解説&考察『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』新予告 5人のヴィラン登場! 運命は変えられるのか | VG+ (バゴプラ)

解説&考察『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』新予告 5人のヴィラン登場! 運命は変えられるのか

© & TM 2021 MARVEL.

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』新予告公開!

2021年11月17日(水)、映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』より新たな予告編が公開された。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』はMCU映画第27作目にして、トム・ホランドを主演に据えたMCU版「スパイダーマン」シリーズの第3作目。今回の予告編では、衝撃の設定が次々と明かされた。

日本語版の予告ではカットされているが、英語版では冒頭に3秒間のハイライトが収録されている。マスクが取れた状態のスパイダーマン、苦しい表情を見せるドクター・ストレンジ、赤い腕を操るドクター・オクトパスの後に現れるのは、マスクをつけずにグライダーに乗るグリーンゴブリン(?)、複雑な装置を体につけて電気を放つエレクトロの姿だ。

予告の本編に入り、ピーターは「あのクモに噛まれて以降、自分の人生が普通だと思えた時間は一週間しかなかった。それは君が気づいてくれた時だった」と、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』での思い出を語る。MJに正体を明かし、世界にその正体が晒されるまで一週間しか経っていなかったのだ。

ピーター・パーカーの心情が吐露され、ピーターは続いてドクター・ストレンジのもとを訪れる。ドクター・ストレンジは「ピーター・パーカーがスパイダーマンだということを忘れさせようとしたこの魔法によって、“彼ら”を呼び寄せてしまった」と、なんと「botch=やり損なう」という言葉を使い、魔法の失敗を認めている。

続いて最初の予告にも登場したグリーンゴブリンのパンプキンボムが炸裂し、街には甚大な被害が。小さくではあるが、グライダーに乗るグリーンゴブリンの姿もおさめられている。ドクター・ストレンジによると、「あらゆるユニバース」から“お客さん”がやってきてしまったのだという。

サム・ライミ監督版『スパイダーマン2』(2004) に登場したアルフレッド・モリーナ演じるドクター・オクトパスはピーターを襲うが、「お前はピーター・パーカーじゃないな(You are not Peter Paker.)」と、自分のユニバースのスパイダーマンとの違いに気づいているようだ。

前回の予告編では、トム・ホランド版スパイダーマンに対して「やぁ、ピーター」と声をかけているように編集されていたため、なぜトムホ版ピーターを知っているのかというドクター・オクトパスの“認識”に注目が集まっていた。今回の予告映像を見るに、やはりドクター・オクトパスがいた元のユニバースにはトムホ版ではない別のスパイダーマンがいるようだ。

そして、MJと親友のネッドと共に立つピーター・パーカーは逆にドクター・オクトパスに「名前は何でしたっけ?」と聞く。「Dr.オットー・オクタビアス」という本名を話したのに笑われてしまうドクター・オクトパス。触手が一緒に動いているのが愛らしい。

この場面では、ピーターはMJとネッドと共に行動しているが、ドクター・ストレンジはマルチバースの扉を開いてしまったばかりでなく、ピーター・パーカーがスパイダーマンであることを忘れさせること自体にも失敗したのだろうか。

場面は切り替わり、ドクター・ストレンジは「彼らを元のユニバースに戻さなければ」と、本作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のメインミッションを明かす。そして小さな姿で登場しているのが、マーク・ウェブ監督の映画『アメイジング・スパイダーマン2』(2014) に登場したジェイミー・フォックス演じるエレクトロだ。

一方で、苛立つドクター・ストレンジに対し、「これはあなたのミス。お願いの仕方があるんじゃない?」と言い放つMJの姿も映し出される。MCU版「スパイダーマン」シリーズらしいコミカルさを残した作品になっていることも伺える。

さらに、エレクトロのものと思われる雷と共に、サム・ライミ監督版『スパイダーマン3』(2007) に登場したサンドマンのものと思われる砂嵐も吹き荒れる。二人が戦っているのだろうか。スパイダーマンのフェイクニュースを番組で紹介したJ・ジョナ・ジェイムソンの姿も捉えられている。

続いてドクター・オクトパスが「闇の中を飛び跳び回り、亡霊(ゴースト)と戦え」と助言する。この場面、ドクター・オクトパスとは和解したようにも見える。『スパイダーマン2』では、当初はドクター・オクトパスとトビー・マグワイア演じるピーター・パーカーは良好な関係を築いていた。

ドクター・ストレンジは「彼らはスパイダーマンと戦い、命を落とす」と、ヴィランたちの変えられない運命を明かす。“ヴィランの運命”というのは、ドラマ『ロキ』(2021-) の展開を想起させる。一方、ピーターからすれば、ドクター・ストレンジはこれらのヴィランをピーターが「殺すしかない」と告げているに等しい。

ピーターはドクター・ストレンジの持つ箱を奪うが、次の場面では幽体離脱のように、スパイダーマンの身体から生身のピーターだけが抜き出されている。「他に方法は?」と聞くピーターに対し、「諦めろ」と言い放つドクター・ストレンジ。「彼らの存在がこのユニバースを危うくする」と説得する。

ドクター・ストレンジは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) と『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) でも、トニー・スタークの運命を知っていながら、世界にとって必要な行動を取らせた人物だ。こうしてスパイダーマンとドクター・ストレンジは対立することになる。

次に映し出されたのはジェイミー・フォックス演じるエレクトロ。ただし、本作では見た目が青色になっていない。電撃を放つが、それを受けて落下している人物はドクター・オクトパスに見える。やはりドクター・オクトパスは元のユニバースに戻るためにピーターの側につくのだろうか。

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「悩み苦しめ。全てを手にしたお前が何を選ぶのか、世界中が見ている」という声の後、初めてグリーンゴブリンの姿が大写しにされる。

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その後、満月を背景にグライダーに乗って現れる人物はマスクをしておらず、装備もグリーンゴブリンのものではない。一瞬映る顔も若い人物に見えるが、これはもしや『アメイジング・スパイダーマン2』でデイン・デハーンが演じたグリーンゴブリン? あるいは『スパイダーマン3』でジェームズ・フランコが演じたニューゴブリン? 一体何者なのだろうか。

更に、次にエレクトロが登場する場面では、その隣に砂で象られた巨大な顔が現れている。これはサンドマンだろう。更にその隣には、『アメイジング・スパイダーマン』(2012) のリザードの姿が。

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これで、サム・ライミ監督版からグリーンゴブリン、ドクター・オクトパス、サンドマンが、マーク・ウェブ監督版「アメイジング・スパイダーマン」からリザードとエレクトロが登場することが確定。旧「スパイダーマン」シリーズの全作品からヴィランが登場することになる。

とんでもない状況に陥ったピーター・パーカーは「全員は救えない」と弱音を吐くが、その後に待っていたのは衝撃的な展開。崩れる足場を背景に落下していくMJ、そして手を伸ばすピーター。この場面は、『アメイジング・スパイダーマン2』で恋人だったグウェン・ステイシーが落下していくシーンのオマージュだ。

ドクター・ストレンジが言うように「死ぬ運命」が決まっているとすれば、ピーターは愛する人まで死の危険に晒してしまうことになる。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の日本版のキャッチコピーは「全ての運命が集結する」。果たして、ピーターは運命を塗り替えることができるのだろうか。

そして、今回の予告編のラストでは、ドクター・ストレンジが「他のユニバースが侵食し始めてる。止められない」と声を震わせる。空には次元の裂け目が生まれている。これはMCUアニメ『ホワット・イフ…?』(2021-) のシーズン1第4話の展開を想起させる。ドクター・ストレンジは力をコントロールできなくなってしまったのか。

とんでもない展開になった『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。現段階で判明しているだけでも過去作から5人のヴィランが登場し、更にスパイダーマンはドクター・ストレンジと対立する。数々の新事実とヒントをドロップし、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の新予告は幕を閉じる。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』新予告考察

ここからは考察を交えて解説していこう。まず、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告第一弾では、ピーター・パーカーが他のユニバースに行ったとも取れる演出になっていたが、今回は明確にそうではないことが示された。ドクター・ストレンジは「Visitors(お客さん)」が現れたと説明しており、今までのMCU世界を舞台に別ユニバースのヴィランが召喚されたということになる。

ドクター・ストレンジが「他のユニバースが侵食し始めてる」と話していた場面は、ドラマ『ロキ』で発生したマルチバース化の影響も考えらえる。紫色の裂け目は、侵略者カーンの襲来を予感させるがどうか。

そして、やはり気になるのは、他のスパイダーマン達の所在だ。そもそもなぜヴィラン達だけがこのユニバースに来たのだろうか。そして、スパイダーマン達を呼び出すことはできるのだろうか。それが可能になれば様々なユニバースのヒーローを呼び出せるということにもなってしまうが、ドクター・ストレンジはこの展開の落とし前をどのようにつけるのだろうか。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で生まれた混乱は、『ドクター・ストレンジ』(2016) 続編で2022年5月6日(金)全米公開を予定している映画『ドクター・ストレンジ・イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス(原題)』で回収されることになるのかもしれない。今後の展開を注視しよう。

なお、トム・ホランドがMCUのピーター・パーカーの“弱点”について語った内容は、本作の展開に通じる点がある。詳しくはこちらの考察記事で。

目が離せない『ノー・ウェイ・ホーム』

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は2021年8月23日に初の予告編映像を公開。アルフレッド・モリーナ演じるドクター・オクトパスが登場したこの予告編は、公開後24時間の視聴数が全世界で3億5,550万回を記録した。第二弾のトレーラーも公開前から世界中の注目を集めていた。

また、11月に入ってからは二つのポスターが公開。共にグリーンゴブリンの姿が捉えられており、サム・ライミ監督版「スパイダーマン」とのクロスオーバーに期待が高まっていた。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』には、これまでのシリーズに出演してきたMJ役のゼンデイヤ、ハッピー役のジョン・ファヴロー、ネッド役のジェイコブ・バタロン、メイ役のマリサ・トメイ、フラッシュ・トンプソン役のトニー・レヴォロリらが出演する。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の監督を務めるのは、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) の前二作でも指揮をとったジョン・ワッツ監督。同監督はMCU版『ファンタスティック・フォー』の監督も務める予定だ。

一方、主演のトム・ホランドは『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で一度マーベル・スタジオとの契約が終了するとされている。しかし、米時間2021年11月12日(金)に開催されたDisney+ Dayでは、MCUアニメシリーズ『スパイダーマン:フレッシュマン・イヤー(原題)』をDisney+で配信することが発表された。『スパイダーマン:フレッシュマン・イヤー』は、トム・ホランド版ピーター・パーカーがスパイダーマンになるまでの前日譚を描くと見られる。同作についての発表はこちらの記事で。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は2022年1月7日(金)日本公開。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』公式サイト

LAで開催された異例の“予告上映イベント”のレポートはこちらから。

『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は2021年12月3日(金)より日本で公開される。同作の予告解説はこちらから。

2021年のDisney+ DayのMCU関連の発表まとめはこちらから。

【ネタバレ注意!】『エターナルズ』のミッドクレジットシーン&ポストクレジットシーンの解説はこちらから。

【ネタバレ注意!】『エターナルズ』のポストクレジットシーンについてクロエ・ジャオ監督が明かした事実はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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