ドラマ『ロキ』配信開始!
MCUでは初めてヴィランを主演に据えたドラマ『ロキ』が2021年6月9日(水)より配信を開始した。ロキ役はもちろんトム・ヒドルストンで、監督はケイト・ヘロンが務める。『ロキ』の物語は、映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) で登場した2012年のロキが四次元キューブを使って脱走したところから始まる。ヴィランでありながらMCU屈指の人気キャラクターであるロキは、どのような冒険を見せてくれるのだろうか。
今回はドラマ『ロキ』の第1話「大いなる目的」のあらすじと解説をネタバレありでお届けする。
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以下の内容は、ドラマ『ロキ』第1話の内容に関するネタバレを含みます。
ドラマ『ロキ』第1話のあらすじ&ネタバレ解説
主人公は“2012年のロキ”
ドラマ『ロキ』第1話「大いなる目的」の冒頭は、2012年のニューヨークから始まる。映画『アベンジャーズ』(2012) の最後のラストで戦場になったスタークタワーだ。ロキは『アベンジャーズ/エンドゲーム』で描かれた通り、未来のアベンジャーズが過去に介入したことがきっかけになり四次元キューブを手に入れ、脱走に成功する。2012年側のアベンジャーズがロキが消えたことに気づき困惑している。
そして、お馴染みのマーベルのロゴが登場するが、音楽は悲しげで、ロゴもいつもの赤ではなくロキのイメージカラーである緑のものになっている。MCU史上初となるヴィランを主演に据えた新シリーズの始まりだ。
ロキが四次元キューブを使ってワープした先はモンゴルのゴビ砂漠。一応ワープ先には地球を選んだらしい。モンゴルの遊牧民にお馴染みの口上を述べるが、もちろん英語は通じない。ちなみこのロキは2012年のロキであるためオーディンとも決別したままで、ここでは「オーディンの息子」と名乗っていない。
ここに現れたのはTVAこと時間変異取締局の面々。ウンミ・モサク演じるリーダー格のハンターB-15は「分岐した枝が伸びている」と時間軸に分岐が発生していることを示唆し、ロキを「神聖時間軸への抵抗罪」で逮捕してしまう。相手を(痛みの感覚はそのままに)16分の1の早さに変えてしまう技を見せるハンターB-15。なかなかの強者だ。
TVAに到着してからも、首輪をつけられたロキはハンターB-15の思うがまま。神様のロキが手も足も出ない。ロキは大切なアスガルド産の洋服をレーザーで焼かれ、発言を認める署名をさせられ、魂のある有機体であることを宣言させられ、“時間オーラ”とやらを撮影される。ロキは次々下の階に落とされていくが、ロキの“落下”は『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017) でお馴染み。同作ではドクター・ストレンジがロキを異空間に閉じ込め、ソーとの話し合いの末に解放するが、ロキが「ずっと落ちてた!30分も!」と怒りをあらわにするシーンがある。ドクター・ストレンジとソーが話し合っていた間、ロキはずっと落ち続けていたのだ。
“ロボットは溶かされる”ゲートを怖がったり、警備員に反抗的な態度を取ったり、ロキファンにはたまらないトム・ヒドルストンの細かな演技がじっくり映し出される。この“贅沢感”はドラマ『ロキ』の特徴になっていくのだろう。
明らかになる“多元宇宙”の歴史
そしてロキの前に現れたのはブラウン管の中のミス・ミニッツ。ロキが置かれた状況について説明をしてくれるらしい。ミス・ミニッツによると、大昔に多元宇宙にわたる大戦争が起き、多くの時間軸が優位性を争って衝突したのだという。その混乱を救ったのはタイムキーパーと呼ばれる存在。多元宇宙を一つにまとめ、神聖時間軸を創り出した。
以後、タイムキーパーはこの時の流れを守り続けているが、ロキのようにその流れを外れるもの=変異体が現れる。道を外れる者が現れると“分岐イベント”が起き、それを放置すると時間軸が分岐してしまう。結果、再び多元宇宙による戦争が起きてしまうため、タイムキーパーとTVAは道を外れた人を回収し分岐イベントを修正、元の時間軸に居場所をなくした人間を裁判にかけるのだという。
非常に分かりやすい説明だが、気になるのはここで使われている英単語の数々だ。「多元宇宙による戦争」は「multiversal war」と表現されており、MCUが今後展開すると見られるマルチバース構想を示唆している。また、「分岐イベント」とされている箇所は「nexus event」と表現されており、ドラマ『ワンダヴィジョン』で登場した“ネクサス”という概念を想起させる。
そして、「時間軸が分岐して」と話している箇所では「branch off into madness」という表現が使われている。「マッドネス」といえば、ワンダも登場する「ドクター・ストレンジ」シリーズ最新作『ドクター・ストレンジ/イン・ザ・マルチバース・オブ・マッドネス』のタイトルを思い出さずにはいられない。そんな重大な説明を経て、遂にドラマ『ロキ』のタイトルロゴが登場する。ドラマ『ロキ』を起点として、今後のMCUが多次元にわたる物語を展開していくことになりそうだ。
このミス・ミニッツによる解説シーンで明らかになったマルチバース要素と、そこから読み取れるMCUの今後の展開については、考察をこちらの記事にまとめている。
メビウス登場
ところ変わって舞台は1549年、フランスのエクサンプロヴァンス。オーウェン・ウィルソン演じるメビウスがTVAのハンターの死体を前に「奴の仕業だ」とこぼす。何者かがTVAを襲撃しているらしい。犯人を聞かれた子どもは悪魔のステンドグラスを指差し、その犯人からもらった「Kablooie」という名のチューイングガムを見せる。犯人は様々な時代を飛び回っているようだ。
その頃TVAでは、ロキの裁判が始まっていた。ロキはことの時「ロキ・ラウフェイソン」と呼ばれている。「ソン」は「息子」を英語にした「Son」の意味で、「オーディンソン=オーディンの息子」と同じく「ラウフェイソン」は「ラウフェイの息子」という意味になる。ラウフェイは映画『マイティ・ソー』(2011) に登場した氷の巨人の王で、ロキの実父である。
弁解を求められたロキは、最初は「神に弁解はない」と強気な態度だったが、ようやくアベンジャーズのタイムトラベルが原因であると弁明する。この弁明の場面でもロキは非常に高貴な言葉遣いで神様らしさを見せている。ロキは特殊部隊を与えてくれればアベンジャーズを始末すると、誰とでも組む以前のロキらしい提案をTVAにしてみせる。
しかし、ググ・バサ=ロー演じるTVAのラヴォーナ・レンスレイヤーはこのロキの提案を却下。アベンジャーズの行動は予定通りだったと明かす。予定通りだったとは? 運命論のように、アベンジャーズの運命はあらかじめ決められていたというのだろうか。ラヴォーナによると、それを決めるのはタイムキーパーだという。「タイムキーパーと話したい」「(忙しいって)今何してる?」とクレーマーのような要求を始めるロキ。魔力も封じ込められ、ついに「有罪」「リセット」が言い渡されてしまう。
TVA職員たちを「官僚ども」と罵るロキ。しかし、ここで名乗りをあげたのはメビウス。何やら名案があるようだ。メビウスはTVAの広大で豊かな街を見せる。TVAでは時間の流れが異なることも説明し、MCU世界においてTVAが特別な場所であることが強調される。
ロキが語る
神であるロキはタイムキーパーが全宇宙の命運を握っていることが気にくわない様子。メビウスに「信頼できるのは一人(自分)だけ」と話す2012年時点のロキは、やはり厄介な性格をしている。メビウスはうまくいけばロキが望むものを与えるという条件のもと、質疑を始める。この時のロキが求めているものは「王座につく」こと。地球とアスガルドを含む9つの世界を支配したいと話すロキに、メビウスはロキほどの多才な人物がなぜ支配だけを求めているのかと疑問を投げかける。
これに対し、ロキは「私なら皆を楽にできた」と話す。自由であることは決断を求められることであり足かせである、支配が人々を楽にするというのがロキの考えだ。「自由からの逃走」というやつだ。典型的なファシストの考え方だが、こうしたロキの思想や考えが改めてじっくり聞けるのはドラマ『ロキ』の嬉しいポイントだ。
メビウスは、ロキの言う「皆」の対象に自分自身が入っていないことを指摘するが、ロキはTVAを馬鹿にして話を逸らす。そんなロキにメビウスは映画『アベンジャーズ』でアベンジャーズに敗れたシーンを見せ、「王になるために生まれた」「解放者」であると宣言するロキに、「負け続けていること」「人々に恐怖を与えていること」を告げ、その資質を突きつける。
そして、ロキの過去の映像の中から視聴者が知らない映像が流れ出す。実はロキがD・B・クーパーだったという設定らしい。D・B・クーパーとは、1971年にボーイング727がハイジャックされ、犯人が身代金を持って逃走した未解決事件の犯人とされる実在の人物の通称。クーパーはパラシュートを身につけて飛行機から飛び降り、その後の行方は誰も知らない。なお、ロキのこの行動の理由について、日本語字幕では「賭けで負けた」となっているが、英語と日本語吹き替えでは「賭けでソーに負けた」と賭けの相手がソーであることを明かしている。
少しずつロキのナチュラルな部分が明かされていき、メビウスはロキの行動原理を解き明かそうとしていく。ロキは繰り返し「自分の道は自分で決める」と争おうとするが、メビウスはロキが母と「自分の心だけは理解できない」という会話を交わし、母を死に追いやってしまう未来の姿を見せる。過去だけでなく行く末まで知っているTVAに対し、運命論に抗うロキ。
だが、メビウスはロキが「王ではなく痛みをもたらす者」であり、今後もずっと他者の力を引き出すものであると、ロキがヴィラン、それも噛ませ犬であるということを指摘する。ロキファンにとってはなかなか辛い展開だ。
ロキが見た“未来”
と、ここでメビウスがロキから目を離した隙に、いたずらの神様らしく装置を盗み出したロキは部屋を抜け出す。四次元キューブを取り戻した際に、カートの引き出しにいくつものインフィニティ・ストーンが無造作に入れられているところを目にするロキ。だが、四次元キューブもインフィニティ・ストーンも全く機能していない。ロキは「これが宇宙最強のパワーか?」と、TVAの強大さにようやく気付く。なお、インフィニティ・ストーンの入ったカートはハンターB-15によって消し去られてしまった。なんとも扱いが雑である……。
その後ロキは、母が死亡した場面、『マイティ・ソー バトルロイヤル』で父オーディンから「愛している」と告げられたシーン、兄のソーとの共闘など、2012年のロキが経験していない“未来”を追体験する。これを見て涙を流すロキ。そして、最後に待っていたのは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の冒頭シーンだ。サノスに殺害される事実を知ってしまう。ロキはこの未来をどう受け止めたのだろうか。
元の時間軸には戻れないということを受け入れたロキは、「人を傷つけるのは楽しくない」と本心を語り出す。人を傷つけるのは支配のための弱者のトリックであることを認め、自分をヴィランであると認める。メビウスは「私はそうとは思わない」と否定し、ロキにあるオファーを持ちかける。TVAの部隊を襲撃している逃亡中の変異体を捕まえる役目である。そしてメビウスは、その変異体の正体がほかでもないロキであることを明かす。フランスの子どもが見た「悪魔」というのは、角のある冠を戴いたロキのことだったのだろうか。
ドラマ『ロキ』第1話のラストシーンは、1858年のオクラホマ州サライナ。TVAの部隊を待ち受けていた人物は残忍にもこの部隊を炎で焼き払ってみせる。本当にこの人物はロキなのだろうか。その表情は明らかにならないまま、第1話は幕を閉じる。
この人物の正体を含むヴィラン予想は、こちらの記事にまとめている。
なお、エンディング曲として流れる「TVA」は無料で公開されている。『ロキ』の音楽を担当した人物の意外な過去と合わせてこちらの記事で紹介している。
運命論の物語?
ドラマ『ロキ』第1話では、「ああ言えばこう言う」のロキの魅力がたっぷり描写されながらも、意外な形で2012年以降のロキ記憶を早々にキャッチアップした。シリアスさとコミカルさを程よくミックスした作風になっているが、どこか不安な気持ちにさせられるのは、ロキを待つ“死”という運命と、すべての出来事は確定しているという運命論をかざすTVAの存在があるからだろう。
力を失ったインフィニティ・ストーンが登場するなど、TVAは明らかにMCU世界のパワーバランスを崩しかねない存在だ。一方で、「あの時何をしていた?」というロキの指摘はごもっとも。世界に干渉しない方針は、クロエ・ジャオ監督のMCU映画『エターナルズ』(2021年11月4日(木)公開予定) の設定を想起させる。フェーズ4に入り、人知れず世界を見守っていた存在が続々登場するが、やはり『インフィニティ・ウォー』から『エンドゲーム』にかけて衝撃の経験をした身としては、「何してたの?」と思わないでもない(様々な都合があることは理解できるが……)。ドラマ『ロキ』には、この辺りの決着のつけ方にも期待しよう。
そして、今回明らかになった多元宇宙の歴史は、確実に今後のMCUに影響を与えることになるだろう。枝分かれし始めた時間軸は無事に収束できるのか。そして、自分の道は自分で選ぶと主張する”裏切りの神”は、自らの未来を切り開いていくことができるのだろうか。
トム・ヒドルストンと脚本家のマイケル・ウォルドロンは、自らの運命を知ったロキの第2話以降の注目ポイントを語っている。詳細はこちらの記事で。
ドラマ『ロキ』は2021年6月9日(水)より、全6話が毎週水曜日に配信される。
ドラマ『ロキ』第2話のあらすじ&ネタバレ解説はこちらの記事で。
ドラマ『ロキ』の出演キャストと吹き替え声優の情報はこちらの記事で。
ドラマ『ロキ』にレディ・ロキが登場する可能性については、こちらの記事で。
2021年7月8日(木)の劇場公開、7月9日(金)からのDisney+ プレミア アクセスでの配信開始を予定している映画『ブラック・ウィドウ』のあらすじと考察はこちらの記事で。
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