【考察】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』トムホ版ピーター・パーカーの“弱点”に注目 | VG+ (バゴプラ)

【考察】『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』トムホ版ピーター・パーカーの“弱点”に注目

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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』新予告に注目

日本時間2021年11月17日(水)、MCU最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告編第3弾が公開された。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、2021年11月に公開された『エターナルズ』に続くMCU映画第27作目。日本では2022年1月7日(金)の劇場公開を予定している。

今回公開された新予告編は、まるでびっくり箱のようにサプライズの数々が用意されていた。これまでの予告編にも登場していたサム・ライミ監督版『スパイダーマン2』(2004) に登場したアルフレッド・モリーナ演じるドクター・オクトパスの他に、4人以上のヴィランが登場。それもサム・ライミ監督版の3作品と、マーク・ウェブ監督版「アメイジング・スパイダーマン」シリーズ2作品から、それぞれのヴィランが参加している。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』新予告の各シーンについては、こちらの記事で詳しく解説している。

今回注目したいのは、新予告の中でトム・ホランド演じるスパイダーマンことピーター・パーカーに課された、あまりにも重いミッションだ。それは、別ユニバースからやってきたヴィラン達をピーターが自分の手で死に追いやるというもの。ドクター・ストレンジから要求されたこのミッションは、MCU版ピーター・パーカーにとってはあまりにも酷なことだ。

ドクター・ストレンジからの要求

新予告の映像では、中盤で(1:05〜)ドクター・ストレンジが「彼らを元のユニバースに戻さなければ」と提案するが、その後(1:31〜)には「彼らはスパイダーマンと戦い、命を落とす。そういう運命だ。(They all die fighting Spide-man. It’s their fate.)」とピーター・パーカーに言い放つ。また、映像の後半(1:47〜)では、ピーターは「他に方法は?」と食い下がるが、ドクター・ストレンジは「諦めろ」「彼らの存在がこのユニバースを危うくする」と反論する。

このドクター・ストレンジのセリフについて、考えられる展開は二つある。一つ目は、ヴィラン達を元のユニバースに送り返そうとしたがうまくいかず、このユニバースでスパイダーマンによって殺されるしかないと判断したという展開。「ノー・ウェイ・ホーム=帰り道はない」というサブタイトルは、スパイダーマンではなくヴィランにとってのものなのかもしれない。

そして二つ目は、ドクター・ストレンジは最初から最後まで、一貫して「ヴィラン達を“死”という運命が待っている元のユニバースに送り返す」と主張しているという可能性だ。この場合、ピーターはヴィラン達が死ぬと分かっていながら、故郷に送り返すという仕事に取り組むことになる。

ピーター・パーカーの“選択”が焦点に

前者は、ピーター・パーカーが直接的に手を下さなければならない。(元の映画では死んでいないキャラもいるが)5人以上ものヴィランを“殺す”となると、並大抵の精神状態ではいられまい。後者も、間接的にヴィラン達を死に追いやることになる。心優しいMCU版のピーター・パーカーは、ヴィラン達を送り返さずとも、このユニバースで捕まえて投獄するなり罰を受けさせればよいとよいと考えても不思議ではない。

いずれにせよ、別ユニバースから大量に流れ込んできたヴィラン達の命がピーター・パーカーの手に委ねられていることに違いはない。それは、“悪人は殺してもいいのか”という倫理にも触れる問題であり、過去の「スパイダーマン」シリーズのスパイダーマン達の罪を、トムホ版スパイダーマンが背負うということでもある。

更に新予告の終盤(1:56〜)では、グリーンゴブリンと思われる人物の声で「ピーター、悩み苦しめ。全てを手にしたお前が何を選ぶのか、世界中が見ているぞ」というセリフが挿入される。ピーター・パーカーの“選択”が『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の大きなテーマになることは間違いなさそうだ。

「スパイダーマン=人殺し」の印象操作

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019) では、ミステリオがスパイダーマン=ピーター・パーカーに殺されたとフェイクニュースを流した。『ノー・ウェイ・ホーム 』でヴィランを殺せば、ピーターは本当に人殺しになってしまう。

なお、2022年公開予定のSSU映画『モービウス』の予告の中では、「Murderer(人殺し)」と落書きされたスパイダーマンのポスターが映り込んでいる。「ヴェノム」シリーズを含むソニーのSSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)は、MCUとの繋がりは明示されていないが、MCU世界でも「スパイダーマン=人殺し」というイメージは先行しているはずだ。

だが、ミステリオの一件はさて置いても、MCUのスパイダーマンがヴィランを死に追いやるのかどうかという問題は非常に重要だ。それは何よりも、トム・ホランドが演じるピーター・パーカーの定義にすら触れるものだからだ。

トムホ版ピーター・パーカーのテーマ

実は、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の新予告で予想されるこの展開は、過去にトム・ホランド自身がMCU版ピーター・パーカーについて語った内容に通じるものがある。それはMCU版「スパイダーマン」第二作目の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』公開前に、米Fandomのインタビューでトム・ホランドが語ったものだ。

ファンから寄せられた質問の一つとして、インタビュアーに「あなたのキャラクターの最高な部分と最悪な部分は? どこを変えたいですか?」と聞かれ、トム・ホランドは以下のように語っている。

ピーター・パーカーの最高な部分は、常に他者を優先することです。そして最悪な部分は、常に他者を優先することです。彼には自分の時間や自己愛が必要ですし、もう少し自分のことをやってもいいと思います。

「他者を優先する」というのは、トムホ版ピーター・パーカーを象徴するイメージである。常に人のために動くピーター・パーカーは、これまで自らの手で誰かを殺めたことはない。『スパイダーマン:ホームカミング』(2017) でも、敵であるヴァルチャーを助け出し、助けられたヴァルチャーはその後、刑務所内でピーターを守るという行動に出た。

もちろん、旧シリーズのピーター・パーカーがヴィラン達の死に直面して苦悩しなかったわけではない。それでも、MCU版スパイダーマンには、“生死を賭けたヒーロー”というよりも、“愛すべき隣人”としてのイメージがマッチする。ヴィランといえど、死に追いやるという選択は似合わない。

ピーターは理想を捨てるのか

そんなトムホ版ピーター・パーカーが、『ノー・ウェイ・ホーム』では新予告で示された通り「全員は救えない」と言うまでに追い込まれるのだ。トム・ホランドが話す通り、常に他者を助けようとする姿勢がピーターの良さであり、一方で弱点でもある。ミステリオにはその“甘さ”を利用されたし、『ノー・ウェイ・ホーム』新予告では高所から落下していくMJの姿も捉えられている。「全員は救えない」の対象が、自分自身や大切な人になることもあり得るのだ。

世界中が見守る中、“選択”を迫られたピーター・パーカーは、それでも理想を追い求めるのか。それとも、“大人”であるドクター・ストレンジの言うように諦めるのだろうか。ドクター・ストレンジは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) で、トニー・スタークの運命を知っていながら1,400万605分の1の方法を選ばせた。魔法使いでありながら現実主義者のドクター・ストレンジに、若き理想主義者のピーター・パーカーはどのように対峙するのだろうか。

映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は2022年1月7日(金) より日本公開。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』公式サイト

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』新予告の解説&考察はこちらの記事で。

ソニー・ピクチャーズからは『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』が2021年12月3日(金)より日本で公開される。同作の予告解説はこちらから。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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