。職業は消防士であり、本来は優しい人物なのだろう。ピザドックとクリントを滞在させてくれるという。更に第4話でケイトが制作を依頼していたホークアイの新コスチュームも完成しているというが、この場面では登場しなかった。
クリントの覚悟
翌日、ケイトがエレノアの家に戻ると、ジャックは第2話でケイトに電話をかけていたカードル刑事らに囲まれていた。エレノアは意外にもケイトの願いを聞いてニューヨーク市警に通報したのだ。落ち着いた様子のジャックは、これは罠だと主張し、「クリスマス・パーティまでには戻る」とエレノアに告げるのだった。
続いて映し出されたのは、映画『アベンジャーズ』におけるニューヨークの戦いの記念碑メモリアル。ニューヨーク市章とアベンジャーズのロゴマークが描かれ、「2012年、ニューヨークの戦いにて、この地にアベンジャーズが初めて集結(assembled)」と書かれている。名前はスティーブ、トニー、ソー、ブルース、ナターシャ、クリントの順番だ。アルファベット順にはなっておらず、やはりスーパーパワーがあるものが上に記されるのだろうか。なお、第1話で描かれた「ロジャース・ミュージカル」の看板でも、ホークアイは端に小さく描かれている。
モニュメントを見て意を決した様子のクリントは、補聴器を外して「君が一番勇敢だった」とナターシャに語りかける。「あんな石ころのために」と言う場面は英語で「stupid orange rock(ばかげたオレンジの石)」と言っており、ソウルストーンを指していることが分かる。ナターシャだけへの懺悔の言葉の背後で流れている音楽は、『エンドゲーム』でナターシャが命を投げ出した時と同じものだ。
しかし、「今からすることを許せ」と言ったクリントはフードを被ってローニンに戻ることを示唆する。ローニンとしての人生からアベンジャーズに連れ戻してくれたのはナターシャだった。そしてクリントはナターシャに詫びを入れて、ローニンとしての過去に自らけじめをつけようとする。
エレーナの覚悟を知ったケイトは、自分のトロフィーを見回した後、壁のコルクボードに貼られたクリントの写真を見る。写真には「HERO WORSHIP(ヒーロー、崇拝)」と書かれており、コルクボードに貼られているもの(絵や思い出の写真、テストの結果など)の特性から見て、何かの記事というよりは学校の課題で自作したフライヤーとも考えられる。ケイトにとって、クリントの存在は子どもの頃の思い出と共にあったのだ。
思い立ったケイトは何度もクリントの電話にメッセージを残す。「おかしな人 (crazy person) みたいにメッセージ送ってるの、好きでやってると思う?」と言う姿は愉快だが、今まさに再びローニンに戻ろうとするクリントに手を差し伸べているのは、ケイトだけなのだ。
ジャージ・マフィアはRUN DMCの「Chirstmas In Hollis」(1987) に合わせてノッている。ヒップホップグループのRUN DMCを「ジャージ仲間」と言うが、RUN DMCはメンバー三人が全身アディダスでキメるスタイルで一世を風靡した。
この後に名前が挙げられる「陸上選手のスミス」とは、メキシコオリンピックで男子200m金メダルを獲得したトミー・スミスのことだろう。表彰台で、黒人差別に抗議するために黒手袋をつけた右手の拳を高く掲げた姿はあまりにも有名である。おそらく世界で最も有名なジャージ姿の人物の写真だろう。
On This Date: Australian sprinter Peter Norman stood alongside American athletes Tommie Smith and John Carlos during their silent civil rights protest on the 200-metre medal podium in Mexico City. ✊🏿 pic.twitter.com/po2UMJRWbr
— ESPN Australia & NZ (@ESPNAusNZ) October 15, 2021
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』は2001年のコメディ映画で、親子三人がアディダスの赤いジャージを着ている。同作にはドラマ『ロキ』(2021) でメビウスを演じたオーウェン・ウィルソンも出演しており、共同脚本も手掛けている。
「ザ・ソプラノズ」と言っているのは、イタリア系マフィアの生活を描いたドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』(1999-2007) のことだ。スーツのイメージが強いイタリアマフィアだが、リアルを追求したドラマになっており、登場人物たちがジャージを着ている場面が数多く登場する。
クリントはジャージ・マフィアに“矢文”を送り、マヤに「初めてローニンと会った所」へ来るよう指示する。続いてクリントはローラに電話をかけると、マヤがクリントの家族を調べていること、ブラック・ウィドウが雇われたことを伝える。「今夜ケリがつかないと大物が絡んでくる」と言うクリント。
「大物」の部分は英語では「the big guy」となっており、明らかに原作コミックでホークアイと戦うキングピンの存在を示唆している。なお、第3話で描かれたローニンがマヤの父を襲撃した自動車修理店の名前も「FAT MAN」だった。映画『スパイダーマン:スパイダーバース』(2019) でも描かれた通り、キングピンは巨大な人物である。
ローラは「決断を信じる」とクリントを送り出す。ロッカーに閉まっていたローニンのコスチュームを取り出し、クリントは約束の場所へ向かうのだった。
父の死の真相
マヤはかつての襲撃現場で待っている。やはり「ファットマン中古車」という看板が映し出されており、何年経ってもここが“おじさん”のナワバリであることが示されている。一人で来るよう指示を受けたマヤだが、周辺には仲間を配置している。ワンパンでカジを排除したローニンは、ジャージ・マフィアも次々と排除。これがクリントの本気である。
だが、今回は敵を殺してはいない。クリントの狙いは、あくまで自分が本物のローニンであるとを示すことだった。マヤを追い詰めてその素顔を晒したクリントは、自身や家族を追い続けるなら殺すと警告。自分とマヤは同じ「兵器」だと、ケイトにも言った言葉を告げる。
そして、クリントはマヤの父を含むジャージ・マフィア襲撃の依頼をしてきた人物の名を明かす。このシーンは演出の妙で、マヤの視点を映し出すことで、音が消えてクリントがなんと言ったか分からないようになっている。しかし、クリントはその人物はマヤのボスだったと明かし、マヤの父殺しの黒幕が“おじさん”だったことが明らかになる。
おじさんがローニンへの復讐に積極的でなかった理由は、そこにあったのだ。おじさんが喜ばない、とマヤを止めようとしていたカジも、この事実を知っていたのかもしれない。クリントの言葉を信じようとしないマヤは怒りに任せてクリントに襲いかかるが、クリントを助けたのはケイトだった。ビショップ警備のセキュリティ網を使い、クリントの電話を追跡していたのだ。
クリントは脱出手段を心配しているが、「あんたタバサ?」と聞く人物が迎えに来ている。これは、ケイトがUberのようなシェアライドを利用していることを表している。シェアライドはアプリでマッチングされるが、実際に落ち合う場面ではドライバーが依頼主に名前を聞いて確認するアナログな方法がとられる。「タバサ」は偽名だろう。脱出にシェアライドを使う若者ニューヨーカーらしいケイトにクリントは動揺を隠せない。
マヤは父の右腕だったカジがローニン襲撃の夜に現場にいなかったことを問い詰めるが、カジはしらを切るばかりだ。一方のケイトは新たに現れたブラック・ウィドウがナターシャの妹であることをクリントに告げる。クリントは、妹がエレーナという名であることは知っていたようだ。ナターシャから聞いたのだろうか。
ボスの名は…
そのエレーナはエレノアを尾行していた。グリルスの家で朝食をとるケイトとクリント。ケイトの元にエレーナと思われる人物からのテキストメッセージが届く。いわく、エレーナを雇ったのはケイトの母エレノアだという。「知る権利があると思って」と言うエレーナが続けて送ってきたのは、衝撃の写真だった。
クリントはケイトに見せられた写真を見て「キングピンだ」と発言。やはり“おじさん”の正体はキングピンだったのだ。そして、第4話でエレノアが「緊急の用事」と電話をかけていた相手もキングピンだったのだろう。そしてキングピンはヴァレンティーナを通してエレーナを雇ったのだろうか。
しかも、不鮮明な写真に写っている人物は、Netflixドラマ『Marvel デアデビル』(2015-2018) でキングピンことウィル・フィスクを演じたヴィンセント・ドノフリオである。エンドクレジットにも「Kingpin」としてドノフリオの名前がクレジットされている。これまでNetflixオリジナルのマーベルドラマとMCUの繋がりは曖昧にされてきたが、これで正式に同一世界として合流していくことになるのだろうか。
注目は、画像に写るキングピンの左手に杖があるという点だ。コミック版のキングピンはいつも杖を持っており、映画『デアデビル』(2003) でマイケル・クラーク・ダンカンがキングピンを演じた時も手には杖を持っていた。一方で、服装についてはコミックと同じでありながら『Marvel デアデビル』とも共通する白のスーツになっている。
果たしてキングピンは、どのような存在としてMCUに位置づけられるのだろうか。そしてキングピンはスパイダーマンの宿敵でもあるわけだが、『スパイダーヴァース』でも描かれた二人の戦いは描かれるのか。『ホークアイ』はいよいよ残り1話。衝撃の展開を迎えた第5話は、アニメ『グリンチのクリスマス』(1966) 主題歌のバール・アイヴスが歌う「You’re a Mean One, Mr. Grinch」で幕を閉じる。
この曲では、主人公のグリンチを指して「あんたはヒール」「あんたは怪物」「あんたの心は空っぽ」と歌われている。本来アニメの愉快な歌だが、キングピンの姿を見せられた後では心穏やかに聞くことはできない。「あんたは怪物 (You’re a monster)」とは、第5話でマヤがクリントに放った言葉だが、本当の怪物はキングピンだったのだ。
ドラマ『ホークアイ』第5話考察
『ホークアイ』第5話は、エレーナのデシメーション描写から始まり、楽しそうなエレーナの姿が描かれるなど、『ブラック・ウィドウ』の後日譚としても楽しめる内容に。一方でクリントは自らの過去にけじめをつけようとするが、その背後で暗躍していた人物がキングピンことウィル・フィスクであったことが明らかになった。
人間模様が複雑になってきたが、多くの謎はキングピンに繋がっていたということでが分かった。まず、数年前にマヤの父を殺すためにローニンを雇ったのはキングピンだ。手を下したのはローニンだが、マヤの父らを手を汚さずに殺したいと思っていたのはキングピンだったのだろう。次にエレノアがクリントの暗殺を依頼したのもキングピンだ。キングピンがヴァルに対応を投げ、ヴァルがエレーナを派遣したのだろう。
そして、ジャージ・マフィアのボス、つまり“おじさん”の正体はキングピンであり、ジャージ・マフィアとマヤ、カジはキングピンの部下だったということになる。こちらのヴィラン予想記事に書いた通り、ジャージ・マフィアとマヤ、カジは原作コミックでもキングピンに雇われている。MCUでは原作コミック通りに展開する場合と、あえて外してくる場合があるが、『ホークアイ』については前者だったのだ。
なお、キングピンの登場でMCUとNetflixドラマの間で起きる地殻変動の可能性はこちらの記事にまとめている。
追記:第5話のバート&バーティ監督は、NetflixシリーズのマーベルキャラクターがMCUに合流することを明言。詳しくはこちらの記事で。
残された謎は、ジャックについてである。ジャックはアーモンド・デュケイン殺しの疑いで逮捕されたが謎の余裕ぶりを見せていた。犯人ではない人物の余裕にも見えた。それにキングピンと繋がっていたエレノアが、簡単に婚約者のジャックを警察に差し出したのも気になる。アーモンド殺しの背後にもキングピンがいると見てよいだろう。
となれば、ジャージ・マフィアの偽装会社のCEOがジャック名義になっていたことが問題だ。キングピンとエレノアは最初からアーモンドを殺し、甥のジャックをはめようとしていたのだろうか。ジャックがスローン有限会社のCEOであると突き止めたのはローラだが、発端はエレノアの会社であるビショップ警備のデータベースに登録されていた情報だった。エレノアは最初からキングピンと共にデュケイン家をはめようとしていた可能性も考えられる。
一方、エレーナは姉の死に報いるために、マヤは父に報いるためにクリントを狙う。クリントに味方してくれるのはケイトだけだ。ロレックスの時計の謎も残っている。混沌とするニューヨークの街。どのような結末が待っているのだろうか。そして、クリントはクリスマスに家族のもとへ帰ることはできるのだろうか。
次回、最終回第6話の配信を楽しみに待とう。
原作コミック『ホークアイ』はKindleで日本語訳版が発売中。
ドラマ『ホークアイ』は2021年11月24日(水)より、Disney+で独占配信中。
最終回第6話のネタバレ解説はこちらから。
第4話のネタバレ解説はこちらから。
エレーナの登場シーンで判明した4つの事実については、こちらの記事にまとめている。
エレーナ登場の裏側について製作陣が語った内容はこちらの記事で。
第1話のネタバレ解説はこちらから。
第1話に登場した「サノスは正しかった」という落書きについては、こちらで詳しく考察している。
第2話のネタバレ解説はこちらから。
第2話で判明した、ケイトがウエストコースト・アベンジャーズのリーダーになる可能性についての考察はこちらの記事で。
第3話のネタバレ解説はこちらから。
第3話に隠されていたカジの過去についてはこちらの記事で。
MCUの時系列における『ホークアイ』の位置と、フェーズ4のタイムラインについての解説はこちらの記事で。
スパイダーマンが本作に登場するかどうかの考察はこちらから。
ドラマ『ロキ』のネタバレ解説はこちらから。
ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のネタバレ解説はこちらから。
ドラマ『ワンダヴィジョン』のネタバレ解説はこちらから。
映画『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。
映画『エターナルズ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。
映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。
映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告編解説と考察はこちらから。
『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。