ネタバレ考察『ホークアイ』第1話「サノスは〇〇」の意味とは。ではローニンは? | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『ホークアイ』第1話「サノスは〇〇」の意味とは。ではローニンは?

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『ホークアイ』第1話に注目

2021年11月24日(水)より配信を開始したMCUドラマ『ホークアイ』は、10年前にMCUに登場したホークアイことクリント・バートンが初めて主人公に据えた作品。2021年にDisney+で配信を開始したMCUドラマとしては、『ワンダヴィジョン』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』『ロキ』に続き、MCUでお馴染みのキャラクターに改めてスポットライトが当てられる。

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) や『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) での出来事を経て、ヒーロー稼業から手を洗ったはずのクリント・バートン。だが、ホークアイに憧れるケイト・ビショップとの出会いによって、クリントのクリスマスシーズンは予想外の展開に巻き込まれていく。

アメリカでは一年で最大のホリデーシーズンであるサンクスギビングホリデーに、ドラマ『ホークアイ』は第1話と第2話を同時公開。今回は、第1話に登場したあのサインについて考察していこう。なお、以下の記事はドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』および映画『エターナルズ』(2021) の内容に関するネタバレを含むので注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ホークアイ』第1話、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』、映画『エターナルズ』の内容に関するネタバレを含みます。

「サノスは正しかった」の意味

ドラマ『ホークアイ』第1話では、ヒーローを引退して3人の子ども達とニューヨーク旅行に来ているクリントの姿が描かれる。過度にエンタメ化されたアベンジャーズのミュージカルに耐えきれなくなったクリントは、思わず席を立ってトイレへ行く。この場面で息を飲んだ人も少なくないはずだ。

トイレの便器に、「サノスは正しかった(Thanos Was Right.)」という落書きがされていたのだ。ミュージカル「ロジャース・ザ・ミュージカル」が上演されていたマンハッタンのシアターは、治安は悪くなさそうだし、広くて良い劇場であるように見える。掃除も行き届いているはずなので、この落書きは、この日、アベンジャーズのミュージカルを観た客によるものだと推測できる。

あるいはサノスに共感するものが忍び込み、アベンジャーズファンへのメッセージを刻んだのかもしれない。少なくとも、チケットを買ってアベンジャーズのミュージカルを観に来る者へ向けられたものであることは確かだ。

サノスは正しかったのか

ドラマ『ホークアイ』では、せっかくアベンジャーズがデシメーション(指パッチン)前の世界を取り戻したのに、「サノスは正しかった」と考える人々が存在するということが、第1話から示された。これは、ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でもテーマになっていたことである。

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、カーリ・モーゲンソウが率いるフラッグ・スマッシャーズが台頭。SNSを通して、“デシメーションの5年間=全人口の半分が失われた世界”の方が良かったという主張で共感を集めていた。

フラッグ・スマッシャーズが主張していたのは、「残されていた者より復帰者が優遇されている」というもの。人口の半分が消滅したことでやっと定住地を手に入れた難民の人々は、人口が急に復活したことから再び居場所を追い出された。また難民に戻ってしまったことから、「人口半減時代の方がマシだった」と考えたのだ。

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は、『エンドゲーム』の約8ヶ月後である2024年4月を舞台にしていた。『ホークアイ』は、クリントが家族でのクリスマスを相当楽しみにしていることから、デシメーションからの復活後はじめてのクリスマスだと予想できる。明示はされていないが、『エンドゲーム』から2ヶ月後の2023年の12月が舞台だと考えられる。

『ホークアイ』の舞台がフラッグ・スマッシャーズが台頭する前の時期だったとすれば、まだサノス肯定派の主張が広がりきっていない時期だろう。第1話に登場した「サノスは正しかった」の落書きは、フラッグ・スマッシャーズ的な人々が登場する兆しと捉えることができる。人口復活後の社会にうんざりしている人々は、文字通り“トイレの落書き”という地道な手段での主張から始まり、仲間を増やしていったのかもしれない。

追記:ドラマ『ホークアイ』監督のリース・トーマスは、本作の舞台が『エンドゲーム』から「2年後」であると米Game Readerで明かした。であれば、第1話の「サノスは正しかった」の落書きは、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』後もMCUの社会でなおもサノス支持の流れが続いていることを示している。

『ホークアイ』のMCUにおける時系列と、フェーズ4のタイムラインについての解説はこちらの記事にまとめている。

ローニンは正しかったのか

人口復活によって割を食った人々は、復活した人々に怒りを向ける。サム・ウィルソンもまたデシメーションで5年間姿を消していたことを姉のサラから批判されていた。そうした怒りが「サノスは正しかった」という意見を生んでいるのだ。

一方、これに近い感情で動いていたのがデシメーション期間中のクリント・バートンだ。善良な一般人である自分の家族がデシメーションで消えたことで、自暴自棄になったクリントはローニンになり、世界中の悪人を殺して回った。悪人なのに消えなかった人間、或いは、消えなかったという幸運に預かったにも関わらず悪事をやめない人間に制裁を加えていたのだ。

つまりクリントは、ローニンとして指パッチンで消えなかった“消えるべき人々”を自らの手で消すという道を選んだ。カーリやフラッグ・スマッシャーズの思想は(単純化すると)「指パッチンから復帰した悪人に制裁を」というものであり、ローニンは「指パッチンで割を食わなかった悪人に制裁を」というものだった。どちらもやり方が過激になってしまったが、理論自体は筋が通っているのではないだろうか。

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』では、サムは難民の保護を訴えるカーリの主張と向き合い、フラッグ・スマッシャーズを「テロリスト」とは呼ばず、寄り添うことを選んだ。それは「サノスは正しかった」的な人々の声にも耳を傾けるということでもある。一方のクリントは、ローニンとしての過去を悔やんでいるようだ。『エンドゲーム』ではローニン時代の罪を指して、自分はヒーローを名乗る資格がないとナターシャに主張している。

だが、弱い者が割を食う不平等な世界で、ローニンの活動は悪だったと言い切れるだろうか。ドラマ『ホークアイ』では、クリントは過去の自分と和解するのか、それとも決別するのか、その点にも注目しよう。

『エターナルズ』でも再燃した「サノスは正しかった」

なお、「サノスは正しかった」は、映画『エターナルズ』が公開された時にMCUファンの間でも囁かれた論でもある。『エターナルズ』では、宇宙の上位存在であるセレスティアルズが、人類のエネルギーを利用して地球のコアから新たなセレスティアルを生み出す《出現》を起こそうとしていたことが明らかになった。新たなセレスティアルの誕生と共に地球は破壊されてしまうため、《出現》の実現は人類の滅亡を意味していた。

人類の進化と繁栄を助けていたエターナルズは、結果的に地球の人口増を手伝い、地球滅亡を推進する役割を担っていた。サノスの指パッチンによって一時人口は半減したため《出現》は回避されていたが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』で人口が復活したことによって、《出現》が間近に迫ることになった。

この新設定を受けて、サノスは宇宙中の《出現》を阻止しようとしていたという説が浮上。まさに「サノスは正しかった」状態になりそうな雰囲気もあるが、これは流石に厳しい考え方だと言える。飢餓から人々を救うためでも、《出現》から人々を救うためでも、合意なく半分の人々を犠牲にして残りの半分を助けるという思想自体は受け入れられるものではないだろう。

ただし、『エターナルズ』でのあの人の登場で、サノスがエターナルズの一人である可能性も浮上している。「サノスは正しかった」は、色々な意味で注目を集めているトピックなのだ。

フェーズ4に入り、まさかのサノス再評価路線の機運が芽生えるMCU。ドラマ『ホークアイ』でクリントがローニンと向き合うことで、それに一つの答えが示されるのだろうか。それとも、MCUフェーズ4はサノスという巨大すぎたヴィランの爪痕と共に進んでいくのだろうか。引き続き目が離せない。

ドラマ『ホークアイ』は2021年11月24日(水)より、Disney+で独占配信中。

ドラマ『ホークアイ』(Disney+) 

原作コミック『ホークアイ』はKindleで日本語訳版が発売中。

『ホークアイ』第1話のネタバレ解説はこちらから。

第2話のネタバレ解説はこちらから。

第2話に登場したウエストコースト・アベンジャーズ結成のヒントについての考察はこちらから。

ドラマ『ホークアイ』のヴィラン候補まとめはこちらから。

スパイダーマンが本作に登場するかどうかの考察はこちらから。

 

ドラマ『ロキ』に登場した“サノスのリンゴクイズ”についてはこちらから。

映画『エターナルズ』で発生しそうなサノスの設定変更についてはこちらで解説している。

フラッグ・スマッシャーズを率いたカーリについての解説はこちらから。

 

映画『ブラック・ウィドウ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

映画『エターナルズ』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のポストクレジットシーンの解説はこちらから。

映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告編解説と考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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